著者
滝沢 一泰 亀山 仁史 若井 俊文 土田 正則 木下 義晶
出版者
新潟医学会
雑誌
新潟医学会雑誌 = Niigata medical journal (ISSN:00290440)
巻号頁・発行日
vol.134, no.4, pp.113-117, 2020-04

2017年度の医学部定員は過去最多となったが,新潟県は都道府県別にみた医療施設に従事する人口10万対外科専門性資格保持医師数はワースト2位であり,将来必要とされる外科医師数を達成するためには年間40人の外科医を育成しなければならない.この度,日本専門医機構により新専門医制度が確立され,2018年度から外科新専門医制度は開始されたが,専攻医の募集定員は全国204プログラムで計2,061人でありそのうち採用されたのは805人であった.新潟県では2プログラムで計8名を採用した.新潟大学外科専門医プログラムでは2018年4月から6名の専攻医が,2019年4月から8名の専攻医が研修を開始した.卒後臨床研修2年間と専攻医としての3年間(1~3年次)規定の手術数を経験する必要があるが,すでに1年次の段階で各分野別の必須手術経験数のほとんどを経験することができた.手術総数350例および術者数120例以外は,すべて新潟大学外科専門医プログラム1年次で経験できる見込みであり,2年次および3年次は大学病院以外の関連病院で術者として手術を経験することになる.サブスペシャルティ領域がすでに決まっているのであれば,2年次3年次の研修はサブスペシャルティ領域を意識してその領域を専門的に研修できる.我々のプログラムにおける連携施設は新潟県でのhigh volume centerが中心となったが,これはプログラムの整備基準により手術症例数や指導医数に応じて,募集できる専攻医数が決まってしまうことによる.これにより集約化がさらに進んでいくものと考えられるが,新潟県は広い医療圏を持つため集約できない地域も存在するので,そういった地域での医療をどのように行っていくかが喫緊の課題である.また,いわゆる「地域枠」あるいは新潟県の修学賓金を受けていた卒後医師は,地域での指定勤務が義務付けられるのであるが,そのために専門医取得が不利にならないように留意して制度づくりを行った.これまで新潟大学外科学教室は「3科1つ屋根の下に」という理念の下,教育指導を行ってきた.今後とも3科で協力体制をとりながら,教育指導にあたっていきたい.
著者
北村 秀明
出版者
新潟医学会
雑誌
新潟医学会雑誌 (ISSN:00290440)
巻号頁・発行日
vol.121, no.5, pp.258-260, 2007-05

新潟大学臨床研修病院群プログラムにおける精神科研修では,研修医は基本的に全員,8つの精神科協力病院(以下協力病院),すなわち黒川病院,松浜病院,新潟信愛病院,三島病院,県立精神医療センター,田宮病院,五日町病院,さいがた病院のいずれかで研修する.ただし週に1日,新潟大学医歯学総合病院(以下大学病院)で研修する.大学病院と協力病院の機能分化を考え,プライマリー・ケアでしばしば遭遇するうつ病や不安障害から,機能レベルの低下が重篤な統合失調症や痴呆性疾患まで広くカバーして,頻度の高い精神疾患について基本的な技能を獲得できるように,この二重体制が採用された.しかしながら,大学病院および協力病院の研修指導医へのアンケートから,いくつかの問題点が浮き彫りになった.その多くはこの二重体制に関係するものであり,遠くの協力病院から大学病院へ週1回通うことの身体的・精神的負担,研修の継続性の阻害,指導内容の分担に関する両病院間の連絡不足などが指摘された.そもそも二重体制を敷くほど両病院は機能分化しているのか,といった根本的な疑念を述べた指導医もいた.ただし大学病院での研修のメリットも多く存在するのもまた事実である.欧米では当たり前の操作的診断基準を用いた厳密な精神科診断プロセスなどは,十分な指導時間がとれる大学病院でないとその教育は難しいのも現状である.今後はプログラムのユーザーである研修医の意見も参考に,来シーズンの状況も加味しながら,プログラムは改良され続けるべきと考える.
著者
大黒 倫也
出版者
新潟医学会
雑誌
新潟医学会雑誌 (ISSN:00290440)
巻号頁・発行日
vol.121, no.11, pp.635-643, 2007-11

【背景】現在,脊椎・脊髄手術や胸腹部大動脈瘤手術中の脊髄機能モニタリングとして運動誘発電位(motor evoked potential;MEP)測定が広く行われているが,MEPは各種麻酔薬や筋弛緩薬の影響を受けやすく,術中のMEP導出やその解釈には麻酔に使用する薬物の影響を熟知する必要がある.ミダゾラムは周術期に前投薬や麻酔導入薬として頻用されている比較的新しいベンゾジアゼピン系薬剤であるが,MEPに対する影響については確立されていない.単発経頭蓋的電気刺激で誘発されるMEPに対するミダゾラムの影響については報告間で結果が一定しない.また,連発経頭蓋的刺激によるMEPに対する影響については報告がない.今回,申請者らはMEPにほとんど影響がないとされているケタミン麻酔下にミダゾラムを投与し,経頭蓋的5連電気刺激により前脛骨筋とひらめ筋に誘発される筋電図(MEP)に対する作用を調べた.また,膝窩部脛骨神経刺激でひらめ筋に誘発される筋電図(H波・M波)を記録することにより,ミダゾラムの運動路における作用部位についても検討した.【方法】特発性側湾症に対する後方固定手術に際し,術中脊髄機能モニタリングが必要とされ,本研究に対してインフォームドコンセントが得られた患者6名を対象とした.麻酔前投薬は投与せず,ケタミン2mg/kg,亜酸化窒素(60%)とスキサメトニウム1mg/kgにて麻酔導入し,その後は亜酸化窒素を中止してデータ取得終了まではケタミンを2mg/kg/hrで持続静注した.呼気中亜酸化窒素濃度が5%未満になったところで,MEP,H波,M波の記録およびミダゾラムの静脈内投与を開始した.経頭蓋的電気刺激および脛骨神経刺激はそれぞれDigitimer社製MultiPulse Stimulator D185と日本光電社製ニューロパックΣを用い,誘発筋電図の記録はともに日本光電社製ニューロパックΣを用いた.経頭蓋的電気刺激用皿電極は国際10-20法のC3,C4の位置に貼付し,刺激設定は刺激強度600V,0.05ms矩形波,刺激間隔2ms,5連刺激とした.脛骨神経刺激は皿電極を用いて膝窩部で行い,1msの矩形波を用いて頻度0.3Hzで刺激した.M波記録時は最大上刺激で刺激を行い,H波記録時は最大振幅が得られる刺激強度で刺激を行った.MEPの導出は両側前脛骨筋と片側ひらめ筋の体表上から,H波・M波の導出は片側ひらめ筋の体表上からシールド付皿電極を用いて行った.データ取得時の周波数帯域は20Hz〜3kHzとした.MEP,H波,M波の記録は(1)ケタミン麻酔下ミダゾラム投与前(コントロール),(2)ミダゾラム0.1mg/kg投与5分後,(3)ミダゾラム0.1mg/kg追加投与5分後,(4)フルマゼニル(ベンゾジアゼピンレセプター拮抗薬)0.2mg投与5分後の4時点にて行い,それぞれ立ち上がり潜時と振幅を測定した.全てのデータはmean±S.E.で表した.統計処理はpaired t-testを用い,p<0.05をもって有意差ありとした.データ取得後はケタミンを中止し,プロポフォールの持続静注とフェンタニル静注で麻酔を維持した.【結果】患者の年齢は14.0±0.8歳,身長は159.0±2.9cm,体重は45.2±1.9kg,男女3人ずつであった.MEPの立ち上がり潜時はミダゾラム,フルマゼニル投与の前後で有意差は認められなかったが,振幅はミダゾラム0.1mg/kg,0.2mg/kg投与後ではそれぞれコントロールの47.2±7.1%,36,6±6.3%に有意に減少した.フルマゼニル0.2mg投与後ではコントロール値の68.8±10.3%に回復した.一方,M波とH波に関しては,立ち上がり潜時・振幅ともミダゾラム,フルマゼニルによって有意な変化は認められなかった.【考察】ミダゾラムは経頭蓋的5連電気刺激で前脛骨筋及びひらめ筋に誘発されるMEPの立ち上がり潜時を遅延させることなく,振幅のみを抑制した.その影響はフルマゼニルによって拮抗されることからベンゾジアゼピン受容体を介する作用であることが確認された.また,ミダゾラムはM波には影響しないことから,2次運動ニューロンの伝導,神経筋接合部や筋肉には影響しないことが明らかとなった.さらにミダゾラムは今回の投与量ではH波にも有意な影響を及ぼさないことから,脊髄前角細胞の活動性を含む脊髄反射弓全体の活動性には影響は少ないものと考えられる.以上のことから,ミダゾラムは2次運動ニューロンではなく,1次運動ニューロンの興奮性あるいは1次運動ニューロンから2次運動ニューロンへのシナプス伝達を抑制することによってMEPの振幅を減少させることが示唆された.
著者
野崎 あさみ 遠藤 由香 松尾 良子 三石 淳之 塚本 健二 Reva Ivan 高野 智洋 岩尾 泰久 樋口 渉 西山 晃史 山本 達男
出版者
新潟医学会
雑誌
新潟医学会雑誌 (ISSN:00290440)
巻号頁・発行日
vol.125, no.12, pp.686-690, 2011-12

平成17年度から山本正治医学部長 (当時) の支援のもと, 日露学生交流を従来の直流から交流に変えるべく, 学生の訪ロ計画を再開した. 内山聖医学部長 (当時) のもとではレベルアップとchangeに取り組み, 高橋姿医学部長のもとでは最大規模の日露ワークショップを開催した. 活動の基本方針 (キーワード) は強い信念と最低限の費用. この方向性のもとで, 学生交流については部活の趣を前面にだし, 学生は学生目線でロシアを見つめてきた. 活動6年間の軌跡をまとめた.
著者
高田 恒郎 吉住 昭
出版者
新潟医学会
雑誌
新潟医学会雑誌 = 新潟医学会雑誌 (ISSN:00290440)
巻号頁・発行日
vol.110, no.9, pp.369-370, 1996-09

As a member of the medical aid staff of Niigata prefecture, I stayed and worked for the children physically and mentally damaged by the devastating disaster in Nagata-ku, Kobe, from January 31 to February 7, 1995. There were few patients in a critical condition, because it was two weeks after the disaster, when I arrived there. However, there were adverse influences on children's psychosomatic states. Some children apeared apathetic and wouldn't smile, and great anxieties against coming aftershocks and irregularities in daily life were observed in other children. Several schools were partially reopened on February 4. Children complaining PTSD (psychological post-traumatic stress disorders) like symptoms just after the disaster, gradually got better after resuming their school life and begining to play as vigorously as before in the ground. It was impressed that resuming school life as soon as possible might be important for suffering children.
著者
山崎 理
出版者
新潟医学会
雑誌
新潟医学会雑誌 = 新潟医学会雑誌 (ISSN:00290440)
巻号頁・発行日
vol.128, no.12, pp.615-619, 2014-12

2009(平成21)年の新型インフルエンザA/H1N1対応の経験を踏まえ, 2012(平成24年)に「新型インフルエンザ等対策特別措置法」が制定され, 政府行動計画, ガイドラインが策定された. これを受け, 新潟県においても新たに行動計画を策定し, 対応を行うこととなった. 新たな政府行動計画では, 「新型インフルエンザ等対策の強化を図り, 国民の生命及び健康を保護し, 国民生活及び国民経済に及ぼす影響が最小限になるようにする」ことが目的として掲げられ, 対策に伴う外出自粛要請や物資収用等の私権制限も盛り込んだ体系となっている. 県行動計画では, 県知事による県内の対策の総合調整, 特措法に定める緊急事態措置(外出自粛要請等)の実施, 病原性・感染力の程度に応じた対策の選択・切替がポイントとして挙げられる. 今後の総合的な対応及びその準備に向け, 関係各位の一層の御協力をお願いしたい.