著者
日比野 豊 藤岡 洋子 町田 順子 根津 由紀子 貝瀬 千賀子 星 利枝 Hibino Yutaka Hujioka Yoko Machida Junko Netsu Yukiko Kaise Chikako Hoshi Toshie
出版者
新潟医学会
雑誌
新潟医学会雑誌 (ISSN:00290440)
巻号頁・発行日
vol.128, no.6, pp.258-263, 2014-06

当院においては, 2011年4月より唯一の骨形成促進剤であるテリパラチドの自己注射指導を含めた骨粗鬆症教育入院を開始した. 毎月第二週目の月曜日~金曜日の4泊5日に定員4名と定め実施している. 実施内容は, 自己注射指導, 骨粗鬆症疾患知識, 栄養, 薬剤の知識を講義形式で習得できるようにしている.
著者
相馬 行男
出版者
新潟医学会
雑誌
新潟医学会雑誌 (ISSN:00290440)
巻号頁・発行日
vol.120, no.6, pp.324-328, 2006-06

注意欠陥多動性障害(ADHD)の有病率の研究は多数行われている.しかし,ADHD診断マニュアルDSM-III-Rを使って,就学前の子どもを調査した論文は,著者の知る限りほとんど見当たらない.そこで本研究では,DSM-III-Rを用い,新潟市内の保育園児と幼稚園児を対象に,保育士と幼稚園教諭による自記式調査を行った.その結果,以下のことが明らかになった.1 ADHD有所見者数は,3歳児では3,223人中181人(5.6%),4歳児では3,333人中149人(4.5%),5歳児では3,400人中101人(3.0%)であった.ADHD有所見者数は,女子より男子が有意に多く,3歳児では男子が1,688人中148人(8.8%),女子が1,535人中33人(2.1%)(男子/女子=4.2),4歳児では男子が1,707人中126人(7.4%),女子が1,626人中23人(1.4%)男子/女子=5.3),5歳児では男子が1,719人中84人(4.9%),女子が1,681人中17人(1.0%)(男子/女子=4.9)であった.2 ADHD有所見者数は,保育園児が幼稚園児より有意に多く,3歳児では保育園児が1,950人中138人(7.1%),幼稚園児が1,273人中43人(3.4%)(保育園児/幼稚園児=2.1),4歳児では保育園児が1,971人中125人(6.3%),幼稚園児が1,362人中24人(1.8%)(保育園児/幼稚園児=3.5),5歳児では保育園児が1,959人中75人(3.8%),幼稚園児が1,441人中26人(1.8%)(保育園児/幼稚園児=2.1)であった.
著者
加藤 泰介 阿部 佑一 那波 宏之 木南 凌 廣川 祥子 田中 稔 水野 誠 Kato Taisuke Abe Yuichi Nawa Hiroyuki Kominami Ryo Hirokawa Shoko Tanaka Minoru Mizuno Makoto
出版者
新潟医学会
雑誌
新潟医学会雑誌 (ISSN:00290440)
巻号頁・発行日
vol.124, no.12, pp.683-690, 2010-12

ニューレグリン-1 (Neuregulin-1: NRG1) は統合失調症の感受性遺伝子として報告された神経栄養因子である. これまでに様々なNRG1遺伝子の遺伝子改変マウスが作られ, 統合失調症モデル動物としての評価が行われてきた. NRG1は細胞移動・軸策誘導・ミエリン形成等の中枢神経系発達を制御する機能を担っている. また, NRG1は末梢神経系においても栄養因子として働き, 内耳蛸牛神経細胞の生存に関わっている. そして, NRG1と受容体であるErbBシグナルの異常は聴力の低下を引き起こすことが知られている. 従って, NRG1シグナルの障害は異常な神経発達を引き起こすと考えられる. 遺伝的要因に加えて胎児の低酸素障害などの環境因子も統合朱謂症のリスク因子と考えられており, これらはNRG1の発現異常も誘導する. よって遺伝的背景・環境要因は共に異常なNRG1シグナルを引き起こすことによって, 神経発達障害という統合失調症の原因仮説に結びつくことが予想される. 今回私は, 神経発達段階での過剰NRG1シグナルと統合失調症発症リスクとの関係を検討した. 新生仔マウスに対して組換えNRG1ペプチドを投与した後, 認知行動解析による評価を行った. プレパルスインヒビション (prepulse inhibition: PPI) は不必要な情報を取り除く知覚フィルター機能を評価するものであり, 統合失調症で低下が報告されている. 動物モデルを用いたPPIの測定は音驚愕反応を用いて行われ, NRG1遺伝子改変マウスにも障害が報告されている. しかしながら, これまでの遺伝子改変マウスは全身性変異でありながら聴覚機能を調べられた例はない. そこで私はNRG1投与マウスの認知機能に加えて聴覚機能の解析も同時に行った. 認知行動解析の結果, NRG1投与マウスは劇的なPPIの低下と, 音条件付け学習の低下を示した. 加えて, 統合失調症の陰性症状を反映すると考えられている社会性行動にも障害が見られた. しかしながら聴性脳幹反応を用いた聴覚機能解析の結果, このマウスには重度の聴力異常があることが分かった. この結果はこれまでに報告されてきたNRG1ミュータントマウスのPPIの低下には聴覚系への影響が関わっているという重要な懸念を示唆するものである. だが, 聴覚系が関与しない社会性行動試験の結果は遺伝子改変マウスの異常形質を再現するものであり, 神経発達段階でNRG1シグナルの異常がこの疾患に何らかの関わり持っている可能性を示している.
著者
風間 みえ Kazama Mie
出版者
新潟医学会
雑誌
新潟医学会雑誌 = Niigata medical journal (ISSN:00290440)
巻号頁・発行日
vol.130, no.4, pp.237-243, 2016-04

日本の10代の性行動や性意識はインターネットの普及や性情報の氾濫に伴い大きく変化しており, 性行動は低年齢傾向を辿っている. 教育現場では, 中学生に「生命と性」に関する授業, すなわち生命教育と性の健康教育に関する授業を行なっているが, その学習効果は十分に解明されてはいない. そこで本研究では公立中学校の3年生205名に対して生命と性についての授業介入前後にアンケートを行い, 介入効果を調査した. 調査項目は, 「自尊感情」, 「性別の受け止め」, 「男女交際をどの程度まで認めるか」, 「性交のイメージ」, 「性交への意識」の5項目とし, それらを授業前, 授業直後, 授業後2ヵ月に調べた. 自尊感情に関しては, 授業直後から上昇し授業後2ヵ月の時点でさらに上昇が見られた. 性別の受け止めについては, 女子において授業直後で有意に上昇したが授業後2ヵ月時点には上昇は有意でなかった. 「男女交際の限度」, 「性交のイメージ」, 「性交への意識」に関しては, 授業介入の効果は見られなかった. 中学生への生命と性の授業介入で, 自尊感情の上昇と自身の性を肯定することを実証した.
著者
安保 徹
出版者
新潟大学
雑誌
新潟医学会雑誌 (ISSN:00290440)
巻号頁・発行日
vol.117, no.3, pp.114-119, 2003-03

We could not properly understand the mechanisms underlying gastroentestinal failure without introduction of the concept of "Regulation of leukocytes by the autonomic nervous system". leukocyles consiste of granulocytes and lymphocytes and they are regulated by the sympathetic nervous system and the parasympathetic nervous system, respectively. Therefore, the number of granulocytes increases by stimulation of sympathetic nerves whereas that of lymphocytes increases by stimulation of parasyrnpathetic nerves. Almost all of these responses are beneficial for our body protection. However, If the autonomic nervous system deviates too much to one direction, our body falls victim to certain diseases, including gastroentestinal failure.
著者
佐藤 昇 柴田 昌弘 安戸 方邦 伊藤 健二朗 Sato Noboru Shibata Masahiro Yasudo Masakuni Ito Kenjiro
出版者
新潟医学会
雑誌
新潟医学会雑誌 (ISSN:00290440)
巻号頁・発行日
vol.126, no.5, pp.233-237, 2012-05

外肺葉から分化した神経管において, 中心管近傍の神経上皮細胞から分化した運動ニューロンは前角へと移動しつつ, 標的に向かって軸索を伸長する. 標的と接触した後, 約半数の運動ニューロンは「プログラムされた細胞死」を起こして死ぬ. この過程は, ニューロンがその標的である筋線維からのシグナルによってコントロールされる標的由来因子依存性の生存あるいは死である. さらにアセチルコリン受容体の競合的阻害剤であるクラーレ (d-tubocurarine) の投与によってこの時期の神経筋活動を抑制すると, この細胞死は完全に抑制され, 筋肉の神経分枝が発達し, シナプス (神経筋接合部) が増加する. 従って, 脊髄運動ニューロンの形態形成を考える上で, その標的である筋の形態形成を無視することはできない. すなわち運動ニューロンとその標的である筋は一体として理解することが重要である.
著者
榛沢 和彦 林 純一 大橋 さとみ 本多 忠幸 遠藤 祐 坂井 邦彦 井口 清太郎 中山 秀章 田中 純太 成田 一衛 下条 文武 鈴木 和夫 斉藤 六温 土田 桂蔵 北島 勲
出版者
新潟大学
雑誌
新潟医学会雑誌 (ISSN:00290440)
巻号頁・発行日
vol.120, no.1, pp.14-20, 2006-01-10
被引用文献数
4

新潟中越地震の車中泊では地震による心的ストレス,窮屈な下肢屈曲姿勢,そして脱水により下肢深部静脈に血栓が発生しエコノミークラス症候群(肺塞栓症)が多発した.10/31,11/3,11/7には厚生連佐久総合病院の診療チームと計69名(男性4名)にポータブルエコーで,11/15から12/20までは厚生連魚沼病院に通常のエコー装置を設置しマスコミを通じて呼びかけ82名(男性13名)に下肢静脈エコー検査施行した.2005/2/28から3/31まで再度魚沼病院で検査した方を対象に再度下肢静脈エコーを行った.10/31-11/7に検査した69名中車中泊経験者は60名で,8名にヒラメ静脈浮遊血栓(そのうち1名はCTで肺塞栓症を認めた),14名に壁在血栓を認め,血栓陽性例は全員車中3泊以上であった.11/15-12/20の検査では車中泊は66名(6名は30日以上連泊),そのうち60名が下肢の疼痛や腫脹を訴えヒラメ静脈の充満血栓1名,9名で壁在血栓を含めた血栓を認め,血栓陽性例は全員震災直後から車中4泊以上であった.血栓陽性率は震災後からの経過時間とともに低下し12/20では10%であったが2/28から3/31の診療結果では新たな血栓も認め血栓陽性率は21.9%と上昇を認めた.11/7までの下肢静脈エコーにおける車中泊者のヒラメ筋最大静脈径は8.8±2.5mm(車中泊経験の無いヒラメ筋最大静脈径7.1±2.0mm)より有意に大(n=55,p<0.05),また血栓を認めた被災者のヒラメ静脈最大径10.0±2.6mmで血栓の無い被災者(7.5±4.4mm)より有意に大であった(n=67,p<0.0001).本診療調査により大災害時における車中泊は急性期に肺・静脈血栓塞栓症を起こすだけでなく,静脈の損傷により慢性期に反復性の血栓を生じて血栓後症候群になる危険性も大であることが示唆された.
著者
杉浦 広隆
出版者
新潟大学
雑誌
新潟医学会雑誌 (ISSN:00290440)
巻号頁・発行日
vol.119, no.10, pp.600-610, 2005-10-10

【背景】MemCalc法により短時間の心拍RR間隔データからの心拍変動解析が可能となったが,その有用性に関する報告は限られている.抗コリン作用のあるdisopyramideは迷走神経活動が関与する心房細動に有用とされているが,心拍変動に与える影響は明らかではない.QT延長症候群の心室性不整脈発生には自律神経の関与が報告されており,QT延長症候群のtype3モデルでは迷走神経刺激中止後の心拍上昇時に心室性不整脈を認めるが,この時相での自律神経バランスの意義も明らかでない.【方法】実験1:開胸麻酔犬(n=8)を用いて,迷走神経刺激中,刺激中止後,及び交感神経刺激時の心拍変動を短時間の体表面心電図RR間隔データをもとにMemCalc法で計算し,disopyramide(1mg/kg)の影響を検討した.実験2:QT延長症候群type3モデルを作成し,迷走神経刺激中止後にみられる心拍変動期の不整脈発症と自律神経活動の関連を検討した.【結果】実験1:心拍変動での低周波成分パワー(LF:ms^2)及び高周波成分パワー(HF:ms^2)は,迷走神経刺激により中央値(25パーセンタイル-75パーセンタイル)で0.67(0.39-2.83)から35.1(5.04-114)(p<0.001),及び0.60(0.44-0.97)から28.4(4.04-63.2)(p<0.001)へ有意に増加した.一方,LF/HFは交感神経刺激により2.47(1.71-3.24)から10.5(7.99-24.6)へ有意に増加したが(p=0.036),迷走神経刺激では有意な変化を認めなかった.DisopyramideによりLF成分は0.48(0.37-1.37)から0.31(0.07-0.55)(p=0.036),HF成分は0.43(0.17-1.27)から0.10(0.06-0.41)(p=0.012)へ,それぞれ減少したがRR間隔とLF/HFは有意な変動を認めなかった.迷走神経刺激中止後の心拍変動期にLF/HFは1.17(0.58-2.28)から45.1(21.9-86.4)へ有意に増加した(p<0.001).実験2:迷走神経刺激中止後の心拍数の上昇期には,体表面心電図のT波交代現象が認められ,心室性不整脈が22%(2/9)で発症した.【結論】DisopyramideによりLF及びHFの減少が認められ,RR間隔に現れない抗コリン作用と考えられた.QT延長症候群type3モデルでは迷走神経刺激中止後にT波交代現象と心室性不整脈が発生するが,この時間帯ではLF/HFがコントロール状態よりも高値であり,本症候群の不整脈の発生背景に交感神経の活動性が関与している可能性がある.MemCalc法を用いた短時間心拍変動解析により,不整脈発生と自律神経活動に関する検討が可能であり,臨床応用が期待できる.
著者
西川 伸道
出版者
新潟大学
雑誌
新潟医学会雑誌 (ISSN:00290440)
巻号頁・発行日
vol.118, no.8, pp.411-420, 2004-08-10

子宮内膜症は婦人科疾患でも多く見られる疾患の一つであるが,その病因,進展機序などは未だに統一した見解が得られていない.そこで,今回私はDNAマイクロアレイを用いて子宮内膜症組織と正常子宮内膜を比較し,遺伝子の発現レベルがどのように変化しているかを検討した.対象サンプルは患者より同意を得られた子宮内膜症の増殖期5例,分泌期4例,正常子宮内膜の増殖期5例,分泌期4例の手術摘出組織とした.方法は,各組織よりmRNAを抽出・精製し,cDNA合成,cRNA合成を経た後,DNAマイクロアレイにハイブリダイズさせた.そして,マイクロアレイ上の既知の約12000遺伝子について,月経周期別に子宮内膜症と正常子宮内膜間について比較した.統計解析は,T検定で群間差がP<0.05かつ両者の発現レベル比が3倍以上のものを有意とした.解析の結果,正常子宮内膜の月経周期間(増殖期,分泌期)の比較では,月経周期に依存して123遺伝子が有意な発現差を示した.一方子宮内膜症では月経周期に依存して37遺伝子が有意に変化を示し,著明にその数が減少していた.そして正常子宮内膜群と子宮内膜症群に共通して月経周期間で発現差を認めた遺伝子は,そのうち1遺伝子のみであった.さらに,正常子宮内膜と子宮内膜症の比較では,294遺伝子が有意な発現差を示した.これらの遺伝子を機能別に分類すると,細胞増殖因子やアポトーシス関連因子,癌関連因子など癌化に関係する因子の発現が38遺伝子(12.9%)認められていた.今回の結果,子宮内膜症では,月経周期に依存する遺伝子発現変化がほとんどなく,また正常子宮内膜とは全く異なる遺伝子プロファイリングであった.加えて,発現変化した遺伝子には癌関連因子などの遺伝子が多く認められていたので,子宮内膜症は遺伝子レベルで見る限りにおいて腫瘍的変化を伴う組織である可能性が示唆された.
著者
鎌谷 大樹
出版者
新潟大学
雑誌
新潟医学会雑誌 (ISSN:00290440)
巻号頁・発行日
vol.120, no.8, pp.440-450, 2006-08

齧歯類の大脳皮質一次体性感覚野には,ヒゲの一本一本に対応したバレルとよばれる構造がある.齧歯類にとってヒゲからの情報は重要なものであり,神経活動依存的回路発達のモデル系としてバレル構造は注目されている.一般に感覚情報は視床を経て感覚野のIV層へ投射されるが,視床から皮質への情報伝達の特性をスライス標本で選択的に解析することは難しい.今回私はマウスの視床と皮質の両方を含むスライスを調製し,視床を刺激したときの皮質神経活動をフラビン蛋白蛍光イメージング法で可視化した.神経活動が起こると,細胞内Ca^<2+>濃度の上昇に伴いミトコンドリア内でエネルギー代謝が活発になり,電子伝達系に含まれるフラビン蛋白が酸化型になる.フラビン蛋白は,青色励起光を照射すると酸化型のみ緑色蛍光を発するという性質を持つ.従って神経活動亢進に伴う緑色蛍光上昇を記録することで神経活動を可視化することができる.実験は8-10週齢のC57BL/6マウスの雄を用いて行った.まず体性感覚野の皮質だけのスライスを作成し,神経活動がフラビン蛋白蛍光の増強として可視化できることを示した.刺激電極はバレル野のIV層に置き,連発パルス刺激を用いて神経活動を起こした.次に視床と一次体性感覚野を含むスライスを作成し,視床の連発パルス刺激によって亢進させた皮質神経活動をフラビン蛋白蛍光の増強反応として可視化した.1辺がマウスのバレル構造の直径に相当する250μmのウィンドウを設定し,定量的な評価を行った.またフラビン蛋白蛍光応答が見られた部位に記録電極を刺入し,視床刺激による皮質反応の電場電位も記録した.刺激強度を100μAから500μAまで変化させるとフラビン蛋白蛍光応答も電場電位応答も刺激強度に良く相関した変化を示した.さらにグルタミン酸受容体の阻害剤を用いることで,この神経活動が抑えられることを確認した.以上からマウス脳スライス標本を用いると,視床からの感覚入力による皮質応答を選択的に可視化できることが判った.
著者
夏目 里恵 阿部 学 菅井 智昭 葉山 文恵 崎村 建司
出版者
新潟大学
雑誌
新潟医学会雑誌 (ISSN:00290440)
巻号頁・発行日
vol.119, no.12, pp.730-734, 2005-12-10

グルタミン酸興奮毒性は,脳虚血やてんかんなどの急性疾患ばかりでなく,長い過程を経る神経変性疾患による神経細胞死の原因としても注目されている.グルタミン酸受容体チャネルは,興奮毒性発現機序において中心的な役割を果たしていると考えられてきた.とりわけ,高いCaイオンの透過性を持つNMDA型グルタミン酸受容体はその鍵を握る分子として注目されてきた.この受容体の機能特性を決定する4種類のGluRεサブユニットノックアウトマウスを用いて,カイニン酸急性毒性におけるNMDA型受容体の関与を検証した.その結果,GluRε1サブユニットがカイニン酸による興奮毒性発現に最も重要な役割を果たしていることが明らかになった.さらに,小脳顆粒細胞に有意に発現するGluRε3や幼者期に主な発現があるGluRε4にも毒性発現への影響力が有ることから,NMDA型受容体は様々な機序で興奮毒性に関与していることが示唆された.
著者
佐藤 洋樹 田宮 洋一 伊藤 寛晃 角田 和彦
出版者
新潟大学
雑誌
新潟医学会雑誌 (ISSN:00290440)
巻号頁・発行日
vol.121, no.7, pp.404-408, 2007-07
被引用文献数
1

症例は18歳,女性.2003年4月18日下腹部痛と嘔吐を主訴に当院受診.下部消化管内視鏡で直腸S状部に巨大な粘膜下血腫を認め,月経に随伴する病態から腸管子宮内膜症と診断した.保存的治療と偽閉経療法にて腫瘤は縮小し経過観察されていた.2005年7月7日下腹部痛と嘔吐が再度出現し7月8日腸閉塞にて入院.肛門縁から10cmに完全狭窄を認めた為,7月12日低位前方切除術施行した.本疾患は狭窄や消化管閉塞を呈し悪性腫瘍との鑑別を要するが,確定診断が困難なことも多い.今回我々は若年者で巨大粘膜下血腫と直腸狭窄を伴った手術例を経験したので報告する.
著者
宗田 聡
出版者
新潟大学
雑誌
新潟医学会雑誌 (ISSN:00290440)
巻号頁・発行日
vol.117, no.7, pp.359-366, 2003-07-10

Angiotensin-I変換酵素遺伝子(以下ACE遺伝子と略す)のintron 16における欠失Deletion/挿入Insertion多型(以下D/I多型と略す)については,これまで虚血性心疾患,糖尿病性腎症との関連が報告されて来たが,近年2型糖尿病との関連が報告された.しかしその機序については不明であり,インスリン抵抗性との関連については一定の見解が得られておらず,またインスリン分泌能との関連についても報告がない.そこで今回我々は,2型糖尿病患者63名(男性45名,女性18名)を対象として,ミニマルモデル解析を施行し,ACE遺伝子D/I多型とインスリン抵抗性およびインスリン分泌能との関係を検討した.II,ID,DD型3群間において年齢,BMI,推定糖尿病罹病期間,合併症頻度,平均血圧,HbA1c,空腹時血糖,空腹時インスリン,総コレステロール,中性脂肪,HDL-C,LDL-Cに有意差は認められなかった.インスリン感受性はII群(1.6±1.4×10^<-4>・min^<-1>・μU^<-1>・ml^<-1>),ID群(1.0±0.8×10^<-4>・min^<-1>・μU^<-1>・ml^<-1>),DD群(0.4±0.7×10^<-4>・min^<-1>・μU^<-1>・ml^<-1>)と低下した(p<0.05).一方インスリン分泌能はII群(45.4±91.4μ1/ml)vs DD群(16.7±16.7μ1/ml)(p<0.002)およびID群vs DD群(p<0.001)でDD群が低価であった.DD型は他の遺伝子型より約2倍のACE活性を持つとされ,アンギオテンシン-IIの増加およびブラジキニンの不活性化によって末梢組織血流の低下,ひいてはインスリン抵抗性の増悪に関与すると考えられる.また,アンギオテンシンIIは膵臓の血流を減少させ,ブドウ糖に対するインスリン分泌を遅延させることが知られていることから,DD型においてはアンギオテンシンIIの増加により膵血流量の低下,ひいてはインスリン分泌能の低下をもたらしている事も推測された.
著者
片柳 憲雄
出版者
新潟大学
雑誌
新潟医学会雑誌 (ISSN:00290440)
巻号頁・発行日
vol.121, no.12, pp.665-669, 2007-12

一般病院でもがん治療とともにがん痺痛治療を同時に行う必要があるため,緩和ケア研究会の幹事メンバー(医師,薬剤師,看護師,栄養士)とともに,緩和ケアチームを立ち上げ,全病棟のラウンドを開始した.2007年4月1日から,がん対策基本法が施行され,率先して痺痛治療を行わなければならなくなった.当院はがん診療連携拠点病院であるとともに,研修指定病院にもなっており,若い研修医や看護師,医学生や看護学生への影響が多大である.がん疼痛治療を実践してくれない常勤医に代わって,常に患者の傍にいる研修医などを教育することでよい結果が得られてきた.2007年4月現在,ラウンドは毎週火曜日に医師1名以上,看護師,薬剤師と栄養士は1名ずつで,全病棟を巡回している.これに,研修医,医学生,薬科大学院生などが加わる.ラウンド後に全症例のカンファレンスを開催している.2007年3月までの最近の2年間にラウンドした207例の依頼理由は80%以上が疼痛関連であった.ラウンド回数は平均5回(1回〜75回)であり,ラウンド回数が多くなるほどチームとのかかわりが親密になりよい影響を与えていた.WHOが推奨するがん癒痛治療法は以下の5原則に要約されている.(1)By mouth(経口的に),(2)By the clock(時間ごとに),(3)By the ladder(段階的に),(4)For the individual(個別的な量で),(5)With attention to detail(細かい配慮を)であり,これを熟知し,除痛により延命が可能になることを他の医療者,患者,家族に啓蒙する必要がある.当院での入院患者の徐放性オピオイドの使用状況は,2006年時点でMSコンチン^[○R]4%,オキシコンチン^[○R]58%,デロテップパッチ^[○R]31%,アンペック^[○R]7%となっている.オキシコドン速放製剤がレスキュー使用可能となり,オキシコドン徐放錠がさらに使いやすくなった.経口摂取可能な間はオピオイドも経口でということで,オキシコドン徐放錠をFirst Choiceで使用している.ASCO(米国臨床腫瘍学会)のガイドラインにもあるように,フェンタニル貼付剤は痛みが安定していて経口摂取に問題がある症例に勧めている.医療者はWHO方式がん痺痛治療法を熟知し,癌治療と平行してがん痺痛治療も行っていかなければならない.