著者
佐藤 千鶴子
出版者
日本アフリカ学会
雑誌
アフリカ研究 (ISSN:00654140)
巻号頁・発行日
vol.2012, no.80, pp.33-40, 2012-03-31 (Released:2014-01-25)
参考文献数
23
著者
高林 敏之
出版者
Japan Association for African Studies
雑誌
アフリカ研究 (ISSN:00654140)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.76, pp.31-38, 2010

本稿は,日本にとって最も近い隣国でありながら,ほとんど研究がなされていない朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の対アフリカ関係に関する試論である。その特異な国家体制ゆえに,また日本を含む先進諸国との疎遠ないし敵対的な関係ゆえに,北朝鮮は「国際社会において孤立した国家」であるといった安易なイメージで捉えられがちである。しかしながら北朝鮮は,「第三世界」の一員として,国際社会において一定の地位を確保してきた。とりわけ,北朝鮮と最も緊密な関係を築き,同国外交における最有力の基盤であったアフリカとの関係を分析することは,北朝鮮外交をより実際的に理解するうえで有益であろう。しかしながら,北朝鮮の極度に独裁的かつ閉鎖的な体制ゆえに,同国の外交について実証的に研究するのは容易なことではない。本稿ではまず,筆者が2007年および2008年に訪問した,同国妙香山に立地する「国際親善展覧館」における,アフリカ諸国と北朝鮮との関係に関する展示内容について紹介する。その展示内容から,北朝鮮が対アフリカ外交政策において,「新家産主義」的ないし「個人支配」的権威主義体制,さらに民族解放運動との緊密な関係を重視していたことが読み取れよう。次に北朝鮮の対アフリカ関係の発展を4期に区分して概観し,その盛衰の背後にある要因を検証する。
著者
西 真如
出版者
Japan Association for African Studies
雑誌
アフリカ研究 (ISSN:00654140)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.63, pp.1-15, 2003-12-20 (Released:2010-04-30)
参考文献数
51

国民国家の枠組みが揺らぐ世界的な傾向のなかで, エチオピアは民族自治にもとづく連邦制へと移行した。諸民族の連邦国家に期待されるのは, 人びとの幅広い参加による民主主義の実現である。ところがエチオピアの新しい国家秩序は, エスニシティの政治化という問題を提起した。人びとの自律的な規範と文化によって形成されるのが「ほんらいの」エスニック集団であるとすれば, 連邦制のもとで定義される「民族」は, 国家エリートによって操作される政治的な運動として, 人びとのまえに現れる。本稿では, 国家とエスニシティとの関係を, 強制的な支配と自律的な文化との対立関係として捉えず, その代わりに人びとの自発的な活動と, 国家のヘゲモニーとの相互作用のなかで形成されるエスニシティに注目する。そしてエチオピアでスルテ (あるいはグラゲ) と呼ばれる人びとのエスニシティ形成の考察をとおして, 人びとの自発的な活動に, 国家のイデオロギーが作用してきた過程を描こうとする。
著者
諏訪 兼位 星野 光雄 大崎 雅一
出版者
Japan Association for African Studies
雑誌
アフリカ研究 (ISSN:00654140)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.63, pp.17-26, 2003-12-20 (Released:2010-04-30)
参考文献数
7
被引用文献数
1

砂漠における風蝕作用では, 火成岩構成鉱物の安定性は, ボーエンの反応系列での鉱物の晶出順序とは逆である。すなわち, 早期晶出鉱物である, かんらん石, 輝石, Caに富む斜長石などは, 風蝕作用ではきわめて不安定であり, 分解してしまう。一方, 晩期晶出鉱物である, 石英, カリ長石, 白雲母などは, 風蝕作用に対する抵抗性が強く, 容易には分解しない。とりわけ, 石英は, 風蝕作用に耐えて最後まで生き残る。本研究では, カラハリ砂漠の12の地点とナミブ砂漠の2つの地点から砂漠砂を採集し, それらの構成物質, 粒度分布, 円磨度に関する詳細な分析・記載を行った。さらに, これらの分析結果と上記の鉱物安定性とを合わせて, 砂漠砂それぞれの形成史を, 主として“砂漠砂の成熟度”という観点から検討した。カラハリ砂漠の10の地点の砂漠砂は, 石英が94.7%-99.7%と圧倒的に多く, 長石は0%-0.5%, 有色鉱物は0%-4.0%, 岩石砂は0.3%-2.0%であり, 風蝕作用が十分に行われた, 成熟した砂漠砂である。カラハリ砂漠の残りの2地点のうち, 1地点の砂漠砂は, 石英が72.7%, 長石は1.3%, 有色鉱物は2.3%, 岩石砂は23.7%である。他の1地点の砂漠砂は, 石英が100.0%を占めるが, 石英粒の円磨度は低い。これらは, 風蝕作用が十分には行われていない, 未成熟の砂漠砂である。ナミブ砂漠の1地点の砂漠砂は, 石英が98.5%, 長石は1.0%, 有色鉱物は0%, 岩石砂は0.5%であり, 成熟した砂漠砂である。ナミブ砂漠の他の1地点の砂漠砂は, 石英が58.9%, 長石は16.5%, 有色鉱物は13.1%, 岩石砂は11.5%であり, 未成熟の砂漠砂である。
著者
佐久間 寛
出版者
日本アフリカ学会
雑誌
アフリカ研究 (ISSN:00654140)
巻号頁・発行日
vol.2018, no.94, pp.21-33, 2018-12-31 (Released:2019-12-31)
参考文献数
37
被引用文献数
1

本特集は,アフリカの脱植民地化に影響を及ぼしたことで知られる黒人文化総合誌『プレザンス・アフリケーヌ』創刊70周年に前後して同誌の共同研究を進めてきた文学・文化人類学の専門家による研究成果の集成である。『プレザンス・アフリケーヌ』誌は,A.セゼールやL.S.サンゴールといったカリブ・アフリカ出身の文化人にとってかけがえのない創作の場であったばかりでなく,政治,経済,歴史,教育等の専門家が集う学術分野を超えた集団討議の場でもあった。主要言語はフランス語であるが,英語圏からの執筆者もおおく,スペイン語やポルトガル語による作品も掲載された。また同誌は黒人のみに開かれていたわけではなく,創刊にはJ.-P.サルトルやA.ジッドといったフランスの白人知識人が参加した。またプレザンス・アフリケーヌは,アフリカ系知識人の作品を送りだしてきた出版社でもあり,第1回黒人作家芸術家会議をはじめとする歴史的イベントを組織した事業体でもある。序論である本稿では,言論媒体であると同時に多種多様な人々の交流と混淆を促す運動そのものでもあったプレザンス・アフリケーヌの相貌を概観し,この文化複合体を研究することの今日的意義を明らかにする。
著者
日野 舜也
出版者
日本アフリカ学会
雑誌
アフリカ研究 (ISSN:00654140)
巻号頁・発行日
vol.2015, no.86, pp.45-47, 2015-01-31 (Released:2015-05-21)
被引用文献数
2
著者
苅谷 康太
出版者
日本アフリカ学会
雑誌
アフリカ研究 (ISSN:00654140)
巻号頁・発行日
vol.2016, no.89, pp.1-13, 2016

19世紀初頭,現在のナイジェリア北部一帯に相当するハウサランドにおいて大規模な軍事ジハードが開始された。このジハードは,数年のうちに次々と同地のハウサ諸王権を圧倒し,一般にソコト・カリフ国と呼ばれる,イスラームを統治の基盤に据えた国家の建設を実現した。ジハードと国家建設の中心にいたイスラーム知識人ウスマーン・ブン・フーディー(1817年歿)は,複数の著作の中で,ハウサランドもしくはスーダーンに住む人々を信仰の様態に基づいて分類し,更に,その分類において不信仰者と見做した人々の捕虜・奴隷化に関する規定を論じている。本稿では,国家の基盤建設期にあたる1808年以降のウスマーンが,ウラマーの多くが認めていない法学的見解に依拠することを容認する「寛容の思想」を導入し,上述の信仰の様態に基づく人間の分類を操作することによって,捕虜・奴隷化し得る不信仰者の範疇を如何に拡大したのかを明らかにし,更に,その背景に如何なる理由が存在したのかを考察する。
著者
村尾 るみこ
出版者
Japan Association for African Studies
雑誌
アフリカ研究 (ISSN:00654140)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.69, pp.31-43, 2006-12-31 (Released:2010-04-30)
参考文献数
33
被引用文献数
2

アフリカの主要な作物であるキャッサバ (Manihot esculenta) は, 様ざまな環境で生育するため広域で栽培されている。本稿では, カラハリサンドという砂土が堆積するザンビア西部のキャッサバ栽培を取り上げ, 乾燥した環境でのキャッサバ栽培の特徴を例示することを目的とした。ザンビア西部でキャッサバを栽培するのは, アンゴラから移住してきた人びと (移住民) である。移住民はカラハリ・ウッドランドのみに焼畑を造成してキャッサバを栽培し, 一年を通して自給と販売に利用する。ここでのキャッサバ栽培の特徴は, 周年収穫するために複数の畑をもち, 各畑で生育段階の異なるキャッサバを栽培することや畑を放棄するまで16年と長期間連作することである。また長い良質の種茎を植えるのも特徴的で, これはキャッサバの耐乾性のメカニズムと深く関係している。さらに注目すべきは, 耐乾性に優れる苦味種を選択的に栽培することである。これらの特徴は, 移住民が乾燥した環境で生活を再編するなかで, キャッサバの特徴を品種ごとに見極めながら, 収量を確保しつつ, 栽培の継続と商品価値の高い塊根の生産ができるよう工夫してきた結果でもあるといえよう。
著者
武内 進一
出版者
学術雑誌目次速報データベース由来
雑誌
アフリカ研究 (ISSN:00654140)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.41-59, 2001

ダイヤモンド原石の取引とアフリカの紛争をめぐる「紛争ダイヤモンド」問題は, 近年国際社会が熱心に議論するグローバル・イシューとなった。この問題は2000年になって急速に顕在化し, 年末には国連総会において全会一致で加盟国に取り組みを求める決議が採択された。国連の報告書やNGOの運動によって国際世論が盛り上がり, シエラレオネ問題の解決を進めたいイギリス政府, あるいは消費者運動を恐れる業界や生産国が取り組みに加わったことなどがその理由である。しかし, 現在の「紛争ダイヤモンド」をめぐる議論では, ダイヤモンドとアフリカの紛争をめぐる問題が部分的にしか扱われていない。そこではアンゴラとシエラレオネにおける反政府勢力の活動を抑えることに主眼が置かれているが, コンゴのように状況が複雑な地域に対する取り組みは遅れている。さらに, ダイヤモンドを武器購入や民間軍事会社への支払いに充当するアフリカ各国政府の行動については, 深刻な問題を内包するにもかかわらず, ほとんど議論されていない。「紛争ダイヤモンド」問題が, 脆弱な国家における公的な資源の管理・開発という論点と繋がっていることを忘れるべきではない。