1 0 0 0 OA 麻酔薬の代謝

著者
菊地 博達
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.10, no.5, pp.417-426, 1990-09-15 (Released:2008-12-11)
参考文献数
22
著者
那須 倫範 吉田 仁 山田 正名 荒井 理歩 長岡 治美 片岡 久嗣
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.327-330, 2017-05-15 (Released:2017-06-17)
参考文献数
5
被引用文献数
1 1

症例は52歳,女性.原発性左上葉肺癌の診断で胸腔鏡下左肺上葉切除術が予定された.35Frの左用ダブルルーメンチューブ(DLT)を用いた気管挿管操作に難渋することはなかった.術中の片肺換気は異常を認めず,バイタルサインも落ち着いていたが,肺切除後にリークテストを行ったところ縦隔より気漏があり,DLTにより左主気管支膜様部損傷が生じていることが判明した.開胸直視下に修復術が行われ,術後経過は良好であった.DLTを用いる際には,気管・気管支損傷を起こしうることを認識する必要がある.
著者
佐野 秀樹 坂梨 真木子 森下 真至
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.227-231, 2022-05-15 (Released:2022-07-13)
参考文献数
14

Pericapsular nerve group block(PENGブロック)と外側大腿皮神経ブロックにより,良好な鎮痛が得られた肝硬変合併患者の人工股関節置換術を経験した.症例は49歳男性.Child-Pugh分類Cのアルコール性肝硬変と診断されていたが両側股関節痛のため整形外科を受診,両大腿骨骨頭壊死と診断され右人工股関節置換術が予定された.全身麻酔にPENGブロック,外側大腿皮神経ブロックを併用し,良好な鎮痛,術後経過を得た.3カ月後に同様の麻酔にて左人工股関節置換術が施行されたが,経過は良好で術後3カ月で退院となった.
著者
藤原 祥裕
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.37, no.7, pp.844-851, 2017-11-15 (Released:2018-01-24)
参考文献数
1
被引用文献数
2

日本の周術期医療はマンパワー不足に悩んできたにもかかわらず,社会の医療に対する要求は高まるばかりである.こうした状況の中,周術期医療の質の向上と効率化を両立するためにはチーム医療による適材適所な人材配置が欠かせない.愛知医科大学病院では現在4名の周術期診療看護師が周術期医療に従事している.彼らは診療の補助として,麻酔科医の指示のもと術中麻酔管理,術後集中治療管理に当たっている.彼らは単に麻酔科医不足を解消するだけでなく,現場のコミュニケーションを円滑にし,当院周術期医療の質の向上と効率化に大きく貢献している.今後,周術期診療看護師は日本の周術期医療を大きく前進させる鍵になると考える.
著者
石村 博史 綾部 仁士 山内 康太 谷口 英喜
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.212-227, 2013 (Released:2013-05-16)
参考文献数
22
被引用文献数
1 1

術後回復強化を目指して取り組んできた術中胸部硬膜外麻酔・術後持続胸部硬膜外鎮痛併用下での早期リハビリテーション(以下,リハビリ)における結果を検討した.術後の不穏・譫妄が上腹部開腹術では有意に抑止され,術後2週間目での体重減少率が胃全摘術において有意に抑止された.また,術後1日目からの経口摂取が,腸管虚血後再灌流障害を伴う肝切除術では促進される可能性が示唆された.一方で術後血圧低下・起立性低血圧はリハビリを阻害する要因である.重大な手術侵襲に伴う全身的な炎症反応がこれらの血圧低下を招く可能性があり,メチルプレドニゾロンをはじめ各種のタンパク分解酵素阻害薬等による炎症反応への介入が循環動態を安定させリハビリを促進する可能性が示唆された.
著者
谷口 英喜 佐々木 俊郎 藤田 久栄
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.29, no.7, pp.815-823, 2009-11-13 (Released:2009-12-17)
参考文献数
13
被引用文献数
2 2

経口補水療法 (oral rehydration therapy: ORT) を術前体液管理に活用し, 全身麻酔20例で経口補水液の安全性・有効性と患者評価に関して予備研究を行った. 本研究では誤嚥あるいは嘔吐発現例は1例も認めなかった. 経口補水液の摂取により, 電解質・ブドウ糖の補給効果および腎血流量を反映するナトリウム分画排泄値の増加を確認し補水効果も認めた. その後, 使用実績調査 (12ヵ月間, 全身麻酔1,078例) を行い安全性に関する検討を加えた. その結果, 本来経口補水療法の適応でない胃排泄遅延の可能性が高い1例 (0.09%) の麻酔導入時に少量嘔吐を認めたが, 誤嚥は認めなかった. 術前経口補水療法は適応を厳守すれば安全で有用な術前体液管理方法であると考えられた.
著者
浅井 隆
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.440-449, 2011 (Released:2011-06-28)
参考文献数
24

過去には気管チューブによる気道粘膜壊死や気管狭窄などの重篤な合併症が起こることが比較的多くあった.現在においても,麻酔導入後の換気困難の最大の原因は繰り返した気管挿管処置であるとされている.また,気道確保が容易な症例においても喉頭損傷などは無視できない頻度で起こっている.これらのことから,気管挿管が困難か困難でないかにかかわらず,侵襲の小さなカフと先端を持つチューブで,挿管成功率の高いものを使用すべき,だと言える.スパイラルチューブ,パーカーチューブ,挿管用ラリンジアルマスク用チューブなどがこれらの条件を満たすと思われるため,これらのチューブを積極的に使用すべきだと思われる.
著者
角倉 弘行
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.152-158, 2008 (Released:2008-02-16)
参考文献数
6

硬膜外麻酔による無痛分娩を安全確実に行うためには, 十分な初期鎮痛が達成されるまで初期投与を行った後に, 児を娩出するまで必要に応じて追加投与を行う必要がある. 持続投与 (continuous epidural infusion: CEI) と患者自己疼痛管理 (patient controlled epidural analgesia: PCEA) による硬膜外追加投与は, 局所麻酔薬の総使用量を減少させると同時に, より良い鎮痛を提供することを可能にし, 無痛分娩の安全性と快適性を大きく向上させた. 本稿ではCEIとPCEAの比較を行うが, いずれの方法を選択するにしても, 麻酔科医が産婦のもとを頻回に訪れ, 鎮痛の状況を確認し適切に対応すべきである.
著者
溝部 俊樹
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 = The Journal of Japan Society for Clinical Anesthesia (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.362-373, 2006-07-14

高校生がもっている麻酔科医像はテレビや漫画などの メディアによってつくられ, われわれ専門家の言葉は残念ながら彼らにはほとんど届いていない. <br>  『白い巨塔』が書かれた時代 (1963年) には, 麻酔科医は物語に登場することさえなかったが, 徐々に麻酔科医が メディアに登場することが増えて, 仕事の内容はともかく知名度は向上している. しかし, メディアが麻酔事故のみを医療過誤として報道する時代が長く続いたため, 麻酔科医は常に麻酔事故とセットになって描かれ, ネガティブなイメージが広まってしまった. しかし, 今では麻酔科医の仕事が高校生にも理解され始め, メディアにおいて正確で客観的な描写もみられるようになり, 高校生が麻酔科医を正しく理解する基盤が整いつつある.
著者
米井 昭智
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 = The Journal of Japan Society for Clinical Anesthesia (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.427-432, 2009-07-15

術前診察と術後回診を効率的に行うことは麻酔科医の過重労働を軽減するために必要と考えられる. われわれは麻酔説明用のアニメーションビデオを業者と共同開発した. 2008年10月より, 手術予定の患者・家族に麻酔科外来にて医師の診察が始まる直前にビデオを鑑賞してもらうことを開始した. これにより医師の説明時間が短縮し, 患者・家族の理解が促進されたと考えられる. 一方, 術後回診の効率化はいまだ課題として残っている.
著者
安達 真梨子 近藤 弘晃 藤田 那恵 日向 俊輔 奥富 俊之
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.437-442, 2021-09-15 (Released:2021-11-05)
参考文献数
10

われわれの施設では帝王切開術における脊髄くも膜下麻酔後低血圧を予防する目的でフェニレフリン持続投与を行っている.今回,持続投与を行っていなかった期間と比較して,その影響を後方視的に検討した.フェニレフリンの持続投与は麻酔施行直後より1mg/hで開始し,必要時に昇圧薬のボーラス投与を行った.フェニレフリン1mg/hの予防的持続投与は,麻酔後低血圧の発生率や追加治療介入の必要性を有意に減少させた.また,持続投与を行わなかった場合と比較して反応性の高血圧や徐脈などの発生頻度を増加させることなく使用できた.
著者
飯島 毅彦
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.139-144, 2014 (Released:2014-02-26)
参考文献数
8
被引用文献数
1 2

日本国内8大学で測定された手術患者の循環血液量は82.3±14.8ml/kgであった.ばらつきは大きく,約50ml/kg~100ml/kgであり,個体差が大きい.この測定値はいわば静的循環血液量である.一方,SVV(stroke volume variation)のような動脈圧の揺らぎから推定される循環血液量は,静的循環血液量とは異なるものである.例えば血管収縮薬を使用すれば静的循環血液量は変化しなくとも静脈還流量は増え,SVVから推定される循環血液量の不足は是正される.動脈圧波形から推定される「循環血液量」はいわば動的循環血液量であり,静脈還流量にほかならない.この指標を静的な循環血液量と混同し,容量負荷のみで対応すると大量輸液につながる.この指標を正しく解釈しなければならない.
著者
杉浦 孝広 森 庸介
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.628-631, 2012 (Released:2012-10-11)
参考文献数
6

ペースメーカー(PM)装着患者の増加に伴い,PMを装着した患者が手術を受ける機会が増加している.PM装着患者における麻酔では,患者の安全を守ること,PMの故障に伴う合併症の発生を防ぐことが重要である.術前評価は,PM因子としてPMの①適応,②種類と設定,③依存度を評価し,患者因子として一般術前検査に加えて,心疾患合併の有無を確認する.術前に,電磁干渉の発生や設定変更の必要性を考慮し,一時ペーシングや対外的除細動器を準備してペースメーカー不全に備えることが,適切な術中管理を行う上で大切である.すなわち,系統だった術前評価と準備を行い,重篤な合併症の発生を未然に防ぐ必要がある.
著者
野間 研一 村川 和重 石本 栄作 石田 克浩 石田 博厚 和泉 良平
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.236-240, 1991-03-15 (Released:2008-12-11)
参考文献数
4

Ramsay Hunt症候群は,顔面神経麻痺,内耳神経症状,外耳道,耳介周辺部の疱疹を三兆候としているが,帯状疱疹と顔面神経麻痺出現の時期についての詳細な報告は見当たらない.我々は,ウイルス性髄膜炎を併発した,三叉神経第2枝帯状疱疹例に対し,早期より抗ウイルス剤の投与および神経ブロック療法を施行し,順調に経過していたにもかかわらず,発症3週間後に遅発性顔面神経麻痺を生じた症例を経験した.顔面神経麻痺出現時には,すでに皮疹および疼痛はほぼ消失しており,VZV感染と顔面神経麻痺の因果関係は明確にできなかった.また,従来は,Ramsay Hunt症候群の治療として抗ウイルス剤の投与や星状神経節ブロックが施行されているが,今回の症例では,顔面神経麻痺出現前より,これらの治療を行なっていたが,その出現を防止できなかった.
著者
仙頭 佳起
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.337-345, 2017-05-15 (Released:2017-06-17)
参考文献数
26

周術期管理において,術後患者の全身状態を安定化させるPostanesthesia Care Unit (PACU)が果たしうる役割を再考した.PACUに期待される機能は,術後安全性の向上,患者満足度の向上,手術室の効率的運用への寄与であり,その効果を検証することが求められている.本邦ではPACUを運営する施設が16.1%と少ないが,運営しない施設の60.0%でその必要性を感じており,場所や人員の確保に関する対策が求められると同時に日本に合った形のPACUについても検討すべきである.PACU運営の実際や効果検証の進捗に触れながら,今後の展望について解説した.
著者
松田 直之
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.613-619, 2019-09-15 (Released:2019-10-29)
参考文献数
11

小児に静脈麻酔薬プロポフォールを使用することが適切かどうかについて,日本臨床麻酔学会第38回大会Pros & Consにおいて討議した.2014年2月,頸部リンパ管腫の摘出手術を受けた2歳男児が,集中治療室における術後管理の3日後にpropofol infusion syndrome(PRIS)として死亡した事例がある.小児に対するプロポフォール使用の注意喚起は,極めて強い.人工呼吸中の小児の集中治療において,プロポフォールの使用は禁忌である.その一方で,成人においてもPRISの報告は認められ,PRISの予防策を,麻酔科学,薬理学および病態学の視点より十分に理解する必要がある.成人の集中治療における人工呼吸管理では,プロポフォール1%注射剤の持続投与中の急速静脈内投与に注意が必要である.プロポフォールや溶剤である脂質は,塞栓症やミトコンドリア障害の危険性があり,これらの血中濃度と投与期間に注意が必要である.しかし,プロポフォール事例は私たちの静脈薬を用いた診療における氷山の一角にすぎない.プロポフォールに限らず,麻酔・集中治療領域で使用する多くの静脈薬について,私たちの科学的理解に加えて,使用説明書等の十分な再検討と,適切な改定が必要とされる.
著者
伊加 真士 清水 一好 川出 健嗣 金澤 伴幸 西谷 恭子 森松 博史
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.1-6, 2016-01-15 (Released:2016-02-12)
参考文献数
9
被引用文献数
2 3

スガマデクスは安全・迅速にロクロニウムを拮抗できる薬剤として広く使用されている.今回われわれは筋弛緩モニターを使用し,投与基準どおりにスガマデクスを使用したにもかかわらず,術後に再クラーレ化が疑われた症例を経験した.症例は78歳の男性で,胃癌に対し腹腔鏡下幽門側胃切除術が施行された.術中およびスガマデクス投与前にTOFウォッチを使用し,TOFカウント2を確認後,スガマデクスを3.6mg/kg投与し抜管した.その約70分後に著明な酸素化の悪化と四肢の体動低下を認め,ネオスチグミン投与により酸素化・体動の改善を得た.投与基準どおりのスガマデクス使用でも再クラーレ化の可能性は否定できないため,抜管後の厳重な呼吸の観察が重要である.