著者
與儀 喜代政 江原 昭三 比嘉 良次 添盛 浩 新城 朝榮
出版者
The Association for Plant Protection of Kyushu
雑誌
九州病害虫研究会報 (ISSN:03856410)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.109-112, 1999
被引用文献数
1

トウヨウハダニは1998年8月国内で初めて沖縄本島のパパイヤから見いだされた。本種は熱帯・亜熱帯地方に分布し,海外ではカンキツ類をはじめ,極めて多種類の寄主植物が知られている。そこで1998年8月~1999年3月に沖縄県における本種の寄主植物および分布調査を行った。<BR>1.本県においてトウヨウハダニはパパイヤやシイクワシャーなどの栽培植物を含む14科31種の植物に発生が認められた(第1表)。<BR>2.そのうち発生程度が高い植物はアオギリ,クチナシ,インドソケイ,イヌビワ,オオバイヌビワ,パパイヤ,トックリキワタ,デイゴ,マルバディゴ,ムラサキソシンカ,ナンバンサイカチ,タイワンクズであった。<BR>3.発生程度の高い植物は本種の発生源になりうるので,パパイヤ圃場周辺には植栽しないことが望ましい。また,これらは本種を採集する際の目安としてや,研究等の目的で飼育する際の餌として利用可能と考えられる。<BR>4.分布については,沖縄本島,津堅島,宮古島で本種の発生が認められ,久米島,石垣島,与那国島では認められなかった(第1図)。<BR>5.既発生地からの寄主植物の移動の際は,寄生の有無に留意し,本種の分布拡大を防止する必要がある。<BR>6.本県において今回示した寄主植物以外にも本種が寄生・加害している可能性があるので,他の植物においても,今後注意を払う必要がある。
著者
岡崎 真一郎 玉嶋 勝範 雨川 公洋 桃下 光敏 高木 正見
出版者
九州病害虫研究会
巻号頁・発行日
vol.58, pp.66-72, 2012 (Released:2013-07-12)

2010年および2011年の5月下旬~6月上旬に,大分県の夏秋ピーマン現地施設で,アザミウマ類およびタバココナジラミの防除を目的にスワルスキーカブリダニを10a当たり50,000頭放飼した。本天敵は,1回の放飼で定着し,120日後まで生息が確認された。8月中旬以降,無放飼区のミカンキイロアザミウマ成虫密度が,1.6~3.8頭/花と高くなったのに対し,放飼区は0~0.1頭/花と低かった。無放飼区のタバココナジラミ成虫と老齢幼虫密度は,2.2頭/3葉以上となったのに対し,放飼区は0~0.2頭/3葉と低く,本天敵の2種害虫に対する密度抑制効果が認められた。一方,放飼区と無放飼区でヒラズハナアザミウマ成虫の発生推移に差はなく,密度抑制効果は認められなかった。また,ピーマンうどんこ病対策として,5~8月に4回,10a当たり3kgの硫黄粉剤を畝上散布したが,本天敵の生息密度に影響は認められず,両資材は併用可能であることが明らかとなった。
著者
坂元 志帆 坂巻 祥孝 大迫 昭平 津田 勝男
出版者
九州病害虫研究会
雑誌
九州病害虫研究会報 (ISSN:03856410)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.59-65, 2012 (Released:2013-03-27)
参考文献数
9
被引用文献数
1 2

We examined the effects of trichomes and the glandular trichome exudate on the survival of the predatory mite Amblyseius swirskii on young potted tomato plants. Removing the trichomes from the plant surface increased the survival rate from 0.8% (untreated plants) to 12.2% and decreased the mortality on plants from 63.3% ( untreated plants)to 0%. Almost all of the dead mites on untreated plants were observed adhering to the sticky secretions from trichome glands. To evaluate the toxicity of the secretions, we tested the effects of its main components (2-tridecanon and 2-undecanon) on A. swirskii by exposing mites to these chemicals for 48 h. All mites survived treatments with either of the chemical concentrations alone or a blend of these two chemicals. These results suggest that the main cause of the mortality of A. swirskii on tomatoes is not the toxicity of the secretions, but rather adhesion to the sticky secretions from the glandular trichomes.
著者
野中 福次 原 学
出版者
九州病害虫研究会
雑誌
九州病害虫研究会報 (ISSN:03856410)
巻号頁・発行日
no.21, pp.126-128, 1975

1. エンドウ胚軸を10<SUP>-4</SUP>M HgCl<SUB>2</SUB>に浸漬することによりpisatinの生成が認められ,その生成量は浸漬して48時間後に最高に達した。この胚軸から抽出した粗pisatinはF. solani f. sp. pisiの胞子発芽管の伸長を強く阻害した。<BR>2. エンドウ胚軸を数種の殺菌剤に浸漬した場合,カスミン液剤,サンヨール乳剤,ベンレート水和剤およびサンケル水和剤でpisatinの生成が認められた。
著者
武政 彰 繁田 ゆかり
出版者
九州病害虫研究会
雑誌
九州病害虫研究会報 (ISSN:03856410)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.146-151, 2009 (Released:2010-03-02)
参考文献数
11
被引用文献数
1

小ネギの害虫であるネギハモグリバエについて,宇佐市および中津市で採取した個体群を供試し,薬剤の殺虫効果を調査した。その結果,シペルメトリン乳剤,シロマジン液剤およびスピノサド水和剤などが,両個体群に対して有効であることが判明した。両個体群で殺虫率に差異がみられる薬剤も認められた。防除適期については,薬剤処理時期が早いほど殺虫率が高くなる傾向が認められた。本種の防除は,加害初期に行うことが重要であると考えられる。ただし,シペルメトリン乳剤およびスピノサド水和剤は,幼虫の潜孔がみられる時期でも殺虫効果が高かった。また,アジュバントあるいは,スプレッダーのポリオキシエチレンメチルポリシロキサン加用により,殺虫効果が高くなった。
著者
繁田 ゆかり 岡崎 真一郎
出版者
九州病害虫研究会
雑誌
九州病害虫研究会報 (ISSN:03856410)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.77-81, 2007-11-10 (Released:2009-05-22)
参考文献数
6
被引用文献数
3 1

小ネギにおけるネギハモグリバエに対する被害軽減効果が得られる各種防虫ネットの目合い(0.4mm,0.8mm,1.0mm)について,室内および現地小ネギハウスで調査した。また,ハウス内気象も併せて検討した。その結果,いずれの目合いについても,高い被害軽減効果が認められ,効果は目合いが細かくなるほど高くなった。しかし,0.4mm目合いではハウス内の温度が夏場の最盛期には50℃を超えたことから,生産者の作業性および小ネギに与える品質等を併せて考慮すると,実用的には0.8mm目合いのネットが最も有効と考えられた。そこで,2004年,2005年の2カ年にわたり,現地において0.8mm目合いを用い,ハウス開口部に被覆し,被害株推移を調査した。その結果,いずれの年も0.8mm目合いの防虫ネット被覆で被害株数は低く推移し,収穫期での被害株数は防虫ネットを被覆しないハウスと比較して有意に低く,被害抑制効果が認められた。
著者
富永 晃好 手柴 真弓
出版者
九州病害虫研究会
雑誌
九州病害虫研究会報 (ISSN:03856410)
巻号頁・発行日
vol.64, pp.61-67, 2018-11-28 (Released:2019-06-01)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

Comstockaspis perniciosa is a pest that injures Japanese pear, citrus, and other economically important fruit trees. The addition of 1,000-fold diluted buprofezin to 150-fold diluted machine oil suppressed the density of the next generation of C. perniciosa. Additionally, buprofezin added to sodium dioctyl sulfosuccinate and polyoxyethylene alkyl ether showed a higher control effect on C. perniciosa than buprofezin alone or when added to machine oil. Generally, C. perniciosa is treated with pesticides during the hatching peak period at the end of May to effectively control outbreaks. If it is treated 2 weeks earlier, then buprofezin can suppress the density of hatchlings and a higher effect occurs with the addition of a paraffin-spreading agent.
著者
高須 啓志 広瀬 義躬
出版者
The Association for Plant Protection of Kyushu
雑誌
九州病害虫研究会報 (ISSN:03856410)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.127-131, 1985
被引用文献数
37

福岡市で一つの圃場に夏ダイズと秋ダイズを栽培し,7月下旬より10月中旬まで,ダイズ加害性カメムシ類の卵寄生蜂の種類とその寄生消長について調査を行った。このダイズ圃場で成虫と卵がともに観察されたカメムシは,ホソヘリカメムシ,イチモンジカメムシ,マルシラホシカメムシ,マルカメムシの4種であった。寄生が確認された卵寄生蜂は,上記4種のカメムシに寄生していたカメムシタマゴトビコバチ,イチモンジカメムシとマルシラホシカメムシに寄生していたTetenomus sp.,ホソヘリカメムシとイチモンジカメムシに寄生していたOcencyrtus sp.,ホソヘリカメムシにのみ寄生していたヘリカメクロタマゴバチの4種であった。カメムシタマゴトビコバチとTelenomus.sp.は7月下旬から10月上旬まで連続してダイズ圃場で寄生活動がみられたが,これは同じ圃場で寄主がその構成種は異ってもほぼ連続的に存在するため,蜂が数世代を繰り返し繁殖したと考えられる。しかし,ヘリカメクロタマゴバチとOcencyrtus sp.は7月下旬から8月上旬と8月下旬の短期間のみ寄生が認められ,この圃場で数世代にわたる繁殖は行われなかった。
著者
和田 節 水谷 信夫 樋口 博也
出版者
The Association for Plant Protection of Kyushu
雑誌
九州病害虫研究会報 (ISSN:03856410)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.82-85, 1997
被引用文献数
5

We compared the activity of mating behavior in male adults of the bean bug, Rip-tortus clavatus THUNBERG, of various ages, reared under different photoperiodic conditions in the laboratory, and also investigated the pheromone releasing activity of males using male-baited sticky traps set in the field. Most males kept under long-day photoperiod in the laboratory reached sexual maturation and were able to successfully copulate with mature females within several days after eclosion. Pheromone release by males kept in the laboratory under long-day photoperiod appeared to be initiated simul-taneously or a bit later than sexual maturity, according to the daily-catch records by the traps baited with young male adults. Male adults kept under short-day photoperiod in the laboratory did not show mating behavior, indicating that both males and females were induced to enter reproductive diapause by short-day length. On the other hand, when adults were reared under short-day photoperiod, the males enclosed in the trap cages attracted significant numbers of adults in field, indicating that the short-day males released an aggregation pheromone. These results imply that the function of the pheromone is not directly related to mating behavior, and thus, another function should be investigated in future.
著者
喜久村 智子 貴島 圭介
出版者
九州病害虫研究会
雑誌
九州病害虫研究会報 (ISSN:03856410)
巻号頁・発行日
vol.65, pp.71-74, 2019-11-30 (Released:2020-06-10)
参考文献数
14

We evaluated the effects of seven granular insecticides on the population density of Thrips nigropilosus Uzel occurred on chrysanthemum cultivated in a greenhouse. In our study, acephate, carbosulfan(organophosphate), benfuracarb(carbamate), acetamiprid, clothianidin, imidacloprid, and nitenpyram(neonicotinoid) were applied to the soil at the recommended dose(0.3 g, 1.0 g, or 2.0 g / plant) immediately after planting. The number of the thrips on chrysanthemum was investigated on 0, 6, 13, 20, 27, 33, and 41 days after applications. Our results indicated that all the seven insecticides were effective against T. nigropilosus though efficacy and its duration were significantly different among insecticides. Benfuracarb was shown to be the most effective insecticide for suppressing the density of the thrips.
著者
貴島 圭介 普天間 斎 喜久村 智子 大野 豪 熊野 了州
出版者
九州病害虫研究会
雑誌
九州病害虫研究会報 (ISSN:03856410)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.64-71, 2013-11-29 (Released:2015-10-14)
参考文献数
16

園芸作物の施設側面の防虫ネットへのマシン油乳剤噴霧による,施設内へのタバココナジラミ成虫の侵入防止効果を検討した。室内試験において,本種成虫の目合い1mmの防虫ネットの通過率は85%以上であったのに対し,同防虫ネットに100倍および2倍希釈のマシン油乳剤を噴霧した場合,通過率はそれぞれ15.7% と0%であり,顕著な通過防止効果が認められた。野外の施設において,同防虫ネットに2倍希釈のマシン油乳剤を処理した区としない区を設け,施設内のキュウリ葉上におけるタバココナジラミ成虫の密度を調査した結果,調査期間を通して処理区の虫数は無処理区の4分の1程度に抑えられ,マシン油乳剤処理の侵入防止効果が認められた。以上の結果から,目合い1mmの防虫ネットへの2倍希釈のマシン油乳剤噴霧処理はタバココナジラミの侵入防止に効果的であると考えられた。
著者
寺本 敏 山本 栄一 野中 耕次 黒木 修一
出版者
九州病害虫研究会
雑誌
九州病害虫研究会報 (ISSN:03856410)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.170-175, 1992-10-30 (Released:2009-05-22)
参考文献数
1
被引用文献数
1 1

1.果樹を加害するツヤアオカメムシおよびチャバネアオカメムシの後期(8~11月)発生量の長期予察を目的として,各種気象データ,4~7月の予察灯誘数データから8~11月の予察灯誘殺数を求める予察式を重回帰分析により作成した。2.得られた重回帰式のうち,過去のデータに対する適合性が優れ,早期に予測値を得ることができる最良モデルの説明変数には,両種カメムシとも前年夏期および当年春~夏期の気象要因(平均気温,日照時間)が含まれ,さらにツヤアオカメムシには4~7月の予察灯誘殺数が含まれた。3.最良モデルの予測性を両種で比較した場合,チャバネアオカメムシの適合度がやや劣ったが,ツヤアオカメムシでは,6月末の比較的早い時期での予期予察の可能性が示唆された。4.重回帰分析の結果から,2種カメムシの多発被害をもたらす気象要因として,前年夏期(6一一8月)が高温で日照時間が多く,当年春~夏期(3~6月)が高温で日照時間の少ないこと,さらに当年7月下旬以降10月中旬頃までに台風の影響を強く受けることが想定され,前者は本種個体群の増殖に好影響を与え,後者は成虫の飛翔行動を誘起するものと推察された。
著者
村上 昭人 外間 数男
出版者
九州病害虫研究会
雑誌
九州病害虫研究会報 (ISSN:03856410)
巻号頁・発行日
no.46, pp.98-100, 2000

沖縄本島におけるミズイモでのオキナワイナゴモドキの発生消長と被害状況を調査した。<BR>1)本種の被害発生圃場率は76.1%で,各地域における被害葉率は4.8~49.2%であった。また被害の全くみられない地点もあった。<BR>2)本種による被害は,3月頃より認められ,8月以降急増し,9月に最も高くなった。その後,被害は急速に減少し,1~2月には認められなかった。<BR>3)本種の産卵穴は4月から認められ,被害葉率が最も高くなる9月には,被産卵葉柄率も最も高くなった。<BR>4)本種は成虫が3月頃,幼虫が5月頃より認められ,幼虫は8月に,成虫は10月に最も多くなった。また成虫が12~3月にかけて葉鞘の隙間で越冬して<BR>いることが確認された。
著者
森 秀太 衞藤 友紀 徳田 誠
出版者
九州病害虫研究会
雑誌
九州病害虫研究会報 (ISSN:03856410)
巻号頁・発行日
vol.64, pp.41-46, 2018-11-28 (Released:2019-06-01)
参考文献数
22
被引用文献数
2

Thrips tabaci (Thysanoptera: Thripidae) is a major pest of asparagus in Saga Prefecture. We evaluated the effectiveness of Nesidiocoris tenuis( Hemiptera: Miridae), a biological control agent against T. tabaci, using banker plants in greenhouse asparagus. We examined effects of food (eggs of Ephestia kuehniella or fresh shoots of Sesamum indicum and Cleome hassleriana) in the nymphal stage of N. tenuis on the feeding amount of T. tabaci in the laboratory. The experiment revealed that nymphal food did not affect the number of T. tabaci fed on by N. tenuis. Then we prepared small greenhouses with four asparagus plants and released 50 individuals of T. tabaci and a pair of N. tenuis adults. The release of N. tenuis had a significant negative effect on T. tabaci density on asparagus, but T. tabaci population gradually increased from early August to late October. When either S. indicum, C. hassleriana, or Verbena × hybrida ‘Tapian’ was planted adjacent to asparagus as banker plants, N. tenuis kept the density of T. tabaci at low levels throughout the experiment. These suggest that the use of N. tenuis together with banker plants is effective to control T. tabaci populations in greenhouse asparagus.