著者
長浜 正照 禧久 保 河野 通昭 土持 武男
出版者
九州病害虫研究会
雑誌
九州病害虫研究会報 (ISSN:03856410)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.62-64, 1981

1. 無機銅剤(コサイド水和剤)のかいよう病菌増殖抑制には8,000倍(Cu67.5ppm)以上,発生抑制には4,000倍(Cu135ppm)以上の濃度が必要である。<BR>2. かいよう病の防除効果,銅薬害軽減のかねあいから適正使用濃度はコサイド水和剤3,000倍+クレフノン300倍と考えられる。<BR>3. コサイド水和剤3,000倍+クレフノン200倍または300倍にラビサンスプレー200倍を加用すると,かいよう病,黄斑病に対する防除効果助長が期待できる。<BR>4. コサイド水和剤2,000倍+クレフノン200倍にラビサンスプレー200倍を加用することによって耐雨性が強化され,散布された葉上の銅成分の流亡防止に働くので,防除効果の助長につながるものと考えられる。
著者
橋元 祥一 河野 通昭
出版者
九州病害虫研究会
雑誌
九州病害虫研究会報 (ISSN:03856410)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.167-171, 1984
被引用文献数
1

1) ハウス栽培の早生温州に対するマシン油乳剤の実用性を,低粘度タイプのラビサンスプレー油乳剤と非鉱油のKI-30油乳剤を中心に検討した。<BR>2) ミカンハダニに対する密度抑制期間はハウスではラビサンスプレー油乳剤で,30日程度である。<BR>3) 果径が1.0~1.5cmの時期にマシン油乳剤を散布すると,糖度の低下,着色の遅延と果面に薬斑が発生する等の薬害がみられた。<BR>4) ラビサンスプレー油乳剤の場合,炭酸カルシウムを加用すると薬害を軽減できたが,必ずしも十分とは言えなかった。<BR>5) 現在ハウスでマシン油乳剤をあえて実用化する必要はないが,将来ミカンハダニの防除に必要となった場合は,炭酸カルシウム加用の低粘度タイプのマシン油乳剤が無難と思われる。この場合でも,散布条件等に細心の注意を払って,薬害回避を図る必要がある。
著者
井上 興 花田 薫 宮川 久義 館野 宏司
出版者
The Association for Plant Protection of Kyushu
雑誌
九州病害虫研究会報 (ISSN:03856410)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.15-17, 1993

1. 1992年6月に熊本県西合志町九州農業試験場内圃場,周辺雑地からウイルス病症状を呈していると思われたイネ科作物および雑草を採集した。<BR>2. 採集したトウモロコシ11株,ソルガム2株,ジョンソングラス1株,パスパルム1株,ササ1株,メヒシバ5株から得られたウイルスはウイルス粒子の形態やトウモロコシヘモザイク症状をおこす病原性などからSCMVあるいはその一系統であると考えられた。<BR>3. ウエスタンブロット法の結果から,メヒシバからSCMV-B系統に近縁なウイルスが検出された。<BR>4. 生育極初期にトウモロコシがSCMVに罹病すると草丈の伸長がやや劣り,収量に影響することが考えられた。
著者
新崎 千江美 佐藤 豊三 白玉 敬子 大城 篤 金子 繁
出版者
九州病害虫研究会
雑誌
九州病害虫研究会報 (ISSN:03856410)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.22-24, 2013

沖縄県与那国町で露地栽培中のボタンボウフウにおいて葉の表裏,葉柄に微小な黄斑点を生じ,褐色粉状の胞子が大量に形成され黄化・葉枯に至る病害が発生した。病原菌の夏胞子は淡褐色,単細胞,広楕円形ないし倒卵形で表面に細刺があり,大きさは23~38.5×21~32.5μm であった。冬胞子は褐色2細胞で隔壁部がややくびれ,短棍棒形,長楕円形ないし雪だるま形,大きさは34~51×22~33μm であった。夏胞子の接種により病徴が再現され,夏胞子および冬胞子が形成された。本病原菌とカワラボウフウ属の植物に寄生するさび病菌との形態的比較に基づき,<i>Puccinia jogashimensis </i>と同定した。以上より本病をさび病(新称)とすることを提案する。
著者
森田 昭
出版者
九州病害虫研究会
雑誌
九州病害虫研究会報 (ISSN:03856410)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.63-71, 1991

ビワがんしゅ病の春芽及び各季節葉での発生消長を1970年から1989年まで調査した。春葉の発病率の高低は春芽の発病率の高低と一致した。しかし,夏葉,秋葉,春芽の発病率は前季節葉(芽)の発病率の高低とは関係がなかった。<BR>初発病日を中心とした1か月間の降水量,降雨日数の多少が各季節葉(芽)の発病率の多少に影響していた。2月の平均温度や萌芽期の寒波襲来による寒害が春芽のがんしゅ病芽枯れ病斑発現の重要なる要因である。<BR>ビワ樹体の付傷後の経過時間とがんしゅ病の発病との関係は付傷後多湿状態では8日,乾燥状態では1日で発病率が低下した。多湿状態では枝葉ともに付傷後5日から6日までは感染可能であった。<BR>付傷後5日間の降水量は発病後と密接な関係があり降水量が多いと発病度も高かった。ビワがんしゅ病菌ファージの雨水中での濃度は11月から5月までは高く,6月から10月までは低かった。<BR>がんしゅ病病斑伸展時期はナシヒメシンクイ防除園では5月から6月と9月,ナシヒメシンクイ無防除園では5月から9月までであった。<BR>がんしゅ病の病斑拡大と病斑内のナシヒメシンクイとの関係は病斑内の食入虫数が多いほど発病度が高かった。また,ナシヒメシンクイの虫体表面に病原細菌の付着が認められ,ナシヒメシンクイが病原細菌の伝搬にも関与していると思われた。<BR>以上の結果より,ビワがんしゅ病は降雨,春芽の萌芽時の寒害,秋葉展葉期の台風等の気象要因やナシヒメシンクイの食入等が重要な発病要因であると考えられた。
著者
山田 健一 野田 政春 野口 忠広 熊本 勝己
出版者
九州病害虫研究会
雑誌
九州病害虫研究会報 (ISSN:03856410)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.158-163, 1983-10-30 (Released:2009-05-22)
参考文献数
1
被引用文献数
1 1

1.チャバネアオカメムシの越冬密度を知る方法として,篩法は効率的で精度の高い調査法である。2.南向斜面の常緑広葉樹林では越冬密度が高く調査場所として適している。3.調査時期としては,大部分の個体が落葉中に生息している11月下旬~3月下旬が良い。4.赤褐色の越冬色を呈した個体は10月下旬より見られ始め,11月以降3月下旬まではほとんどが越冬色であった。5.篩法による各地の越冬密度の年次変動と翌春の各種指標植物樹上における寄生量の年次変動とはよく一致した。6.越冬色を呈した成虫を18℃以上の温度条件下に置くと体色が緑色に変化し,特に25℃以上では処理4日目にはほとんどの個体が変色した。7.照明条件は体色の変化には無関係のように思われた。8.篩法でふるった落葉を大型ポリ袋に入れたまま25℃の定温条件下に4~6日置くとほとんどの個体が変色するため,より簡単で精度の高い調査ができる。
著者
小川 哲治 仲川 晃生 大島 一里
出版者
The Association for Plant Protection of Kyushu
雑誌
九州病害虫研究会報 (ISSN:03856410)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.19-25, 2011
被引用文献数
1

鹿児島県の奄美地方でジャガイモ塊茎えそ病の発生が認められ,塊茎えそ症状を示す塊茎を採集した。本塊茎からジャガイモY ウイルス (PVY) をジャガイモ(品種 「根系59号」)を用いて分離後,全ゲノム構造を決定した。本分離株と既に全ゲノム構造が解析されている北海道,長野県,九州地方の長崎県,鹿児島県の徳之島および沖縄県から採集した塊茎えそ分離株 (PVY<SUP>NTN</SUP>分離株) を分子進化的に比較した。その結果,奄美分離株はこれまで我が国で認められた分離株とは異なるゲノム型を示し,ヨーロッパで主に発生しているPVY<SUP>NTN</SUP>分離株の組換え体型と類似していた。
著者
宮原 義雄 寒川 一成
出版者
The Association for Plant Protection of Kyushu
雑誌
九州病害虫研究会報 (ISSN:03856410)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.146-151, 1996
被引用文献数
3

シロオビノメイガ成虫の海外からの飛来を明らかにするため,宮崎県延岡市の畑地で5月から6月にかけ,2種類の寄主植物上で採集調査を行うとともに飛来時の気象解析を行った。<BR>1.成虫は5月中旬以降ごく小数採集されたが,個体数の増加は南九州の梅雨入り以降で,毎年6月20日頃にはほぼその年の最多採集に近い成虫が採集され,それらの3分の2は雌成虫であった。<BR>2.採集雌成虫の交尾率は飛来の始まりから調査期間を通じ,ほぼ100%に近い高い値で,そのほとんどが卵巣成熟個体であった。<BR>3.飛来時の気象条件について850hPa面の気流を調べると,南シナ海方面あるいは中国南部から,東北方向<BR>九州方向に向う気流が認められた。飛来時の後退流跡線から,成虫の飛来源は中国南部および台湾である可能性が指摘された。
著者
田中 章 永島田 義則 原 次夫 池田 和俊 池浦 孫次郎
出版者
九州病害虫研究会
雑誌
九州病害虫研究会報 (ISSN:03856410)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.230-233, 1987-10-30 (Released:2009-05-22)
参考文献数
1
被引用文献数
1

鹿児島県種子島の西11kmの馬毛島(820ha)で1986年9月トノサマバッタが大発生し,幼虫の集団と成虫の群生,群飛行動を観察した。成虫は群を成して11月まで島内を移動し,群飛や摂食,休息,夜間の静止をくりかえした。馬毛島から他の島への移動が心配されたので,MEP3%粉剤を用いて薬剤防除を実施した。幼虫に対しては10月に2回,成虫に対しては12月から1987年1月にかけて4回実施した。
著者
高木 正見 緒方 健
出版者
九州病害虫研究会
雑誌
九州病害虫研究会報 (ISSN:03856410)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.199-201, 1985-10-30 (Released:2009-05-22)
参考文献数
1
被引用文献数
1 1

Saula japonica is a native predator of Unaspis yanonensis in Japan. The seasonal prevalence and spatial distribution of S. japonica on citrus trees were examined in 1984 in an orchard where Coccobius fulvus, an introduced parasitoid of U. yanonensis had been released. The seasonal prevalence of both larvae and adults showed two peaks. The peaks of larvae were well synchronized with those of U. yanonensis, but those of the adults were not synchronized. Abundance of both larvae and adults did not vary with the part of the tree. More larvae and adults were, however, found on the undersurface of leaves as compared with the uppersurface.
著者
兼島 盛吉 山内 昌治 黒住 耐二
出版者
九州病害虫研究会
雑誌
九州病害虫研究会報 (ISSN:03856410)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.110-112, 1987-10-30 (Released:2009-05-22)
参考文献数
1
被引用文献数
3 3

スクミリンゴガイ(Pomacen canaliculata)の稚貝を10℃,15℃,20℃,25℃,30℃,35℃の温度条件で集団及び個体飼育を行ない以下の結果を得た。1. 個体飼育した場合には,35℃で39日間飼育しても死亡貝は認められなかったが,集団で飼育すると33日目の生存率は,26%に低下した。これは,温度による影響ばかりでなく,共喰や本種の代謝による水質の悪化も影響していると考えられた。2. 15℃~30℃の温度範囲における発育速度は飼育温度が高くなるにつれ高くなる傾向を示したが,35℃になると逆に発育速度は低くなった。その結果,発育適温は25~30℃と考えられた。3. 稚貝の発育速度と温度との関係は直線的であることが確認されたので,ふ化直後の貝の体重の2倍および4倍になると推定される日を基準として,発育限界温度を推定したところ,2倍を基準とすると10.6℃,4倍にすると10,1℃となり,10℃で飼育した貝には発育がほとんど認められなかったことと考え合わせると,本種の発育限界温度は10℃前後と考えられた。
著者
坂口 徳光 長浜 正照 禧久 保
出版者
The Association for Plant Protection of Kyushu
雑誌
九州病害虫研究会報 (ISSN:03856410)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.79-83, 1987

カンキツ赤衣病に対し,有効な薬剤を見い出すため各種の試験を行った。<BR>1. 室内試験の結果,バシタック水和剤500倍,ダイホルタン水和剤500倍,ドキリン水和剤500倍,石灰硫黄合剤20倍の効果が認められた。<BR>2. 圃場試験の結果,バシタック水和剤500倍,スパットサイド水和剤500倍の効果が認められ,ダイホルタン水和剤,ドキリン水和剤は劣った。<BR>3. 防除時期策定試験の結果,5月~7月に4回散布するとよいことがわかった。<BR>4. 最近の室内試験の結果,トモオキシラン水和剤,アリエッティC水和剤の効果も認められた。
著者
徳田 誠 湯川 淳一
出版者
九州病害虫研究会
雑誌
九州病害虫研究会報 (ISSN:03856410)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.77-81, 2004-11-10 (Released:2009-05-22)
参考文献数
15
被引用文献数
3 5

日本各地の土耕栽培施設バラにおいて,ハオレ状のゴールを形成するタマバエ科害虫(以下,バラハオレタマバエ)が発生した。本種が土着種か侵入種かを検討するため,終齢幼虫の標本を用いて属の同定を行ったところ,Contarinia属の一種であると判明した。したがって,欧米において栽培バラにハオレ状のゴールを形成する害虫として,古くから知られているRose leaf midge,Dasineura rosae(Bremi)とは,上族レベルで異なる別種であると判明した。また,米国においてバラのハオレ状ゴールから採集されているContarinia sp.とも形態的に異なっており,別種であると判断された。国内で,バラ属植物にハオレ状ゴールを形成するノイバラハオレタマバエ,ハマナスハオレタマバエは,いずれもDasineura属の一種であると同定された。したがって,本研究においては,バラハオレタマバエが侵入種であるか土着種であるかは解明できなかった。本種のより詳細な同定を行うためには,今後,本種が多食性であるという可能性も視野に入れ,国内でバラ属以外の植物を寄主としているContarinia属との比較を行う必要がある。また,外国産の種も含めたContarinia属のより包括的な分類学的研究が必要である。さらに,バラハオレタマバエに対する防除手段を検討するため,本種の発生生態および分布拡大経路に関しても研究を行う必要がある。
著者
村田 麻美 田中 章 末永 博
出版者
The Association for Plant Protection of Kyushu
雑誌
九州病害虫研究会報 (ISSN:03856410)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.132-135, 1992

1990~1991年に鹿児島県溝辺町のキャベツの周年栽培地域において,フェロモントラップによるコナガ成虫誘殺数の調査,およびほ場での幼虫および蛹密度の調査を行った。<BR>(1) 春から初夏にかけては5月~6月に発生のピークがみられ,夏期のキャベツの端境期には,ほとんど発生がみられなくなったが,秋には再び増加し9月~12月まで発生が多かった。<BR>(2) 1991年には,糸状菌によるコナガ幼虫の死亡個体が多数確認され,平均の死亡率は30~40%であった。<BR>(3) コナガの発生密度は,キャベツ周年栽培地域では,多くの環境要因の影響を受けながら変動していると考えられるが,1990,1991年の調査では,春期の密度の急増は,気象の影響が大きく,1991年6月の密度減少は,糸状菌による影響が大きいと考えられた。
著者
後藤 昭
出版者
The Association for Plant Protection of Kyushu
雑誌
九州病害虫研究会報 (ISSN:03856410)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.78-80, 1971
被引用文献数
3

1)熊本県,大分県にまたがる阿蘇九重地区6ヵ町村の調査で,標高650m以上の高原の自然草地9地点,入工草地(耕起造成草地)4地点から得られたネコブセンチュウは,ことごとくキタネコブセンチュウであった。熊本県阿蘇郡小国町の三共牧場における集中調査でも,検出されたネコブセンチュウはすべてキタネコブセンチュウであった。このことは,ネコブセンチュウ数種の分布する,九州の低地の畑地,草地にくらべて特異である。<BR>2)その原因を考察し,気候(温度の)の影響によるものであろうとしたが,なお検討の余地がある。前記の阿蘇九重地区の高原草地の年平均気温は12℃以下である。
著者
福永 求 西岡 稔彦 田中 章
出版者
九州病害虫研究会
雑誌
九州病害虫研究会報 (ISSN:03856410)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.37-41, 2002-11-20 (Released:2009-05-22)
参考文献数
3

1.鹿児島県東串良町の柏原海岸において,1994年頃から発生しているキバナハウチワマメ栽培地の裸地化の原因を調査した。2.裸地化の一要因として,海岸の松林に生息するウサギおよびカラスの食害が明らかになった。特に,ウサギの影響は大きいと考えられた。3.一方,食害が認められないにも関わらず,発芽後~本葉が数枚展開する頃に生育不良となり,地際茎部が褐変して枯死し,裸地化する場合があることも判明した。4.栽培土壌のpH,EC,NH4-N,NO3-Nおよび線虫相を調査した結果,異常値は認められなかったことから,塩害ならびに土壌線虫は裸地化の要因ではないと考えられた。5.クロルピクリンくん蒸剤による土壌消毒および各種殺菌剤の灌注処理でも,裸地化を抑制できなかった。6.キバナハウチワマメの栽培管理と生育良否の関係を調査した結果,土作りを含めた栽培管理の不備が,裸地化の一要因であることが考えられた。
著者
今村 幸久 黒木 尚 野崎 克弘 白木 己歳 上米良 壽誕
出版者
九州病害虫研究会
雑誌
九州病害虫研究会報 (ISSN:03856410)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.32-37, 2011 (Released:2012-03-21)
参考文献数
17
被引用文献数
1 1

焼酎粕加工液の土壌病害抑止効果について,メロンつる割病等の Fusarium 病に絞って,主に土の生物的視点からメカニズム解明のためのポット試験を行った。その結果,抑止効果には焼酎粕加工液の成分の病原菌に対する直接的な影響ではなく,土の中に存在する微生物の関与が推測された。加工液を潅注処理すると土壌の微生物活性が高まるが,微生物活性値と土壌の生菌数および発病抑止効果にはある程度の関連性があることが示唆された。以上の結果から抑止効果のメカニズムの一つは,処理した焼酎粕加工液を増殖源として,ほ場に元々生息する土壌微生物が増殖し,病原菌との競合およびその他の総合的な作用が働くことにより,発病が抑えられると推察された。
著者
田中 章 嶋田 治一 永島田 義則
出版者
九州病害虫研究会
雑誌
九州病害虫研究会報 (ISSN:03856410)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.122-124, 1978-10-10 (Released:2009-05-22)
参考文献数
1

鹿児島県奄美群島の喜界島において,1974年侵入時から1977年の間のウリミバエ雄成虫の誘殺トラップによる個体数変動と生息環境の違いを調査した。1.個体数変動調査では,誘殺数は侵入以来増加の傾向にあり,1977年は50トラップ当り10,000頭以上であった。季節的には一般に秋期に多く,冬期に少なかった。現在の喜界島の高密度は野生寄主オキナワスズメウリに依存しているものと考えられる。2.生息環境調査は,環境を5つに分けて誘殺数を比較した結果,部落内は少なく,孤立した林では多く,その差は26倍であった。このことから,本種の密度推定や抑圧防除を行う上に注意を要することと思われる。
著者
安田 慶次 金城 常雄
出版者
九州病害虫研究会
雑誌
九州病害虫研究会報 (ISSN:03856410)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.89-91, 1983-10-30 (Released:2009-05-22)
参考文献数
2

Weekly census of nymphs and adults of Leptogrossus australis was conducted over 2 years, from April 1981 to April 1983, in 5 plots grown with a wild host, Diplocyclos palmatus, in a southern locality of Okinawa Is. where the insects were collected. No insects were collected during the period from February to April, but through May to December both nymphs and adult bugs could be recovered. Two peaks of nymphal incidence were recorded in May to June and in October to November, respectively. A long interval with a lower density of nymphs lasted for about 4 months between the two peaks, presumably due to the marked decrease in the number of fruits associated with the drought in the hot summer. The typhoon that struck the area in the early and middle part of fall exerted an effect similar to that of the summer drought resulting in the disappearance of the later (second) peak of nymphal incidence as observed in 1981. Based on the total number of effective day-degrees estimated from the incubation experiments, the period during which the insects could not attack the wild host was approximately 1.8 times longer than that required for the completion of the egg and nymphal stages. This finding suggests that the migration of the adult bugs from the unsuitable wild hosts to cultivated hosts such as bitter cucumber and cucumber is likely to occur and that at least one generation. develops on the cultivated hosts between the two generation peaks on the wild host.