著者
高橋 理 大生 定義 徳田 安春 萱間 真美 福井 次矢
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.411-417, 2009 (Released:2010-09-01)
参考文献数
15

世界レベルで関心の高い医師のプロフェッショナリズムは,社会との関係性が十分考慮されることが重要であるといわれている.しかし,医療を受ける側・患者の視点から考える医師のプロフェッショナリズムの構成概念を実証的に検討した研究は少ない.1)東京と大阪の市民各6人を対象に約2時間グループインタビューを行った.2) インタビューの逐語録を質的・帰納的に分析し市民が認識する医師のプロフェッショナリズムを構成する要素を探索した.また,それらを欧米の医師憲章と比較した.3) 探索の結果,医師のプロフェッショナリズムと関連すると考えられる要素は,(1)患者への献身・奉仕 (2)公正性 (3)医師の社会的責任 (4)企業との適切な関係 (5)患者との適切な関係,の5つに分類された.4) 欧米の医師憲章とは重なる要素もあるが,抽出されなかった要素も認めた.患者との適切な関係では,医師への謝礼に関して患者間で相反する意見もみられた.5) 医師のプロフェッショナリズムについて社会から理解を得るためには,わが国の市民の認識を考慮した構成概念が必要であろう.
著者
磯野 真穂
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.91-99, 2017

<p> 本論文は, 本誌47巻6号 (2017年1月発行) に掲載された「招待論文 : 臨床家のための質的研究」の後編である. 前編では研究対象への向き合い方を中心に論を展開した. 後編では質的研究の問いの重要性とその立て方に着目する. まず質的研究で重要なのは方法よりも問いであることを覚えておきたい. 大量のデータを一気に扱うための解析手法が種々存在する統計調査と比べると, 質的調査の方法は原始的である. どのような名前の付いた方法であっても, それらはデータを意味別に分類する方法, あるいはデータを時系列に並べ替える方法を提示しているだけであり, データをいかに読み取るかという質的研究の本質を解説してはいない. データの読み取り方は方法ではなく, 問いに関わる部分であるからだ.</p><p> したがって本稿では, よき問いを立てるための5つのポイントを紹介する. その5つとは, (1)支援ありきの研究を脱すること, (2)予備調査を実施すること, (3)データと先行研究を相互参照すること, (4)先行研究に横たわる思想を把握すること, (5)「経験・想い・態度」研究をできる限り避けること, である. また最後に, 臨床家が卒業論文のために行った調査が最終的に原著論文として結実した研究を, 初学者の臨床家でも立てられるよき問いの実例として紹介する.</p>
著者
淺田 義和
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.033-040, 2019-02-25 (Released:2019-08-05)
参考文献数
8

本稿では将来構想の1つとして, コミュニティ形成へのICT活用を論じる. 現状, 学会大会や研修会等のWeb活用をはじめ, 他学会と比較してICT活用の改善の余地がある. 10年後を見据えた構想として, 医学教育における種々のテーマ (シミュレーションやeラーニング等) に特化したSIG (Special Interest Group) 設立などが挙げられる. さらに, VRやARの活用, デジタルバッジを利用した生涯学習の支援など, 日々発展しつつある技術に対する情報を取り入れ, かつ学会員に対する支援体制をも整えていくことが期待される. これにより, 次世代の医学教育コミュニティ形成を支援することが可能になると考える.
著者
西田 津紀子 西村 良二
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.431-435, 2015-10-25 (Released:2017-03-03)
参考文献数
6

福間病院で長期臨床実習を行った作業療法学生11名を対象に, 当院で提示している課題が学生の教育にもたらす効果について調査した. 結果は, 知識面では過去の国家試験問題を再編成し利用したところ, 実習の前後で有意差はみられなかった. 技能面ではLASMIの「対人関係」と「労働または課題の遂行」の項目を利用し, 「対人関係」では有意差 (p<0.01) が認められ, 「労働または課題の遂行」では改善の傾向がみられた (p<0.10) . 態度面ではATDPを利用し, 山本らが抽出した3因子について比較した結果, 第2因子「能力の否定」について否定的な態度への変化に傾向がみられた (p<0.10) . 今回の結果から当院で提示した課題がどの程度影響を与えたかについて考察し, 今後の臨床実習についていくつかの提言をした.
著者
奈良 信雄 鈴木 利哉
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.193-200, 2014-06-25 (Released:2016-05-16)
参考文献数
12
被引用文献数
2

ドイツでは2003年に発効された「医師免許に関する規制法:Approbationsordung: AppOÄ」を契機に医学教育が大きく改革された.基本的には37校で同じカリキュラムに基づき教育されているが,昨今の医学の進歩や医療事情を鑑み,学際領域教育や臨床実習に重点を置いているなどに特色がある.医師国家試験は基礎医学履修後の2年終了時と,5年終了時の筆記試験と6年終了時の口頭試験が行われている.日本が医学教育を導入したドイツにおける医学教育改革は,わが国にとっても大いに参考になる.
著者
武田 香陽子 石突 諭 大野 裕昭 島森 美光
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.161-170, 2015-04-25 (Released:2017-03-03)
参考文献数
18
被引用文献数
1

目的 : 卒業基準を満たさなかった学生の学習状況の実態を把握し学習支援の在り方を検討する.方法 : 学習状況のアンケート調査を行い, その内容を成績別で比較した. さらに支援期間中の成績変化を解析した.結果 : 成績下位者は授業が理解できないため自習を希望していた. また, 卒業延期決定後から次年度授業開始までの顕著な成績低下が認められた.考察 : 授業が理解できず自習を希望する成績下位者に対しては授業前後の個別指導が必要と考えられた. また, 短期間で成績低下しないような分野 (領域) 横断型の勉強法の指導が有効と考えられた.
著者
竹村 洋典
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.187-190, 2008-06-25 (Released:2010-10-22)
参考文献数
11
被引用文献数
1

1) 欧米で有効な医療面接が必ずしも日本において有効とは限らない.2) 患者から身体的な情報を得るためには, 促進, 絞込み, そしてまとめの使用が有効である.3) 患者から情緒的な情報を得ることに, 開放型質問が寄与する可能性がある.4) 患者満足度を向上させるには, 反映と是認の使用が有効である.5) 患者の感じる診察時間は, 実際の診察時間よりも患者満足度と関連がある.6) 日本における非言語的コミュニケーションが欧米に比べて患者満足度に大きく寄与しているか否かは不明である.
著者
錦織 宏
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.371-375, 2016-12-25 (Released:2017-08-10)
参考文献数
9
被引用文献数
1
著者
西城 卓也 菊川 誠
出版者
Japan Society for Medical Education
雑誌
医学教育 = Medical education (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.133-141, 2013-06-25
参考文献数
36

●教授法や学習方法の選択においては,教育目標の分類との整合性や将来目指すべき学習者像との一貫性を図る必要がある.<br>●目指す学習者像として,成人として主体性のある学習者,自己主導的学習者,成熟したメタ認知を持つ学習者,省察的実践家,協同的学習者がある.<br>●海外の教育理論を応用するにあたっては,文化的差異を考慮するとともに,自らの柔軟な学習観と順応性にも焦点を置く.<br>●講義・小グループ討議・一対一教育が学習方法の基本である.それぞれの長短所を考慮した組み合わせを通じて学習方略が構成でき,唯一無二の学習方略はない.<br>●学習者は,より多様な学習方法への暴露と,学びに適した学習環境での学びを好む.
著者
上野 隆登 吉田 一郎 犬塚 裕樹 堀田 まり子 鳥村 拓司 安陪 等思 香野 修介 林 明宏 渡邊 誠之 赤木 禎治 松尾 和彦 淡河 善雄 高城 喜典 宮崎 洋 佐田 通夫
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.303-308, 2004-10-25 (Released:2011-02-07)
参考文献数
8

医学部4年生の基本的臨床技能実習時に実施するOSCEと筆記試験, 5年生の臨床実習終了時に実施するOSCEと筆記試験, 6年生に実施する卒業試験を各1年ごとすべて受験した96名の医学部学生を対象に各学年次の成績に関する解析を行い, 卒業できた6年生と留年した学生間, および医師国家試験合格者と不合格者間の各年次における試験の合計点の平均値の比較検討, 卒業と国家試験への各学年試験成績の関連性の検討も行った. 各学年次試験成績は各学年間で有意な正の相関を示した. 卒業できた6年生と卒業できなかった学生間の各学年次試験成績の平均値は卒業生の方が卒業できなかった学生群に比較して有意に高い点数であった. また, 国家試験合格者群と不合格者群との各学年次試験成績の比較では, 各年次共に国家試験合格者群の方が高い点数であり, 6年次成績では有意差が見られた. これらの結果より, 医学部4年生に実施する基本的臨床技能実習と5年生の臨床実習が6年生の卒業試験成績に繋がり, ひいてはその成績が医師国家試験の結果に影響を及ぼすことが示唆された.
著者
宮田 靖志
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 = Medical education (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.95-104, 2009-04-25
被引用文献数
5

2 0 0 0 OA 神経生理学

著者
石河 延貞
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.72-72, 1980-04-25 (Released:2011-08-11)
著者
道信 良子
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.44, no.5, pp.274-278, 2013-10-25 (Released:2015-07-06)
参考文献数
19

文化人類学は,人間の総合的な理解を目指す人類学の一領域であり,世界各地のさまざまな民族や文化的集団を対象に,その文化的な営みを探究する学問である.人間の行動の「意味」に着目する医療人類学の研究は「説明モデル」という概念枠組みを創出し,その知見は臨床にも応用されている.「社会」に着目する研究では,医学・医療のグローバル化や,医療・医薬経済の進展,世界におけるその国の位置づけといった政治的情勢も視野にいれて,健康や病気について考える.文化は,人間の行動に影響を与えるルールであると同時に,人びとがその場の状況に応じて即興的・創造的に行う「実践」でもあり,実践の現場から学ぶ必要がある.
著者
トロック はるか ロザンヌ グラニエリ
出版者
Japan Society for Medical Education
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.191-195, 2009

1) 米国では臨床教育のプロフェッショナルであるClinician Educatorに対するニーズが高まり,より高いスタンダードが期待されるようになった.<br>2) Clinician Educatorを育成するプログラムには様々な形態が存在するが,米国には,修士課程を含む継続的,また包括的な指導医養成プログラムがいくつか存在する.<br>3) ピッツバーグ大学医学部のClinician Educator Training Programは1,2年間の継続的なプログラムを通じて医学教育のリーダーを育成し,医学教育を学問として発展させることを目的としたプログラムである.
著者
上硲 俊法 岡本 悦司 土嶋 繁 吉田 浩二 佐藤 隆夫 松尾 理
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.239-246, 2002-08-25 (Released:2011-08-11)
参考文献数
11
被引用文献数
1

近畿大学では平成10年度からテュートリアルシステムによる医学教育を導入した. このシステム導入の効果と問題点を, 学生およびテュータに対してアンケートを行い検討した. 学生へのアンケート結果からは, 学生の約8割に自己学習時間の増加がみられ, また, テュートリアルが楽しいと考えている学生が多かった. 学生の約8割が科学的思考の訓練になるが, 平行しての講義はテュートリアルの興味や動機付けに役立つと考えていた. しかし, テュートリアルのハード面およびテュータへの不満が学年進行に伴い増加傾向にあった. テュータへのアンケート結果からは, 学生の学習への動機付け, 問題解決能力, 学生の討論の質はおのおの52%, 58%, 77%が向上したと回答があった. 問題点としては学力の二極分化への懸念, テュータの質, 意欲に不満などの意見が見られた. 総括;テュートリアル方式での教育効果を上げるためには学生の自主性のみならず, ハード面での改善, テュータの質的向上を図る必要がある.