著者
片岡 仁美 野村 恭子 川畑 智子 勅使川原 早苗 岩瀬 敏秀
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.365-375, 2014-10-25 (Released:2016-05-16)
参考文献数
20
被引用文献数
1

目的:女性医師の離職と復職及び育児休業の取得について現状を明らかにし,離職に影響を及ぼす要因について解析する.方法:岡山大学卒業生および同大学臨床系講座に入局した女性医師1403名に質問票を送付した.結果:回答者(n=420,回収率29.9%)のうち離職経験者は46.6% (n=191),離職時期は卒後10年以内が92.4%(n=171)であった.離職理由は「出産・育児」が51.5%(n=98),「夫の転勤」が21.1% (n=40)であった.初回離職時82%(n=151)が復職を希望していた.考察:柔軟な勤務体制の確立や育児休業の取得できる安定した勤務環境の整備がキャリア構築に重要である.
著者
錦織 宏
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.296-298, 2012-08-25 (Released:2014-01-09)
参考文献数
8
被引用文献数
2
著者
今福 輪太郎
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.053-060, 2019-02-25 (Released:2019-08-05)
参考文献数
41

医学教育研究は, 採用する理論的枠組みや理論的考察を記述することが国際的に求められてきている. 本稿では, その理論の選定や研究手法の決定の前段階にある「真実の在りか (存在論) 」「現実のとらえ方 (認識論) 」「現実へのアプローチの仕方 (方法論) 」といった哲学的前提の検討や研究パラダイムの明確化に焦点を絞り, そこからどのように体系的に研究をデザインしていけばいいのかを概説する. 「哲学的前提-研究パラダイム・理論-方法論-研究手法」の流れを意識することで, 研究計画に一貫性を持たせ, 分析結果から実践的な示唆だけでなく理論的な貢献ができるようになると考える.
著者
磯野 真穂
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.353-361, 2016-12-25 (Released:2017-08-10)
参考文献数
8
被引用文献数
1

臨床家の間で質的研究への関心が高まって久しい. しかし統計的な調査に慣れ親しんだ臨床家は, 質的研究を行うにあたってまず「やり方」を探してしまう傾向が強い. しかし質的研究は量的研究と異なり, 調査現場から方法が立ち上がる. つまり質的研究には多くの方法が存在するが, それはあくまで参考程度のものであり, 必要があればそこに改編を加えることは構わないのである. 質的研究を志す際にもっとも重要なのは, 研究者が現実に対しどのように向き合うのかという身構えである. したがって本論考は質的研究の初心者に向け, 筆者の専攻である文化人類学を元にしながら, 質的研究を実施する際に必要な次の三つの構えを紹介する. 一つには上空飛行的視点ではなく, 肩越しの視点を持つこと, 二つには, 管理するのではなく理解しようとする態度を持つこと, 最後には, データの質的平均を導くのではなく, 新たなものの見方を発見しようとすることである.
著者
瀬尾 恵美子 小川 良子 伊藤 慎 讃岐 勝 前野 貴美 前野 哲博
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.71-77, 2017-04-25 (Released:2018-07-05)
参考文献数
14

目的 : 研修医の抑うつに関して, 臨床研修制度導入時と, 制度が広く周知された段階とで比較検討を行う.方法 : 全国の臨床研修病院250施設で, 2011年採用の研修医1,753名に対し, 研修開始時と開始3カ月後に, 抑うつ反応, 勤務時間, ストレス要因, ストレス緩和要因などに関するアンケート調査を行い, 2004年の同様の調査と比較した.結果 : 研修開始3カ月後, 抑うつ状態の研修医は30.5% (新規うつ状態率19.6%) で, 2004年より有意に減少していた. 一因として勤務時間の減少, ストレス要因, 緩和要因の改善が考えられた.考察 : 依然多くの研修医が抑うつ状態となっており, 研修環境の更なる改善が望まれる.
著者
磯野 真穂
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.353-361, 2016

<p> 臨床家の間で質的研究への関心が高まって久しい. しかし統計的な調査に慣れ親しんだ臨床家は, 質的研究を行うにあたってまず「やり方」を探してしまう傾向が強い. しかし質的研究は量的研究と異なり, 調査現場から方法が立ち上がる. つまり質的研究には多くの方法が存在するが, それはあくまで参考程度のものであり, 必要があればそこに改編を加えることは構わないのである. 質的研究を志す際にもっとも重要なのは, 研究者が現実に対しどのように向き合うのかという身構えである. したがって本論考は質的研究の初心者に向け, 筆者の専攻である文化人類学を元にしながら, 質的研究を実施する際に必要な次の三つの構えを紹介する. 一つには上空飛行的視点ではなく, 肩越しの視点を持つこと, 二つには, 管理するのではなく理解しようとする態度を持つこと, 最後には, データの質的平均を導くのではなく, 新たなものの見方を発見しようとすることである.</p>
著者
中島 昭 長田 明子 石原 慎 大槻 眞嗣 橋本 修二 小野 雄一郎 野村 隆英 松井 俊和
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.397-406, 2008-12-25 (Released:2011-05-24)
参考文献数
8
被引用文献数
1

藤田保健衛生大学医学部入試では, 全入学者の約30%を推薦入試により選抜している.推薦入試入学者の入学後の成績が適正であるかどうかを検証するために, 入学直後に実施した基礎学力を測定するプレースメントテストの成績と, 入学後の1, 2年次の欠席状況と成績との関連性を比較検討した.1) 平成14年から17年までの入学生398名を, 推薦入試入学者 (126名), および, 一般入試の成績の上位1/2入学者 (137名) と下位1/2入学者 (135名) の3群に分類して解析した.2) 入学時のプレースメントテストの成績 (基礎学力) は, 一般上位>一般下位>推薦の順であったが, 入学後の成績は1, 2年次共に, 一般上位>推薦>一般下位となった.3) 推薦入試入学者の1, 2年次欠席コマ数は, 一般入試上位・下位入学者よりも少ない傾向にあった.4) 2年次の成績は1年次の成績とよく相関し, また, 2年次の欠席コマ数は1年次の欠席コマ数とも強く相関した.5) 入学時の基礎学力だけでなく, 1年次での勉強の取り組み方が, その後の成績に影響する重要な要因であることが示唆された.
著者
酒井 理恵
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.229-232, 2011-08-25 (Released:2013-03-25)
参考文献数
6

1)ハーバード大学公衆衛生大学院の修士課程に在籍し,米国にて公衆衛生を学ぶ機会を得た.2)ハーバード大学公衆衛生学大学院では,学生の意欲に任された教育体制になっており,このような教育システムの違いについて学ぶことも,今後,教育者,指導者になる上で参考になると思われた.3)米国での公衆衛生学修士課程では,医学研究者であればどの分野でも必要とされる生物統計学や疫学について学ぶことができ,医師のキャリア形成の中で一つの選択肢となると感じた.
著者
堀 原一
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.165-168, 1998-06-25 (Released:2011-08-11)

明治以来わが国の大学に残っている遺物ともいうべき講座制が, ことに医科大学・医学部で今もって幅をきかせている. 教授は講座という一城の主として学問の自由独立を楯にエゴを死守しようとしているのではないか. 講座の壁が教育の改善, 学問の交流と進歩を, また人事の流動を阻害しているのではないか. 教授は講座のためにあるのならまだしも, 講座は教授のためにあるとのはき違えもあるようだ. 講座を守る責任という美名と裏腹の教授のタコ壺意識, その変革が求められている.今, 講座の改廃・再編や教員の再配置は可能であり, 学生や患者, そして学問のためにも必要なのである.
著者
清原 達也 渡部 健二 野口 眞三郎 青笹 克之
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.259-264, 2005-08-25 (Released:2011-02-07)
参考文献数
6

今年度で30年目を迎える大阪大学医学部学士編入学制度の成果を総括するために, 学士編入学者のプロフィールと卒後進路について分析を行った. 現在までに通算で453名が入学している. 受験者はバブル期に一時減少したがバブルの崩壊とともに増加した. 入学者のうち男性が93%を占め, 入学時の年齢は30歳未満が82%で24-26歳にピークがあった. 出身大学は国立大学が96%を占めた. 学歴は学士が57%, 修士が36%, 博士が7%. 理科系の専攻が84%であった. 卒後進路としては, 一般学生との比較で学士編入学者の方が基礎医学系に進む割合が高かった. また, 学士編入学者は一般学生と比べて教授や病院長などの管理職を務めている率が高かったが, その一方で開業率も高かった. 卒後20年目以上では, 学士編入学者の勤務先は大学関係が14%で病院関係が44%. 9.6%は教授で7%は病院長, 開業医は27%であった. 以上より大阪大学医学部の学士編入学制度は理科系出身で目的意識が明確で有能な人材を集めて指導的立場にある卒業生を輩出しているとの結果が得られた.
著者
三苫 博 大滝 純司 泉 美貴
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.1-10, 2016-02-25 (Released:2017-08-10)
参考文献数
8
被引用文献数
1

背景 : 医師国家試験 (国試) 出題基準の妥当性は卒後初期臨床研修 (初期研修) の観点からの検討が不十分である.方法 : 初期研修の指導医を対象に, 出題基準に収載された各疾患の重要性に関する質問紙調査を行った. 回答 (5段階) を「重要性スコア」 (5点満点) に変換し, その平均値をもとに疾患を3群に分け, 各群の出題状況も検討した.結果 : 重要性スコアが低い (2.5点未満) 疾患が出題基準の10.0%を占めた. それらの一部は国試に出題され, 重要性が中等度 (同2.5点以上4.5未満) の疾患も一部は詳細な知識が問われていた.考察 : 初期研修における重要性と国試出題基準および出題の間に乖離がある可能性を示唆している.
著者
孫 大輔
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.89-94, 2022-02-25 (Released:2022-06-19)
参考文献数
8

映画とは, 文学や音楽, 絵画, 演劇と並ぶ芸術的営為の一つである. 映画を芸術の一つとして捉えるならば, 映画は社会の新しい見方を提示するだけでなく, 共通の経験の感覚を新しく創造し直す手段として捉えることができる. 映画を医学教育に活かす手法であるシネメデュケーション (cinemeducation) は, 人間形成機能, すなわち批判的思考や主体性形成を促す作用を持つと同時に, プロフェッショナリズムの涵養にも役立つ. 例えば, 利他主義, エンパシー (共感), 倫理的推論能力などの教育である. シネメデュケーションの具体的方法として, 映画全体または映画のクリップを使用して, 小グループの議論を促進する. 教育目標に合わせた「問い」を学習者に投げかける. また, ロールプレイやレクチャー, 診療・治療計画について考えさせるといった内容を組み合わせる. シネメデュケーションの課題として, どのような映画を選ぶか, 映画全体を見せるか一部を見せるか, どの部分を選ぶかといった教材選択の問題とともに, 学習者のレディネスや学習進度に合わせた授業内容を設計できるかという授業デザインの問題がある.
著者
椎橋 実智男 福島 統 錦織 宏 西城 卓也
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.283-289, 2012-08-25 (Released:2014-01-09)
参考文献数
7
被引用文献数
4
著者
錦織 宏 西城 卓也
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.429-438, 2013-12-06 (Released:2015-07-06)
参考文献数
34
被引用文献数
3

本稿では学習者の評価ツールについて概説する.●周到に計画された適切な評価が,学習者の望ましい学びを形成し,また動機を促進する.●評価の実施においては,教育的効果と学習への影響について最大限の配慮が必要である.●「知っている」ことは「できる」ことを保証しないが,「できる」からといって「知っている」ことを保証するものでもない.●アウトカム基盤型教育の効果を引き出すべく,豊富な情報をもたらす,継続的かつ包括的なプログラム化された評価のデザインと実践が求められる.●教育機関全体で,その評価の重要性を十分に共有した上で,教育資源を配慮して,実現可能な評価を推進することが望ましい.
著者
北川 信一郎
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.227-235, 2013-08-25 (Released:2015-07-06)
参考文献数
30

目的 : 公衆衛生医師の経験学習に焦点をあて,その熟達化の過程を明らかにする.研究方法 : 10人のExpertを対象に,仮説探索型研究をおこなった.インタビューの分析には,グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いた.結果 : 学生時代では,先輩医師から公衆衛生の重要性を,臨床医時代には,患者との関わりからプライマリ・ケアについて学んでいた.また,公衆衛生医師として,13の経験から11の教訓を学んでいた.  一方,公衆衛生マインドは,自己関連,患者関連,社会関連,組織関連の4つの信念のカテゴリーからなり,特に,社会関連の信念がコアとなっていた.結論 : 特有の経験学習が明らかとなった.熟達論および経験学習の観点から考察した.
著者
田中 篤 林田 憲明 石川 陵一 櫻井 健司
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.377-385, 2004-12-25 (Released:2011-02-07)
参考文献数
8

聖路加国際病院では研修医の採用試験として, 学科試験・面接に加え, 1998年から適性検査であるSPI検査を導入している.今回われわれは, SPI検査の結果と, 研修医の知的能力・学科試験の成績・研修中の評価との相関を解析した.SPI検査のうち, 基礎能力検査は, 知的能力とは相関するものの, 学科試験の成績とは相関しなかった.高い基礎能力・身体活動性, 外向性は2年間平均した高い評価と関連があった.一方, 思考・実践の重視, 協調性が, 1年目から2年目への高い成長と相関していた.基礎能力は成長とは関連していなかった.以上より, SPI検査の結果は研修医のさまざまな人物特性と相関があることが明らかとなった.
著者
津田 万里 森屋 宏美 浦野 哲哉
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.271-277, 2021-06-25 (Released:2021-07-22)
参考文献数
18

COVID-19パンデミックの現在, 全世界で遠隔診療が急速な発展を遂げている. 日本は他の先進国に比べ遠隔診療の導入が伸び悩んでいる. 先進国の多くは国策として遠隔診療の発展に注力している. 日本でも以前から遠隔診療は存在したものの, あくまで対面式診療の補助的役割に過ぎなかった. それがCOVID-19の感染拡大により遠隔診療で初診から受診が可能となり頓用以外でも新規処方ができるなど, 規制が大幅に緩和されたのをきっかけに急激に導入が進みつつある. ここでは遠隔診療の導入が進んでいる国と, 日本の遠隔診療に関する背景と現状を比較し, 本校における遠隔診療に対する学生教育を紹介した上で, これからの展望を概説する.
著者
吉中 丈志 西山 勝夫
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.13-16, 2009 (Released:2012-03-27)
参考文献数
6

1) 戦争と医学は医療倫理教育の重要なテーマである.日本とドイツの医学部・医科大学に対して質問紙による調査を行い医療倫理教育の課題を考察した.2) ヘルシンキ宣言と医師の戦争犯罪についてドイツではほとんどの医学部・医科大学の医療倫理教育で取り上げられていたが,日本では少数であった.3) ヘルシンキ宣言と医師の戦争犯罪は医療倫理の歴史と現状の理解に欠くことができない位置にある.原因を明らかにして改善を検討することは医療倫理教育の重要な課題である.
著者
中村 千賀子
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.299-307, 2015-09-25 (Released:2017-03-03)
参考文献数
37

行動科学について, その起源, 大学設置基準の大綱化などから, 現在の医学教育におけるその意味や役割を考える. 現代の疾病構造をふまえ, 全人的医療を支える人間関係を視点として, 行動科学教育の基本的要素を整理し, ラボラトリー・トレーニングを利用した態度学習の具体例についても述べる.