著者
木村 武司 錦織 宏
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.163-169, 2022-04-25 (Released:2022-09-07)
参考文献数
10

医学教育においてプロフェッショナリズム教育は重要なテーマの一つだが, その教育や評価は困難である. そのため, プロフェッショナリズム教育における特に評価の観点から, 観察可能な「行動behavior」に焦点をあて, アンプロフェッショナルな行動として捉え直す議論が2000年頃から北米を中心に活発化している. 本稿では, 国内の動向も交えつつ, アンプロフェッショナルな行動についての分類, 評価, 対応に関する概念を整理し, 関連した概念について啓蒙するとともに, 本邦の文脈に即した研究の促進を目指す. また, その適切な対応を通して, より社会の要請に耐える医学生・医師の育成に繋がることを期待したい.
著者
前野 哲博 中村 明澄 前野 貴美 小崎 真規子 木村 琢磨 富田 絵梨子 笹原 信一朗 松崎 一葉
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.175-182, 2008-06-25 (Released:2010-10-22)
参考文献数
18
被引用文献数
3

研修医はきわめて高いストレスにさらされており, うつ病などのストレス反応を起こして研修を中断せざるを得ない研修医が後を絶たない.研修医が安心して研修に専念できるために必要な方策を検討するために, 研修医のストレスについての実態及び要因について包括的に評価することを目的とする研究を行った.1) 2004年度の1年目研修医41施設568名を対象に, 研修開始時と2か月後に, 自記式質問紙票を用いて研修状況, ストレス要因・緩和要因, ストレス反応等について調査を行った.2) 有効回答者318名のうち, 研修開始2か月後に新たに抑うつ反応を呈した研修医は80名 (25.2%) であった.3) 研修医のストレス特性としては, 高い質的・量的負荷と著しく低い裁量度・達成感が特徴であった.4) 多くの研修医が研修開始後に抑うつ状態に陥っていることが明らかになった.研修環境の改善には, 研修医特有のストレス特性に配慮し, 特にストレス緩和要因を高めることが重要と考えられた.
著者
西城 卓也 菊川 誠
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.133-141, 2013-06-25 (Released:2015-07-06)
参考文献数
36
被引用文献数
11

●教授法や学習方法の選択においては,教育目標の分類との整合性や将来目指すべき学習者像との一貫性を図る必要がある.●目指す学習者像として,成人として主体性のある学習者,自己主導的学習者,成熟したメタ認知を持つ学習者,省察的実践家,協同的学習者がある.●海外の教育理論を応用するにあたっては,文化的差異を考慮するとともに,自らの柔軟な学習観と順応性にも焦点を置く.●講義・小グループ討議・一対一教育が学習方法の基本である.それぞれの長短所を考慮した組み合わせを通じて学習方略が構成でき,唯一無二の学習方略はない.●学習者は,より多様な学習方法への暴露と,学びに適した学習環境での学びを好む.
著者
上岡 裕美子 篠崎 真枝 橘 香織 山本 哲 宮田 一弘 青山 敏之 富田 美加
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.97-101, 2021-04-25 (Released:2021-11-14)
参考文献数
13

背景 : 理学療法学生において効果的な臨床参加型実習に向けた実習前の客観的臨床能力試験 (OSCE) のあり方を検討するため, 実習前OSCEと実習到達度との関連を明らかにすることを目的とした. 方法 : 理学療法学科4年生79人を対象に, OSCEと知識試験成績, 実習中の経験症例種類数, 実習到達度を分析した. 結果 : OSCE成績は知識試験成績, 経験症例種類数, 実習到達度と有意な相関関係にあった. 特にOSCEの実施技術要素は実習到達度の診療補助および評価分野と有意な相関を認めた. 考察 : OSCEは臨床ではない状況で能力を評価するものであるが, 実習終了時点での臨床実践力と関連性があることが示唆された.
著者
岡田 唯男
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6, pp.509-514, 2021-12-25 (Released:2022-04-01)
参考文献数
23

HANDS-FDF (Home and Away Nine DayS - Faculty Development Fellowship) は, プライマリ・ケア領域の医師を対象としたおそらく日本で初のHome/Away形式の継続型faculty development (FD) コースである. 米国でFDを正式に学んだ医師が先行事例を踏まえて開発, 試験運用を経て周到に準備されたコースであり, 様々な独自の特徴を有していること, 計146名の修了生の活躍, 15年以上の歴史があることなどから, その開発の経緯も含めて参考にするべき点が多いと考えられる.
著者
田川 まさみ 西城 卓也
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.44, no.5, pp.345-357, 2013-10-25 (Released:2015-07-06)
参考文献数
37
被引用文献数
3

本稿では,学習者の評価の計画と実施に関する基礎的事項を概論する.●学習者中心のアウトカム基盤型教育が重要視される医学教育では,個々の学習者を支援する形成的評価とプログラム修了,資格認定における「必要な能力コンピテンシー」の評価が重要である.●測定して得られたデータを受験生の能力として一般化する過程が評価であり,一般化できることが良い評価の特性である.妥当性の高い試験を実施するために信頼性や評価の影響を含む妥当性の根拠を検証する.●目的に応じた妥当性の高い評価を実施するために,計画,運営,集計と判定,利用,改善を行う.
著者
後藤 あや
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.171-176, 2012-06-25 (Released:2014-01-09)
参考文献数
18

米国の公衆衛生教育は歴史的に実務的であり,設置基準に基づく体系的な教育を豊富な教授陣が,医学部とは独立して提供してきた.多様な学生のニーズに対応するために多様なプログラムを用意しており,教育方法も工夫を凝らし,その成果として学生数が着実に増加した.しかし,公衆衛生専門家の数は国全体として決して十分ではなく,実践的な技術と知識が身につくよう,より多くの専門家を育成する改革が続いている.
著者
小嶋 雅代 酒々井 眞澄 鈴木 匡 坡下 真大 早野 順一郎 村上 里奈 山本 美由紀 浅井 清文 浅井 大策 石川 大貴 木村 侑樹 明石 惠子 赤津 裕康 大原 弘隆 川出 義浩 木村 和哲
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.221-235, 2019

<p>背景 : 医療系学生による高齢者家庭訪問実習の初年度の教育効果の検証.</p><p>方法 : 実習に参加した医学部3年生5名, 高齢者5名によるフォーカスグループインタビューを基に自記式調査用紙を作成し, 医学部3年生, 高齢者の全参加者に調査協力を依頼した.</p><p>結果 : 学生84人と高齢者30人が協力に同意した. 学生の74%が「高齢者の暮らしぶりが分かった」と回答し, 高齢者の57%が「良い変化があった」と回答した. 93%の高齢者が本実習に満足だったのに対し, 学生の肯定的な意見は半数であった.</p><p>考察 : 学生が本実習に積極的に取り組むためには, 各自が明確な訪問への目的意識を持てるよう, 入念な事前準備の必要性が示された.</p>
著者
三品 浩基 横山 葉子 Mitchell D Feldman 角舘 直樹 福原 俊一
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.75-80, 2011-04-25 (Released:2013-03-25)
参考文献数
7
被引用文献数
1

欧米では,メンター制度が医学領域の研究成果の達成のみならずキャリア形成,研究資金獲得にとって有用な教育システムとして認められている.わが国の医学研究教育においてもメンター制度を活用するにあたり,その試行経験から,メンタリングの促進因子と阻害因子を検討することが重要と考える.1)メンター制度下で臨床研究の実施経験がある医師12人を対象として,メンタリングの促進因子および阻害因子を探索するインタビュー調査を行った.2)インタビューの逐語録を質的に分析し,メンタリングの促進因子と阻害因子を抽出した.3)促進因子として,メンティーのレベルの適切な評価,メンティーの考えているキャリアパスの把握,コミュニケーションの双方向性,身近な先輩研究者の存在が抽出された.4)阻害因子として,メンターの忙しさ,相談内容のレベルの低さについてのメンティーの不安,メンター・メンティー間の上下関係が抽出された.5)施設におけるメンタリングの評価制度,およびメンターの教育制度がメンタリングの促進に必要な対策として期待された.
著者
橋本 成修 山城 清二 鶴丸 征枝 小泉 俊三
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.409-414, 2001-12-25 (Released:2011-08-11)
参考文献数
5

〈目的〉身体診察に当って女性患者が抱く羞恥心をはじめとする抵抗感に寄与する要因を明確にするため, 病院外来で調査を実施した.〈方法〉女性患者を対象とし, 身体診察に対する抵抗感, 胸部診察での脱衣の許容度, 羞恥心を抱いた経験についてアンケート調査を行い, 比較検討した.〈結果〉身体診察に関し「男性」および「学生」という要素に有意に抵抗を示した. また「男子学生」が行う胸部・腹部診察について, 患者の年齢が低いほど抵抗感が増大した. 胸部診察での脱衣に関して, 上着の状態に関係なく下着を着用のままか, 診察着 (ガウン) の使用を希望した患者が多かった.〈結論〉「男子学生」は女性患者の診察に当たって特に配慮すべきである. 女性患者の羞恥心の軽減には診察着の使用が望ましい.
著者
奈良 信雄 加藤 拓馬 大西 宏典 田極 春美
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.135-142, 2017-06-25 (Released:2018-07-05)
参考文献数
11

昨今, ハンガリーの医学部で教育を受け, 卒業後に日本の医師国家試験を受験して日本で医師になることを希望する日本人学生が増えている傾向にある. 彼らがわが国で国民の信頼に応えることのできる医学教育を受けているかどうかは重大な関心事である. そこで, ハンガリーにあるセンメルワイス大学医学部, デブレツェン大学医学部を訪問し, ハンガリーの医学教育システムを調査した. ハンガリーには4大学医学部があり, すべてが国立で, 4大学ともにハンガリー人を対象としたハンガリー語コース, 外国人向けに英語で教育するインターナショナルコース, さらに3大学ではドイツ語コースもある. 医学教育はほぼ他のEU諸国に共通するが, インターナショナルコースでは完全に英語による教育でグローバル化に対応している, 少人数グループでのチュートリアル教育が充実している, 口頭試験での評価がある, 卒業試験だけでなく卒業論文も課せられる, 等の特徴があり, わが国の医学教育に参考になる点も少なからず認められた.

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著者
青松 棟吉 大谷 尚 西城 卓也
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.249-274, 2014-08-25 (Released:2016-05-16)
参考文献数
11
被引用文献数
2
著者
木村 琢磨 前野 哲博 小崎 真規子 大滝 純司 松村 真司 尾藤 誠司 青木 誠
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.383-389, 2007-12-25 (Released:2011-02-07)
参考文献数
15

欧米では, 研修医のストレスは燃え尽き症候群や抑うつの原因となり, 研修プログラムからの脱落や非倫理的な診療などにつながると報告され, ストレス要因への対策がなされている.最近わが国でも, 研修医の過酷な労働条件や過労死などが問題となっているが, わが国における研修医のストレス要因を検討した報告は少ない.1) 10施設の研修医25人を対象に, フォーカス・グループ・インタビューを実施し, わが国における研修医のストレス要因を探索した.2) 研修医のストレス要因として, 一人の人間としてのストレス要因, 新米社会人としてのストレス要因, 未熟な研修中の医師としてのストレス要因の3つを抽出した.3) 3つのストレス要因をそれぞれ生活ギャップ, 社会人ギャップ, プロフェッション・ギャップと名づけ, 研修医のストレス要因を, 医学生時代と医療現場とのギャップがもたらす産物として描出した.4) わが国の研修医の様々なストレス要因が明らかになったが, 研修中の未熟な医師としてのストレス要因は, わが国特有であった.5) 安全で効果的な研修を行うために, これらのストレス要因を考慮した研修医のストレスへの対策が望まれる.
著者
皆本 晃弥
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.89-96, 2016-04-25 (Released:2017-08-10)
参考文献数
10

2008年12月に出された中央教育審議会の答申「学士課程教育の構築に向けて」において, 教員の教育業績を多面的に評価するという観点からティーチング・ポートフォリオが取り上げられた. それ以降, 日本でもティーチング・ポートフォリオを作成する教員は年々増えており, 教育活動を可視化するツールとして, その有用性は認められている. しかしながら, 今のところティーチング・ポートフォリオは主に教育改善にのみ活用され, ティーチング・ポートフォリオによる教育業績評価についてはあまり議論されていない. そこで, 本稿ではティーチング・ポートフォリオを紹介するとともに, これを用いた教育業績評価方法について述べる.
著者
宮田 靖志
出版者
Japan Society for Medical Education
雑誌
医学教育 = Medical education (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.13-19, 2013-02-25

1)全国の医学生が製薬企業との接触行動をどの程度経験しているかを2012年に調査した.<br>2)全体で5,431名から回答が得られ,内訳は4年生1,755名,5年生2,222名,6年生1,454名であった.臨床実習前と後の学生数はそれぞれ,1,755名–0名,853名–1,369名,53名–1,401名であった.<br>3)文房具授受,製品説明パンフレット授受,製品説明会への出席,弁当飲食は,実習前20–37%,実習後95%以上の医学生が経験していた.懇親会への出席,タクシーチケットの授受は,実習前約10%,実習後約60%が経験しており,食事会・宴席への出席は,実習前約8%,実習後約40%が経験していた.<br>4)多くの医学生が製薬企業との接触行動を経験しており,その頻度は臨床実習参加後に有意に増加していた.