著者
久野 靖 佐藤 直樹 鈴木 友峰 中村 秀男 二瓶 勝敏 明石 修 関 啓一
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:03875806)
巻号頁・発行日
vol.29, no.10, pp.966-974, 1988-10

高性能個人用計算機向けOSを,データ抽象機能を持つ言語CLUを用いて開発した.本システムの基本設計は1985年秋に開始され,現在NEC PC-98XA/XL計算機上で中核部分(記憶域管理,プロセス管理,モジュール管理),ファイルシステム,CLUコンパイラ,ウィンドシステム,ネットワークモジュールおよびいくつかの応用プログラムが動作している.本システムは単一言語系の考え方を採用することにより,コンパクトで見通しのよいシステムにできた.またCLU言語のデータ抽象機能は,モジュール間の独立性を高め,分かりやすく構造化されたシステムとする上で効果があった.
著者
久野 靖 角田 博保
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:03875806)
巻号頁・発行日
vol.29, no.9, pp.854-861, 1988-09

近年,ピットマップ画面とマウス装置を持ち,Unixオペレーティングシステムを搭載した高機能ワークステーションが多く見られるようになっている.しかし実際にこれらのシステムの使われ方を見ると,利用者は単にピットマップ画面上に複数の端末窓を開き,その上で作業をしているにすぎないことが多いように思われる.そこで筆者らはそのような環境の問題点を分析し,ごく少数のツールを作成することでその欠点を補うことを試みた.これらのツールは既存のUnix環境を置き換えるものではなく,Unixの多数の指令群と有機的に組み合わせて使えるようなものとした.これらのツール群は起動されると端末窓とは独立に窓を開き,そこに表示された情報は利用者が陽に指示するまで消えることなく利用可能である.これらのツール群により非常に多数の窓が作られるため,その有機的な関係を整理し使いやすくすることにも留意した.またこれらのツール群の有効性を調べるための簡単な模擬実験も行ったが,その結果,必要な情報がスクロールして消えて行ってしまうという端末窓の問題点が大幅に改善されたとの感触を得た.
著者
久野 靖
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:03875806)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.515-523, 1984-07

計算機を使用して日本語文書を作成する方法の一つとして, かな分ち書きテキストから出発し, テキストごとに固有の辞書を用意し, つづり単位の置換えによって漠字かなまじりテキストを生成する, というものがある. このかな漢字変換方式をマクロ方式と呼ぶ. その特徴は, かなテキストを基本とするためテキストを能率よく入力, 編集できること, および変換方式が単純なため処理速度が速いことである. しかるに, マクロ方式では利用者自身がテキストごとの辞書を管理し, 同音異語に対する処置を行うので, その手間がどのくらいかは重要な問題である. そこで本文では, 翻訳書1冊分のデータを分析することにより, この問題に対する解答を与えることを試みる. その結果, 利用者が管理しなければならない辞書の項目数は書籍1冊でも数千程度で, しかもある程度以上大きなテキストについてはその数はテキストの大きさのせいぜい平方根程度でしかふえないこと, およびテキストの全つづりのうち, 同音異語に対する処置を個別に行わなければならないものの比率約1.2%であることがわかる. マクロ方式は用語の統一やつづり誤りの検出などを通じて文章を改良していく道具としても有効であるので, そのことを考え合わせると文章作成を中心とした日本語文書処理において有望であると結論される.
著者
西森 丈俊 久野 靖
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌. プログラミング (ISSN:03875806)
巻号頁・発行日
vol.44, no.SIG_15(PRO_19), pp.36-54, 2003-11

テレビゲームソフトウェア開発は近年大規模化しており,トライアンドエラーを繰り返しながら開発を進めることが難しくなっている.そのため開発プロジェクトでは通常スクリプト言語システムを導入するが,限られた時間で製品を開発しなければならない理由から記述システムはad hocなものになり,「新しいゲームシステムヘの適用が難しい」「プロジェクトのたびに最初から記述システムを作り直さなければならない」という問題が発生する.そこで,本論文ではアクションゲームを開発するのに適した分離性や効率の良い記述システムを開発することを目標とし,そのためのサーペイと開発している言語について述べ,有用性を実際のゲーム開発プロジェクトでの使用から評価する.As the complexity of video game software grew, it became difficult to develop them through traditional tiral-and-error processes. To overcome the problem, many farms have developed scripting languages to help game designers modify their design quickly, without help from the programmers. However, most of these languages have ad hoc design and closely tied to specific game, making it difficult to reuse the system for other games. This paper presents a survey of existing scripting language targeted to commercial video game development, and our effort toward general, game-independent scripting language. And we evaluate effectiveness of our scripting system in commercial video game development project.
著者
兼宗 進 中谷 多哉子 御手洗 理英 福井 眞吾 久野 靖
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌. プログラミング (ISSN:03875806)
巻号頁・発行日
vol.44, no.SIG_13(PRO_18), pp.58-71, 2003-10

近年,教育課程の改訂により,小学校から高等学校までの初中等教育において情報教育の導入が進められている.筆者らは,「情報教育の中でプログラミングを体験することは計算機の動作原理を学ぶうえで効果的である」という考えから,初中等教育で活用可能なプログラミング言語である「ドリトル」を開発し,それを用いたプログラミング教育について研究を行ってきた.本稿では,中学校においてドリトルを用いて実施したプログラミング教育とその評価について報告する.行った授業では,プログラミング経験のない生徒を対象に,タートルグラフィックスとGUI部品を用いたプログラミングを扱った.また,アンケートと2回の定期試験の結果に基づき,オブジェクト指向を含むプログラミングの概念が生徒にどのように理解されるかを分析した.Recently, IT education curriculum at K12 (kindergarten and 12-year-education) schools are being started in Japan. Programming experiences will be useful for students to learn essence and principle of computers. However, we insist that the use of "modern" languages is indispensable to achieve the goal. In this paper we describe our experiences of using "Dolittle" object-oriented programming language in junior high school classes. Turtle graphics, figure objects, and GUI objects were taught in the class, and paper tests and enquiries were conducted for evaluation. As the result, majority of the students understood basic concents of programming and object-orientation, and enjoyed the classes.
著者
中谷 多哉子 兼宗 進 御手洗 理英 福井 眞吾 久野 靖
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:03875806)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.1610-1624, 2002-06

初中等教育での情報教育の準備が進められている.オブジェクトストームとは,コンピュータへの興味を持たせつつ,楽しませながら,オブジェクト指向プログラミングを介してコンピュータの基本的な原理を理解させる情報教育コンセプトである.ドリトルは,オブジェクトストームに基づいて開発された日本語オブジェクト指向プログラミング言語である.ドリトルは,オブジェクトの効果的な見せ方の1つとして,タートルグラフィックスを含む図形環境を提供しており,簡潔で分かりやすい文法を持っている.本稿では,中高校生を対象に行った実験授業の成果を示すとともに,オブジェクトストームの概念を紹介し,ドリトルの教育効果と可能性について議論する.Information education for K-12 (kindergarten and 12-year-education) will start from 2002. In this paper, we propose Objectstorms, the concept for K-12 programming education, and evaluate its educational effectiveness. The method is supported by object oriented programming language named Dolittle. Through Dolittle programming experiences, students learn the basic concepts of computer. Besides information education, Dolittle can be applied to various subjects on phenomena with rules, such as physics and mathematics.
著者
兼宗 進 御手洗 理英 中谷 多哉子 福井 眞吾 久野 靖
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌. プログラミング (ISSN:03875806)
巻号頁・発行日
vol.42, no.SIG_11(PRO_12), pp.78-90, 2001-11

情報社会の急速な発展にともない, 初中等教育の中で情報の比重が高まっている.計算機の働きを最も効果的に学ぶ手段の1つはプログラミングを体験することであるが, 教育現場ではBasicやLogoといった数世代前の言語が使われることが多く, 現代のソフトウェアシステムの理解につながらないという問題が存在する.本稿では, 初中等教育での利用が可能なプログラミング言語「ドリトル」およびその実行系の設計と実装について述べる.ドリトルはオブジェクト指向言語であり, あらかじめ用意された各種のオブジェクトを活用した教育を可能とする一方, Self言語と同様のプロトタイプ方式の採用により, クラスや継承などの高度な抽象概念の理解を不要にしている.その他, 変数や命令語などの識別子と記号が日本語文字で統一されている, メソッドを属性と統合的に扱えるといった特徴を持つ.処理系はJava2で書かれたインタプリンタとして実装し, 教育現場のさまざまな環境で動作できるようにした.In the IT revolution, IT education is becoming more important in school education. Programming is an effective way for learning computers. However, many teachers use old languages like Basic and Logo, so students can't understand modern software systems. This paper describes design and implementation of the programming language "Dolittle". Dolittle is an object-oriented language aimed at school education. Incorporating prototype-based object system like Self, Dolittle requires less knowledge of abstract concept like classes and inheritances. Students can learn it easily, thanks to predefined objects and familiar Japanese identifiers and symbols. We implemented Dolittle interpreter by Java2, so it can run in many educational environments.
著者
上田 哲郎 久野 靖
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌. プログラミング (ISSN:03875806)
巻号頁・発行日
vol.40, no.SIG_7(PRO_4), pp.40-50, 1999-08

本稿では, 拡張性と柔軟性において, 従来のサブクラス化による方法に優るコンポーネントベースの差分プログラミングについて述べる.コンポーネントベースの開発において, プログラムの再利用のために拡張機能の差分のみをコーディングしてプログラムに追加しようとした場合, 従来のやり方では, クラス定義に戻ってサブクラス拡張を行わなければならず, クラス階層を熟知した上級のプログラマでなければ困難であった.本稿で提案するコンポーネント差分プログラミングでは, 拡張のための差分のみを持ったコンポーネント(ベクターコンポーネント)を開発し, それをプログラム中に挿入できる.本方式の基盤となるアーキテクチャとして, 筆者らは木構造をベースとした汎用的フレームワークNutsを開発した.Nutsでは, 部品組み立て型プログラミングをベースに複数の部品が組み合わさったものも一つの部品として振舞うようなフラクタルな構造を持つ.ベクターコンポーネントは, Nuts上の他のコンポーネントに対して透明で存在しないかのように振舞い, フレームワーク中のどこにでも挿入できる.挿入されたベクターコンポーネントは, 結合したコンポーネントに成りすまし, 一部の制御を横取りすることにより拡張機能を追加する.This paper proposes a new component architecture which supports differential programming at component composition level. Although the conventional differential Object-Oriented Development techniques are based on subclassing at the source level which required both programming language skills and detailed knowledge of library classes, our approach overperforms the conventional ones in the sense that we can prepare special components: vectors, which can be freely inserted into existing component structures and incrementally modify their target(base)components. This is attained by the following reasons: we use tree-structured generic component architecture: Nuts. In Nuts, a group of components substitutes other components topologically similar. When a vector is inserted at the root of subtree, it is invisible from lower (root-side)components, however freely intercept and modify messages to the subtree in order to extend its behaviors. Vectors are quite effective in adding various functions to GUI-based components. Thus, they are valuable tools to construct functional-rich component-based programs through incremental development.
著者
浜中 雅俊 平田 圭二 東条 敏
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:03875806)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.284-299, 2007-01-15

本論文では,音楽理論Generative Theory of Tonal Music (GTTM)に基づき,曲をフレーズ,モチーフなどに自動でグルーピングするシステムについて述べる.楽曲の切れ目を発見する手法は従来からも検討されてきたが,それらは主にメロディの局所的な境界を求めることが主眼であった.GTTMによるグルーピングでは,そのような局所的な境界を求めると同時に,メロディの繰返しなどを発見し,階層的な全体構造を獲得することを目的とする.しかしながら,GTTMは多数のルールから構成されており,その適用に関して優先順序が定義されていないため,グルーピング構造を獲得をするためにはこれまで恣意的・非手続き的な手作業が必要であった.この問題を解決するため,本研究では,計算機実装用にルールを再形式化したGTTMの計算機モデルexGTTMを提案する.exGTTMの特長は,ルールの優先順位を決めるためのパラメータを導入したことである.計算機上に実装したexGTTMを用いてグルーピング構造分析を行い性能を評価した. : This paper describes a grouping system which segments a music piece into units such as phrases or motives, based on the Generative Theory of Tonal Music (GTTM). Previous melody segmentation methods have only focused on detecting local boundaries of melodies, while the grouping analysis of GTTM aims at building a hierarchical structure including melodic repetition as well as such local boundaries. However, as the theory consists of a number of structuring rules among which the priority is not given, groups are acquired only by the ad hoc order of rule application. To solve this problem, we propose a novel computational model exGTTM in which those rules are reformalized for computer implementation. The main advantage of our approach is that we attach a weight on each rule as an adjustable parameter, which enables us to assign priority to the application of rules. In this paper, we show the process of grouping analysis by exGTTM, and show the experimental results.
著者
小鹿 明徳 Ojika Akinori 有田 隆也 Arita Takaya
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:03875806)
巻号頁・発行日
vol.38, no.8, pp.1509-1516, 1997 (Released:2008-09-12)

自然界に存在する生物の体表の模様は,蝶の羽に典型的に見られるように非常に多様である.これ らの模様は偶然性のみによって作られたものではなく,その生物の生息する環境や生存競争により, 自分にとって有利な模様へと進化した結果と解釈することができる.本研究では,このような進化を 引き起こす要因として捕食者と被食者間の相互作用に着目し,その共進化メカニズムを抽象化し,カ ラーパターンを生成,進化させるモデルを設計し,人工生命的手法を用いた創発システムを計算機上 に実現した.それに基づき,カラーパターン生成における共進化のダイナミクスを解析する. Surface patterns of Organisms that exist in nature are various, - for example those of butterflies. These patterns have been created not only by random processes but also by evolutionary processes based on the interactions between predators and prey. This paper reports our efforts to abstract the evolutionary mechanism of color pattern generation and color pattern recognition, and to construct a model in which coevolutionary dynamics automatically generates such various color patterns as is observed in nature one after another.
著者
金藤 栄孝 二木 厚吉
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:03875806)
巻号頁・発行日
vol.45, no.9, pp.2124-2137, 2004-09-15

Dijkstraのgoto文有害説とそれに引き続く構造的プログラミングの提唱以降,goto文の使用に関する問題は永く議論された.goto文の使用法に関し理論的裏付けを持つ研究としては,逐次的プログラムでの任意の制御フローは順次接続・条件分岐・反復の3基本構追のみで表現可能であるという結果に基づくMillsらのgoto文排斥論以外は皆無である. Dijkstra本来の正しさを示しやすいプログラムを害くための構造化という立場一つまりプログラム検証論の立場-からのgoto文使用の是非は考察されていない.本論文では検証手段としてのHoare論理に基づき有限状態機械モデルに基づくプログラミングでのgoto文の使用を検討する.その結果,状態をラベルで表し状態遷移をgoto文での飛び越しで行うプログラミングスタイルが,状態を表す変数を追加しgoto文を除いたプログラミングスタイルと比べ. Hoare論理による検証での表明が簡単で自然な形となり機械的検証の時間的コストも少ない.ゆえにプログラムの正しさの示しやすさという観点からは有限状態機械モデルに基づくプログラミングでの状態変数導入によるgoto文除去は有害でありgoto文を用いたスタイルの方が望ましいことを示す. : There have been a vast amount of debates on the issue on the use of goto statements initiated by the famous Dijkstra's Letter to the Editor of CACM and his proposal of "Structured Programming". Except for the goto-less programming style by Mills based on the fact that any control flows of sequential programs can be expressed by the sequential composition, the conditional (if-then-else) and the indefinite loop (while), there have not been, however, any scientific accounts on this issue from the Dijkstra's own viewpoint of verifiability of programs. In this work, we reconsider this issue from the viewpoint of Hoare Logic, the most standard framework for correctness-proving, and we see that the use of goto's for expressing state transitions in programs designed with the finite state machine modelling can be justified from the Hoare Logic viewpoint by showing the fact that constructing the proof-outline of a program using goto's for this purpose is easier than constructing the proof-outline of a Mills-style program without goto by introducing a new variable.
著者
新井 イスマイル 川口 誠敬 藤川 和利 砂原 秀樹
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:03875806)
巻号頁・発行日
vol.48, no.7, pp.2319-2327, 2007-07-15

近年,口コミ情報サイトを例とする,ユーザの行動を基にした店舗・施設の検索サイトが注目されている.これらの検索サイトでは,位置に基づいた検索が可能であることと,店舗・施設に対して複数のユーザからの第3 者の評価情報が取得できることが求められている.しかし,商用の検索サイトには広告収入や検閲の影響により,被評価店舗にとって不都合な情報が現れにくく第3 者の評価情報の提供に問題がある.また,従来の情報取得手法ではWWW 上の情報をすべて収集し,複雑な自然言語処理によって位置に基づいた評価情報を抽出する作業が必要となり,サービス構築コストが膨大となるという問題がある.そこで本研究では従来の全文型検索エンジンを活用し,目的の分野を示すキーワードと商用検索サイトを除外するキーワードを組み合わせることによって目的の第3 者の評価情報を収集する手法と,単純な形態素解析と文字列のパターンマッチングを用いた文字列処理によって住所を抽出する手法を提案する.この手法に基づいてWeb インデクサを評価した結果,一度の収集のうち44%が目的とする個人サイトであり,位置情報の取得再現率が59%という結果が得られた.
著者
中田 豊久 金井 秀明 國藤 進
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:03875806)
巻号頁・発行日
vol.48, no.12, pp.3962-3976, 2007-12-15

部屋の中でテレビのリモコンや携帯電話などをなくすことがある.本論文では,このような屋内での捜し物を手助けするシステムについて提案する.システムは,隠れた位置にある物であっても高い精度で位置を計測するために,超音波方式とActive RFIDからの計測値をパーティクルフィルタによって融合する.また,測定した位置をスポットライトで照らすことによって,ユーザに分かりやすく捜し物の位置を知らせる.このシステムを,構築した実験環境で性能試験を実施した.また,関連システムとの比較実験により,提案システムが捜し物を早く発見できることを明らかにした. : We propose a support system for finding lost objects indoors. The system employs active RFID and ultrasonic position detection to detect the position of a lost object. Even if a lost object is hidden by others, the system enables us to find the position by the two position detection devices. Since the system illuminates the position by using a spot of light, user can find it easily. From an experiment, we made clear ability of the system and the advantage of time to find it over a related system.
著者
Negishi Yasushi Kawachiya Kiyokuni Murata Hiroki TAGO Kazuya
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:03875806)
巻号頁・発行日
vol.41, no.10, pp.2881-2894, 2000-10-15

Progress in semiconductor technology has made it possible to build small network clients compact enough to be embedded in credit cards or wallets. These devices, which have severely restricted computing resources, are called "micro-clients." We propose an approach for building systems for micro-clients. The requirements of a system for micro-clients are as follows : (1)It must work with a small amount of memory and a low-power processor. (2)It must work even while the link is disconnected, because of the high cost of communication. (3)It must work with low-quality communication links. We introduce a software system called Tuplink that meets these requirements. The Tuplink system on the client node manages a central data pool to hold user and system information in an integrated manner. The server node also has a data pool for each client, and the contents of both pools are kept identical by means of a communication network. This server-side data pool makes it easier to build a system in which necessary functions are divided between server and client nodes. One-to-one communication between client and server is abstracted by a synchronization operation between the two pools in order to hide link management and communication timing from other subsystems. A communication protocol for synchronization, called the Tuplink protocol, is used to synchronize the two pools. Other subsystems, such as the RPC, file, and detabase systems, use the central data pool instead of their own buffers. The state of the communication link is hidden from other subsystems. We call this the "meta-middleware" approach. The Tuplink system meets the above requirements as follows : (1)Use of the central data pool eliminates duplication of buffers among subsystems and copying of data among buffers. (2)The system can operate while the link is disconnected by using the central data pool as a daga cache. (3)The synchronization protocol efficiently handles packet loss by using the central data pool as a communication buffer. We have built systems based on the Tuplink model, and applications for them on several platforms, including a smart phone, Palm III, and Windows CE. This paper discusses the approach and findings of the system implementation.
著者
中村 宏 近藤 正章 大河原 英喜 朴 泰祐
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌. ハイパフォーマンスコンピューティングシステム (ISSN:03875806)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.15-27, 2000-08-15
被引用文献数
21

近年のプロセッサは, クロック周波数の向上, 命令レベル並列性の活用などにより高性能化が図られているが, 一方で主記憶の性能はプロセッサほど改善されてはいない.特に, ハイパフォーマンスコンピューティングにおいては, このプロセッサと主記憶との性能格差の問題が深刻である.そこで, この問題の解決を目指した新しいプロセッサアーキテクチャSCIMAを提案する.提案するアーキテクチャは, プロセッサチップ上に主記憶の一部を実装するものである.本論文では, そのアーキテクチャの基本構成, およびシミュレータを用いた性能評価を示す.評価結果より, SCIMAは従来のキャッシュ型のアーキテクチャに比べ非常に高い性能を達成することが分かった.
著者
中田 尚 津邑 公暁 中島 浩
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌. コンピューティングシステム (ISSN:03875806)
巻号頁・発行日
vol.46, no.12, pp.98-109, 2005-08-15
被引用文献数
3

集積回路技術の進歩にともない, マイクロプロセッサの構造は高度化・複雑化している.このような高度なマイクロプロセッサの研究・開発や, それを組み込んだ機器のハードウェア・ソフトウェア協調設計においては, その機能・性能を検証するためのcycle accurateなシミュレータが不可欠である.しかし, 現状のシミュレータは一般に低速であり, 開発の効率化の障害となっている.これに対して, スケジューリング計算の高速化によりシミュレータの高速化が提案され, 効果をあげている.一方で, スケジューリング計算が高速化することにより, 命令エミュレーションの実行時間がシミュレーション時間全体に占める割合が相対的に大きくなっており, シミュレーションのさらなる高速化のためには, 命令エミュレーションの高速化が課題となっている.本論文では, 個々のワークロードに対して最適化されたシミュレータを生成することにより, 命令エミュレーションの高速化を図る.これにより, 可搬性を損なうことなくバイナリ変換を適用した場合と同等の高速化を達成することができる.SPEC CPU95ベンチマークを用いて評価を行った結果, SimpleScalarのsim-fastに対して, 最大34倍, 平均19倍のシミュレーション速度の向上が確認できた.
著者
遠藤 聡志 山田 孝治 亀島 力
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌. 数理モデル化と応用 (ISSN:03875806)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.110-118, 2004-02-15
参考文献数
15
被引用文献数
2

セルオートマトン(Cellular Automata : CA)を用いて複雑系現象を再現する場合,状態遷移則(CAルール)を解析対象に応じて適切に設計しなければならない.CAルール設計のテスト問題として,1次元CA密度分類タスクがある.このタスクは局所情報から大域的目的現象を再現しなければならないというCAルール設計特有の困難さがある.Juilleらの示した共進化モデルは,GAの解探索に加えて,解集団の効率的な進化を促す問題空間の探索を利用することで探索性能の改善を図り,当タスクのベストレコードを示すルールの自動設計に成功している.本研究では,CAルール群中の類似性を解集団(CAルール群)から抽出し,それらを「種」という形で具体化したうえで,すべての「種」を包含するような解を求める.この遺伝的操作は,現象内に内包される局所的規則性(サブタスク)を基にして,サブタスク解間のCAルール内での整合性を高めるものである.Juilleらの手法が問題依存型のクラスタリングとheuristicな適応度計算式の拡張を導人したのに対し,提案手法はモデル化する現象に応じたクラスタリングと,種統合のための適応度計算式の自動的な調整を行う点が特色である.
著者
佐々 政孝 中田 育男
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:03875806)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.124-127, 1986-01-15
被引用文献数
2

正規右辺文法とは, 生成規則の右辺に文法記号の正規表現を許すような文脈自由文法のことである. 本稿では, これに対するLRパーサを簡単に構成する方法を提案する. その基本は, 構文解析スタックと並行に, 生成規則の右辺から生成される記号の列の長さをカウントするためのスタックを設けるものである. この方法は, 構文解析の効率は最良ではないが, パーサの作成が簡単で, 通常のLRパーサに対する方法を若干精密化するだけですみ, 作成時に文法の変換やlookback状態等の計算が不要であるという特徴をもつ.
著者
加藤 直樹 中川 正樹
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:03875806)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.1536-1546, 1998-05-15
参考文献数
8
被引用文献数
15

本論文は, 表示一体型タブレットとペンを使用する環境におけるペンの操作性を検討し, ペンの特徴やペンUIを設計するときに考慮すべき点を明らかにする.現状のペンUIの多くはマウスUIで用いられてきた対話技法を流用しており, ペンの良さを引き出しているとはいえない.ペンはマウスとは異なったデバイスであり, ペンにふさわしいUIを構築する必要がある.そこで我々は, ペンとマウスの操作性を比較する実験を行った.実験は, ドラッギングでオブジェクトを移動するタスクと, 2つの対象をドラッギングとポインティングで選択するタスクについて行った.その結果, ほとんどの場合ペンはマウスより速く操作できるが, ドラッギングで正確さが要求される操作を行うとき操作回数が多くなること, 長い距離をドラッグする操作や, 右利きの人の場合, 右, 右下の方向への移動をともなう操作では操作時間が長くなるという欠点が明らかになった.このことから, 右・右下方向へ頻繁に移動する対話技法, たとえば従来のドラッギングで選択するプルダウンメニューなどは, ペンには向かないことが予想される.また, ペンはマウスより, 次の操作があらかじめ分かっているとき, 操作がより速くできるようになることが示された.
著者
近藤 弘一 笹田 昇平 小幡 雅彦 岩崎 雅史 中村 佳正
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌. コンピューティングシステム (ISSN:03875806)
巻号頁・発行日
vol.48, no.8, pp.216-225, 2007-05-15
参考文献数
13

本論文では非可逆画像圧縮におけるKakarala-Oeunbona (KO)の画像分解アルゴリズムを考える.KO分解では行列の特異値分解(SVD)を利用した主成分分析が行われ,2次元解散ウェーブレット変換と同様な多重解像度解析が可能である.左特異ベクトルをフィルタとして利用することが特徴である.一般に特異値の近接度が高いとき,SVD数値計算アルゴリズムによって特異ベクトルが高精度に求められるとは限らない.本論文ではKO分解における特異値の近接度を低減させるアルゴリズムを提案する.元画像に対してランダム模様のふちどりを追加することで特異値分布を変化させる.数値実験によりその効果を示し,圧縮画像の誤差評価を行う.さらには,フィルタ行列の量子化について議論する.