著者
鈴木 信治 稲波 進 桜井 康雄
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.33-41, 1969-04-20
被引用文献数
6

アルファルファの60品種について,'65年と'66年に生育特性を検討し,品種を5群に群別した。その群別経過と各群品種の生育特性は次の通りであった。1.春の草丈伸長経過,草勢,刈取り後の再生,秋の草丈,草勢など14項目の調査形質にそれぞれ著しい品種間差異が認められ,各間の相関も高かった。2.群別の指標としてこれら形質を用い,その分級基準にしたがって区分し,最終的に群別指数を算出した。群別はこの群別指数によって行なった。3.I群品種は直立型で萠芽が早く,秋おそくまで生育し,夏の再生もよい。すなわち環境条件に鈍感な特性をもち極暖地適応品種と推定された。II群はI群ほど極端ではなく暖地適応品種と推定,III群は中間地に適応し,IV群はやや寒地型である。V群は葡伏型で萠芽,再生とも緩慢で刈取り利用期間も短く,環境に敏感に反応する寒地適応品種群と考えられる。4.以上の群別により品種の特性比較が容易になり,従来より幅広く,かつ系統的に暖地適応品種を知り得た。
著者
新発田 修治 嶋田 徹
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.102-108, 1986-07-31
被引用文献数
5

世界各地から収集したオーチャードグラスの27品種について,秋季の炭水化物含有率,耐凍性,および雪腐大粒菌核病抵抗性を調査し,これら3形質相互の関連について検討した。初秋に播種した幼植物の越冬前における耐凍性は品種によって異なり,1月の平均気温が低い育成地の品種ほど耐凍性が大きかった(r=-0.707)。幼植物の炭水化物含有率は,いずれの品種も還元糖(RS)<非還元糖(NS)<全糖(TS)<フクトサン(FS)<水溶性炭水化物(WSC:TS+FS)の順に高かった。RSを除くこれら画分と耐凍性との間には有意な正の相関々係があり,とくにWSC含有率との間に最も高い相関係数(r=+0.673)が得られた。また,各画分と乾物率との間にも有意な正の相関々係があり,特にWSC含有率と乾物率との間に最も高い相関係数(r=+0.710)が得られ,乾物率からWSC含有率を推定しうることが示された。17品種の雪腐大粒菌核病の被害率を消雪期に調査する方法で雪腐大粒菌核病抵抗性を検定したところ,北欧産,北米産および北海道産の品種の抵抗性が高かった。耐凍性が高い品種ほど被害率が低かった(r=-0.617)。またNS,TS,FS,WSC(r=-0.657)含有率が高い品種ほど被害率が低かった。これらの結果から,土壌凍結地帯で,冬枯れ抵抗性品種を育成する際には,選抜の指標としてWSC含有率が一つの目安となり,その推定法として乾物率が有効であることが示唆された。
著者
阿部 二朗 松本 直幸
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.152-158, 1981-07-30
被引用文献数
4

雪腐小粒菌核病(Typhula ishikariensis,T. incarnata)に対するオーチャードグラスの抵抗性検定法を確立すると共に,品種間変異を明らかにし,越冬性との関連を考察した。幼苗検定法:10週間温室で育てた幼苗をハードニング(3℃・8時間日長・14日間)した後に,雪腐病菌のinoculumを0.05-0.1g/cm^2の密度で人工接種した。接種した植物をT. ishikariensisについては65日間,T. incarnataに対しては80日間戸外の雪中に埋めた。雪中から堀出された植物は地上部を刈取った後に,1ヵ月間温室で再生育させた後に生存率を調査した。雪腐病抵抗性と越冬性:厳寒でかつ積雪量に富む地帯の品種であるLeikund,Tammisto,Kayは,抵抗性と越冬性共に優れていた。しかし,T. incarnata抵抗性においては南欧産品種の中には抵抗性が優れた品種(Dora,Montpellier)もあり,越冬性やT. ishikariensis抵抗性との間の相関を低下せしめた。しかし,全体としてはTyphula属による雪腐病に対する抵抗性は,越冬性との間には高い相関が示され,札幌におけるオーチャードグラスの越冬に雪腐病が最も大きな影響を及ぼしていると見られる。
著者
西田 智子 原島 徳一 北原 徳久 柴田 昇平 北川 美弥 山本 嘉人
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.555-562, 2004-02-15
被引用文献数
1

永年草地の多年生雑草であるワルナスビについて,その播種時期とワルナスビの播種当年4月に播種したオーチャードグラスとの競合が出芽および生育に及ぼす影響について調査した。プラスティックコンテナを使い,ワルナスビ種子を4-8月までほぼ1ヶ月おきに裸地条件(裸地区)とオーチャードグラスとの競合がある条件(OG区)で播種した。裸地区では,7月播種区を除いて80%以上の出芽率であった。一方OG区では,5月播種区までは45%以上の出芽率となったが,それ以降はほとんど出芽しなかった。播種翌年の5月末における萌芽数は,裸地条件4-6月播種区では,播種当年に出芽した個体のほぼ全部が萌芽したと考えられたが,OG区ではほとんど萌芽しなかった。播種当年9月および翌年5月におけるワルナスビの生育は播種月が早いほど優っており,裸地区ではそれが顕著であった。OG区の生育は裸地区に比較して非常に少なく,生育量の傾向は播種翌年の5月における萌芽数の傾向と良く一致した。以上の結果から,OGが繁茂した草地でのワルナスビ実生の定着は困難なものと推察された。
著者
青田 精一 渡辺 好昭 石田 良作
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.52-58, 1985-04-30

低湿重粘土転換畑における飼料作物の地下部生育の年次変化及び種間差と土層酸化の関係について4カ年検討した。試験は長大作物(トウモロコシ,ソルガム),暖地型牧草(ローズグラス,グリーンパニック)と,参考に大豆の5種を供試して,当地の標準耕種法で栽培した。播種は5月中旬,刈取時期はトウモロコシ黄熟期,ソルガム出穂期に2回,暖地型牧草は3回,大豆は成熟期で,根系及び土壌調査は10月上旬一斉に行った。地上部収量は長大作物が勝ったが,根重は長大作物より暖地型牧草が多かった。各作物を通じ,転換1年目は根の上層分布割合は高く,最長根も非常に浅いなど,根の伸長阻害がみられた。転換後の経過年次とともに根は深部に伸長し,根圏の拡大がみられるが,その過程は急には進まなかった。作土下の伸長根の分布をみると,ソルガムは転換2年目,暖地型牧草は3年目で,前作物の水稲根跡の空隙を通過して深部に満遍なく伸長する根がみられるが,トウモロコシと大豆では伸長根の大部分が亀裂中に分布するなど種間差が明らかであった。最長根は4ヵ年を通じ,ソルガム>暖地型牧草>トウモロコシ>大豆の順に深く伸長した。また土層の酸化は最長根長に全く一致する形で進み,土層酸化に及ぼす伸長根の影響が推察された。しかし,亀裂の深さは大豆で最も進み,土層の乾燥過程は種間差が明瞭であった。作物の蒸散による土中からの吸水をpFの推移からみると,下層ではソルガムが供試作物中最も多かった。一方裸地区のpFは作付区に比して著しく低く,植生による土層からの吸水が確認された。
著者
澤田 均
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.370-375, 1991-01-31

本研究は,ペレニアルライグラスの空中分げつの発生と,その潜在的な散布距離を明らかにすることを目的とした。牛と羊をそれぞれ集約的に放牧管理している草地を調査対象として,1988年と1989年の11月にペレニアルライグラスの空中分げつを調べた。空中分げつは両年とも頻繁に観察された。栄養繁殖体(空中分げつ)をもつ親分げつは,通常,その先端部にただ1個の栄養繁殖体を出現させた。栄養繁殖体の潜在的な散布距離は平均4.5-4.8cm(1988年),3.6-4.2cm(1989年)と短いが,最大値はそれぞれ15.0cm,15.5cmにも達した。栄養繁殖体の密度は空間的に著しく異なり,1988年は0.0-34.4/m^2,1989年は0.0-57.8/m^2であった。空中分げつによる栄養繁殖は,調査したペレニアルライグラス個体群の大きさを維持する上で,意義のあるものと考えられた。
著者
細川 吉晴
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.226-233, 1988-10-31
被引用文献数
1

草丈の異なる条件下で育成牛群に対する牧柵の隔障機能を検討した。試験は草丈60〜70cm,30〜40cmおよび20〜30cmの3時期に240m^2の試験区内に平均体高110cmの育成雌子牛24頭を夕刻から翌朝までの15時間放牧し,採食跡の平面,立面的分布と架線弛みを測定した。牧柵構造は有刺鉄線4段張り,架線間隔および柵柱間隔をそれぞれ3水準とした。その結果,草丈の高い時期には牧柵構造の違いが顕著で,架線高さが30,55,80,120cmの柵柱間隔4mの牧柵や架線高さが30,50,75,110cmの柵柱間隔4mおよび5mの牧柵では,牛群の柵外への採食行動は規制され,架線高さ30〜80cm間を狭めた効果を認めた。柵外への採食行動は柵柱間隔が広いほど柵外80〜100cmまで行われた。一方.草丈が40cm以下の植生条件では牧柵構造の違いによる牛群の採食行動の差異は認められなかったが,採食跡は柵外80cm付近まで認められた。放牧試験中の牛群の脱柵はなく,成牛に適用した牧柵構造は育成牛群にも適用できるが,草丈が低い場合に30〜80cm間の架線の隔障効果は明らかでなかった。また,既報の成牛での試験結果から,柵外の採食跡が牧柵ラインから離れているほど架線の弛みの大きくなることが想定されたが,両者の間に相関はなく,牛群れの体高が成牛よりも15〜16cm低かったことから,育成牛群はいろいろな高さの架線の間から柵外へ任意に採食したものと考えられた。
著者
細川 吉晴
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.409-414, 1988-03-20
被引用文献数
2

放牧牛の頭出し行動を規制する牧柵構造を把握するために,柵柱間隔4,5および6mで架線高さ30〜80cmの間隔を狭めた有刺鉄線4段張り牧柵に,日本短角種と黒毛和種の各々成雌牛2頭ずつを供試して試験を行った。なお,架線の高さは慣行型が地上30,30,30,30cmで,試作I型が30,25,25,40cmで,試作II型が30,20,25,35cmである。放牧牛の架線間からの頭出し回数は,柵柱間隔が短くなるほど少なくなり,試作I・II型が慣行型よりも少なくなり,30〜80cmの架線間隔を狭めた効果がみられた。架線張力の低下は頭出し回数が少なくなるほど小さくなり,試作II型が最も小さかった。架線間からの最長頭出し時間は,日本短角種が30〜80cm間に1頭・試験当たり約20秒以内であり,黒毛和種が0〜50cm間に約10秒以内で,試作II型の柵柱間隔4mの場合はほかの牧柵と比べて最も短かかった。また,有刺鉄線4段張り牧柵では,隔障機能の指標として積算頭出し時間(試験時間180秒間)を検討した結果,この数値の上限値が90秒の柵柱間隔4mの試作II型が最も脱柵を規制する構造であると思われた。
著者
清水 矩宏 田島 公一
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.151-157, 1974-11-25

エゾノギシギシ(Rumex obtusifolius L.)の休眠性の確立と種子の含水率の関係を明らかにするため,種子形成過程の各時期に種子を脱粒し,風乾状態におき,その風乾過程での含水率と発芽習性の変化を検討した。また,完熟後も母体に着粒した状態で経過する種子についても同様に検討した。結果の概要は次の通りである。1)種子形成過程の第3期のはじめにあたる開花後30日目の種子は,脱粒時は,含水率が60.7%であり,光発芽も20℃および25℃ともに同程度で,光発芽可能温度域は広かった。しかし,以後の風乾過程の経過につれて,高温部の発芽のみ顕著に低下し,発芽温度域の縮少がみられ,休眠性の確立が認められた。2)同時に,この風乾過程において,20℃下での発芽速度が風乾時間の経過とともに速くなった。3)さらに,脱粒後の風乾過程のいかなる時期においても,暗黒中では発芽が見られず,光反応性に変化はなかった。4)開花後日数を異にする種子の脱粒後風乾過程での発芽習性の変化を検討した結果,種子形成過程の第2期末以降に達している種子は,上記1)と全く同様の傾向を示したが,第2期にあたる種子では,含水率が低下するにもかかわらず脱粒時に見られた25℃下での高発芽率が風乾過程においても消失しなかった。5)完熟後も母体に着粒した状態で後熟過程を経過する種子は,質,量ともに脱粒する種子と差異はなく,また時間の経過とともに高温部での光発芽が発現し,増大することが認められた。6)18℃下での発芽速度は,完熟後の比較的早い時期において,その速度が徐々にはやくなり定常状態になることが判明した。7)完熟後母体付着状態で経過する種子を強制的に脱粒して風乾状態においても,含水率および発芽習性に何ら大きな変化はみられなかった。
著者
奥 俊夫 前田 泰生 小林 尚
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.177-182, 1972-10-25

盛岡市下厨川において,ラジノクローバ単播,およびラジノクローバ・オーチャードグラス混播草地におけるウリハムシモドキの,越冬後の密度減少過程を5年間にわたって調査し,次の結果を得た。1.卵期から幼虫中期までに約70%の密度低下があり,4月末から5月前半にかけての降雨が皆無に近い年にはさらに密度が低下した。2.幼虫中期から成虫の羽化までの間には,普通には密度の変化がとぼしいが,大発生の翌年から単播区に黄きよう菌による死亡率が非常に高まり,その後しだいに寄生率が低下した。3.成虫期間中の密度低下のうち,もっとも顕著であったのは,大発生時の過密による移動であった。4.成虫に対するヤドリバエ一種の寄生率は成虫末期に高まったが,10数%をこえず,また中期以前の寄生率は非常に低かった。
著者
川鍋 祐夫 祝 廷成
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.91-99, 1991-04-30
被引用文献数
13

乾燥地に生成する草原は不適当な利用により砂漠化を招きやすいが,中国では草地など土地の不毛化を三化(退化,塩化,砂漠化)として警戒し,その対策を立てていて,生態学的な調査研究が多く行われている。中国東北部から内蒙古の半乾燥地帯に広く分布する羊草(シバムギモドキ,Aneurolepidium chinense)草原は良質の飼料を家畜に供給し,流通にも供する重要な草資源であるが,最近生産力の著しい低下が憂えられている。このため草地の永続的な利用を可能にする,保全を考慮した適正な利用方法,利用強度を探る第一歩として本研究を行なった。調査地は長春の北西約150kmにある吉林省,長れい種馬場の羊草草地で,やや湿潤な低平地に土壌的極相として成立し,排水良好な固定砂丘上には楡の林が成立している。多年にわたり無管理のまま採草,放牧が繰り返されてきて,過去40年間に生産力が半減したといわれている。この2,000haの草地のうちに,過去5年間利用を禁止した保護区,年1回刈取りする刈取り区,放牧地のうち羊草があり植生被度の高い放牧A区,羊草がなく裸地の多い放牧B区とを設けて,1985年,ライン法により植生を調査した。その結果,刈取り区は羊草が優占し,著しい植生の退化を起こしていないが,放牧区では撹乱が著しく,優良野草の羊草が減少し,耐アルカリ性の草や1年生の草が侵入していた。特に,放牧B区では羊草が消失して,草丈数cmのSuaeda glaucaが優占し,牧養力を殆ど失っていた。羊草の草勢が減退して消失し,アルカリ性土壌に適応するSuaeda glaucaにおきかわったのは,過放牧による土壌の劣化が関係しているとみられた。退化草地の復元と生産力の向上のため,耕起,粗耕,施肥,播種,潅漑等土壌改善を含む更新法が多く試験され,ある程度の効果を収めているが,牧養力に見合った放牧強度に調整すること,採草地と放牧地との輪換等,放牧システムの改善が基本になると考えられた。
著者
玉置 宏之 吉澤 晃 鳥越 昌隆 佐藤 公一
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.130-135, 2002-06-15
被引用文献数
1

チモシー1番草の耐倒伏性の効果的な改良方法について知見を得るため,栄養系およびその後代系統の耐倒伏性の指標を調査した。後代系統の倒伏程度は6-10日間隔で3回調査されたが,その傾向は互いに異なっていた。またその親子相関は,耐倒伏性の指標を調査した時の生育ステージの親子間差が最も小さい場合に最も高かった。以上のことからチモシー1番草の耐倒伏性は,生育ステージごとに異なる要因によって支配されているため,その調査は各生育ステージごとに行われるべきであるが,それら個々の要因の狭義の遺伝率が高いため,1回の個体選抜でも相当程度の改良が期待できると考察された。
著者
玉置 宏之 吉澤 晃 鳥越 昌隆 佐藤 公一 下小路 英男
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.136-141, 2002-06-15
被引用文献数
1

採草用チモシーにおける1番刈後の競合力の効果的な改良方法を検討するため,同一の後代系統を単播条件とシロクローバとの競合条件の2つの試験に供試した。両試験および後代系統の親栄養系に対する調査から,2番草競合力は狭義の遺伝率の高い形質であること,3番草競合力は2番草ほど重要でないこと,および競合条件の試験を行わずに競合力を的確に推定することは困難であることが結論された。これらのことからチモシーの競合力は,それが競合条件下で検定されていれば,1回の個体選抜でも相当程度改良できると考えられた。
著者
足利 和紀 玉置 宏之 出口 健三郎 佐藤 公一
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.19-23, 2008-04-15
被引用文献数
4

チモシー1番草における栄養価関連形質の広義および狭義の遺伝率を把握するため,15の栄養系とその後代系統を同年同一圃場で栽培し,近赤外分析法(NIRS)を用いて栄養価関連形質を推定した。その結果,栄養価に関する3指標(低消化性繊維(Ob)/細胞壁物質(OCW),0b含量および可溶性炭水化物(WSC)含量)は(1)狭義の遺伝率が高く,(2)指標相互間の遺伝相関は効率的な並行改良が可能である相関か,もしくは弱い相関で,(3)同一熟期内であり,収量性で選抜がなされた材料においては,乾物重とこれらの指標との遺伝相関は弱かった。したがって,これら3指標を用いた個体選抜で効率的な改良が可能であり,また指標相互間の並行改良および収量性と栄養価の並行改良は可能である,との結論に達した。
著者
玉置 宏之 吉澤 晃 藤井 弘毅 佐藤 公一
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.52-54, 2004-04-15

チモシー種子収量性の効率的改良に供するための簡易検定法の開発を試みた。チモシーの種子収量は1穂種子重,さらには穂1cmあたり種子重(種子密度)と密接に関連しているため,少数の穂から実際に採種を行い,その1穂種子重や種子密度を調査する方法が簡易検定法として適当と考えた。この考えに基づき,圃場の株から引き抜かれた節間伸長茎を以後温室内で水栽培する方法の有効性について検討した。2002年5月に圃場から引き抜かれた節間伸長茎を温室内で採種時まで水栽培した結果,それらの1穂種子重と種子密度は,特に2000年の圃場試験の結果とよく一致したため,この方法はチモシー種子収量性の簡易検定法として有効であるとの結論に達した。
著者
玉置 宏之 吉澤 晃 藤井 弘毅 佐藤 公一
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.47-51, 2004-04-15
被引用文献数
1

牧草の種子収量性は茎葉の収量性ほど考慮されないが,牧草品種の商業的な成功には種子収量性も重要な要素である。チモシー種子収量性の年次変動と狭義の遺伝率を調べるため,栄養系とその後代系統を採種試験に供試した。その結果,チモシーの種子収量性には(1)試験年次など,環境が変わることにより序列が大きく変化しうること,および(2)同一環境条件下で評価・推定される狭義の遺伝率が高いこと,という2つの特徴があり,したがってその効果的な改良のためには,1回の検定を基に選抜を行う場合は複数回の選抜が必要となり,また1回の個体選抜しか行わない場合は複数の環境条件下における検定が求められる,との結論に達した。
著者
山本 嘉人 斎藤 吉満 桐田 博充
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.124-129, 1997-07-30
参考文献数
21

施肥量が異なる2つの放牧草地内の禁牧区と刈取区において,内視鏡を用いて根の観察を行い,施肥および刈取が根の発生・消長の動態に及ぼす影響を明らかにした。禁牧区の根の伸長速度は,施肥量に関わらず4〜6月と10〜11月にピークをもつ2山型の季節変化を示した。刈取区の伸長速度は,4〜5月のピークの後,刈取2週間後に上昇する傾向がみられ,3〜4山型の季節変化を示した。刈取区の根の枯死速度は刈取後にやや上昇した。根の年回転率の垂直分布は,地表に近づくほど高くなる傾向がみられ,とくに多肥区において顕著であった。1986〜87年の全層の回転率は,少肥・禁牧区で0.88〜1.05/年,少肥・刈取区で0.80〜1.28/年,多肥・禁牧区で1.15〜1.36/年,多肥・刈取区で1.14〜1.57/年であり,多肥条件でやや高かった。