著者
吉田 重方
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.20-28, 1988-05-31
被引用文献数
2
著者
水野 和彦 塩谷 繁 藤本 文弘
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.316-324, 1997-10-31
被引用文献数
6

オーチャードグラスの国内外の延べ16品種を対象に,5年間にわたり延べ17の農業形質を調査し,主にホルスタイン種育成雌牛で評価した嗜好性との関係を解析した。出穂期の嗜好性は品種の出穂茎率と高い相関を示した。栄養生長期の再生草の嗜好性は,その品種の手触りによる茎葉の柔軟性,耐病性(初夏の雲形病,夏の葉腐病,夏から秋のさび病)及び枯れ葉率と比較的高い相関を示し,これらの形質には品種間差異も存在したことから,今後嗜好性の選抜指標として有用と考えられた。葉の形態的形質(葉幅,葉厚,葉長及び鋸歯,毛茸)については,いずれも嗜好性との相関は認められなかった。高嗜好性品種Ludeは,柔軟性が高く,耐病性に優れていた。
著者
田中 弘敬 宝示戸 貞雄 大竹 茂登
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.184-188, 1971-10-29

オーチャードグラス育種における早期検定を有効にするため,幼苗期および成体期の諸形質の関係を明らかにしようとした。前報で供試した材料を幼苗試験終了後本圃に70cm×80cmの個体値えとして定植し,個体ごとの生草重,草丈,茎数多少などの諸形質を2年間にわたり調査した。1.幼苗期12形質と成体期時期別生草重との重相関係数は一般に,あまり大きくはなかったが,品種群をこみにした場合,長日区で2年間生草重と0.56の有意な相関が得られた。年については利用1年目,2年目とも全体としては類似の傾向であったが,重相関係数の値そのものは2年目の方がやや小さくなった。処理の比較では長日,対照,短日の順で,幼苗期に長日処理をおこなった区が重相関係数が大きかった。品種群についても差がありそうでとくに地中海産のものの値が大きかった。2.幼苗期9形質と成体期諸形質(生草重以外)との第1正準相関係数は0.6〜0.8でやや大きかったが,第2,第3正準相関係数は,次第に小さくなった。やはり幼苗期に長日処理をおこなった区が正準相関係数も最も大きい傾向があった。品種群については,地中海産のものが第1正準相関係数は他群に比べ大きかったが,第2および第3正準相関係数でははっきりしなかった。3.幼苗期諸形質の中では葉長および草丈が成体期諸形質との関係が最も深いがその他の幼苗期形質は関係がごくうすく,当面,これらの形質が重要であることが判った。
著者
石川 圭介 北原 理作
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.193-199, 2012-10-15

日本の畜産現場におけるニホンジカ(Cervus nippon)による被害には,牧草の食害や家畜への感染症伝播の問題がある。広い草地をシカから守る手段として,イヌ(Canis familiaris)の利用が注目されつつある。本稿では,この古くて新しい技術,イヌを用いたシカによる被害対策を日本で試みている2つの事例を紹介する。1つはイヌを用いた草地防衛の事例で,警察犬の訓練技術を応用して草地からシカを追い払う試みである。もう1つは北海道の事例で,草地に出没するシカを牧羊犬による追い込みで捕獲し,積極的に資源として利用する試みである。
著者
矢野 明
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.261-264, 1973-10-25
被引用文献数
2

傾斜地を耕起して牧草を播いた場合,種子の発芽および定着が,しばしば不揃いとなる。この原因を調べる目的で,イタリアンライグラスを用いて実験を行ない,次の結果を得た。(1)種子の発芽率が80%を越える時の吸水率は,有〓種子で79%,脱〓種子で74%であった。(温度25℃)(2)日中の最高気温が30℃の時に播種したら,地表の湿度が約90%であれば正常に発芽したが,60%〜70%の湿度では発芽がきわめて悪かった。(3)土塊の直径が5mmより小さい時は,土壌水分が多い時に限り,地表で発芽することができた。(4)土塊の直径が10mm〜20mmであれば,種子が土塊の間隙内に入るので,土壌水分が少なくても,発芽できることを認めた。
著者
佐藤 庚 西村 格 高橋 正弘
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.14-19, 1965-06-30
被引用文献数
1

マメ科牧草の維持管理が比較的むずかしい火山灰土の川渡農場で,イネ科牧草に窒素を多用して,マメ科を混播した場合と同様な乾物収量や蛋白質生産を得ることの可否を明らかにする目的で,圃場試験を行なった。試験期間は1962年秋から,1964年秋に至る3年間である。Orchard単播,Orchard-Perennial ryegrass混播,Orchard-Perennial ryegrass-Redclover-Ladino clover混播の3草地を設け,これに3段階の窒素施用を行い,年間4回の刈取を行なって,乾物生産,粗蛋白質生産,およびこれらの年間の分布,草種組成の変遷,個体密度の変化を調べた。(1) 2年間の収穫を通じて総乾物生産は,少窒素の場合には,マメ科を混ずる草地のほうが収量が高まるが,多窒素になると両者間の差異は明瞭でなくなった。粗蛋白質生産においても,少窒素の場合,マメ科を混ずる効果が特に大きいが,多窒素ではほとんど差が見られなかった。従ってマメ科を混播しなくても,窒素を多用すれば,イネ科牧草のみで乾物ならびに粗蛋白質の生産を多くすることは可能であると考えられた。殊に雑草の飼料価値を考慮に入れると更にこれらの生産が高いといえよう。(2)イネ科のみの草地では,窒素を多用するほど夏を経過する過程で牧草の個体数が激減し,最終刈取期の牧草生産も急減した。同時に雑草の著しい侵入を受けた。しかるに翌春1,2番刈には再び牧草収量は回復した。従ってこの草地では年間収量は1,2番刈収量に左右される。少窒素の場合には個体数の減少が少ないので年間を通じて安定した生産をするが,年間の総乾物量および粗蛋白質の生産はやはり少窒素ほど少なかった。マメ科を混ずる草地でも同様の傾向を認めたが,窒素を多く与えた場合の刈取毎の収量の変動はイネ科草地ほど大きくはなく,初年度は雑草の侵入もなかった。(3)高温,乾燥の長引いた1964年においては,Perennial ryegrass,Red clover,Ladino cloverなどはOrchardgrassに比べて個体の減少が著しかった,この地帯でのイネ科牧草としてはPerennial ryegrassはあまり期待がもてないようである。(4)マメ科を混ずる草地では窒素の多用につれてマメ科の生長が抑制されると共に,イネ科の播種量がイネ科単播の場合より少ない時には,イネ科牧草の生産量も著しくは増えず,結局窒素多用の効果が顕著に表われない。
著者
権藤 崇裕 石井 由紀子 明石 良 川村 修
出版者
日本草地学会
雑誌
Grassland science = 日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.33-37, 2003-04-15
被引用文献数
4

バヒアグラスの形質転換系を確立するために、小粒状カルスの効率的な誘導法および遺伝子導入条件について検討した。固形および液体培地誘導法によりカルス誘導を行ったところ、液体培地誘導法において短期間で効率的にカルスが形成され、多くの植物体を再生させることができた。また、液体培地誘導法により得られた小粒状カルスを用いて0.6Mの浸透圧処理を行うことで、従来のカルスよりも高い一過的GUS発現を得ることができた。さらに、barおよびGUS遺伝子を保持するプラスミドpDBlを用いて形質転換を行ったところ、2個の形質転換カルスが得られたが、再分化した個体は全てアルビノであった。しかしながら、これらの再分化アルビノ個体ではGUS発現が認められ、PCRによって導入遺伝子のbar(402bp)およびGUS遺伝子断片(1.1kbp)を検出することができたことから、本手法はバヒアグラスに十分適用できるものと考えられた。
著者
藤井 弘毅 山川 政明 澤田 嘉昭 牧野 司
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.27-36, 2002-04-15
被引用文献数
2

シロクローバ混播,年間5-6回の多回刈り処理を加えた条件下で,チモシーおよびメドウフェスクの乾物収量,草種構成割合の季節的推移を調査した。また,その草種間差異と単播条件下における草種の刈取り時の生育段階,分げつ数,平均1茎重,畦幅(株の広がり),草丈伸長速度,乾物重増加速度(CGR),および基底部の乾物重(刈株重),非構造性炭水化物(NSC)および窒素の含有率および含有量の推移との関連性を検討した。なお,用いた品種はチモシー「ホクシュウ」,メドウフェスク「トモサカエ」,シロクローバ「ラモーナ」であった。また単播区では手取り除草を実施した。その結果,単播条件下では4年目まで欠株は発生せず,刈取り時の1m^2当たりの総分げつ数も2,000本前後の値を下回ることはなかった。一方混播条件下では,単播条件下に比較して,メドウフェスク区よりもチモシー区において,チモシーの乾物収量の減少割合が大きく,とくに3年目の7月(本研究では4番草)以降,その傾向が顕著になった。このことは,混播条件下では,チモシーおよびメドウフェスクの草丈のような上方向への伸長生長よりも,被度が著しく低下したことに起因していた。この被度低下の車種間差異は,刈取りの影響によるよりも,主としてシロクローバに対する競争力の差異を反映したものと考えられた。シロクローバ混播条件下におけるチモシーおよびメドウフェスクの乾物収量および構成割合の季節的推移にみられた草種間差異は,株の広がり,草丈伸長速度,CGR,刈株重,NSC並びに窒素の含有率や含有量よりも,分げつの再生の態勢の草種間差異との関連性が高いことが示唆された。すなわち,4番草(7-8月に生育した)の再生に影響を及ぼしたと思われる3番草(6-7月に生育した)の刈取り時の節間伸長茎率は,チモシーの方がメドフェスクよりも高い値を示し,一方では,刈取り後,再生可能な栄養生長茎の数はチモシーの方が少なく,その1茎重もメドウフェスクに比較して小さいことから,刈取り後は再生力が劣り,シロクローバに対する競争力が劣ったと考えられた。このことから,当該時期における分げつ数の確保が,その後の生産量を決定する要因の一つとして重要であることが示唆された。
著者
小路 敦 須山 哲男 佐々木 寛幸
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.88-91, 1999-04-30
被引用文献数
6

野草地景観を経済的に評価するため, 環境などの公共財を経済的に評価するのにもっとも適しているとされるCVMを適用した。評価対象は, 野草地景観の衰退が著しい島根県三瓶山の野草地とした。アンケート調査は, 雄大な野草地景観が見渡せる西の原駐車場付近において行い, WTPのほか, 被験者の属性や意識についても問い, これらを変数としてWTPの中央値・平均値を推定した。ロジスティック回帰分析の結果, 一人あたりの年間WTPは, 中央値で3,674円, 平均値で6,497円と算出された。無雪期間の年間来訪者数627,500人を掛け合わせ, 年間中央値で約23億円, 平均値で約40億7千万円の価値が三瓶山の野草地には潜在すると算出された。
著者
川鍋 祐夫 押田 敏雄 祝 廷成 白 暁坤 〓 玉龍
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.93-100, 1993-06-25
被引用文献数
4

中国東北部などに分布する羊草草地は,かつて家畜に良質の飼草を供給したが,不合理な利用のためアルカリ化による退化が著しいといわれる。その実態を把握し,退化とアルカリ化の関係を明らかにするため,黒龍江省の安達および大慶において植生と土壌の調査を行った。採草地は退化が明瞭でなかったが,放牧地は退化しており,裸地の割合は退化が軽い場合では27-33%,酷い場合では47-78%であった。退化した草地の草種組成は,羊草などアルカリ耐性の弱い種が減り,Chloris virgataなどの一年生や,Polygonum sibiricumなど強アルカリ耐性の種が侵入していた。裸地は植被地より低い所にでき,土壌のpH,電気伝導度,硬度が高く,塩類集積によるアルカリ化や物理性の悪化がもっとも進んでいた。裸地の周辺に同心円状または帯状に異なる植生が配列するのが観察され,微地形が関係した土壌アルカリの微妙な傾度が,種のアルカリ耐性の強弱と対応して植生型の分布に影響していると考えられた。これらの結果から,植生の荒廃と土壌の物理・化学性の悪化が相伴って草地生態系の退化を引き起こしていると考えられた。
著者
三股 正年 高野 信雄 山下 良弘 宮下 昭光
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.187-197, 1967-02

1)蹄耕法による草地造成の適用性を明らかにするため,長草型野草地で慣行機械処理による造成草地と対比しながら3カ年試験を行なった。2)造成時における播種牧草の定着数は蹄耕区では114本/m^2(イネ科草78,マメ科草36)であったが,ストッキングを行なわない場合には51本/m^2と1/2以下であった。デスクハローにより播種床を造成した地表処理区は242本/m^2であった。3)蹄耕区,地表処理区ともに初年目2回,2年目5回,3年目6回草生に応じて利用率65%程度の放牧を行なった。これらの結果は2年目の第1回の放牧時には蹄耕区83.7%の牧草率(マメ科草率54.3%)を示して良好な草生となり,地表処理区とほぼ同様な良好な草地造成が達成された。4)3カ年間の牧養力では,自然区はha当り採食利用草量36.6トンで693頭の放牧がなされた。蹄耕区は107.5トンの利用草量で1,642頭,地表処理区で117.4トンの草量と1,817頭の放牧ができた。5)刈取り法による3カ年平均の1日1頭(体重500kg換算)の採食栄養量は自然区でDM 12.4,DCP 1.56,TDN 8.41各kgであり,蹄耕区ではDM 9.2,DCP 1.91,TDN 6.97各kgであった。地表処理区ではDM 7.6,DCP 1.89,TDN 6.06kgであった。6)蹄耕法による草地造成は,火入れ後に燐酸を主体とする施肥と地表播種を行ない,ha当り延70頭(体重500kg換算牛)のストッキングによって牧草種子の土壌への密着を図る。その後は草生に応じた放牧利用によって良好な草地の造成が可能であることが立証された。7)蹄耕造成法において,今後はストッキングの時期,ストッキング後の第1回放牧のタイミング,ストッキングの強さ,施肥量などについて検討する必要がある。
著者
山本 嘉人 斎藤 吉満 桐田 博光 林 治雄 西村 格
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.307-314, 1997-01-31
被引用文献数
12 1

関東に位置するススキ型草地に火入れ,刈取り,放牧あるいはこれらの組み合わせ等の異なる人為圧を加え続けた。20年間にわたる定置枠の植生調査のデータから,草種ごとの拡張積算優占度を算出し,主成分分析によって人為条件の差異に応じた植生遷移の方向を表現することを試みた。第1および第2主成分と主要な群落構成種25種との相関関係から,第1主成分はススキ,シバで代表される放牧圧の有無に関わる成分,いいかえれば放牧による偏向遷移を表すと考えられた。縦軸の第2主成分は高木とつる植物で代表される人為的撹乱の有無にかかわる成分,いいかえれば進行遷移を表すと考えられた。これら2つの主成分を軸として,各処理区,各年次の群落のデータをプロットした結果,散布図上で,7処理区の群落データ群は処理開始後の年次経過とともに分離する傾向を示し,処理に応じた遷移の方向を示した。
著者
早川 康夫
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.337-342, 1991-12-26
被引用文献数
3

公共草地などにおける育成牛は輪換放牧を基準に牧草の草丈20-30cmで利用させよと指導されている。しかし馬はこの草丈の牧草を食べようとしない。日本の軽種育成牧場の放牧地の大半は草丈5-10cmで固定放牧される。その理由を馬の採食行動から考察した。
著者
永西 修 寺田 文典 石川 哲也
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.599-603, 2002-02-15
被引用文献数
3

実験1ではアミロース含有率が異なる3品種(コシヒカリ, ミルキークイーン, コシヒカリ糯の玄米について, 実験2では窒素の施用水準を変えて栽培した2品種(アケノホシ, 夕カナリ)の玄米について, 飼料成分とナイロンバック法で第一胃内消化性を比較検討した。実験1で供試した玄米の飼料成分には品種間で明瞭な違いはなかったものの, 乾物(DM), 粗タンパク質(CP)およびデンブンの第一胃内での有効分解率(ED)はアミロース含有率が低い品種で高かった。また, 実験2では窒素の施用量の増加により玄米のCP含有率は増加するとともに, CP中の結合性タンパク質比率は低くなった。DM, CPおよびデンプンのEDは施肥条件による明瞭な違いは認められなかったものの, いずれのEDもタカナリがアケノホシよりも有意に低かった。以上のことから, 玄米の第一胃内DM, CPおよびデンプンの消化性はCP含有率よりもアミロース含有率に影響を受けると考えられた。
著者
森田 脩 岩渕 慶 後藤 正和 江原 宏
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.429-436, 1995-01-31
被引用文献数
1

表面播種されたマメ科牧草の発芽種子が主根を土壌中に進入させ,定着に成功する過程を明らかにする目的で,播種箱に充填した水田黄色土壌(含水率20%)の表面に7草種を播き,25℃,相対湿度約100%の定温器内で発芽過程を5日間調査して,マメ科牧草の発芽行動に及ぼす根毛の固着の影響並びに固着と主根の形態的形質との関係について検討した。1.土壌表面におけるマメ科牧草種子の発芽過程をみると,最初に主根が発芽孔付近から出現し,地表面を這いながら伸長を続け,順次発生する根毛が表面に固着した後,先端が土壌中に進入を始めた。2.マメ科牧草の主根は,出現してから先端が土壌中に進入するまでの間に,根毛帯が表面に固着する程度(固着度)によって,次の3種類のいずれかの行動を示した。I:根毛帯の大部分が土壌表面に固着して,主根が表面に密着している芽生え(以後,全固着型と略記)。II:根毛帯は部分的に固着して主根の一部が表面から浮き上がっている芽生え(部分固着型と略記)。III.根毛帯は全く固着せず,主根全体が浮き上がっている芽生え(無固着型と略記)。3.3種類の発芽行動のうち,シロクローバ,バーズフットトレフォイルは全固着型が,アルサイクローバ,アカクローバ,クリムソンクローバ,アルファルファは部分固着型が,そして,コモンベッチは無固着型の割合がそれぞれ多く,草種によって特徴が見られた。4.全固着型の割合は,主根の根毛長/根径比と有意な正の相関関係があり(r=0.873,p<0.05),根径に比べ根毛が相対的に長い草種が高かった。各草種とも,全固着型は部分固着型に比べて,根毛の固着面積が有意に大きかった。5.以上から,表面播種されたマメ科牧草の主根根毛の固着は,定着の前提となる土壌中への主根の進入を助ける働きのあることが示唆された。
著者
山田 敏彦
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.263-269, 2009-10-15

地球温暖化への対策や化石燃料の枯渇問題などから、サスティナブルな低炭素社会構築を目指し、持続再生可能なエネルギー生産のシステム開発が各方面で注目されている。アメリカ合衆国オバマ大統領のグリーン・ニューディール政策をはじめ、各国でその取り組みが開始されている。植物バイオマス資源からバイオ燃料、特にバイオエタノールを製造する技術もその一つである。アメリカ合衆国ではトウモロコシ子実からバイオエタノールを製造するためのプラント建設が、2000年以降急激に拡大し、2007年には25百万kLのエタノールが生産されている。食糧との競合を避ける意味で、セルロース系バイオマス資源が、将来の原料として、にわかに注目を浴びることになった。セルロース系バイオマスには、作物残渣である稲わら、麦わらやトウモロコシ・ストーバー(茎・葉)および木本植物の早生樹(ヤナギ、アカシア、ユーカリなど)があるが、ここでは草本系植物として、イネ科草類、特に、ススキ属植物について言及する。ここでは主に欧米におけるススキ属研究を紹介しながら、バイオ燃料のフィードストック用エネルギー作物としてのススキ属への期待について触れたい。
著者
沢井 晃 近藤 恒夫 荒 智
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.175-179, 1983-07-28

フェノール酸による繊維のエステル化と,酵素による分解率とのあいだの関係を調べた。オーチャードグラスの中性デタージェント繊維(NDF)・酸性デタージェント繊維(ADF),濾紙,以上3種の繊維をフェルラ酸(FA)・p-クマル酸(PCA)でエステル化し,セルラーゼで分解した。分解率はエステル化に伴って直線的に低下した。エステル化したFA・PCAの含有率に対する繊維の分解率の回帰係数は,-6.7% NDF/% FA,-4.0% NDF/% ,-13.1% ADF/% FAまたはPCA,-9.4%濾紙/%FAまたはPCAであった。NDFのほうがADFよりも,臭化アセチル可溶リグニンを多く含み,酵素による分解率が低かったことから,酸可溶リグニンも酵素による繊維の分解を阻害することを示唆した。
著者
澤井 晃 山口 秀和 内山 和宏
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.122-127, 1995-07-30

アカクローバへ栄養繁殖形質を導入して永続性の向上を図るため,T. mediumとアカクローバとの雑種胚をコルヒチンを含む培地で培養した。再生した21個体のうち,1個体が染色体数が倍化した複倍数体であった。この複倍数体を柱頭親としてアカクローバと戻交雑を行い,胚培養により植物体を育成した。戻交雑第2代の花粉稔性は2.3-36.8%で,アカクローバの授粉により完熟種子(戻交雑第3代)が得られた。戻交雑第1代の半数が根茎を有し,そのほかの個体は直立型の根茎が地中に埋没する冠根部を形成した。したがって,この稔性のある戻交雑後代はアカクローバの永続性向上に有用な素材である。