著者
西中川 駿 松元 光春 大塚 閏一 河口 貞徳
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.83-93, 1984-03-15

高橋貝塚出土の自然遺物, とくに陸棲哺乳類の骨を肉眼的ならびに計測学的に調査した.1.自然遺物の総重量は, 40963,0gで, そのうち, 陸棲哺乳類が全体の85.7%を占める.2.動物種や骨の種類を同定できたものは, 2811個の骨片で, それらはサル, ノウサギ, イヌ, タヌキ, アナグマ, テン, イノシシ, シカ, ウシ, ウマの5目10種である.3,出土骨片数は, イノシシでもっとも多く(60)%, ついでシカ(37%)であり, そのほかはわずか3%である, 4.骨の形状は, 各動物ともに現生のものにほとんど類似し, また, 骨の大きさは, シカ, イノシシ, ノウサギで, 現生種より幾分大きい傾向を示す.5.以上の観察から, 高橋貝塚を遺した人々は, イノシシ, シカをよく狩猟し, 食料としていたことが示唆された.
著者
西中川 駿 大塚 閏一 林田 重幸
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.91-98, 1966-03-14

家畜の乳房血管系の研究として, さきに山羊28例の乳房血管分布について報告したが, 今回は乳牛(Holstein)14例の乳房血管分布を肉眼的に精査し, その走行および分岐状態を明らかにした.1.乳房に分布する動脈はA.pudenda ext.とA.perinealisがある.しかしこのA.perinealisの乳房実質への分布はほとんどみられなく, 乳房後部および乳鏡の皮膚に分布し, 乳房上リンパ節枝からの分枝と吻合する.A.pudenda ext.は一般に, A.subcutanea abdominisを分岐して, A.mammariaになると記されているが, 検索した乳房全例ともこのA.subcutanea abdominisはA.mammaria cranialisの移行枝としてみられた.2.A.mammariaは後乳区の乳房基底部で乳房実質に入り, 直ちにA.mammaria cranialisとA.mammaria caudalisとに分かれる.A.mammaria cranialisは後乳区の実質と後乳頭に達する枝を分け, さらに前乳区実質および前乳頭に分布する内側乳腺動脈を分けて, A.subcutanea abdominisに移行する.A.mammaria caudalisは乳房上リンパ節へ枝を分け, 後乳区実質に広く分布して, 後乳頭に達する.前後の乳区間の動脈吻合枝として, A.mammaria cranialisからの後乳頭枝がみられ, 左右乳区間には内側乳腺動脈からの分枝と乳房上リンパ節枝からの分枝がみられた.3.A.mammariaからの枝の分かれ方に4つのTypeがあり, そのTypeと出現頻度についてはFig.5に示した.4.静脈はおおよそ動脈に随伴して走り, 外径は同名の動脈の約2〜3倍の大きさで, 乳房基底面および腹面では左右の静脈が連絡し, いわゆる静脈輪を形成している.5.従来, 血液の流出する径路にはV.pudenda ext., V.subcutanea abdominisおよびV.perinealisの3つの径路があると記されている.しかし, 静脈弁の位置と構造からして, V.perinealisは乳房から血液の流れ去る径路とはならず, むしろ乳鏡付近でこの静脈に入つた血液は乳房に向い, 会陰静脈吻合枝, V.mammaria caudalisを通り, V.pudenda ext.へ流れると考えられ, また乳房を環流した血液はV.subcutanea abdominisよりもV.pudenda ext.へ流れ去るものが多いと考えられる.
著者
西中川 駿 松元 光春 大塚 閏一 出口 浩
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.19-27, 1992-03-30

縄文後期の草野貝塚出土の哺乳類の骨を肉眼的および計測学的に検索し, 動物種や骨の種類を明らかにした.1.自然遺物の総重量は, 157.843kg(貝類を除く)で, そのうち哺乳類が152.983kgで, 全体の96.9%を占めている.2.哺乳類の種や骨の種類を同定できたものは, 16,323個の骨片で, それらはニホンザル, ムササビ, ネズミ, ノウサギ, オオカミ, イヌ, タヌキ, アナグマ, カワウソ, テン, イタチ, イノシシ, シカ, カモシカ, イルカおよびクジラの6目16種である.これらのうちイノシシ(11,590個), シカ(4,155個)が全体の96.5%を占める.3.骨の形状は, 各動物ともに現生のものとほとんど差はないが, 大きさは出土骨の方が幾分大きい.4.以上の観察から, 草野貝塚を遺した人々は, イノシシ, シカを中心に狩猟していたことが示唆され, また, オオカミ, カワウソなどの出土は, 当時の動物相を知る上に貴重な資料である.
著者
西中川 駿 臂 博美 松元 光春 大塚 閏一 中島 哲郎
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.105-113, 1987-03-16
被引用文献数
1

縄文後期の麦之浦貝塚出土の自然遺物, とくに哺乳類の出土骨を肉眼的ならびに計測学的に調査した.1.自然遺物の総重量は, 72,174.2g(貝類を除く)で, そのうち哺乳類が99%を占めている.2.哺乳類の種や骨の種類を同定できたものは, 3,865個の骨片で, それらはニホンザル, ムササビ, ネズミ, ノウサギ, ツキノワグマ, オオカミ, イヌ, タヌキ, アナグマ, カワウソ, テン, イタチ, アシカ, イノシシ, シカ, カモシカ, ウマ, イルカおよびクジラの7目19種である.これらのうち, 出土骨片数の多いものは, イノシシ(2,414個), シカ(1,310個)で全体の89%を占め, ほかのものはわずか11%である.3.骨の形状は, 各動物ともに現生のものとほとんど差異はなく, また, 骨の大きさは, イノシシ, シカ, タヌキ, アナグマ, ノウサギで, 現生のものより大きい.4.以上の観察から, 麦之浦貝塚を遺した人々は, イノシシ, シカを中心に狩猟していたことが示唆され, また, オオカミ, ツキノワグマ, カワウソなどの出土例は, 動物地理学上貴重な資料となるであろう.
著者
大塚 閏一 山入端 正徳 西中川 駿
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.277-281, 1973-03-24

1)ラットの耳下腺, 下顎腺および単孔舌下腺について, 血管分布密度を組織切片一定面積中の血管断端数で検討した.2)血管分布密度は耳下腺が最も高く, 下顎腺がこれにつぎ, 単孔舌下腺が最も低かった.3)下顎腺においては, 雌の血管分布密度が雄よりも高かった.
著者
西中川 駿
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.1-55, 1970-03-25

乳腺に分布する血管の起源, 走行, 分布域などを, 乳牛, 山羊, トカラ山羊, めん羊, 馬, 犬, 猫, 家兎, モルモット, ハムスター, マウスおよびラットの12種類の動物について, 比較解剖学的に精査し, その詳細を明らかにし, 図および表に示した.また, 処女, 妊娠, 泌乳および退行の各時期におけるマウス乳腺の実質の消長と, これらに分布する血管系の消長との相互関係を検討した.さらにこれらの点についてはホルモンを用いた実験を加わえて追究し, また, これらの結果はさらに, アイソトープを用いて, 乳腺に分布する血管の形態学的観察と乳腺を灌流する血液の流量との相互関係について比較検討を行なった.以上の結果は以下のように要約される.1.乳腺への動脈系の分布状態から上記動物は5型に分類出来た.すなわち, 乳牛, 馬, 山羊, トカラ山羊, めん羊およびモルモットの乳腺は鼠径部にあり, その動脈系は外陰部動脈に由来し(Type I), 従来, 成書に記載されている会陰動脈の乳腺実質への分布はみられなかった.乳牛は1側に2つの乳腺域をもち, 血管も前後の乳腺動脈に分かれて分布し, これらの血管は互いに吻合している.また, 左右乳区間の血管吻合については特に山羊, トカラ山羊, めん羊で明らかに認められた.犬, 猫の前位乳腺には内胸, 外胸動脈が, 後位乳腺には外陰部動脈がそれぞれ主流として分布し, これらは互いに吻合している(Type II).家兎乳腺は胸部から腹部にあり, 動脈系は犬, 猫の主流動脈に浅腹壁動脈が加わり, 外陰部動脈より強枝で, 腹部乳腺に広く分布する.また, 外胸動脈は内胸動脈よりも強枝であり, 乳腺への分布域も広い(Type III).ハムスターの乳腺は胸部から腹, 鼠径部にあり, 内胸動脈は乳腺枝をもたず, 外胸, 浅腹壁, 外部の3動脈系が関与する(Type IV).マウス, ラットでは胸部乳腺に外胸, 浅頸動脈が, 腹鼠径部乳腺に浅腹壁, 腸腰, 外陰部動脈が主流をなして分布する(Type V).2.静脈系はいずれの動物においても, その大部分がほぼ動脈に伴行して走る.反芻家畜の静脈系の主流は外陰部静脈であるが, 馬の場合, 乳房後部から大腿深静脈に入る主要乳腺静脈が主流をなし, 本来の外陰部静脈は非常に細いという特徴を示した.腹皮下静脈は乳牛で最もよく発達してみられた.従来, 乳房の静脈路として記載されている会陰静脈は静脈弁の配置と構造からみて, 血液の流れの方向は乳房より流れさるのではなく, むしろ乳房に向かって流れるものと考えられた.犬, 猫の前位の乳腺の静脈は内胸, 外胸静脈へ, 後位のものは外陰部静脈へ流れ, 家兎の場合, 動脈は浅腹壁動脈が強枝であってその分布域は広いが, 静脈は外陰部静脈が太い.また, ハムスターでは浅腹壁静脈が太く, 血液はこの方へ流れるものが多いと考えられる.3.乳腺血管の分布状態は動物の生理的変化に伴う乳腺の機能状態に応じて変化するが, マウスでは, それぞれの主な血管系の本幹には大差はなかった.しかし, 導管や腺胞に分布する血管には特徴的な差がみられた.すなわち, 処女期においては導管やBudに分布する血管網の発達は弱いが, 脂肪組織への分布は多い.奸娠期には乳腺の血管分布は密になり, 特に妊娠初期から中期にわたって, Budや腺胞の付近の脂肪組織中にルーフ状の特徴的な毛細血管網があらわれ, 妊娠が進むにつれてこれらの血管網の中に腺胞が発達, 侵入するのが認められた.また, この像は分娩後3日目の乳腺にも少数認められた.これらの血管叢の起源は導管に沿って伸びた血管と, 導管とは無関係に脂肪組織に分布していた血管からであり, 明らかに腺胞系の発育のために脂肪組織の中に確立していた血管が妊娠により, 活発化したものと推測される.泌乳期では導管および腺胞は毛細血管で密にとりかこまれ, 小葉間導管と腺胞の一部に, 分娩3日目頃から蛇行した血管が出現し, 12日目最高に達して, 以後次第に退化した.この蛇行血管は特に泌乳中のみに発達している点から, 乳汁の生成および導管や腺胞中の乳汁の貯留および排出とも関係があるものと考えられる.離乳期における腺胞の退化はすみやかであるが, 血管は原型に近い形でそのまま退縮後も残り, そののち次第に退縮して付近の脂肪組織に分布するのが確認された.4.未成熟, 成熟および卵巣除去マウスにEstradiol, Progesteroneを同時に14日間投与すると奸娠前期から中間にほぼ準じた血管分布像がみられ, Budや腺胞の付近にはルーフ状に特異的に吻合した血管網がよく発達していた.この様な血管像はまた, Progesterone単独投与でもみられたが, Estradiol単独投与のものでは少なく, むしろ乳頭や導管周囲の血管がよく発達していた.5.胸部乳腺の血液の流量をIsotopeを用いて測定したが, 流量は妊娠開始と共に増加し, 分娩後12日目で最高となり, 以後下降した.これらのことは乳腺の血管分布密度の発達の程度とほぼ一致した結果を示した.
著者
西中川 駿 松元 光春 鈴木 秀作 大塚 閏一 河口 貞徳
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.157-166, 1982-03-19

南九州の古代にどのような動物が生息し, また, 古代人がどのような動物を狩猟し食していたか, さらには現生種との間に骨学的差異があるかなどを知る目的で, 今回は鹿児島県片野洞穴出土の哺乳類, 鳥類の骨を肉眼的ならびに計測学的に調査した.1.自然遺物は, 縄文後期から晩期の土器と共に出土し, 総出土量約10547gで, そのうち哺乳類が7204g(68%)で, 鳥類はわずか0.8gであり, その他貝類などであった.2.動物種や骨の種類を同定出来たものは, 773骨片で, それらはイノシシ, シカ, ツキノワグマ, イヌ, タヌキ, アナグマ, ノウサギ, ムササビ, サルおよびキジの6目10種であった.3.動物別出土骨片数をみると, イノシシが最も多く(53%), ついでシカ(38%)であり, その他の動物はそれぞれ2〜5%にすぎなかった.ツキノワグマの出土は貴重なものであり, 最大長186mmで, 両骨端の欠如していることから若い個体と推定した.4.骨の形状は, 各動物共に現生のものにほとんど類似し, また, 骨の大きさはシカ, ノウサギで現生種より幾分大きい傾向を示した.5.以上の観察から, 縄文後期から晩期の鹿児島県大隅地方には, 少なくとも6目10種以上の動物が生息していたことが伺われ, また, 古代人がイノシシ, シカをよく狩猟し, 食べていたことが示唆された.
著者
大塚 閏一 山入端 正徳 西中川 駿
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.167-179, 1972-03-30

1)29頭の犬を用い, 51例の下顎腺および耳下腺に分布する動脈を肉眼的に観察した.2)下顎腺に分布する主要動脈は, A.facialis(顔面動脈)よりのRamus glandularis(腺枝)およびA.auricularis caud.(後耳介動脈)より起こるRami glandulares(腺枝)であった.このほか, A.thyroidea cran.(前甲状腺動脈)より起こるRamus sternocleidomastoideus(胸鎖乳突筋枝)の分枝およびA.parotidea(耳下腺動脈)の分枝が分布する例も認められた.なお, A.thyroidea cran.のRamus sternocleidomastoideusが, A.thyroidea cran.より起こらず, A.occipitalis(後頭動脈)の基部より分岐して, その分枝が下顎腺に分布する例が1例認められた.3)下顎腺への動脈分布状態は5型に分類でき, それらの頻度はTable 1のようで, A.facialisのRamus glandularisおよびA.auricularis caud.のRami glandularesのみが分布する型が41.2%と多かった.4)耳下腺に分布する主要動脈は, A.parotidea, A.auricularis caud.より起こるRamus auricularis lat.(外側耳介枝)の分枝およびA.temporalis sup.(浅側頭動脈)より起こるA.auricularis rost.(前耳介動脈)の分枝の3動脈であった.このほか, A.auricularis caud.のRami glandulares, A.temporalis sup.よりのA.transversa faciei(顔面横動脈)の分枝およびA.masseterica(咬筋動脈)の分枝が耳下腺に分布する例も認められた.5)耳下腺への動脈分布状態は7型に分類でき, それらの頻度はTable 2のようで, 主要3動脈のみが分布する型が45.1%と最も多かった.6)A.parotideaはA.carotis ext.より起こる例のほか, A.auricularis caud.またはA.temporalis sup.より起こる例が31.3%も認められた.7)A.auricularis caud.は一般に耳介の輪状軟骨の基部でA.carotis ext.より起こるが, 9.8%にあたる5例において, A.carotis ext.が舌下神経と交叉する部位より起こっていた.
著者
小山田 巽 橋口 勉 柳田 宏一 武富 萬治郎
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.99-106, 1979-03-19

1953年, 林田らにより命名されたトカラ馬は, 当時, トカラ列島宝島で総馬数43頭と報告されている.その後, 宝島に数頭を残すのみで島外に分散せざるを得なかった.現在, 鹿児島県下に65頭のトカラ馬が飼養されているが, 本報では, 最近における飼養頭数の推移および飼養場所の概要について報告した.また, 測定可能なトカラ馬について各部位の体尺測定を実施し, トカラ列島宝島で生産, 育成されたものと, 環境条件の異なる場所で飼養されたものとの形質的な相違について調査した.毛色については全集団について観察した.飼養頭数の推移と飼養場所の概要はTable1およびTable2のとおりである.体尺測定値については, それぞれの集団での測定結果を比較した.すなわち, 1953年に測定された宝島のトカラ馬集団と, 1976年に測定した開聞山麓自然公園, および, 1977年に測定した鹿児島大学入来牧場のトカラ馬集団の体尺測定の平均値は次の値を示した.体高では, 宝島集団の雄114.9cm, 雌114.5cm, 開聞山麓自然公園集団の雄113.55cm, 雌115.38cm, 鹿児島大学入来牧場集団の雄122.33cm, 雌120.45cmであった.体重においても, 林田らの測定した雄の体重の平均値は198kgとされているが, 鹿児島大学入来牧場集団の雄の体重の平均値は252.3kgであった.体尺測定の平均値は, 宝島集団と開聞山麓自然公園集団は良く一致しているが, 鹿児島大学入来牧場集団では高い値を示している.これが飼養条件のみによるものかは断定できない.また, 毛色については, 典型的な栗毛の毛色を示したものは全集団65頭の1.5%にあたる1頭の雄栗毛のみで, その他の毛色は鹿毛を基調としたトカラ馬特有の毛色であった.
著者
岩下 亜季 田原口 智士 高瀬 公三
出版者
鹿児島大學農學部
雑誌
鹿児島大学農学部学術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
no.56, pp.1-7, 2006-03

西日本の動物園および水族館で飼育されているペンギン(合計144羽)から、2002年8月-2004年5月にかけて採取された糞324検体についてサルモネラの分離を試みた。その結果、2002年8月にA動物園由来の16検体中8検体(50%)からサルモネラが分離され、すべてSalmonella Senfenberg(SS)と同定された。また、2003年12月にC水族館由来の糞15検体中1検体(6.7%)からサルモネラ(04群、血清型不明)が分離された。市販の12薬剤に対する薬剤感受性試験の結果、分離SS株はクロラムフェニコールに対して耐性を獲得していると思われた。04群血清型不明株は耐性を獲得しているとは考えにくかった。SSの7株および04群血清型不明1株を用いて、侵入遺伝子invAの検索を行ったところ、全てinvAを保有していることがわかった。
著者
藤本 滋生
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.17-28, 1984-03-15

明治6-7年(1873-1874)に国立博物館から「葛粉一覧」および「澱粉一覧」(上, 下)が刊行された.これはわが国に産する澱粉性植物のうち, 地下に澱粉を貯える草本類45種を図解したものである.採録されている植物は, (a)昔から澱粉がとられてきた野生の植物, (b)栽培されている芋類, (c)救荒植物, (d)薬用植物, などから選ばれたものである.しかし実際には, 澱粉をまったく含んでいない植物が12種も混在している.本論文は, これら45種の植物につき, 現在の名称, 起源, 利用の方法, 澱粉の有無などについて述べたものである.
著者
大前 加陽子 福留 紘二 遠城 道雄
出版者
鹿児島大學農學部
雑誌
鹿児島大学農学部学術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
no.53, pp.1-14, 2003-03

温室メロンの夏期、秋期、春期栽培において牛糞堆肥の施用が生育、収量、品質と培養土の理化学的性質に及ぼす影響について検討した。1.牛糞堆肥の窒素無機化特性は化学肥料に比べ緩効的で、全窒素量の6割程度が栽培期間中に無機化され作物に利用される形態となることが明らかになった。2.栽培土壌中の無機態窒素量、茎葉生体重、葉面積は3作とも栽培期間中終始化学区が堆肥区よりも大きかった。しかし、果実重については処理区間差は認められず、収量にも差がなかった。その理由として(1)堆肥の緩効的な肥効特性(2)堆肥施用による土壌物理性変化に伴った低く安定的な土壌水分含量(3)堆肥区の安定的なpHなどが考えられた。3.果実の品質については堆肥区のほうが糖度、ビタミンC含量が高く、品質の保存性が高い傾向がみられた。これらの原因は化学区に比べて、堆肥区の低窒素、低水分などに起因するものと推察された。
著者
高山 耕二 中西 良孝 朝 魯孟
出版者
鹿児島大學農學部
巻号頁・発行日
no.55, pp.31-36, 2005 (Released:2011-03-05)

ヌビアン種とトカラヤギにおける超音波検査法による早期妊娠診断と、胎齢ごとの胎子器官の発育と胎子胸腰部長(体幹)、頭長、心臓直径を測定した。超音波検査法は胎齢別に経直腸検査法と経腹部検査法を用いて交配から分娩まで行った。交配後23±2日で胎胞がみられ、胎子は胎胞観察後7±2日でみられた。眼窩は交配後6週間にみられた。心臓はそれぞれのヤギで交配後30、40並びに50日でみられ、心室は交配後4ヵ月ごろにみられた。胎子の胸腰部長、頭長、心臓の直径は胎齢の推移に従って増加した。交配後3ヵ月までの胎子頭長の増加、4ヵ月半の胎子胸腰部長の増加が明瞭であった。これらの結果から、ヤギに対する超音波検査法は早期妊娠診断を可能にし、さらに胎子発育のモニターにも有用と思われた。
著者
団野 晧文 宮里 満 石黒 悦爾
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.183-187, 1982-03-19
被引用文献数
2

上部と下部にそれぞれ5本の紫外線灯を装着した紫外線照射装置(2号機)を試作し, 上下両方向から同時にしかも均一に照射できるようにした.紫外線照度計を用いて, 2号機内の紫外線線量率の垂直分布および平面分布を測定した.2号機内の線量率は上部の紫外線灯5本を点灯すると6.66〜2.31mW/cm^2となり, 距離に反比例して減少した.酵母菌に対して, 2号機を用いた紫外線照射とガンマーセルGC-40を用いたCs-137のγ線照射を行った.紫外線照射より得られた生存曲線は, γ線照射により得られた生存曲線と同様にシグモイド型となった.D_<10>値はSacch.cerevisiaeでは11.32mW・sec./cm^2,Candida utilisでは13.17mW・sec./cm^2となった.
著者
高山 耕二 魏 紅江 萬田 正治 中西 良孝
出版者
鹿児島大學農學部
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
no.57, pp.1-4, 2007-03

本研究は合鴨農法における家鴨雛の適正放飼日齢を明らかにする上での基礎的知見を得ることを目的とし、インディアンランナー種、中国系在来種およびマガモ系合鴨の初生雛を供試し、最大60分間の強制水浴下(20あるいは5℃)における水浴能力を水浴時間、体温、羽毛の浸潤程度を指標として、3種間で比較検討した。得られた結果は次のとおりである。1)家鴨3種の水浴時間は0日齢で最も長く、日齢の経過とともにいずれも短くなった。3、6、9日齢の水浴時間はマガモ系合鴨が他の2種に比べ有意に長かった(P<0.05)。家鴨3種の水浴時間に水温による影響は認められなかった。2)0日齢における水浴終了時の体温低下は、インディアンランナー種に比ベマガモ系合鴨と中国系在来種で有意に小さかった(P<0.05)。0-12日齢における水浴終了時の羽毛の浸潤程度には、3種間で有意差が認められなかった。以上の結果から、供試した家鴨3種の中ではマガモ系合鴨が最も高い水浴能力を有することが示された。
著者
雨宮 淳三 天本 広平 佐伯 拡三 姫木 学 岡本 嘉六
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.147-153, 1989-03-15

市販食肉(生食用馬肉, 鳥胸肉, 豚ロース肉, 豚挽肉)の細菌汚染状態を調査し, 以下の成績を得た.1.汚染の指標細菌として, 生菌数, 大腸菌群数, ブドウ球菌数, 嫌気性菌数, 低温細菌数を調べたところ, これらの指標細菌相互の相関係数は-0.31〜0.51であり, 関連性は薄く, それぞれ汚染の異なった側面を示すものと考えられた.豚挽肉はいずれの菌種についても菌数が多かったが, 馬肉, 豚ロース肉および鳥肉についても決して少ない菌数ではなかった.スライス肉相互の菌数の差は比較的小さく, 生食用馬肉では大腸菌群数と低温細菌数が少なかったものの, 他の菌数はほぼ同程度であった.このことは, 流通過程で食肉相互の汚染が交差し増大すること, 汚染菌数は食肉の種類によるよりも取扱いの適否に基ずくことを示すものと思われる.2.冷蔵保存した時の生菌数, 嫌気性菌数, 低温細菌数の推移は, 豚ロース肉が豚挽肉より進行が約半日遅いものの, 肉の形状による差異がないことから, 食肉の腐敗の進行は主として保存当初の汚染細菌によって決まるものと考えられる.嫌気性菌数は生菌数とほぼ同様の推移を示したが, 低温細菌はより速やかに増殖し腐敗に大きく関与しているものと考えられた.異臭発生時の菌数は, 生菌数と嫌気性菌数は約7.5,低温細菌数は約10であり, ついでネトの発生がみられた.3.分離した嫌気性菌のうち約半数が偏性嫌気性菌であり, API嫌気システムによる簡易同定ではCl.beijerinkiiが多くを占め, そのほかはFusobacterium symbiosum, Bacteroides spp.などであった.4.ブドウ球菌No.110培地で分離した368株のブドウ球菌の中で, 約30%がコアグラーゼ陽性であったが, コアグラーゼ活性の弱いものが大半であり, その中の55株がS.aureusと同定され, 3株がA型エンテロトキシンを産生した.MSEY培地とETGP培地におけるコアグラーゼ陽性株の性状を調べたところ, マンニット分解能および亜テルル酸塩還元能を有している株は, それぞれ, 76%, 95%であったが, 卵黄反応が陽性であったのはS.aureus株の27%に過ぎなかった.両培地とも, S.aureus集落の典型的性状として, 卵黄反応陽性をあげていることから, S.aureusの一部を見逃す危険性があると考えられる.また, コアグラーゼ反応の弱い株でもエンテロトキシンを産生していることから, 判定に際してはこの点を留意する必要がある.
著者
荒川 剛史 秋山 邦裕
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.55-67, 2005-03-01
被引用文献数
2

近年,都市住民を中心に,自然をコンセプトにしたテーマパークが注目を浴びている。その先駆的な企業が「株式会社ファーム」である。同社はファームパークを手掛け16年,全国に19の施設を持ち,18施設が黒字転換している。そこで,株式会社ファームの運営するファームパークの現状をみることで成功要因を探った。それらを要約すると以下のとおりである。一つに,基本コンセプトを「自然」とすることで来園者に憩いと安らぎの場を提供する。二つに,移動1時間程度に,100万人都市がある山間部に建設。荒廃した広大な土地を安価で購入し,自然の壮大なスケールをみせる。三つに,第3セクター方式・公設民営方式を採用することで,初期投資額を大幅に削減することが可能である。また,「自然」がテーマであるため追加投資はそれほど必要ではない。四つに,1人当たりの入場料が1,000円以下であり,家族4人が1日遊んで10,000円程度で過ごすことを可能にした。いずれも,今後のファームパークの展開において重要な示唆を与えるものと考える。
著者
馬場 裕典 吉良 今朝芳 枚田 邦宏
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.57-66, 1996-03-31
被引用文献数
3

1994年の屋久島の登山届(2,391部)を用いて, 登山者の構成, 登山の目的, 登山道入口の利用状況および登山の安全性について集計した.その結果, 以下のことが明らかになった.1.延べ登山者数は7,263人であった.登山者の構成は, 性別では男性が全体の70.2%, 年齢別では20歳代が全体の43.5%と大きなかたよりがある.2.登山の目的は縄文杉(64.3%), 宮之浦岳の(62.8%)の2カ所が主な目的地である.また登山道入口に関しては淀川登山口が39.4%, 白谷登山口が30.0%, 荒川登山口が24.8%であり, この3登山口で全体の94.2%であった.特に荒川登山口を利用した登山者のうち縄文杉のみを目的地とした登山者は80.7%であり, 同登山口は縄文杉のみの登山者が利用する傾向がある.3.登山の安全性についてみてみると, 装備品においてはシュラフ(寝袋)を装備していない登山パーティーが宿泊登山パーティー全体の10.3%であった.またテントを装備していない登山パーティーは39.6%であった.全登山パーティーのうち30.1%が下山連絡を行っているにすぎなかった.
著者
徐 屹暉 岩元 泉
出版者
鹿児島大學農學部
雑誌
鹿児島大学農学部学術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
no.63, pp.1-12, 2013-03

近年,中国当局は頻発した食中毒や残留農薬などの問題を非常に重視し,環境の質と食品の安全の向上を重要な政策に位置づけ,全国で「無公害・緑色食品,有機食品」の推進政策を実施している。それに伴い,中国の有機農業の進展が加速され,特に,沿岸部及び内陸大都市部で有機農産物需要が高まりをみせている。とりわけ富裕層,及び健康関心層の有機農産物への需要が高まりつつあることで国内市場が成長し,それが現時点の有機ブームになっている。本研究では,中国有機農業の発展にともなう有機認証システムの構築についての整理し,有機認証機関の役割について明らかにする。とくに,中国においては二つの国家レベルの有機認証機関が設立されており,近年は国内向けの有機認証機関と輸出するための外国向けの有機認証機関が分かれており,認証対象についても各々明確に仕分けが行われ,それぞれの役割を果たしていると言われているが,その実態を明らかにする。