著者
渡会 仁
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.45, no.8, pp.725-744, 1996-08-05 (Released:2009-05-29)
参考文献数
130
被引用文献数
5 6

溶媒抽出機構に関する速度論的研究の最近の進歩についてまとめ,その特徴を論じた.まず,この分野の研究の歴史的経緯を述べ,抽出速度の測定法の進歩について解説した.そして,キレート抽出系,イオン会合抽出系及び協同抽出系における速度論的抽出機構の新たな知見についてまとめた。ミセル及びマイクロエマルションを溶媒抽出の微視的モデル系と考える新しいアプローチについても解説した.溶媒抽出速度における界面の役割の発見は,近年のこの分野の研究における最大のブレークスルーとなっている.液液界面における抽出試薬の吸着と酸-塩基反応,界面での錯体生成反応と配位子交換反応,界面近傍における拡散律速過程,水相内錯生成反応そして界面吸着と界面反応を支配する諸因子について論じた,溶媒抽出類似系である遠心分配クロマトグラフ法及びフローインジェクション法と抽出速度の関連についても言及した。
著者
服部 考成 福士 惠一 早川 真 湊 太郎
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.62, no.8, pp.737-741, 2013-08-05 (Released:2013-09-04)
参考文献数
12

We developed a capillary zone electrophoresis method with direct UV detection for the determination of inorganic anions (Cl−, NO2−, and NO3−), organic acids (oxalic acid, citric acid, and malic acid), and amino acids (aspartic acid and glutamic acid) in the common ice plant (Mesembryanthemum crystallinum L.). As the background electrolyte, a 20 mmol L−1 disodium hydrogenphosphate dodecahydrate solution adjusted to pH 10.6 was used with the addition of 0.001% (w/v) hexadimethrine bromide to reverse electroosmotic flow. The detection responses for the above analytes were improved by 3.5 – 580 fold in terms of the limits of detection (LODs, S/N = 3) in comparison with conventional indirect UV detection. The LODs for the analytes were 0.040 – 2.9 mg L−1. The values of the relative standard deviation (RSD, n = 4, intra-day) of the migration time and the peak area were, respectively, 0.081 – 0.43% and 0.28 – 9.3% when extract from the common ice plant was analyzed. Using the proposed procedure, Cl−, NO2−, NO3−, and oxalic acid in the common ice plant were detected within 9 min; citric acid, malic acid, aspartic acid, and glutamic acid were detected within 12 min.
著者
徳永 裕司 木村 俊夫 川村 次良
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.154-158, 1977-03-05 (Released:2010-05-07)
参考文献数
9
被引用文献数
1 2

17-デスオキシコルチコイドをピロールを用いて定量する方法を報告したが,その原理を17-ヒドロキシコルチコイドの定量に応用した.この方法は,プレドニゾロン,メチルプレドニゾロン,プレドニゾン,ヒドロコルチゾン,コルチゾン及びテトラヒドロコルチゾンでは陽性であるが,21位のアセチル化体及び16位にメチル基又は水酸基を持つコルチコイドは陰性であった.又,この定量法では,試料の(0.625~7.5)μg/mlの範囲内でベールの法則が成立し,吸収極大波長は(587~600)nm,見掛けのモル吸光係数は(2.66~3.5)×104の範囲内にあった.この方法を市販のプレドニゾロン錠の定量に応用し,従来法と比較検討した.
著者
江藤 元則
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.T5-T9, 1990-01-05
被引用文献数
3 2

黒鉛炉AASによる鉱石中の金, 銀, 白金, パラジウム及びロジウムの分析について検討した.試料をテフロン密閉容器中180℃で5時間加熱して分解した後, テルル共沈法により貴金属を共存元素から分離し, 更に陽イオン交換分離法を用いて完全に分離した.又, 銀についてはテルル共沈法で完全には捕集できないため, 陽イオン交換分離法のみを用いて共存元素から分離した.この分離後の溶液を黒鉛炉原子吸光光度計に導入し, 目的元素を定量したところ, 分析結果は保証値とよく一致し, 分析精度は相対標準偏差で3〜5%であった.
著者
遠田 浩司
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.45, no.7, pp.641-657, 1996-07-05
被引用文献数
1

レーザー光第二高調波発生(SHG)及び分子プロ-ブを用いる新しい手法によって, イオン選択性電極(ISE)液膜界面における電位応答機構を分子レベルで解釈する研究を行った.イオノフォア含有ISE液膜/試料水溶液界面にレーザー光を照射することによりSHGが発生し, その強度が試料水溶液中の目的イオン濃度が増加するに従って増加することを見いだした.この結果は, 生成した陽イオン-イオノフォア錯体がISE液膜界面で配向しSHG活性種となっていることを示唆している.又, ISE液膜の目的イオンに対するSHG強度変化と膜電位変化との相関より, 膜界面で配向したSHG活性な錯体陽イオン種が主に膜電位を支配していることを明らかにし, SHG強度より見積もった界面電荷密度に基づいて解析した.更に, 膜電位と界面電荷密度の関係を定量的に調べるために, 光照射によって膜の状態を一切変えることなく, 膜中のイオノフォア濃度及びそのイオノフォアに配位するイオンとの間の結合力(錯体安定度定数)を変化させることができる光応答性イオノフォアを分子プローブとして利用し, 光で誘起された膜電位の絶対値及び電位応答勾配の変化量を, 液膜界面での錯形成平衡を考慮した拡散電気二重層に基づく界面モデルを用いて定量的に説明した.
著者
朝倉 秀夫 池上 克重 中井 ゆかり 脇田 久伸
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.49, no.10, pp.735-744, 2000-10-05
参考文献数
26
被引用文献数
3

酸化アルミニウム-酸化クロム(III)質耐火物(AC質耐火物)へのガラスビード(GB)/蛍光X線分析(XRF)法の適用を図った。AC質耐火物中には多量のCr<SUB>2</SUB>O<SUB>3</SUB>が含有されているため,試料の融解はLi<SUB>2</SUB>B<SUB>4</SUB>O<SUB>7</SUB>単独ではできず,酸化剤としてLiNO<SUB>3</SUB>を添加することによって可能となった。GB作製条件は,試料0.2000g-Li<SUB>2</SUB>B<SUB>4</SUB>O<SUB>7</SUB> 4.0000g-LiNO<SUB>3</SUB> 2.000g,1250°C-10分間とした。Cr含有試料の融解は,Cr(III)がCr(VI)に酸化され,CrO<SUB>4</SUB><SUP>2-</SUP>イオンとなることによって進行することが知られており,このことをCrK吸収端のX線吸収端近傍微細構造(XANES)スペクトルによって確認した。XANESによるCr(VI)の半定量分析結果によると,Li<SUB>2</SUB>B<SUB>4</SUB>O<SUB>7</SUB>単独で融解したGB中では全Crのうちの7%に過ぎなかったCr(VI)の量が,Li<SUB>2</SUB>B<SUB>4</SUB>O<SUB>7</SUB>にLiNO<SUB>3</SUB>を加えることにより39%にまで高められていた。また,定量成分のNa<SUB>2</SUB>Oを含有するため実用できないが,融解が非常に容易だったNa<SUB>2</SUB>B<SUB>4</SUB>O<SUB>7</SUB>にNaNO<SUB>3</SUB>を加えたGBでは95%がCr(VI)になっていた。検量線用GBはJRRMなどの市販標準物質と高純度試薬Cr<SUB>2</SUB>O<SUB>3</SUB>を1μgまで読み取れる精密ミクロてんびん上で量り合わせたものをGBにすることによって作製できた。検量線の標準偏差はAl<SUB>2</SUB>O<SUB>3</SUB>で0.21mass%,Cr<SUB>2</SUB>O<SUB>3</SUB>で0.07mass%であり,微量成分についても満足できるものであった。
著者
五十嵐 淑郎 佐伯 知司 四ツ柳 隆夫
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.39-43, 1983-01-05
被引用文献数
4 4

新しい水溶性ポルフィリン,α,β,γ,δ-テトラキス(5-スルホチエニル)ポルフィン{T(5-ST)P}を合成した. T(5-ST)Pは水によく溶解し,その水溶液は安定で,しかも酸性pH条件における試薬及びその錯体の二量体生成反応は認められなかった. ソーレー帯における吸収スペクトルは,酸性型(H_4P^<2+>)が特異的に長波長側(456nm,ε=32.9×10^4cm^<-1>mol^<-1>dm^3)に位置し,亜鉛錯体(428nm,ε=41.7×10^4cm^<-1>mol^<-1>dm^3)と十分離れていた. このスペクトル特性を利用して,二波長増感法による10^<-9>g/cm^3の亜鉛(II)の吸光光度法を開発した. 本法のsandell指標は,1.12×l0^<-4>μg/cm^2であり,公定法であるジチゾン法の14.3倍の感度である. 又,相対標準偏差値は1.31μ/25cm^3の亜鉛(II)に対しO.6%(10回測定)であった. 本法を市販の四塩化炭素特級試薬中の亜鉛(II)の定量に応用し,良好な結果を得た.
著者
小檜山 文子 佐藤 雅子 金子 毅
出版者
The Japan Society for Analytical Chemistry
雑誌
分析化学 = Japan analyst (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.58, no.8, pp.661-665, 2009-08-05
被引用文献数
4

マイクロ抽出法の一つである分散液液マイクロ抽出(dispersive liquid liquid microextraction,DLLME)法により,ベンゾジアゼピン系薬剤であるフルニトラゼパム及びニメタゼパムの低濃度水溶液試料から抽出を行い,ガスクロマトグラフィー質量分析による測定を行った.ベンゾジアゼピン系薬剤に対する抽出溶媒,分散溶媒の種類等の最適条件を検討し,同条件で三環系抗うつ薬剤であるアミトリプチリン及びノルトリプチリン並びにフェノチアジン系薬剤であるクロルプロマジン及びプロメタジンの低濃度水溶液試料についても抽出・測定を行った.更に本手法を用い,アルコール飲料中のフルニトラゼパムの抽出を試みたところ,振とう操作を必要とせず,迅速・高効率な抽出が可能であった.このことから,DLLME法は法化学分野における有用な抽出法の一つであることが認められた.
著者
武田 洋一 石田 宏二
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.729-734, 2004-07-05
被引用文献数
2 4

希土類元素の新しい分離系の開発を目的として,弱酸性陽イオン交換体カルボキシメチルセルロースに対するプロメチウムを除く全希土類元素の吸着挙動を塩化ナトリウム水溶液系について塩濃度の関数として薄層クロマトグラフィーにより調べた.本系における希土類元素のR_f値の決定には,カルボキシメテル基への競争的陽イオン交換,表面錯体の生成,塩析効果が重要な役割を果たし,希土類元素系列内の配位数の変化も影響を及ぼしていると思われる.通常,イットリウムは重希上類元素に属するが,本系ではイットリウムはランタンに極めて近いR_f値を示すので,ランタン以外の希土類元素からの分離が達成された.
著者
西浜 章平 吉塚 和治 Louis SCAMPAVIA Jaromir RUZICKA
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.349-349, 2006 (Released:2006-08-30)

掲載論文の取り消しについて 取消論文: 西浜章平,吉塚和治, Louis Scampavia and Jaromir Ruzicka: 分析化学(Bunseki Kagaku), 52(12), 1187-1192 (2003). "マイクロシーケンシャルインジェクション分析法の最適化" (Received 16 July 2003, Accepted 10 September 2003)「分析化学」編集委員会及び著者は、上記論文が先に投稿された下記の論文と重複していることから取り消すことに決定致しました。したがって、上記論文を今後引用することのないようにご注意ください。 先行論文: Syouhei Nishihama, Louis Scampavia and Jaromir Ruzicka: J. Flow Injection Analysis, 19(1), 19-23 (2002). "μSI: Optimization of reagent based chemicals chloride in Lab-on-Valve system." (Received 9 January, 2002, accepted 28 February, 2002)
著者
田丸 素子 薮谷 智規 本仲 純子
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.1435-1440, 2004 (Released:2005-03-28)
参考文献数
13
被引用文献数
9 13

ホタテ貝中腸腺中金属元素の多元素同時定量法の開発を行った.試料の溶液化はマイクロウェーブ密閉容器を用いる酸分解法で行い,金属元素測定には誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)及び誘導結合プラズマ発光分析法(ICP-AES)を用いた.分析値の評価にはNIST頒布の標準試料SRM 1566b Oyster tissueを用いた.試料0.5 gを採取し,硝酸,フッ化水素酸,過塩素酸の混酸によるマイクロ波酸分解を行った.分解後の試料をICP-MS及びICP-AESで測定した結果,K,Na,Zn,Mg,Ca,Fe,Al,Cu,Mn,Ba,Sr,Cd,Ni,Co,Pb,Y,希土類元素の定量が可能であった.得られた定量値はPbを除き認証値及び参考値とよく一致した.測定精度はPb,Ni,希土類元素を除きすべて相対標準偏差4% 以内であった.本法を青森産ホタテ貝中腸腺試料の分析に適用したところ,30元素の定量が可能であった.特にカドミウムは中腸腺中に69.0 mg kg-1含まれており,中腸腺中元素濃度と頁岩中元素濃度及び海水中元素濃度の比に基づき算出した生体濃縮係数は他の金属元素と比較して非常に高い結果が得られた.
著者
鈴木 章悟 平井 昭司^[○!R]
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.33, no.11, pp.596-600, 1984-11-05
被引用文献数
4 9

国立公害研究所で製作された環境標準試料ムラサキイガイ中の微量元素を機器中性子放射化分析法により非破壊・多元素・同時定量した.分析法の信頼性を増すために,試料量(50〜250mg)を変化させ,更に数回の繰り返し照射・測定を行った.試料は武蔵工大炉で短時間照射(気送管2分間)及び長時間照射(中央実験管5時間)を行い,冷却時間を変えてそれぞれ2回ずつGe(Li)検出器と4096チャンネル多重波高分析器(GAMAシステム)でγ線スペクトルの測定を行い,約50元素を分析した.その結果,20元素の濃度が数%の精度で定量され,そのほか18元素の濃度が多少精度が悪いが定量できた.
著者
高田 九二雄
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.197-200, 1983-03-05
被引用文献数
2 4

形状不定の1個のスズ試料{(O.1〜1)mg}を直接黒鉛炉に入れ原子化し,数ppmから数十ppmの銅及び百分の数ppmから数ppmの銀を原子吸光法で定量した. 分析のための標準化には定量元素である銅及び銀の標準溶液を用いた. 銅及び銀の原子化温度は2800℃及び2500℃で,原子化時間はどちらも45秒とし,吸光値は原子吸光シグナルの面積値とした. 原子化温度が高いため,主成分のスズも煙霧として大部分が銅や銀とともに蒸発し,バックグラウンド吸光(吸光度としてO.01〜O.1)を与えるが,これはゼーマン原子吸光法を用いることで補正された. 数十ppmの銅及び十分の数ppmから数PPmの銀の測定変動係数は(6〜28)%であった. 検出下限は,銅の場合O.082ng(試料量をO.4mgとするとO.2ppm相当)であり,銀の場合O.O11ng(試料量を1mgとするとO.O1ppm相当)であった. 分析時間は1試料につき試料のひょう量時間も含め約5分であり,黒鉛炉は(120〜200)回の繰り返し使用が可能であった.
著者
村上 文子 西沢 秀幸 石原 政雄
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.31, no.11, pp.624-627, 1982-11-05
被引用文献数
1

ポリアミンソ類(プトレシン,カダベリン,スペルミジン及びスペルミン)をダンシル化した後ポリアミド薄層を用いた薄層クロマトグラフィーにより分離し,薄層上のスポットをスキャニング蛍光光度計を用いて直接測定し定量した.ダンシルポリアミン類はポリアミド薄層上で少なくとも24時間は安定であり,測定下限はビスダンシルプトレシン,ピスダソシルカダベリン,及びトリダンシルスペルミジンでは10pmol,テトラダンシルスペルミンでは5pmolであった.1枚の薄層板上での蛍光強度の変動係数は5%以内であった.動物組織の定量ではほぼ文献どおりの値が得られた.
著者
片瀬 隆雄 和田 英太郎
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.39, no.8, pp.451-456, 1990-08-05 (Released:2010-01-18)
参考文献数
16
被引用文献数
7 10

炭素及び窒素安定同位体比測定の試料を得る目的で,クロロフィルaをアオコ(Microcystis spp.)から1~10mgオーダーで単離する方法を検討した.凍結試料を無水硫酸ナトリウムと共に乳鉢中で混合し,アセトンで抽出後,同液からジオキサンで粗性クロロフィルを沈殿させ,更にジエチルアミノエチル-トヨパール陰イオン交換樹脂及びセファロース・ゲル濾過担体カラムでクロロフィルaを単離する方法を検討した.この方法で,実際に諏訪湖から経時的に採取したアオコの4試料からクロロフィルaを2.3~3.8mg単離し,未処理の乾燥アオコ及び単離の過程で得られた分画物を合わせて18試料の炭素同位体比(13C/12C)及び窒素同体比(15N/14N)を測定した.その結果,アオコ単離のクロロフィルaの炭素・窒素同位体比が経時的に変化していることが明らかとなった.
著者
武山 主郎^[○!R] 細谷 稔
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.80-84, 1984-02-05
被引用文献数
15 9

高純度鉄をはじめ各種金属中の微量ケイ素を簡便に定量するため,強硫酸酸性とした試料溶液にフッ化水素酸を加えてケイ素をフッ化ケイ素とし,加熱することなく酸素を送入して試料溶液から分離し,ホウ酸溶液に吸収させた後モリブデソ青吸光光度法によって定量する方法を検討した.試料液量に対し1.6倍以上の硫酸を加えることにより,定量的にフッ化ケイ素が発生することを確かめた.又生成したフッ化ケイ素を完全に吸収液中に移行させるためには,1000 ml/minの酸素流量で20分間通気する必要があった.本法を高純度鉄,多量のヒ素を含むガリウム-ヒ素半導体やその他の金偶中の微量ケイ素の定量に応用して良好な結果を得た.本法によるケイ素含有量0.0006%の鉄試料についての相対標準偏差は6.4%であった.又分析所要時間は(40〜45)分間で他の方法に比べて迅速に定量できた.
著者
奥谷 忠雄 鵜澤 惇 吉村 坦
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.120-123, 1989-03-05
被引用文献数
10 9

1,2-シクロヘキサンジオンジオキシムを活性炭に担持した吸着剤(以下、AC-DOxと略記)を用いて微量Niを分離濃縮した後、メタル炉AAS法で定量する方法を研究した。AC-DOxは水溶液中で活性炭にDOxを吸着させ、炉過した後、デシケーター中で乾燥保存した。試料溶液100-1OOO cm^3中にFe、Co及びCuなどが共存してもpH6.0〜9.0の範囲で0.5μg以下のNiをほぼ定量的に吸着分離できた。又吸着されたNiは希塩酸で容易に脱離できるのでこの溶液についてタングステンリボン炉を用いてAAS測定する。検量線は0.05〜0.50μgの範囲で再現性の良い直線関係が得られた。又濃縮は少なくとも200倍まで可能であった。0.10μg Ni/100cm^3について行った本法の再現性は相対標準偏差(n=5)は3.0%であった。本試料中の極微量Niの定量に本法を適用し満足する値を得た。
著者
松野 康二^[○!R] 岩尾 総一郎 児玉 泰
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.125-129, 1984-03-05
被引用文献数
1

急性タリウム中毒患者及び正常人の生体試料中タリウムのスクリーニング法について検討した.尿及び血液は0.1N硝酸による単純希釈液,頭髪は毛根部より5mmずつ切断したものを測定試料として,黒鉛炉原子吸光法により直接定量を行った.加熱プログラム特に灰化段階の温度のコントトール及び測定値の回収率での補正により,生体試料中タリウムを簡便かつ短時間に測定できた.従って,本法は中毒症状が発現する程度の暴露を受けた被験者のスクリーニング法として極めて有用な方法と考えられた.
著者
杉原 喜四郎 斎藤 俊英
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.139-142, 1958-03-05 (Released:2010-02-16)
参考文献数
3
被引用文献数
1 2

試薬食塩中の不純物としての重金属をジチゾン抽出後,塩酸で再抽出してこれを蒸発乾固しポーラログラフによって定量することは,すでに鉛について行ったが,今回は銅,亜鉛について行った.操作法は,亜鉛については鉛の場合と同様であるが,銅についてはジチゾン抽出の際,ジチゾンを200倍位過剰にし,抽出時間は10分以上要した.支持塩としては前報のごとく,0.1M酒石酸+0.5M酢酸アンモン(pH:5.0),0.025Mロダンカリ+0.1M醋酸アンモン(pH:4.6)を用いた.抽出率は30%純食塩水中の15~40γの銅については約98%,10~23γの亜鉛については約101%であった.実際の試薬食塩およびチタンホワイトについて,鉛,銅,亜鉛の定量を行った.
著者
阿部 善也 権代 紘志 竹内 翔吾 白瀧 絢子 内田 篤呉 中井 泉
出版者
The Japan Society for Analytical Chemistry
雑誌
分析化学 = Japan analyst (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.477-487, 2011-06-05
被引用文献数
5

国宝 紅白梅図屏風(尾形光琳作)は,先行研究でその金地が金箔製ではない可能性が指摘され,社会的に注目された.その一方で,金地が金泥で描かれたものであると判断するに足る科学的根拠は得られておらず,金地の製法に関して疑問が残されていた.本研究では最先端の可搬型分析装置を用いたオンサイト非接触複合分析により,金地の製法解明を図った.特に金箔の延伸過程で生じる金結晶の配向現象に着目し,新規の手法として粉末X線回折法を導入し,金箔・金泥の判定を行った.粉末X線回折測定により屏風金地を分析した結果,屏風の金地部分では金結晶が<i>a</i>軸方向に選択配向していることが明らかとなった.この結果は屏風に先立って分析された現代の金箔の結果と一致した.さらに屏風の金地全体に格子状に浮き上がって見える部分については,金の厚みが2倍以上になっていることが蛍光X線装置による線分析によって示され,2枚の金箔が重なった箔足部分であることが判明した.以上の結果より,屏風の金地は金泥ではなく,金箔であることが明らかとなった.