著者
野村 俊明
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.47, no.11, pp.751-767, 1998-11-05 (Released:2009-06-30)
参考文献数
196
被引用文献数
4 4

水晶発振子は大気中での微量てんびんとして開発され利用されてきた.この原理は,水晶発振子上で生じた質量変化を振動数変化として検出するものである.水晶発振子の振動数変化は,質量のみに依存し,どんな物質による質量変化かには関係しない.従って,水晶発振子を化学分析の検出器として用いる際には,特定の物質のみが付着するようにする必要があり,定量法の重要な課題となる.又,この水晶発振子を液体中での検出器として用いるためには,大気中での振動数特性のほかに,密度,粘度,電気伝導度,誘電率などの液性も考慮する必要があり,より複雑になる.ここでは,水晶発振子を液体中の微量成分分析の検出器として用いるために,これらの振動数を変化させる要因をいかに考慮するか.いかにしたら特定の物質だけが付着するようになるか.又,より簡単に定量するにはどのようにすれば良いか,などについて,読者の研究の参考になればと,液体中における化学分析に関係した論文をまとめてみた.
著者
石井 直恵
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.103-113, 2011 (Released:2011-04-01)
参考文献数
9
被引用文献数
1

純水・超純水は実験室で非常によく使用される試薬の一つであり,ブランク,サンプルの溶解や希釈,標準物質の調整,移動相や培地,バッファー調整などあらゆる用途に使用されている.そのため,実験に使用する純水や超純水の水質は結果に非常に大きな影響をおよぼす.そこで,超純水製造装置では使用目的に応じて特定の不純物を除去する技術を搭載することで,目的にそった水質を達成することが重要となっている.本報では,各種機器分析で必要とされる超純水の水質と適切な精製方法について述べる.
著者
奥田 知明 黒田 寿晴 奈良 富雄 岡本 和城 岡林 佑美 直井 大輔 田中 茂 HE Kebin MA Yongliang JIA Yingtao ZHAO Qing
出版者
The Japan Society for Analytical Chemistry
雑誌
分析化学 = Japan analyst (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.287-292, 2009-04-05
被引用文献数
1

発がん性を有する多環芳香族炭化水素類(PAHs)の定量分析時における夾雑物除去操作の利便性向上を目指し,自動化カラムクロマトグラフィー装置の開発を行った.本装置は,夾雑物除去用固相抽出管を最大8本,展開溶媒は最大3種類,滴下容量は最大1 mL/ストロークでその分解能は1 μL,回収容器は最大8×3=24本までセット可能である.開発された自動化カラムクロマトグラフィー装置を用いて夾雑物除去操作を行った際のPAHs回収率は,手作業による精製を行った場合と比較して103±9% であり,両者は極めて良好に一致した.この自動化により,8検体の処理に要する時間は手作業の場合の半分である約45分に短縮され,また自動運転中は放置できるため,分析者にとっての利便性が著しく向上した.本研究により確立された高速ソックスレー抽出/自動化カラムクロマトグラフィー/高速液体クロマトグラフィー/蛍光検出法を中国北京市で採取された大気浮遊粒子状物質中のPAHsの定量へ応用した.測定された15種類のPAHs濃度の総和(ΣPAHs)は,暖房期では198.5±149.8 ng/m<sup>3</sup>(<i>n</i>=24),非暖房期では50.1±63.7 ng/m<sup>3</sup>(<i>n</i>=51)であり,北京市において特に冬季に暖房のための石炭燃焼由来のPAHsによる汚染が深刻化することが示された.
著者
星 座 四ツ柳 隆夫 青村 和夫
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.26, no.9, pp.592-597, 1977-09-05
被引用文献数
1 4

ジメチルホルムアミド(DMF)及び60%(v/v)DMF-水混合溶媒中におけるグリオキサールジチオセミカルバゾン(GDS)のニッケル,銅,亜鉛,カドミウム及びパラジウム錯体について,その組成(M:GDS=1:1),吸収スペクトル及び錯形成pH条件などを明らかにし,GDSの吸光分析試薬としての可能性を論じた.更に,これらの検討に基づき,極めて選択的なパラジウムの吸光光度法を提案した.
著者
片岡 正光 阿部 浩久 梅澤 喜夫 保田 立二
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.40, no.11, pp.697-703, 1991-11-05
被引用文献数
2 2

リポソームを用いた免疫測定にフローインジェクション/接触分析法を適用し, 抗アシアロGM_1(GA1)抗体を定量する方法を開発した.リポソームは, 糖脂質であるGA1抗原.ジバルミトイルホスファチジルコリンとコレステロールを用い, 内水層にマーカーイオンとしてモリブデン酸ナトリウムを封入して調製した.リポソーム表面で抗原/抗体/補体反応が起きるとリポソームが損傷を受けチャンネル状の穴が生じ, モリブデン酸イオンが外液に流出する.モリブデン酸イオンは過酸化水素/ヨウ化物イオン酸化還元反応の触媒として働き, その反応速度はモリブデン酸イオン濃度に比例する.反応速度はフローインジェクション法により一定時間後の反応混液中のヨウ化物イオン濃度減少に基づくイオン選択性電極の電位ピークの高さとして求めた.本法により10^3〜10^4倍希釈の抗GA1抗体を定量することが可能である.
著者
平野 四蔵 黒部 森司
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.4, no.6, pp.379-383, 1955-08-05 (Released:2009-06-30)
参考文献数
5

近年イオン交換樹脂を工業分析に応用した報文は極めて多数ある1)2)3)等.またイオン交換樹脂を使用して純粋な塩類から酸,アルカリの標準液を調製できる可能性に関しても多くの人がのべている.そして実際アルカリ標準液調製に関する報文も4)5),二,三見られる.実験室において標準試薬として使用し得る塩類,たとえぼ,純粋な塩化ナトリウムはあるが,酸またはアルカリの標準試薬の手持ちがないと言うような場合にもイオン交換樹脂を用いて正確に濃度一定の酸またはアルカリ標準液を調製できるので便利である.しかしながらイオン交換樹脂の品位が不良であると誤差を生ずることがある.著者等は数種の塩類および陽イオン交換樹脂を用いて得られる酸標準液の精度について実験した.その結果アンバーライトIR-120(分析用)を使用することによって塩化ナトリウム,硫酸カリウム,硫酸アンモニウム,塩化アンモニウムなどから0.2%以下の誤差でN/10酸標準液を調製することができた.以下にその実験の大要をのべる.
著者
久保田 敏夫 内田 圭一 植田 俊夫 奥谷 忠雄
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.37, no.7, pp.381-383, 1988-07-05
被引用文献数
3

Simple and rapid determination of phosphorus in sediment was studied by graphite furnace (GF) AAS using a phosphorus hollow cathode lamp (P-HCL). A Zr-treated graphite tube was used for GF. For each analytical procedure a 20 mm^3 of 1% Zr solution was injected into the graphite tube and then a 10 mm^3 of sample solution containing P was injected. Digestion procedure was as follows : The sediment sample of 0.2 g was decomposed with HNO_3-HClO_4-HF, then the digest was evaporated to dryness. The residue was dissolved with 3 cm^3 6 M HCl, and diluted to 50 cm^3, and P was determined by GF-AAS. All the values obtained by the proposed method agree well with the reference value (Pond sediment, NIES No. 2) and those by Molybdenum Blue spectrometry (River sediment and Submarine sediment).
著者
田口 正 戸田 昭三
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.T89-T93, 1989-06-05
被引用文献数
1 2

キャピラリー超臨界流体クロマトグラフィーを極性化合物分析へ応用した。移動相には高純度C02、カラムにはポリジメチルシロキサンを固定相とした溶融シリカキ十ヒラリーを用いた。カラム温度は100℃、水素フレームイオン化検出器(FID)の温度は350℃、そしてカラム圧力を150から400気圧に変化させ条件設定を行った。ポリエチレングリコールアルキルフェニルエーテル(TrittonX-100)について昇圧条件を一定にし、カラム温度を変化させると、保持時間が溶媒と試料とで相反した挙動を示し、試料のピーク形状も大きく変化することが分かった。Tritin X-100について5回測定したときの測定精度を相対標準偏差で表すと、保持時間が0.5%以下、ピーク高さが6.3%となり良い再現性が得られた。極性物質であるメタクレゾールノボラックオリゴマーについてトリメチルケイ素化剤を用いて誘導体化を行い超臨界流体クロマトグラフ分析したところ、誘導体化前に見られたピークは更に幾つかに分離し、分子の立体構造を推定するうえで貴重なデータが得られた。
著者
功刀 正行 藤森 一男 中野 武 原島 省
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.1375-1387, 2004-12-05
被引用文献数
4 4

商船に搭載するための連続濃縮捕集システムを開発し,同システムを用いて同一海域を頻繁に航行するフェリーを観測プラットフォームとする有害化学物質による海洋汚染観測態勢を確立した.観測は,大阪港と那覇新港管を航行するフェリー「くろしお」において1996年12月から1998年2月に,またフェリー「さんふらわああいぼり」において1998年12月から2000年3月に実施した.観測結果から,海洋における有害化学物質による海洋汚染の動態の把握には高頻度の観測が不可欠であること,ヘキサクロロシクロヘキサン類,クロルデン頻を観測することにより観測地点・時点で支配的な起源推定が可能であることが明らかとなった.
著者
河合 潤 山田 隆 藤村 一
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.183-186, 2004 (Released:2004-09-13)
参考文献数
16
被引用文献数
13 15 7

A potable X-ray fluorescence spectrometer composed of an electric battery X-ray generator and a silicon drift detector was made. Several kinds of samples, including toxic elements, such as lead and cadmium, were measured in air using this spectrometer. A possibility to analyze these toxic elements is discussed. It has been demonstrated that sufficient intensity for lead and cadmium was obtainable within 100 seconds to identify these elements.
著者
上澤 和也 上原 伸夫 伊藤 清孝 清水 得夫
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.50, no.12, pp.867-872, 2001-12-05
被引用文献数
2 9

研究室で充填した自作カラム(4.6mm i.d.× 50mm)を用いるイオン対逆相分配高速液体クロマトグラフィーにより, 鉄及び鋼中の微量ホウ素を直接定量した.自作カラムはスラリー法によりHPLC用ODS(C_<18>)充填剤(粒径5μm)0.7gを充填して作製した.鉄鋼試料を塩酸-硝酸で分解し, リン酸と硫酸を加えて蒸発乾固した後, 希塩酸に溶解した.この分解溶液から適量を分取し, 7.5×10^<-3>mol dm^<-3> 1, 8-ジヒドロキシナフタレン-3, 6-ジスルホン酸(クロモトロープ酸)溶液2.5cm^3, 0.275mol dm^<-3>エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム溶液2.5cm^3及び0.5mol dm^<-3>臭化オクチルトリメチルアンモニウム溶液を含む1.0mol dm^<-3>酢酸緩衝液(pH4.8)2.5cm^3を加えてから水で25cm^3に定容とする.この溶液から200mm^3を自作カラムを装着した高速液体クロマトグラフに注入する.溶離液には5.0×10^<-2>mol kg^<-1>臭化オクチルトリメチルアンモニウム, 5.0×10^<-3>mol kg^<-1>リン酸緩衝液(pH8.0)を含む水-メタノールの混合溶液(45 : 55w/w)を用いた.検出波長を350nm, 流量を1.0cm^3 min^<-1>としてHPLC測定を行った.ピーク高さに基づく検量線はホウ素濃度が10^<-8>mol dm^<-3>レベルにおいて直線性を示し, 空試験値(n=5)の標準偏差の3倍と定義した検出限界(3σ)は1.3×10^<-9>mol dm^<-3>であった.本法を鉄鋼認証標準物質(日本鉄鋼連盟)等に適用し, 保証値あるいは参考値(0.2〜50ppm)とよく一致する定量値を得た.
著者
松本 嘉夫 白井 道子
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.12, no.7, pp.608-611, 1963-07-05 (Released:2010-05-25)
参考文献数
1
被引用文献数
3 1

ロ紙上でCr3+のスポットにフェロシアン化カリウム溶液(たとえば5%水溶液)を噴霧すると,噴霧直後は少しも呈色しないが約3時間後には顕著な黄色を呈し,それが数日間安定であり,また水溶液中においてもCr3+にフェロシアン化カリウムを加えると溶液の色調が徐々に変化し,3時間後には液は橙黄色を呈することがわかったので,ペーパークロマトグラフィーを用いてCr3+の定性分析を行なう方法を研究した.展開剤は田村らの研究による溶媒系を用い,呈色試薬として前記のフェロシアン化カリウムを用いてごく普通の陽イオンおよびCrO42-からCr3+を区別する実験を行なった結果,クロマトグラムの位置および呈色の相違を利用してCr3+を区別確認することができた.本方法によるCr3+の確認限界量は約5μgであり,クロム酸に変化させてジフェニルカルバジドで呈色させる従来の方法に比して感度においてやや劣るが操作は簡単,呈色は安定で信頼性がある.
著者
阿部 教恩 星野 仁 壹岐 伸彦
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.64, no.7, pp.493-499, 2015-07-05 (Released:2015-08-05)
参考文献数
25
被引用文献数
2

チアカリックス[4]アレーン-p-テトラスルホン酸(TCAS)は,pH 6.5付近の水溶液中でTb(III)とほとんど錯形成しないが,TCASの架橋硫黄と親和性の高いCd(II)を加えると,自発的にCd2Tb2(TCAS)2錯体を形成しエネルギー移動発光を示す.そこで本錯体の形成を用いCd(II)の発光定量法を開発した.Cd(II)の検出限界(S/N=3)は2.08 nM(0.23 ppb)という良好な値であった.さらに,本法を米試料中Cd定量へ適用した.酸分解後の米試料に含まれるリン酸イオンはキレートディスクによって除去,また,Cu(II)はイミノ二酢酸によってマスキングし,妨害を除去した.前処理,定量操作を行ったときのCd検出限界は,1 gの米試料を分解して本操作を施したとすると米中12.2 ppbのCdに相当する.これは国内基準値0.4 ppmと比べ十分に低い値である.実際に,認証値(Cd: 0.548 ppm)付きの米標準試料を測定したところ0.564 ppmという良好な結果が得られた.
著者
芦沢 峻 春山 慣二 長沢 規矩夫 森本 良雄
出版者
The Japan Society for Analytical Chemistry
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.11-16, 1964
被引用文献数
4

ポロニウム(<SUP>210</SUP>Po)を1<I>N</I>硝酸溶液からジチゾン四塩化炭素溶液で抽出後,有機相に濃硝酸を加え,蒸発分解する.硝酸溶液を測定ざら上で蒸発乾固する.ガスフロー比例計数装置またはガイガーミュラー計数装置を用いてアルファー放射能を測定する.ピッチブレンドを標準にして試料中のポロニウムを定量する.ポロニウムの抽出条件を酸性,アルカリ性溶液で検討した.多量の銅,水銀,ビスマス,テルルなどからの抽出法を確立した.塩酸より硝酸,硫酸溶液から抽出するほうがよい.放射能測定効率,抽出率,蒸発乾固などに伴うバラツキを測定した.分析結果の変動係数は10%であり,分析所要時間は2時間である.
著者
応和 尚 日色 和夫 田中 孝
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.21, no.7, pp.878-883, 1972-07-05 (Released:2010-02-16)
参考文献数
18
被引用文献数
3 3 4

海水中のppbオーダーのカドミウムの原子吸光定量法を確立した.海水中の微量カドミウムを濃縮するため,第1段階には共沈濃縮法を,第2段階には溶媒抽出法を採用した.海水試料2lに塩化ストロンチウムと炭酸アンモニウムを加えてカドミウムを炭酸ストロンチウムとともに共沈させたのち,沈殿を炉別洗浄後,塩酸に溶かし,pHを7に調節してジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム(DDTC)を加えメチルイソブチルケトン(MIBK)で抽出し,有機相の原子吸光測定を行なう.マグネシウム,カルシウム,ストロンチウム,バリウムの炭酸塩でカドミウムの共沈を検討し,カドミウムの共沈濃縮には炭酸ストロンチウムが最適であり,溶液量100mlに対し100mgのストロンチウム量で,その回収率はほぼ100%であった.カドミウムの原子吸光定量に対し,ストロンチウムの妨害は最も小さい.炭酸アンモニウムの使用量としては,溶液100mlにつき20%溶液5mlを採用した.炭酸ストロンチウムの沈殿の洗浄法は温水で3回がよく,沈殿の溶解法は,濾紙をビーカー内壁に広げ希塩酸で沈殿を洗い落とし,濃塩酸で溶解する方法が最良である.沈殿を溶解した塩酸溶液,およびこの溶液からDDTCとMIBKで抽出した有機相について検量線を作成したところ,最初の溶液量2l中のカドミウム濃度それぞれ10~100ppb,および1~10ppbの範囲内で直線の検量線が得られた.後者の場合の感度は,吸光率1%あたりの濃度として0.1ppbである.大量の塩化ナトリウムの存在は検量線作成に影響を与えない.炭酸ストロンチウムの沈殿を塩酸に溶解させ,アンモニア水で中和するとき,pH 8以上になると白沈が生成する.この沈殿生成は緩衝溶液を用いてpHを7に調節することによって防止できる.本法で模擬海水中の0.5~8.0ppbのカドミウムを定量し,回収率はほぼ100%であった.また瀬戸内海と日本海の海水実試料中のカドミウムを定量し,約0.1~10ppbの値を得た.本法によって大量の海水試料中の微量カドミウムを効果的に短時間内に濃縮し,高感度で定量することができる.
著者
安井 隆雄 馬場 嘉信
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.413-419, 2015-06-05 (Released:2015-07-07)
参考文献数
27
被引用文献数
4

ナノバイオデバイスによる単一分子・単一細胞計測技術の開発が,従来の発症後診断・治療に基づく医療から発症前診断・発症予測に基づく予防・先制医療へとパラダイムシフトを起こしている.本稿では,ナノバイオデバイスのうち,ナノピラー,ナノボール,ナノファイバー,ナノワイヤを用いた単一デオキシリボ核酸(DNA)解析,量子ドットによる単一細胞解析とiPS細胞再生医療のための量子ドットin vivoイメージングの成果について解説する.
著者
橋詰 源蔵 萩野 友治 小林 正光
出版者
The Japan Society for Analytical Chemistry
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.7, no.5, pp.287-292, 1958

縮合リン酸塩のうちとくに無定形物質を含みやすいもの,すなわちNaPO<SUB>3</SUB>-Na<SUB>5</SUB>P<SUB>3</SUB>O<SUB>10</SUB>系のX-ray Diffractometer(X線回折計)による定量分析法を検討した.<BR>NaPO<SUB>3</SUB>-Na<SUB>5</SUB>P<SUB>3</SUB>O<SUB>10</SUB>系では,無定形状態のものを加熟処理することにより結晶性のNaPO<SUB>3</SUB>とNa<SUB>5</SUB>P<SUB>3</SUB>O<SUB>10</SUB>の混合物が得られ,その結果組成を内部標準物質法(Internal Standard Method)で決定することにより原試料の推定あるいは晶質管理の一手段とするものである.<BR>結晶形は安定性,処理の容易さ,回折線の強度などを考慮してNaPO<SUB>3</SUB>(I)およびNa<SUB>5</SUB>P<SUB>3</SUB>O<SUB>10</SUB>(I)を選び,したがって加熟処理は500~550℃でおこない,また標準物質(Intemal Standard)としては,あまり適当なものとはいえないがCaSO<SUB>4</SUB>・1/2H<SUB>2</SUB>0をもちいた.測定値の再現性は±5%程度であった.加熱処理時間を検討した結果,NaPO<SUB>3</SUB>(I)は結晶化速度が大凄く,500℃1時間程度で十分な精度を期待で選るが,Na<SUB>5</SUB>P<SUB>3</SUB>O<SUB>10</SUB>(I)は2時間以上,とくにその量が少ないほど長時間加熟することの必要性をみとめた.なお二,三の実例について応用し興味深い結果を得た.
著者
高瀬 つぎ子 高貝 慶隆
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.521-526, 2013-06-05 (Released:2013-06-27)
参考文献数
6
被引用文献数
1

The nuclear accident of Fukushima Daiichi Nuclear Power Station scattered radioactive cesium, following the Tohoku earthquake on March 11, 2011. In the present work, alternative radioactivity data obtained from NaI(Tl) scintillation analyzers and a Ge semi-conductor detector were compared and evaluated with respect to the correlation of those values, the accuracies and the sensitivities using as an actual agricultural product, brown rice which was contaminated by Fukushima Daiichi Nuclear Power Station accident.
著者
小川 禎一郎
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.201-207, 1993-04-05
参考文献数
25
被引用文献数
3 2

レーザー多光子イオン化法により吸光性分子を選択的にイオン化し, 電気電導度測定により高感度に検出することができる.溶液中や固体表面の吸光性試料にレーザーを集光照射して多光子イオン化の機構を調べ, それをもとに分析手法の最適化を行った.無極性溶媒中の吸光性分子の超高感度分析ではpptレベルの検出感度を得た.固体表面での光イオン化では単分子層の1%程度の検出感度を得た.液表面を利用すれば極性溶媒についてもpptレベルの検出感度が得られる.この手法は高速液体クロマトグラフ検出器としても利用できることを示した.これらの結果よりレーザー多光子イオン化法が有用な機器分析法であると結論した.
著者
吉田 勤 内山 茂久 武口 裕 宮本 啓二 宮田 淳 戸次 加奈江 稲葉 洋平 中込 秀樹 欅田 尚樹
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.55-63, 2015-01-05 (Released:2015-01-31)
参考文献数
14

Gaseous chemical compounds such as carbonyls, volatile organic compounds (VOC), acid gases, basic gases, and ozone were measured in indoor and outdoor air of 40 houses throughout Sapporo city in the winter (January to March, 2012 and 2013) and summer (July to September, 2012) using four kinds of diffusive samplers. Almost all compounds in indoor air were present at higher levels in the summer than in the winter. The indoor concentrations of acetaldehyde and p-dichlorobenzene exceeded the Health, Labour and Welfare, Japan guideline in three and two houses, respectively. The mean concentrations of formaldehyde were 27 μg m−3 in the summer and 17 μg m−3 in the winter, and showed that the summer concentration was 1.6-fold higher than that in the winter. Nitrogen dioxide was present in extremely high concentrations in the winter, and it was suggested that the sources of nitrogen dioxide in indoor air are kerosene heaters, unvented gas stoves and heaters. Formic acid was generated by combustion because the nitrogen dioxide concentration in indoor air was well correlated with the formic acid concentration (correlation coefficient = 0.947). In outdoor air, the negative correlation between nitrogen dioxide and ozone was observed during the winter. It was suggested that the reaction of nitric oxide and ozone may influence the formation of nitrogen dioxide.