著者
巽 広輔
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.19-25, 2017-01-05 (Released:2017-02-04)
参考文献数
21
被引用文献数
1

グラファイト粉末と低粘度流動パラフィン等のバインダー液体を混合して調製した液状炭素を電極として用い,ポーラログラフィーを行った.液状炭素はシリンジポンプにより送液し,炭素滴をキャピラリーの先端から水溶液中へ吐出させた.これを作用電極とし,フェロセンカルボン酸(FcCOO−)についてポーラログラフィーを行った結果,明瞭な限界電流をもつFcCOO−の1電子酸化波が観察された.対数プロット解析を行うと,炭素滴が小さいときほどオーム降下の影響が小さくなり,傾きが可逆波の理論値に近づいた.限界電流値の濃度依存性からIlkovic式に基づいて求められたFcCOO−の拡散係数は,白金ディスク電極でのサイクリックボルタンメトリーから求められたそれとほぼ同程度であり,Ilkovic式が炭素滴電極にも近似的に適用可能であることが示された.正側及び負側の電位窓,ならびにゼロ電荷電位についても検討した.
著者
辰巳 賢司 小川 信明 渡辺 巌 池田 重良
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.154-158, 1983-03-05

溶液中の溶存酸素を酸化剤として用いたときの化学溶出クロノポテンショメトリーによる,カドミウム(II)及び銅(II)の定量について検討した. この方法の最大の利点は,実験装置が非常に簡単なことである. カドミウム(II)の場合には,(1O^<-6>〜1O^<-4>)Mの範囲で直線的な検量線が得られたが,銅(II)の場合には,溶液中の銅(II)白身が酸化剤として働き1O^<-5>M以上の高濃度域において検量線が直線からずれる傾向が見られた. 銅(II)が1O^<-4>M共存しても,(lO^<-5>〜2×1O^<-4>)Mの範囲でカドミウム(II)の定量には問題がなかった. しかし,(1O^<-5>〜3×1O^<-4>)Mの範囲における銅(II)の定量時にはlO^<-4>Mカドミウム(II)の共存は妨害となり直線的な検量線は得られず,カドミウム(II)共存下の銅(II)の定量には,析出電位を変え,銅のみを析出させ定量することが必要であった.
著者
金野 俊太郎 大河内 博 勝見 尚也 緒方 裕子 片岡 淳 岸本 彩 岩本 康弘 反町 篤行 床次 眞司
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.163-174, 2017-03-05 (Released:2017-04-07)
参考文献数
18
被引用文献数
2

2012年より積雪期を除き1か月もしくは2か月ごと(2015年以降)に,福島県浪江町南津島の山林でスギと落葉広葉樹の生葉,落葉,表層土壌,底砂の放射性Cs濃度を調査した.福島市─浪江町間の走行サーベイでは,除染により空間線量率は急速に減衰したが,未除染の山林では物理的減衰と同程度であった.2014年以降,落葉広葉樹林では林床(落葉と表層土壌)で放射性Csは物理的減衰以上に減少していないが,スギ林では生葉と落葉で減少し,表層土壌に蓄積した.2014年までスギ落葉中放射性Csは降水による溶脱が顕著であった.2013年春季には放射性Csはスギ林よりも広葉樹林で表層土壌から深層に移行していたが,2015年冬季にはスギ林で深層への移行率が上回った.小川では放射性Csは小粒径の底砂に蓄積しており,一部は浮遊砂として流出するが,表層土壌に対する比は広葉樹林で2013年: 0.54,2015年: 0.29,スギ林で2013年: 1.4,2016年: 0.31と下がっており,森林に保持されていることが分かった.しかし,春季にはスギ雄花の輸送による放射性Csの生活圏への流出が懸念された.
著者
大城 敬人
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.351-362, 2017-05-05 (Released:2017-06-08)
参考文献数
48
被引用文献数
1

ギャップ電極デバイスを用いたトンネル電流による単分子分析法を開発している.これは,ギャップ電極間を試料分子が通過する際,分子を介したトンネル電流の増加量から単分子ごとにコンダクタンスを計測し,分子を電気的に検出する方法である.この方法を用いることで,核酸塩基やアミノ酸分子などの個々の化学種の違いを,コンダクタンスの大きさとして検出することに成功した.これは分子計算によると分子ごとの電子状態の違い,特に最高被占軌道(HOMO)レベルの違いを反映したものと考えられる.さらに,核酸塩基鎖やオリゴペプチドなどの高分子をギャップ電極間に通過させて計測することで,コンダクタンスの大きさの時間変化から,高分子鎖の配列情報を読む可能性を見いだした.今後こうした単分子分析技術に,分子制御技術を組みあわせた集積デバイスの開発を進め,様々な生体高分子へ展開可能な単分子シーケンサーとすることで,個別医療を実現する要件を満たす次世代シーケンサーの技術開発へと進めていきたい.
著者
松島 肇 半谷 高久
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.24, no.8, pp.505-511, 1975
被引用文献数
1 4

河川水を加圧型濾過器で濾過水と浮遊物質とに分離して水中の多環芳香族炭化水素の分析法を検討した.まず,濾過水についてはクロロホルム抽出し,又浮遊物質はシクロヘキサン-エタノールの混合溶媒によりソックスレー抽出し,各抽出液をロータリーエバポレーターで濃縮した.次に,フロリジルカラムを用いてベンゼン溶離でクリーンアップし,流出液を減圧下で1ml以下に濃縮した後,シリカゲルカラムを使用してイソオクタンで脂肪族炭化水素を,イソオクタン-ベンゼン(1:1)で多環芳香族炭化水素を溶離分画した.更に,多環芳香族炭化水素分画を減圧下で蒸発乾固し,それに一定量のベンゼンを加えて溶解し,マスフラグメントグラフィーにより11種の多環芳香族炭化水素を定量した.<BR>本分析法は従来の方法に比較して,薄層クロマトグラフィーなどの前処理による各多環芳香族炭化水素の単離という煩雑な操作が必要ない上に,濾過水・浮遊物質ともに数ppt以上存在すれば定量が可能であるなどの利点がある.本法の適用例として多摩川河川水を分析した結果,濾過過水・浮遊物質ともフルオランセン,ピレン,3,4-ベンゾピレン,1,12-ベンゾペリレンなどを数pptから100pptの範囲で同定・定量された.
著者
北條 正司
出版者
The Japan Society for Analytical Chemistry
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.63, no.9, pp.715-726, 2014

塩を混合することにより,濃硝酸ばかりか希硝酸にも酸化力が発現することを確認する目的で,アルカリ金属,アルカリ土類金属及びアルミニウム塩化物塩を含有する0.1~2 mol dm<sup>-3</sup>硝酸中に貴金属類,特に,金を溶解することを試みた.2.0 mol dm<sup>-3</sup> HNO<sub>3</sub>にAlCl<sub>3</sub>を1.0 mol dm<sup>-3</sup>混合した20 mL溶液中(15~80℃)に,純金板(20 ± 2 mg,厚さ0.1 mm)は完全溶解するが,温度の上昇に伴い,完全溶解に要する時間は著しく短縮した.40及び60℃ において,塩化物塩を混合した2.0 mol dm<sup>-3</sup> HNO<sub>3</sub>溶液中での金線(19.7 ± 0.5 mg,直径0.25 mm)の溶解速度定数[log (<i>k</i>/s<sup>-1</sup>)]は,一般的に塩濃度の増大と共に上昇した.例えば,60℃ において2.0 mol dm<sup>-3</sup> HNO<sub>3</sub>溶液中にLiClを1.0,2.0,3.0及び4.0 mol dm<sup>-3</sup>混合すると,log (<i>k</i>/s<sup>-1</sup>)値はそれぞれ-4.15,-3.77,-3.45及び-3.14へと上昇した.ずっと濃度の低い硝酸(0.1~1.0 mol dm<sup>-3</sup>)を用いると金線の全溶解時間は著しく長くなった.純金の溶解は,硝酸及び塩酸濃度の低い「希王水」,例えば,1.0 mol dm<sup>-3</sup> HNO<sub>3</sub>と1.0 mol dm<sup>-3</sup> HClの溶液中でも起こる.50 mL海水と2.0 mol dm<sup>-3</sup> HNO<sub>3</sub>の1 : 1混合液中に,金線5本(0.10 mg)を100℃ において約17時間で完全溶解させることに成功した[log (<i>k</i>/s<sup>-1</sup>)=-4.52].塩酸濃度の増加に伴うラマンスペクトル変化に基づき,バルク水構造の破壊及び水の特性の変化を議論した.
著者
森本 友章 中川 淑美 瀬沼 勝 土佐 哲也
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.39, no.11, pp.735-739, 1990
被引用文献数
3

アスパラギン酸センサーは,L-アスパラギン酸β-デカルボキシラーゼ活性をもつPseudomonas dacunhae をκ-カラギーナンで固定化した膜と二酸化炭素電極を組み合わせて作製した.このセンサーは0.2~5mMの濃度範囲で直線性を示し,安定性及び選択性も優れていた.このセンサーによる測定値は他の方法によるものとよい相関を示した.尿素センサーはウレアーゼ活性をもつSporosarcina ureae膜をP. 5ン粥膨伽卿欄6膜を君dacunhaeの場合と同じ方法で調製したものを,アンモニアガス電極に取り付けて作製した.このセンサーは0.1~50mMの範囲で直線性を示し,安定性及び選択性も優れていた.
著者
土屋 正彦 栗田 繕彰 深谷 晴彦 大河内 正一
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.62, no.12, pp.1087-1093, 2013-12-05 (Released:2013-12-28)
参考文献数
24

水は種々の特異性をもつことが知られており,液体中にもクラスターが存在することが推定されているが,その大きさやサイズ分布は確認されていない.液体イオン化質量分析法は液体表面及び気相中のクラスターを区別して測定できるので,室温(23~25℃),大気圧下での水のクラスター(H2O)nの測定,解析を行った.液体表面には,水の分子数nが30前後までのクラスターが連続的に存在し,その水分子数の平均値(N)は15~17であった.気相中にもクラスターが存在するが,液体表面よりは小さくなり,液面から遠ざかるほどクラスターは分解して小さくなる.これはArガスが逆方向に流れているので,単位空間中の水の絶対量が減るためである.試料流量を増加すると,イオン量は若干減るが相対的に大きなクラスターが少し増える.また,第2質量分析計(Q3)でさらに大きなクラスター(N=27)が観測された.クラスターは水素結合により生成するので,大気圧下では水はクラスターとして蒸発し,水量が多くなれば湯気や霧のような水分子の集合体になり,減れば分解すると考えられる.このクラスターの存在が水の特異性の主な原因の一つといえよう.
著者
長江 徳和 榎並 敏行
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.49, no.11, pp.887-893, 2000 (Released:2001-06-29)
参考文献数
12
被引用文献数
7 8

水100%移動相を用いた場合の逆相固定相の保持挙動を評価した。水100%移動相をカラムに通液すると核酸塩基などの試料の保持は時間の経過とともに,また一度通液を停止した後に保持時間が短くなり,このときのカラムの重量差から水が充填剤から抜け出していることが示された。水100%移動相を用いた場合の保持の減少は充填剤の細孔から移動相が抜け出し,その結果移動相と固定相の接触している分離の場が減少することにより起こることが推察された。細孔径,固定相のアルキル鎖長,カラム温度又は緩衝剤などにより保持挙動は大きく変化し,22nm以上の細孔径の大きな固定相であれば,水100%移動相条件でも再現性の高い保持が得られた。また,長いアルキル鎖長のC30固定相は10nmの細孔径でも同様に再現性の高い保持が得られた。固定相や移動相の様々な条件を変えることにより,一般的な逆相固定相でも水100%移動相条件下で再現性の高い分離が可能であることが示された。
著者
中野 和彦 辻 幸一
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.427-432, 2006-06-05
被引用文献数
2 17

ポリキャピラリーX線レンズを用いた共焦点型蛍光X線分析装置の開発を行い,米試料中の非破壊三次元分析を行った.10μm厚のAu薄膜により評価した,共焦点型蛍光X線分析装置の深さ方向の分解能は約90μmであった.ポリキャピラリーハーフレンズを取り付けることで,バックグラウンドの軽減が確認された.開発した装置を用いることにより,米試料中の主元素の三次元元素マッピング像が,非破壊的に常圧下で得られた.米試料中の主元素であるK,Ca,Feの二次元マッピング像を試料表面から200,400,500μmの深さで取得したところ,異なる分析探さにおいてそれぞれ異なった元素分布を示した.
著者
松岡 育弘 内藤 哲義 山田 碩道
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.51, no.9, pp.759-765, 2002-09-05
被引用文献数
1 7

数多くの溶媒について水を飽和した状態で,溶媒のアクセプタ性を示す E_T値と水の溶解度を測定した.水の溶解度は,カールフィッシャー法により電量滴定で測定した.用いた溶媒は,7 種類のアルカン,3 種類の芳香族溶媒,3 種類の塩素化炭化水素,4 種類のエステル,6 種類のケトンと5 種類のアルコールである.各溶媒のE_T値は 1,2- ジクロロエタンを除いて対応する水の溶解度とかなりよい直線関係が成立することが分かった.これらの溶媒の中でデカン酸による銅 (II) イオンの抽出に関して研究してきた溶媒に対して,水の溶解度とこれらの抽出系に含まれる種々の平衡定数との間にかなりよい直線関係があることを示した.このことは,これらの抽出平衡が水和の影響を受けていることを示唆している.本研究で用いた溶媒への水の溶解度は 2.36×10^-3から 4.74 mol dm^-3であり,E_T値と比べて広い範囲にわたっている.このことは,有機溶媒への水の溶解度は,溶媒抽出における溶媒効果を研究する際,有機溶媒の性質を示す高感度な尺度として有用となることを期待させる.
著者
深沢 力
出版者
The Japan Society for Analytical Chemistry
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.8, no.7, pp.454-456, 1959

著者は微量のバナジウムの定量にジフェニルアミンスルホン酸ナトリウムを用いよい結果をえ,諸種の試料に応用した.しかるに著者がこれらの研究に用いた呈色試薬ジフェニルアミンスルホン酸ナトリウムはE..Merck社の製品であり,国産品はいずれも使用できなかったことはすでに報告した.すなわち国産品は純度がわるく,また不純物の影響もあるのではないかと思われるが,これを用いた場合呈色溶液の色もうすく,多量の試薬を用いても本法に使用できるようなバナジウム量-吸光度関係曲線はえられなかった.またMerck製品を用いた場合でも試薬の使用量が多いほど呈色溶液の色は濃くなるが,あまり多いと呈色は不安定になり,吸光度のバラツキも大きくなった.また他の外国品については手許になく検討できなかった.その後G. Frederick Smith社(米国)製品および国産東京化成製品についてバナジウム定量に応用しうるかどうかを検討するために,バナジウム量-吸光度関係曲線を作成し,また呈色溶液の可視部の吸収曲線および試薬の赤外部の吸収曲線などを測定して試験した線果, G. Frederick Smith社製品および最近の東京化成品はMerck品と同様に本法に使用できることがわかった.
著者
大西 寛 永井 斉 樋田 行雄
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.328-332, 1962-03-05 (Released:2009-05-29)
参考文献数
4

ビスマスを冷却材とする半均質炉の研究開発が現在日本原子力研究所において進められている.これに伴ないビスマス中のコン跡のホウ素の定量法が必要となった.ビスマス粉末試料を塩酸と臭素により溶解後過剰の臭素を加熱により除く.つぎにメタノールを加え,ホウ素をホウ酸メチルとして蒸留分離する.留出液は水酸化カルシウム懸濁液に捕集したのち蒸発乾固する.残分に一定量の塩酸と水を加えてからクルクミン法による吸光光度定量を行なう.0.1~1ppmのホウ素に対して回収率は少し低く,+10%の補正が必要である.この補正を行なえば,誤差は±0.1ppm B 以内と考えられる.
著者
小原 陸生 角本 進 岡田 寿明
出版者
The Japan Society for Analytical Chemistry
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.23, no.13, pp.163R-169R, 1974
被引用文献数
1

単体半導体, 無機化合物半導体および電子セラミックスの分析法について, 前回の進歩総説のあとを受けて1971年から1973年までの文献を主体に取りまとめた.今回特に目だった点は, イオンバックスキャッター法・原子核反応法・オージェ電子分光法・ion microanalyzer (IMA) 法など, 新しい物理的分析法の実用化が軌道に乗りはじめて, 基礎検討の段階から一歩進んで実際の半導体素子へ適用した報告がぼつぼつ現われてきたことである.半導体の表面や限定された微小部分に関して得られる情報は, これら分析手法の導入によって大幅に増加し, 半導体工学に対する寄与を一段と高めた.一方, ソ連・東欧を含むヨーロッパ諸国を中心として, 従来のオーソドックスともいえる化学的分析法が今もなお盛んに利用され, 所を得た使い方をされている.このことは, 半導体分析の場合, 特に各種の分析法を目的に応じて相補的に活用しなければならないことを物語っている.
著者
石原 良美 杉田 大峰 佐久間 翔 北見 秀明 高野 二郎
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.65, no.6, pp.335-338, 2016-06-05 (Released:2016-07-07)
参考文献数
10

This paper describes a simple analytical method for the determination of L-theanine, a major free amino acid in green tea, by high-performance liquid chromatography (HPLC) with ultraviolet detection (UV). This method provides high linearity of the working curve for calibration as well as repeatability. The correlation coefficient of the working curve for calibration was estimated to be to 0.9991 for L-theanine in the concentration range from 1 mg L−1 to 100 mg L−1. The limit of detection (LOD) was calculated on 3σ at 1 mg L−1 as 0.210 mg L−1 using a standard solution for L-theanine. The limit of quantification (LOQ) was calculated on 10σ at 1 mg L−1 as 0.704 mg L−1 using a standard solution for L-theanine. In addition, the recoveries of spiked the bottled green-tea drinks at concentration levels from 10 to 75 mg L−1 were estimated to be 91.1–99.3%, and the relative standard deviations were 1.04–2.51%. This method could be successfully applied to the determination of the L-theanine in bottled green-tea drinks.
著者
松本 高利 田辺 和俊 佐伯 和光 天野 敏男 上板 博亨
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.483-489, 1999-05-05
被引用文献数
8 12

プラスチック廃棄物のリサイクルには不可欠なプラスチックの非破壊判別手法を開発するために, 近赤外分光測定とニューラルネットワーク解析を組み合わせた手法を検討した. 最近のリサイクル法の施行で必要になっている多種類のプラスチックを迅速に判別するために, 収集した51種類のプラスチックの約300点の試料について波長1.3〜2.3μm領域の近赤外反射スペクトルを測定し, 二次微分処理したデータを3層構造パーセプトロンモデルのニューラルネットワークに入力してバックプロパゲーション法で学習を行った. 10種類のプラスチックについて2〜4個のデータを入力して判別テストを行った. その結果, 極めて少数の学習データを用いたにもかかわらず平均的中率として80%近い結果が得られ, 多種類のプラスチックを迅速に判別する手法を開発することができた. 本研究の手法を用いればプラスチック廃棄物のリサイクルに実用可能なプラスチック判別装置を開発できる可能性があることが分かった.
著者
白上 房男 岡島 義昭 前小屋 千秋 高田 芳矩
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.38, no.9, pp.413-418, 1989-09-05
被引用文献数
1 3

土壌中の水溶性及び交換性の無機態窒素を迅速に連続測定するFIA法を検討した.亜硝酸及び硝酸態窒素の測定ではジアゾ化-アゾ化合物生成に高温反応(90℃)を適用した.なお,硝酸態窒素の測定では還元カラム(Cu-Cd粒状,φ3×300mm)の活性寿命及び還元効率への流量依存性を評価した.アンモニウム態窒素の測定では多孔質膜分離-インドフェノール法の常温反応における最適条件を検討した.土壌2gを浸出液50mlで振り混ぜ抽出し,その40μlを各成分の測定に供する.本法の繰り返し測定の再現性は相対標準偏差で0.3〜0.5%であり,定量範囲は亜硝酸態窒素:0.1〜7ppm,硝酸態窒素:1〜20ppm,アンモニウム態窒素:1〜150ppmである.なお,3成分連続測定の所要時間は約10分間である.
著者
森 絵美 細谷 弓子 今井 靖 大橋 俊則 田澤 英克 馬渡 和真 森田 啓行 北森 武彦
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.461-468, 2015-06-05 (Released:2015-07-07)
参考文献数
14
被引用文献数
1 2

マイクロフルイディクス(微小流体工学)と熱レンズ顕微鏡を応用して酵素結合免疫測定(enzyme-linked immunosorbent assay: ELISA)をシステム化した新しい機能デバイス(μELISA)を開発した.μELISAは,これまでの研究成果で,ヒト血清でも優れた性能を発揮してきた.しかしながら,様々な患者検体でマイクロリットルオーダーの微量分析を行う場合には,患者ごとに異なる検体の成分組成や粘度の違いによる影響などが課題となる可能性がある.本研究では,測定対象とするマーカーをC反対性タンパク(CRP)として,実際の患者血清に対して考慮すべき測定条件を検討した.その結果,マイクロ流体系では検体に由来する影響があることが分かり,信頼性のある測定値を得るためには,緩衝液にて希釈をする必要があることが分かった.
著者
櫛田 浩平 安藤 麻里子 天野 光
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.63, no.11, pp.867-871, 2014-11-05 (Released:2014-12-05)
参考文献数
19

Gold is useful not only for traditional, ordinary human applications as ornaments, coins or electric devices, but also for nuclear and radiation applications. Here we report a study of activated gold for estimating the neutron dose in the environment in the case of the JCO criticality accident that occurred in Tokai, Japan, in 1999. We collected and analyzed 16 gold samples, such as rings, coins or necklaces stored at residents’ houses located in the range of 168 to 568 m from the accident site of the JCO. They indicated activities of gold from 91.9 to 0.322 Bq g−1 as standardized values at 06 : 15 on October 1, 1999, when the criticality reaction had ceased after 20 hours of continuation. The induced radioactivity of gold samples showed a good correlation as a power function of distance. The induced radioactivity of gold is discussed with the reference data in order to estimate dose equivalent in the environment around the JCO. This paper gives an example showing the usefulness of gold in the field of nuclear and radiation studies and applications.