著者
吉田 達成 岡田 忠司 保母 敏行
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.48, no.10, pp.917-926, 1999-10-05
被引用文献数
1 3

前報において, アミド, ジオール及びシリカカラムを用いる水系順相法によるべプチド分離法を報告した. 今回, ベプチドの分離の保持機構を明らかにするために, ペプチドを構成する各アミノ酸の保持への貢献度を定量した. 本論文では, その貢献度を親水性保持係数 (hydrophilicity retention coefficients) として表現した.0.2%トリフルオロ酢酸+0.2%トリメチルアミンを添加したアセトニトリル-水系移動相を用い, アミド, ジオール, 及びシリカカラムの各カラムにおける121のべプチドの保持時間を検討した. 得られたデータを用いてシリカカラムに対しては, 線形回帰分析にて, アミド及びジオールカラムに対しては, 非線形回帰分析にて親水性保持係数を算出した. 各カラムにおける一組の親水性保持係数は, アミノ酸の保持の貢献への度合いをうまく説明した.
著者
下山 進 野田 裕子
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.243-250, 1992-06-05
被引用文献数
21 8

本研究では, 古代染織遺物の染色に使用された染料を非破壊的に同定することを目的として, 植物や動物から得られた染料で染色した染織物に直接励起光を照射し, 三次元蛍光スペクトルを測定して, その蛍光強度の等高線図を比較検討した.この結果, 等高線図上に年輪状の輪で描かれた蛍光スペクトルビークの位置で染織物に染着している染料固有の蛍光特性が励起波長と蛍光波長によって特定できることを確認し, 染織物を破壊することなく染着している染料をそれぞれ識別できることが明らかとなった.
著者
松本 勲
出版者
The Japan Society for Analytical Chemistry
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.258-263, 1962

(1) 天産鉱物を試料とする場合ヒ素の量が不定であり,合理的と思われるサンプリングを行なってもロットの保証をしかねる場合がある.<BR>(2) 佐々木らは口紅,白粉類につき,また奥井らは医薬品についてヒ素の含量測定をしているが,前処理はいずれも硫硝酸加熱疎解後そのロ液についての報告である.<BR>(3) 一方,フッ化水素酸を使用する場合,異状呈色に特に注意しなければならない.この際,エピコ樹脂で使用器具および発生瓶の内面を完全にコーティングすることによりチタンを含むものの完全分析が容易となった.<BR>(4) 同時に特級フッ化水素酸個有のヒ素含量がわかり影響も少なくないので,使用にあたっては必ず同一ロットのものを使用しなければならない.<BR>(5) 呈色状況をデンシトメーターで固定化して検量線の作成を試みたがあまり実用的でなかったし,前処理の時間の短縮させる意味で二,三簡易法も試みたが成功しなかった.<BR>(6) しかし,ケールダール法の迅速化は非常に能率的で,従来だと5時間以上も費したものが2時間ぐらいで完結できるようになった.また限度試験を一番判別しやすい所で行ない,判定を容易にした前処理を起草し,同時に再現性の検討方法などにもふれた.
著者
三留 真珠美 伊藤 克敏 荒川 秀俊 前田 昌子
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.355-361, 2000-06-05
被引用文献数
2 3

先天性代謝異常症であるフェニルケトン尿症,メイプルシロップ尿症及びガラクトース血症の診断の指標となる血液中フェニルアラニン(Phe),ロイシン(Leu)及びガラクトース(Gal)を迅速かつ簡便に定量することを目的として,固定化酵素カラムを用いるセミミクロFIAによる3成分同時定量法の検討を行った。本法は試料量20μl,分析時間17分間で3成分同時に定量可能であった。本法を先天性代謝異常症スクリーニング用血液濾紙ディスクの測定に応用したところ,それぞれの検量域は0.3~19.6(Phe),0.8~18.4(Leu),0.4~18.2(Gal)mg/dlであり,現在マススクリーニングで行われているカットオフレベルを十分カバーできた。日内変動は標準血液濾紙の各ポイントにおいていずれも2.4%(RSD,n=5)以下と良好であった。また,ヒト成人血液を用いて調製した血液濾紙からの平均添加回収率はPhe,Leu,Galそれぞれ,77.4,78.5,97.4%(n=11)であった。本法を用い正常新生児血液濾紙の測定を行ったところ,その平均血中濃度(n=30)はそれぞれ1.5(Phe),2.4(Leu),2.6(Gal)mg/dlであった。
著者
喜多 知子 森田 秀芳 梅野 真由美 喜多 青三 下村 滋
出版者
日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.38, no.11, pp.547-552, 1989
被引用文献数
3

ICP-AESを用いて,血清中の9元素(Mg,Ca,Fe,Cu,Zn,P,Si,Na,K)を同時測定するための前処理法として除タンパク法を検討した.除タンパク試薬としては,血清と混合後の終濃度が,硝酸は0.28M,トリクロロ酢酸は5.0%になるような混液が適当であることが分かった.本法による前処理は,血清0.5mlに精製水1.5mlを加えて混合し,これに除タンパク試薬4.0mlを加えてかき混ぜ,放置後遠心分離し,その上清をICP-AESの検液とする.前処理法として,よく使用されているテフロン密閉容器を用いた分解法との比較,又,自動化学分析機における測定値との比較を行い,本法は,ICP-AESで測定する血清試料の前処理法として有用な方法であることが分かった.本法を用いて,健常者や透析患者血清の前処理を行い,満足すべき結果を得た.
著者
小野 八束 坂口 武一
出版者
The Japan Society for Analytical Chemistry
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.14, no.10, pp.891-895, 1965

adenosine triphosphate(ATP)の分解程度の異なる種々の製品を検定し,またATPにアミノ酸(トリプトファン,シスチン,チロジン),ブドウ糖,α-ケトグルタール酸およびビタミンBなどを混合した製剤を分離するためには,展開のすみやかな薄層クロマトグラフ法が最良の方法と考えられる.<BR>そこで,薄層クロマトグラフ法を適用したところ,これらの混合物からATP,adenosine diphosphate(ADP),adenosine monophosphate (AMP)をそれぞれ分離することができた.また,ATPにアミノ酸その他の薬品類を混合した場合,ATPの変化を薄層クロマトグラフ法で調べた結果,ATPの分解を促進していないことを確認した.これらの実験は今後,分解しやすいATPを混合製剤から分離定量するのに役だつと思われるので報告する.
著者
桃木 弘三訳
出版者
The Japan Society for Analytical Chemistry
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.270-274, 1964

最近の工業分析においてめざましい役割を果しつつあるケイ光X線分析法を開拓し今日の隆盛を築いた一人者として世界的に著名なL.S.Birks氏は,去る昭和38年11月12日午後3時より日本化学会講堂において約90分にわたり本講演を行なった.<BR>この講演は本会X線工業分析法研究懇談会が同じ12,13の両日同所で主催した第1回X線工業分析討論会の記念招待講演であったが,同氏の来日は応用物理学会,日本分光学会および本会の共同招待となり,同氏滞日中の本講演と東京(11月14日)および大阪(11月18日)におけるX線マイクロアナライザーに関する特別講演はいずれも上記3学会に日本化学会を加えた4学会の共催として開催され,別に仙台および名古屋においても各支部共主催の講演会が催されて,各地で多大の感銘を与えた.<BR>ここに本講演の要旨を抄訳して,Birks氏,高橋武雄招待委員長をはじめ同氏の来日滞在に尽力された関係の諸氏,協力を惜しまれなかったメーカー・商社・会社の方方ならびに広く会員諸氏に捧げたい.なお本講演の全訳は,上記討論会の講演集として刊行を進めている"X線工業分析第2集"(化学の領域増刊号)に,X線マイクロアナライザーの東京講演(11月14日)は"分光研究"(杉本訳)に,また大阪講演(11月18日)は上記講演集(市川訳)にそれぞれ掲載される予定である.
著者
原田 芳文 倉田 奈津子
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.35, no.8, pp.641-645, 1986-08-05
被引用文献数
2 6

高純度酸化アルミニウム(99.99%)中の不純物(鉄,ケイ素,カルシウム,マグネシウム,銅,マンガン,亜鉛,クロム,ニッケル及びチタン)をICP-AESで定量することを検討した.試料は炭酸ナトリウムとホウ酸で融解し,融解物を希塩酸に溶解した後,水酸化ジルコニウムを担体に用いて目的の元素をマトリックスから共沈分離した.試薬類からは主にケイ素とカルシウム,及び融解に伴い白金るつぼから鉄などの汚染が認められるが,十分洗浄した白金るつぼを用いた場合,白金るつぼからの汚染は微量であり再現性もあるので(鉄:2〜3μg,銅:1μg),これらの元素はから試験を行って補正した.合成試料を用いて繰り返し分析した結果,試薬から試験値が高いケイ素(12μg)を除くと,他の9元素はそれぞれ5〜8μg/gで2〜10%の相対標準偏差が得られた.
著者
小原 慎弥 上原 隆志 木村 圭一郎 吉田 哲郎 藤原 翔平 水口 裕尊 布施 泰朗 山田 悦
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.231-240, 2009 (Released:2009-05-04)
参考文献数
16
被引用文献数
4 5

2006年12月から琵琶湖水を採水し,湖水中の溶存有機物質(DOM)を疎水性樹脂(DAX-8)で疎水性酸(HoA),疎水性中性物質(HoN)及び親水性有機物質(Hi)にカラム分画し,DOM及びその画分の鉛直分布や月変化など動態解析を行った.DOMとその画分の鉛直分布は,5月までは水深に関係なくほぼ均一だが,夏季6~9月には水温躍層(水深10~20 m)の間で大きく変化した.表層水のDOM,Hi及びHoA濃度は,5~9月に増加し,水深の深い所との濃度差が大となった.これらが増加した春季から夏季にはクロロフィルの増加が見られ,フミン物質の増加に加えて内部生産によるHi濃度の増加が影響していると考えられる.トリハロメタン(THM)生成能は,水深10 m付近で高く,水深20 m以下では35~40 μg/Lの値で水深による変化は小さかった.培養時における藻類由来有機物の単位有機炭素当たりのTHM生成能はMicrocystis aeruginosa>Cryptomonas ovata>Staurastrum dorcidentiferumの順で,その種類によってかなり異なり,土壌起源のフミン物質のTHM生成能より低い値を示した.一方,生分解時における藻類由来有機物の単位有機炭素当たりのTHM生成能は,その種類による違いは少なく,湖水の値に近い値を示した.
著者
玉利 祐三
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.435-440, 1999-04-05
被引用文献数
6 3

微量リチウムの生体必須性が指摘されるなかで, リチウムが内分泌器官と関連していることが論議されている. 本研究では, 乳児のリチウム摂取量を把握するために, 乳児用調製粉乳中のリチウムを原子吸光分光光度計を用いるフレーム分析により定量する方法を検討した. 試料を硝酸・過塩素酸により加熱分解し, 測定溶液を0.1mol/l塩酸酸性とした. 共存する高濃度のナトリウム及びカリウムの影響なしにリチウムが定量できることが分かった. 本法を市販の乳児用調製粉乳16試料に適用したところ, 新生児用では106±13ng/g(p<0.05), 離乳期用では178±42ng/g(P<0.05)となり, アレルギー疾患等の特殊粉乳では118±10ng/g(P<0,05)であった. これらの粉乳中のリチウムの起源は, 含まれる他の成分との濃度相関より, 粉乳に添加されている無機化学薬品中の不純物と推定された. また, 乳児の1日当たりのリチウムの平均摂取量は, 一般の乳児用調製粉乳では12μg, フォローアップミルクでは20μgと算出できた.
著者
姚 俊学 吉村 和久 栗崎 弘輔 井倉 洋二 高相 徳志郎
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.60, no.10, pp.785-789, 2011 (Released:2011-11-28)
参考文献数
10
被引用文献数
2 3

クロモトロープ酸を担持した長さ1 cmの陰イオン交換カラムを用いて,既に報告した微量ホウ素のオンライン吸光光度定量法の改良を行った.pHを3にした試料を流すだけでカラム内での錯生成を促進することができ,その後pHを8に変えて段階溶離を行うことで,ホウ素を安定な錯体として未反応の呈色試薬などから分離できた.その吸光定量を350 nmで行った.試料3.2 cm3を用いたときの分析時間は約12分,検出限界は0.06 μg dm−3であった.既報に比べて,分析時間および感度を大幅に改善できた.本法を琉球列島西表島の天然水中のホウ酸の分析に応用した.降雨および二つの河川水中のホウ素濃度は,それぞれ3.1~40.8,20.3~28.5,14.7~20.9 μg dm−3であった.いずれの場合も,非海塩性由来のホウ素の分率は高く,アジア大陸からの長距離移流によるものであることが示唆された.
著者
山下 大輔 石崎 温史 宇田 応之
出版者
The Japan Society for Analytical Chemistry
雑誌
分析化学 = Japan analyst (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.347-355, 2009-05-05
被引用文献数
2

現場での使用が可能で,XRD(X線回折),XRF(蛍光X線)の2種類の分析を同一ポイントで行うことができるポータブルX線回折・蛍光X線分析装置(portable X-ray diffractometer equipped with XRF,XRDF)を開発した.開発した装置は,0°から60°の範囲内のどの角度にも0.002°刻みにX線管と検出器を動かすことができる.XRDFはポータブル型であるので現場に持ち込み,移動,搬出の制限されている遺物や文化財などのその場分析が可能になった.更に,測定対象の大きさ,形状に制限がほとんどないため,測定対象が大型,異形であっても,破壊や裁断,分割することなく,そのまま測定できる.このような特長を持つXRDFだからこそ,貴重な文化財の調査で数々の成果を上げた.本稿では,鶴林寺聖観音像,セヌウのミイラマスク,ツタンカーメン王の黄金のマスクの分析結果を紹介する.
著者
川本 博 赤岩 英夫
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.127-130, 1975-02-10
被引用文献数
2

Effect of Capriquat (trioctylmethylammonium chloride) on the extract ion of Co(II), Ni(II) and Cu(II) with 2-thenoyltrifluoroacetone (TTA=Htta) was studied. The experimental procedure was as follows: An aqueou ssolution (10.0ml) containing metal ion (M_<2+>) and acetate buffer solution (pH=4.75) was taken in a separatory funnel. An equal volume of the extractant solution which is a mixture of TTA and Capriquat in benzene was added. The mixture was then shaken, and the absorbance of the organic phase was measured. Concentrations of the remainig nickel(II) and cobalt(II) in the aqueous phase were determined by spectrophotometry. Both of the valence-saturated chelate M(tta)_2 and the co-ordination-saturated complex M(tta)_3-could be formed and extracted into benzene in the presence of Capriquat. The extraction of the former chelate was observed to occur in lower concentration region of TTA or Capriquat, and the extraction rates for Co(tta)_2 and Ni(tta)_2 were accelerated by the addition of Capriquat. However, the formation of Co(tta)_3- and Ni(tta)_3 from M(tta)_2 was found to be very slow. In contrast, the rates of extraction for Cu(tta)_2 and Cu(tta)_3- were very high, and the above equilibria were reached within 10 seconds.
著者
岸 慎太郎 關岡 亮二 袖山 真学 志賀 正恩 瀬戸 康雄
出版者
The Japan Society for Analytical Chemistry
雑誌
分析化学 = Japan analyst (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.65-76, 2010-01-05
被引用文献数
17

The detection performance of a portable <sup>241</sup>Am ionization aspiration-type ion mobility spectrometer (M90-D1-C, Environics Oy) was investigated with nerve gases, blister agents, blood agents, choking agents and related compounds. The vapors of nerve gases, sarin, soman, tabun, cyclohexylsarin were recognized as "NERVE" after about several seconds of sampling, and the limits of detection (LOD) were < 0.3 mg m<sup>−3</sup>. The vapors of blister agents, mustard gas and lewisite 1, and blood agents, hydrogen cyanide and cyanogen chloride were recognized as "BLISTER" with an LOD of < 2.4 mg m<sup>−3</sup> and > 415 mg m<sup>−3</sup>, respectively. The vapor of chlorine was recognized as "BLOOD" with an LOD of 820 mg m<sup>−3</sup>. The vapors of nitrogen mustard 3 and chlorpicrin were recognized as different alarm classes, depending on their concentrations. The vapors of nitrogen mustard 1, 2 and phosgene did not show any alarm. As for interference, the vapors of nerve gas simulants, dimethylmethylphosphonate, trimethylphosphate, triethylphosphate, diisopropylfluorophosphate, blister agent simulants, 2-chloroethylethylsulfide, 1,4-thioxane, 2-mercaptoethanol, and 20 organic solvents within 38 solvents examined were recognized false-positively. The patterns of detection sensor channel response values of 6 ion mobility cells and semiconductor cell were compared with the situation of the alarm against chemical-warfare agents.
著者
丸田 俊久 向山 朝之
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.18, no.11, pp.1312-1316, 1969-11-05 (Released:2010-02-16)
参考文献数
17

油脂中の微量の鉄と銅を迅速で精度よく定量する方法について研究した.油脂に濃硫酸を添加し,60%の過酸化水素水を徐々に加えて油脂を分解する方法を確立した.この方法の特長は操作が簡易で分解時間が短く,過酸化水素の分解生成物は水と酸素のみで,から試験値が小さいことである.試料を分解して得た硫酸酸性溶液中の鉄と銅の吸光光度法による定量には,酸性溶液で鋭敏に作用する試薬を用いた.鉄はチオシアン酸第二鉄としてメチルイソブチルケトンで抽出し,銅はジベンジルジチオカルパミン酸銅として四塩化炭素で抽出し,それぞれ495,438mμの吸光度を測定して定量した.本法によれば,分析所要時間は約60分で,鉄は0.1ppm,銅は0.02ppm程度まで定量できた.
著者
秋山 朝子 今井 かおり 石田 幸子 伊藤 健司 小林 正志 中村 秀男 野瀬 和利 津田 孝雄
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.55, no.10, pp.787-792, 2006 (Released:2006-11-17)
参考文献数
7
被引用文献数
2 3

An analytical method for the determination of aromatic compounds exhalated from hand skin has been proposed. The sampling of exhalated aromatic compounds was performed as follows: after the intake of aromatic compounds included in chewing gum or a capsule, exhalated skin gas was collected from a hand. The hand was covered with a sampling bag of poly vinyl fluoride (PVF) for 30 min. Then, the inner space of the sampling bag was sprayed with a 25% of ethanol aqueous solution. After removing the hand from the bag, the trapped solution containing skin gas was collected. The aromatic compounds in the trapped solution were extracted to the solid phase as Twister® (stir bar coated with poly dimethyl siloxane, Gerstel). Extracts were determined by gas-chromatograph mass spectrometry using a thermo desorption system and a selective ion mode. Linalool, citronellol and geraniol, which are the main components of rose essential oil, were detected from the skin of a hand after an oral intake of rose oil. The exhalated absolute amount of linalool, citronellol and geraniol increased in 30 to 60 min, and then decreased after intake. The recoveries of linalool, citronellol and geraniol were 53.5%, 66.7% and 55.1%, respectively. The correlation coefficient of the standard curves for linalool, citronellol and geraniol were 0.9977, 0.9994 and 0.9987, respectively. Each compound exahalated from the skin of a human body during 6 hours after intake was estimated to be, according to the amount of intake, 0.39%, 0.09% and 0.25%, respectively, for one subject. The absolute amount of geraniol exhalated from a hand increased significantly after oral intake for 8 subjects (P<0.025). This is the first report to present hard proof that an aromatic compound was exhalated from human skin after its intake as food.
著者
赤坂 和昭 今泉 啓一郎 大類 洋
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.48, no.12, pp.1085-1094, 1999-12-05
被引用文献数
6 8

不斉を有するエタノールアミン骨格と2,3-アントラセンジカルボン酸無水物より, 非常に強い蛍光性を有する2,8-アントラセンジカルボキシイミド型の不斉誘導体化試薬を合成した. この試薬によりメチル基の分岐による不斉を有する分岐脂肪酸を誘導体に導いた後, -50℃〜室温で, ODSカラムを用いたHPLC分析に供したところ, 2〜12位の不斉を識別することができた. NMRやCDスペクトルの解析結果より, この試薬による脂肪酸誘導体は, 試薬のエタノールアミン部で, 試薬の立体化学に依存したゴーシュ/トランス配座を優位にとり不斉の折れ曲がり構造を形成するため, 脂肪酸のアルキル鎖が試薬のアントラセンイミド基の真上を規則的なジグザグ構造をとりながら覆いかぶさるような構造をとることにより, 遠隔位の不斉識別能が発現したものと考えられた. また, 本誘導体は蛍光検出によりfmol レベルの高感度検出が可能であった.
著者
斉藤 幹彦 堀口 大吉 喜納 兼勇
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.30, no.10, pp.635-639, 1981-10-05
被引用文献数
7 20

プロパンスルトンなどによってN-スルホアルキル化して8種類の水溶性ニトロソフェノール誘導体を合成し,吸光光度分析試薬としての有用性を検討した.これらの試薬は酸性溶液で安定であり,弱酸性ないしアルカリ性で鉄(II)と反応して濃緑色の水溶性錯体を生成する.最も高感度な2-ニトロソ-5-(N-プロピルーIV-スルホプロピルアミノ)フェノールの鉄錯休は1:4(金属イオン:試薬)の錯体組成を示し,吸収極大波長756nmでのモル吸光係数は4.5×10^4 dm^3 mol^<-1>cm^<-1>である.鉄濃度2×10^<-7>Mから1×10^<-4>Mの範囲でベールの法則が成立し,鉄1×10^<-5>Mにおける変動係数(n=5)は1.2%である.等モル量の銅,コバルト,ニッケル,亜鉛,カドミウム,アルミニウム,カルシウムは妨害しない.
著者
野澤 慎太郎 笠間 裕貴 鈴木 忠直 安井 明美
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.179-183, 2007-03-05
被引用文献数
6

改良デュマ法によるしょうゆの全窒素分定量法を検討した.11種類のしょうゆを試料として,その0.5gを石英ボートに量り取り,高純度酸素を助燃ガスとして870℃で燃焼して生成したNO_xの酸素を銅還元管で除去し,熱伝導度検出器で検出してそのピーク面積を求めた.まず,全窒素分を2.000%に調製したリジン水溶液を分析した結果,2.002%であり,理論値とほぼ一致した値が得られた.また,改良デュマ法と酸分解条件を最適化したケルダール法との室内再現性を一元配置分散分析で検証した結果,各法で1試料に有意差が認められたが,これらの日間及び日内変動はHorwitz式から求めた併行相対標準偏差より低く,実質的な日間差はないと判断した.更に,Welchのt検定により両法の測定結果の差の有意差を確認した結果,11試料中6試料について有意差が認められたが,それらの平均値の差がHorwitz式から求めたケルダール法での併行許容差内であり,実質的な有意差はないと判断した.改良デュマ法はケルダール法より併行精度が高く,両分析法の相関性もR^2=0.9999であった.以上の結果から,改良デュマ法はしょうゆの全窒素測定に適用可能であることを確認した.
著者
古崎 睦
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.48, no.9, pp.829-834, 1999-09-05
被引用文献数
5 3

ホタテ貝の中腸せん(腺)(ウロ)を焼却処理すると, 含有重金属の中で比較的低沸点のカドミウムは一部気化すると考えられる. そこで, ウロを焼却したときの(1)焼却残留物, (2)焼却管壁析出物, (3)焼却飛灰, 及び(4)排ガス吸収液中の鉄, 銅, 亜鉛, カドミウムの量を調べ, 焼却過程におけるこれらの物質収支を検討した. 湿ウロは1kg当たり平均約20mgのカドミウムを含んでいるが, これを空気中900℃ で加熱するとその約57%が気化した. 気化したカドミウムの多くは焼却管壁に析出するが, 飛灰からも16%程度回収された. 一方, 窒素中で加熱した場合の残存率は10%程度で, 管壁から約88%, 飛灰から6.0%, 吸収液から1.8%のカドミウムが検出された. カドミウム金属を同条件で加熱した場合には, 空気中では酸化のみが進行し, 窒素中ではほぼ100%が気化した. また, 焼却残留物質量/ウロ質量で表される灰化率が大きいほど, すなわち焼却の進行が不十分であるほどカドミウム気化率が大きくなる傾向が認められた. これらの結果より, ウロを焼却した際のカドミウムの気化は, 有機成分の燃焼時に局所的な酸素不足雰囲気が形成されることによって進行すると考えられる.