著者
村元 喬 森 宏仁 大圃 研
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.676-677, 2021-05-24

潰瘍底縫縮の意義 表在性非乳頭部十二指腸腫瘍(superficial nonampullary duodenal epithelial tumor ; SNADET)に対する内視鏡治療では,スコープの操作性や筋層が薄いといった解剖学的な特徴から,他の臓器に対する内視鏡治療に比べて術中に生じる偶発症の頻度が高いことはもちろんのこと,切除後の潰瘍底に直接胆汁・膵液が曝露することで引き起こされる遅発性穿孔や後出血が最大の問題である1).しかしながら,術後の潰瘍底を完全に縫縮することで,遅発性の偶発症が減少することもわかっている2)3).このため,術後の潰瘍底の縫縮が必須であり,いかにして確実に潰瘍底を縫縮するかが重要である.

3 0 0 0 Spiral内視鏡

著者
大塚 和朗
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.694-695, 2021-05-24

内視鏡の深部小腸への挿入は,通常内視鏡では困難である.Akermanら1)により,2008年に発表されたスパイラル内視鏡(spiral enteroscopy ; SE)は,内視鏡本体にらせん状のフィンのある外筒を装着し,これを助手が回転させて腸管を手繰り寄せることにより,深部挿入を可能とする.単純な操作で,高い挿入性と安定性を持っている.
著者
松原 修二 高橋 正樹 岡村 経一 福留 厚 山岡 郁雄 松峯 敬夫 浮島 仁也 青木 幹雄
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.757-761, 1976-06-25

上部消化管大量出血の原因のひとつとして,1897年Dieulafoy1)は胃上部噴門直下に孤立性の微小な粘膜欠損を見いだし,これをExulceratio simplex(以後Esとする)と命名した.粘膜欠損の底部において動脈が破綻するため,大量の血液が噴出して,潰瘍形成は未熟なままに患者は急性の経過をとるものと彼は考えた.以後欧州圏では,このような胃上部にあらわれた粘膜欠損部よりの動脈性出血をEsと呼称するようになった.今回著者らもその1例を経験したので報告し併せて弱干の文献的考察を加えた. 症例 患 者:46歳 男 生来健康にて著患なく,既往にいわゆる胃症状を認めない.1月程前より風邪に罹患しアスピリンを連日服用していた.1974年12月11日,突然大量の吐下血をきたし当科へ緊急入院した.ただちに,緊急内視鏡検査およびガストログラフィンによる上部消化管緊急X線検査を施行したが,胃内に大量の血液が充満しているため出血源の診断は不可能であった.13時間に総量3,200mlの輸血を行なったが,血圧60/40mmHgヘマトクリット23%と改善されずショック状態におちいったため緊急手術を施行した.開腹すると,胃内に大量の凝血塊を認めるが,肝硬変および食道静脈瘤など門脈圧の亢進を示唆させる所見は認められなかった.胃を漿膜面より観察しても異常病変を発見できなかったので,胃体部大彎側寄りに約7cmの縦切開を加えた.出血部位は主に噴門側であることが判明したが,なお局在は不明であり,やむを得ず盲目的胃切除術(Billroth Ⅰ)を施行した.術後経過は良好で,第4病日に胃管を抜去した.
著者
蔵原 晃一 松本 主之
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.787, 2012-05-24

非ステロイド性抗炎症薬(nonsteroidal anti-inflammatory drug;NSAID)起因性腸病変は,NSAIDによって正常な小腸ないし大腸に惹起される粘膜病変と定義され,その存在部位から同小腸病変と大腸病変に分類される1)2). NSAID起因性腸病変の肉眼像や病理組織像は非特異的な所見にとどまるため,診断には,他の薬剤性腸炎と同様に,(1) 腸病変(潰瘍,腸炎)の確認,(2) NSAIDの使用歴の確認,(3) 他疾患の除外(病理組織学的,細菌学的除外診断を含む),(4) NSAIDの使用中止による病変の治癒軽快の確認,をすべて満たす必要がある1)~3).
著者
高橋 亜紀子 小山 恒男
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.247-249, 2020-03-25

疾患の概念 食道顆粒細胞腫(granular cell tumor ; GCT)は1931年にAbrikossoff1)により報告された疾患で,2.7〜8.1%は消化管に発生し,食道,大腸,胃の順に多い2).単発が多いが,多発する場合もある3)〜5). 食道GCTは食道良性粘膜下腫瘍(submucosal tumor ; SMT)のうち平滑筋腫に次ぎ2番目に多く,約5%を占める.好発部位は中下部食道であり,約90%を占める.多くは良性腫瘍であるが,1〜3%で悪性の報告6)7)もある.
著者
鳥谷 洋右 遠藤 昌樹 赤坂 理三郎 梁井 俊一 川崎 啓祐 中村 昌太郎 永塚 真 上杉 憲幸 菅井 有 松本 主之
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.612-620, 2020-05-24

●「考える内視鏡診断」のポイント・SNADETsの診断では,粘液形質を背景とした胃型・腸型腫瘍に大別されることを熟知しておく.・通常観察では,脂肪粒を反映した“絨毛の白色化”を観察することで腺腫・早期癌,特に腸型腫瘍を拾い上げることが可能である.・白色絨毛陽性病変では,腫瘍径,色調,肉眼型,結節の有無,易出血性,絨毛の白色化の分布を観察する.・白色絨毛陰性の十二指腸球部病変は胃型腫瘍を念頭に置いて観察を行う.・M-NBI,M-CVを用いたoptical biopsyが望ましいが,拡大内視鏡所見と組織学的異型度や粘液形質の乖離に留意する.・内視鏡治療を前提とする場合は,安易な生検を避ける.
著者
佐野村 誠 柿本 一城
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.674, 2017-05-24

定義 顆粒状(granular,シェーマ1))とは,数mm以下の半球状に近い隆起(顆粒,granule)が集合して存在する状態を言う.十二指腸のAA型アミロイドーシス(Fig. 1)など顆粒が小さい場合,微細顆粒状粘膜と呼称される. 結節状(nodular,シェーマ1))とは,顆粒より大きく,種々の大きさの小隆起(結節,nodule)が広範にみられる状態を指す2).その結節の大きさにより,小結節,粗大結節などと呼称される.
著者
高木 靖寛
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.544, 2017-05-24

定義 泡沫細胞,すなわち黄色腫細胞の集簇による病変である.胃ではよく認められるが内視鏡検査による食道での頻度は0.46%とまれである1).病理組織学的に黄色腫細胞は扁平上皮間結合組織乳頭部に嵌り込むように存在するため2),この所見が内視鏡像にも反映される.すなわち,典型例では多数で点状の黄白色小顆粒の集簇として観察される(Fig. 1a).拡大観察では乳頭の配列に一致して黄白色顆粒がみられ,このなかに縮れて走行する微細血管が観察され特徴的である2)(Fig. 1b).黄色腫細胞の量が多く充満した場合は顆粒結節状となることもある.
著者
末廣 満彦 春間 賢
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.579, 2017-05-24

定義 腸上皮化生はHelicobacter pylori(H. pylori)感染などにより胃粘膜上皮がびらんと再生を繰り返すことにより,腸管粘膜上皮の形態に変化した状態であり,胃癌発生の高危険群でもある.腸上皮化生には細胞組成から完全型と不完全型に分けられ,完全型では吸収上皮と杯細胞,Paneth細胞から成り,刷子縁様構造を伴い小腸粘膜と同じ形態と構造を持つ.不完全型はPaneth細胞を欠き,胃型と腸型の細胞が混在する胃腸混合型の腸上皮化生と考えられている.また,化生胃小区の形態より隆起型,平坦型,陥凹型に分けられる. 腸上皮化生は現感染のみではなく,H. pylori除菌後でも観察され,長期間にわたり残存する.除菌後の特徴的な所見として地図状発赤があるが,生検による組織検査では腸上皮化生の所見が得られることが多い.

2 0 0 0 white zone

著者
八木 一芳
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.602, 2017-05-24

定義 NBI拡大観察時,粘膜模様は白っぽい縁で認識される.その白っぽい縁がwhite zone1)2)である.血管を内包する粘膜模様の縁取りをするwhite zone(Fig. 1,黄矢印)や点状や円形に観察されるwhite zone(Fig. 1,白矢印)が存在する.前者は乳頭・顆粒状の粘膜模様で観察され,後者は小さな円形開口部などに観察される. NBI拡大観察で真上から観察した場合,腺窩辺縁上皮に入るNBI光は血管に当たらず,散乱により白縁として観察される.この腺窩辺縁上皮がwhite zoneとして観察される(Fig. 2)2).しかし,斜めからNBI拡大観察した場合は窩間部から腺窩上皮に抜けるNBI光が血管に当たらず,散乱により白縁として観察される.すなわち,窩間部から腺窩上皮の部分がwhite zoneとなる(Fig. 3)2).このようにwhite zoneは基本的に上皮を表しているが,NBI光の方向によって表す上皮の解剖学的部位は異なる.
著者
榊 信廣
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.613, 2017-05-24

定義 胃粘膜萎縮は一般的に“組織学的な胃固有腺の減少・消失”と定義される.updated Sydney system1)では,“胃粘膜萎縮は腺組織の減少と定義される.萎縮は粘膜の菲薄化を導き,強い粘膜障害を起こすすべての病的状態の基準となる”と記載されている. 日本人に一般的にみられるHelicobacter pylori(H. pylori)感染胃炎の結果として発生する萎縮性胃炎の場合は,胃底腺が萎縮・消失する変化だけでなく,腸上皮化生,そして腺窩上皮の過形成を伴い複雑な形態をとるのが一般的である.
著者
吉岡 慎一郎 光山 慶一
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.623, 2017-05-24

定義 アフタ(aphtha)およびアフタ様潰瘍(aphthoid ulcer)については,一般的には口腔粘膜のアフタに類似した病変が消化管粘膜に認められる場合に用いられるが,明確な定義はなく異なる見解が混在している1)〜3).本稿では「日本消化器内視鏡学会用語集第3版」と「胃と腸用語事典」の両見解を踏まえ,アフタ,アフタ様潰瘍はほぼ同じ病変を指し示すものとし,単なるびらんと区別するために紅暈を伴う小さな潰瘍もしくはびらんを“アフタ様病変”と定義して解説する.
著者
斉藤 裕輔 垂石 正樹
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.620-621, 2017-05-24

定義 縦走潰瘍とは,厳密には腸管長軸方向に走行する4〜5cmを超える潰瘍と定義されるが,一般的には3cm程度の短い病変にも用いられている1).
著者
大川 清孝 上田 渉
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.622, 2017-05-24

定義 輪状潰瘍は腸管の短軸方向に走行する潰瘍であり,幅が広くなったものを帯状潰瘍と言う.全周性でなくてもこの用語が用いられており,周在性に関する定義はない.ほぼ同様の意味で横走潰瘍という言葉が用いられることがある1).
著者
入口 陽介 山里 哲郎
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.616, 2017-05-24

定義 タッシェ(tasche)は,十二指腸球部の潰瘍または潰瘍瘢痕による潰瘍側の収縮とそれによる正常部分の憩室様膨隆を示すX線造影所見で,潰瘍と幽門輪との間に認められる(Fig. 1〜3). 十二指腸潰瘍のX線診断は,Akerlund(1921年),Berg(1926年)らによってほぼ確立された.タッシェは,1918年に,Hartにより初めて記載され,Schinzによって球部変形のX線所見は大彎側に多く認められることが報告された.その後,Stein(1964年),白壁(1965年)によって十二指腸球部変形の整理がなされた.白壁1)は,変形,狭窄の程度に線状潰瘍,多発潰瘍,さらに瘢痕化潰瘍の概念を加え診断図を示した.十二指腸球部変形は,十二指腸球部の大彎・小彎側の彎入,十二指腸球部の攣縮,タッシェ形成,十二指腸球部萎縮すなわち十二指腸球部癆などがある.辺縁の所見で,陥凹を示すもの(切れ込み,彎入,陥凹,牽引)と出っぱりを示すもの(タッシェ,ニッシェ),それに幽門の変化として幽門非対称,幽門狭窄などがある2).
著者
仲瀬 裕志 平山 大輔 我妻 康平 風間 友江 横山 佳浩
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1715-1722, 2019-12-25

要旨●筆者らは,地中海熱(MEFV)遺伝子関連腸炎(IL-1β関連腸炎)の診断法の確立ならびに機序解明に取り組んできた.MEFV遺伝子関連腸炎74症例の患者群を検討した結果,日本人MEFV遺伝子関連腸炎症例の70%以上がexon 2部位での変異を有し,家族性地中海熱非定型例および診断基準を満たさない症例が全体の約70%を占めることが判明した.消化管病変の内視鏡的特徴所見では,直腸に病変を伴わない潰瘍性大腸炎様の連続病変の粘膜所見が多く,またCrohn病様の縦走潰瘍・狭窄例も存在することが明らかとなった.MEFV遺伝子関連腸炎は,炎症性腸疾患患者の中に予想以上に多く存在する可能性が高く,筆者らのデータを基盤に診断基準の作成に取り組む必要がある.
著者
飯田 智哉 宮川 麻希 那須野 正尚 田中 浩紀 吉田 雄一朗 蔵原 晃一 朝倉 謙輔 梁井 俊一 松本 主之 仲瀬 裕志
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.526-531, 2019-04-25

要旨●家族性地中海熱(FMF)は,腹部,胸部などに漿膜炎による疼痛を伴う周期性発熱を特徴とする遺伝性自己炎症疾患である.FMFで消化管粘膜障害を呈することはまれとされてきたが,近年,炎症性腸疾患に類似した消化管病変を合併した症例の報告が散見される.一方で,FMFの小腸病変についての報告はいまだ限られている.本稿では,FMFの小腸病変に関する報告例をまとめ,その内視鏡像について論じる.FMF患者に認められた小腸病変は,アフタ,びらん,潰瘍,浮腫などが多くを占めていたが,FMFの小腸病変の内視鏡的特徴を明らかするためには,さらなる症例の集積が必要である.
著者
大川 清孝 大庭 宏子
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.799, 2012-05-24

赤痢アメーバ感染症の原因は原虫のEntamoeba histolyticaであり,腸アメーバ症と腸外アメーバ症に分類できる.前者は赤痢様の激しい症状を示すアメーバ赤痢とアメーバ性大腸炎に分類できるが,現在ではこの分類にあまり意味がなく,両者を含めてアメーバ性大腸炎と呼ぶことが多い.囊子が経口摂取されることにより感染し,下部小腸で栄養型となり,大腸,特に盲腸で成熟し分裂,増殖する.その後粘膜に侵入し,壊死に陥らせ下掘れ潰瘍を形成する. 本邦での感染原因は発展途上国への旅行より性行為によるものが圧倒的に多い.男性同性間感染が多いが,最近では風俗店を介した異性間感染が増加している.多くは慢性に経過し,下痢,粘血便,腹部膨満感,腹痛などで寛解と再燃を繰り返す.劇症型とは,急速に大腸の広範な全層性壊死が進行し,腸管穿孔や多臓器不全を併発した死亡率の高い病態を言う.
著者
五十嵐 正広 岸原 輝仁 千野 晶子 田顔 夫佑樹 井出 大資 為我井 芳郎 斎藤 彰一 河内 洋
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.431-439, 2018-04-25

要旨●アメーバ性大腸炎は比較的まれな消化管感染症であったが,最近では年間1,000例以上の発症が報告されている.2005年以降当院で生検および直接鏡検で虫体,栄養体が確認された35例(男性:33例,女性:2例),平均年齢47.5歳を解析しその特徴をまとめた.有症状者は63%,無症状者37%.推定される感染経路は,異性間感染49%,同性間感染9%,不明43%.生検陽性率は89%,直接鏡検陽性率は93%,血清アメーバ抗体陽性率は53%.好発部位は,盲腸89%,直腸51%であった.特徴的な内視鏡所見は,たこいぼ様びらん・潰瘍,不整形潰瘍,打ち抜き状潰瘍,類円形潰瘍,腫瘤形成様潰瘍などで,潰瘍の易出血性や膿汁流出様所見が特徴的である.診断は内視鏡所見で疑い,生検や直接鏡検,問診による背景の確認などが重要である.
著者
丸山 保彦
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.580, 2017-05-24

定義 村上ら1)は,組織欠損の深さをUl-I(粘膜のみ),Ul-II(粘膜下層まで),Ul-III(固有筋層まで),Ul-IV(漿膜層に達する)に分類した(シェーマ).これらの分類から,Ul-Iまでをびらんとし,Ul-II以上が潰瘍と定義される.