- 著者
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早崎 将光
田中 博
- 出版者
- 社団法人日本気象学会
- 雑誌
- 天気 (ISSN:05460921)
- 巻号頁・発行日
- vol.46, no.2, pp.123-135, 1999-02-28
- 被引用文献数
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3
1989年2月にアラスカ付近を中心に典型的なΩ型ブロッキングが形成された. このプロツキング形成初期にアラスカにおいて, 地表面気温が約1週間で30K以上上昇する現象が観測された. 昇温は地表付近のみにとどまらず, 対流圏のほぼ全層におよんでおり, 成層圏の突然昇温に対して対流圏突然昇温とも呼べる現象であった. Tanaka and Milkovich (1990)の熱収支解析によると, 昇温初期に顕著な下降流があり, その後は低緯度からの水平温度移流が卓越していることが明らかとなっている. 本研究では, このような対流圏における突然昇温現象の水平・鉛直規模を把握し, 渦位(Q)や速度ポテンシャル・発散風などを用いることで昇温初期に発生した下降流の原因について考察した. 対流圏突然昇温の水平規模は経度幅で30〜50゜, 緯度幅で15〜20゜程度であり, 成層圏突然昇温と比べて局所的な現象であるが, 鉛直方向には300ないし400hPaより下層の対流圏のほぼ全層にわたって10〜40Kの昇温が見られた. また, 渦位・鉛直流・上層の収束場などの分布から, 昇温初期の明瞭な下降流の形成要因としては, 1)上層のHigh-Q移流に伴い日本付近で爆弾低気圧が連続して発生, 2)2つの爆弾低気圧の間で気塊が収束することで強い下降流が形成, 3)上層High-Qの移流に伴い収束・発散場も日本付近から北東へ移動, 4)強い下降流場も上層の収束場の移動によりアラスカ上に到達した, ということが明らかとなった. したがって, アラスカ上での対流圏突然昇温をもたらした顕著な下降流は, 日本付近で2つの爆弾低気圧が連続して発生した事が原因と判明した.