著者
田代 誠司
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.163-168, 2004-03-31
被引用文献数
1

気象庁の現業用レーダーデータを用いて1997年7月10日の鹿児島県出水市針原地区の土石流発生時の気象状況を解析した.その結果,土石流発生時の大雨は,甑島から北東へのびる線状降水システム(甑島-出水ライン)に伴った鹿児島県北西部の阿久根や出水を中心とした局地的なもので,その原因として,鹿児島県西方海上にある甑島(こしきじま.最高地点の標高は604m)が大きな役割を果たしていることがわかった.1988年から1998年の夏季のレーダーデータにもとづき,過去の同じ地域における大雨の事例を解析したところ,甑島-出水ラインが21例あり,うち5例は鹿児島県北西部のアメダス日降水量の累年順位10位以内の降水を記録していた.
著者
山中 康裕
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.46, no.11, pp.751-752, 1999-11-30
著者
近藤 純正 徐 健青
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.43, no.9, pp.613-622, 1996-09-30
被引用文献数
8

小型蒸発計からの蒸発量が日射量に敏感であることを利用して, 中国大陸のルーチン気象資料から日射量と大気放射量の日平均値を推定する方法を示した. この方法は, 黄砂などの砂塵で太陽の散乱光は強いが直達光が弱くて, 日照計 (中国ではジョルダン日照計, またはカンベル日照計) が感じにくいときに利用できる. 中国乾燥域における日射量の観測値と, 本研究による計算値との比較では, 観測誤差や場所による違いの範囲内でほぼ一致した. しかし, 大気放射量では, 観測値が大きい場合と小さい場合がある.
著者
浅野 正二
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.83-89, 2002-01-31
被引用文献数
1
著者
三好 建正
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.1091-1095, 2011-12-31
著者
田阪 茂樹 松原 正也 田口 彰一 長田 和雄 山内 恭
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.31-38, 2011-01-31

第46次南極地域観測隊において,高感度ラドン検出器を南極観測船「しらせ」に設置し,2004年12月3日〜2005年3月19日まで南極海洋上大気中の^<222>Rn濃度を連続観測した.フリーマントルから昭和基地沖合まで(往路)の15日間,昭和基地沖合からシドニーまで(復路)の38日間を解析した.濃度の平均値は往路が39mBq/m^3,復路が48mBq/m^3であった.日平均した濃度と風速には相関があり,風速が5m/secの場合濃度は32mBq/m^3,13m/secに増加すると62mBq/m^3となった.寒冷前線に伴うラドン濃度増大現象(ラドニックストーム)時の濃度は,往路の事例では70mBq/m^3,復路の事例では114mBq/m^3であった.海洋からの放出量が風速の2乗に比例する条件を与えた全球移流拡散モデルを使ってラドン濃度を計算し,観測された風速依存性の検証を行った.
著者
神田 学 森脇 亮 鈴木 譲 マティアス ロート ティム オーク
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.47, no.7, pp.493-501, 2000-07-31
被引用文献数
5

地表面被覆の幾何構造が異なる世田谷・銀座・バンクーバーの3都市のコンスタントフラックス層において超音波風速温度計によって計測された乱流データに基づき, それらの乱流統計量に関して考察がなされた.草原上の観察から得られた既存の相似関数と比較検討し, 以下の結果を得た.(1)運動量に対する熱の鉛直輸送効率を表すそれぞれの乱流相関係数の比は, 大気安定度パラメーターに対して3都市ともほぼ同一の関数で表現されるが, 草原上で得られた既存の相似関数と比べて全般に値が小さい.都市では建物のWake効果あるいは熱源の空間的非均一性により, 運動量の熱に対する相対的な交換効率が草原上よりも高いことが示唆された.(2)主流方向風速の標準偏差, 温度の標準偏差, 乱流運動エネルギー散逸率, および温度分散の散逸率の4つの無次元乱流統計量について, 本論で対象とした都市のコンスタントフラックス層で成立する相似関数式が試算された.
著者
早崎 将光 田中 博
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.123-135, 1999-02-28
被引用文献数
3

1989年2月にアラスカ付近を中心に典型的なΩ型ブロッキングが形成された. このプロツキング形成初期にアラスカにおいて, 地表面気温が約1週間で30K以上上昇する現象が観測された. 昇温は地表付近のみにとどまらず, 対流圏のほぼ全層におよんでおり, 成層圏の突然昇温に対して対流圏突然昇温とも呼べる現象であった. Tanaka and Milkovich (1990)の熱収支解析によると, 昇温初期に顕著な下降流があり, その後は低緯度からの水平温度移流が卓越していることが明らかとなっている. 本研究では, このような対流圏における突然昇温現象の水平・鉛直規模を把握し, 渦位(Q)や速度ポテンシャル・発散風などを用いることで昇温初期に発生した下降流の原因について考察した. 対流圏突然昇温の水平規模は経度幅で30〜50゜, 緯度幅で15〜20゜程度であり, 成層圏突然昇温と比べて局所的な現象であるが, 鉛直方向には300ないし400hPaより下層の対流圏のほぼ全層にわたって10〜40Kの昇温が見られた. また, 渦位・鉛直流・上層の収束場などの分布から, 昇温初期の明瞭な下降流の形成要因としては, 1)上層のHigh-Q移流に伴い日本付近で爆弾低気圧が連続して発生, 2)2つの爆弾低気圧の間で気塊が収束することで強い下降流が形成, 3)上層High-Qの移流に伴い収束・発散場も日本付近から北東へ移動, 4)強い下降流場も上層の収束場の移動によりアラスカ上に到達した, ということが明らかとなった. したがって, アラスカ上での対流圏突然昇温をもたらした顕著な下降流は, 日本付近で2つの爆弾低気圧が連続して発生した事が原因と判明した.
著者
高木 久之 北田 敏廣
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.41, no.12, pp.827-846, 1994-12-31
被引用文献数
10

ドップラーソーダデータによって得られた乱流運動エネルギーの鉛直分布を1次元k-ε乱流モデルを用いて再現することを試みた.その過程を通じて,ε方程式中のモデルパラメータ値に対する検討及び,乱れの運動エネルギーの水平方向移流効果の影響についても考察した.混合層高度が大きく風速の弱い条件では鉛直1次元k-ε乱流モデルによる計算結果とドップラーソーダの観測結果はよく一致した.また,ε方程式中の浮力項を制御するモデルパラメータを変えた計算結果とドップラーソーダの観測結果との比較では,安定成層においても浮力効果を反映させた方が観測結果により近い値を示すことがわかった.海風通過後の水平風速が強い場合は水平方向移流効果を無視することはできず,観測結果を再現するには水平方向移流過程がkの保存式中に必要であった.
著者
酒井 敏 梅谷 和弘 飯澤 功 伊藤 文 小野 耕作 矢島 新 飴村 尚起 森永 修司
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.337-351, 2009-05-31

ヒートアイランド現象など都市の熱環境を観測するための多点観測システムを開発した.都市部での観測では設置場所などの制約が大きく,小型軽量の観測機材が求められる.特に,熱的な応答を調べるために必要な放射計は,従来かなり大掛かりで都市部での観測は困難であった.ここでは,気温測定などのための基本的な温度センサに加えて,これらの放射に関するセンサを含め,市販の安価な部品を使って製作し,従来の熱環境を観測するシステムとほぼ同等の精度を有することを示す.
著者
河野 仁 渡邊 さつき 岩井 恒敬
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, pp.589-600, 2010-08-31

大気拡散予測に必要な都市下層大気の安定度を得るため,姫路市街地で高さ72mのタワーを使って気温の鉛直分布を1年間測定した.これと並行して建物の屋上で表面温度を測定した.また,夏と秋に各1日,係留気球を使い,地上から270mの高さまで気温を測定した.その結果,次のことがわかった.昼間,下層大気の温位勾配は不安定となり,高さ18mと70mの間の温位減率は夏に大きく,強不安定となり,冬にはやや小さくなる.夜間,地上から建物高さの2〜3倍までの温位勾配は中立に近くなる.この中立層の成因には,ラフネスサブレーヤに生じる強いメカニカル乱流が作用していると考えられる.また,夏の夜間は建物屋上表面温度が気温よりも高い状態が明け方まで持続しており,これも明け方まで中立か弱い不安定状態が残っている原因と考えられる.都市上空に存在する夜間の安定層は年間を通して出現し,安定層の温位勾配は冬季に大きい.その底面高度は建物高さの2〜3倍付近にある.下層大気の2高度(地上18mと70m)の温位差とバルク式表現である建物屋上表面温度と基準高さ(地面からの高さ18m)の温位差に関して,不安定から中立大気状態にかけて高い相関が得られた.この結果は下層大気の安定度の推定に利用できると考えられる.
著者
菅原 広史 近藤 純正
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.42, no.12, pp.813-818, 1995-12-31
被引用文献数
7 10

都市の各種地表面について,熱収支モデルを用いて地表面温度と気象条件,地表面のパラメータとの関係について調べた.気象条件では日射量が地表面温度に与える影響は大きく,建物の日陰の地表面温度は日向と比べてかなり低い.一方,気温や大気の比湿は地表面温度にあまり影響を与えないことがわかった.都市と郊外(アスファルト面と芝生面)を比較すると地表面温度には地表面の湿潤度が最も大きな影響を与えている.また地中の熱物理係数は地表面温度の位相,振幅を変化させ,場合によっては日中にクールアイランドが形成される可能性があることを示した.
著者
近藤 純正
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.165-170, 2012-03-31
被引用文献数
2
著者
岩坂 泰信
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.60, no.7, pp.597-602, 2013-07-31
著者
中村 圭三 三谷 雅肆
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.58, no.10, pp.855-864, 2011-10-31
被引用文献数
1

直達日射量の観測を要することなく,より観測地点が多く,入手も容易な水平面全天日射量データから,大気透過率や混濁係数などの評価を試みた.そのなかで,東京,およびその周辺6地点における過去20年間の正午を含む1時間水平面全天日射量データから,大気成分による吸収を無視したKondratyevの式を適用して,関東地方における大気の混濁係数の推移を求めた.1990年代前半には,ピナトゥボ山噴火による高い混濁係数が認められたが,その影響がほぼ消滅した同年代中期以降も混濁係数は漸次低下を続け,全体として,ここで取り上げた1989年以降,各地の混濁係数は漸減する傾向にあった.日射の季節的,地域的特性も確認され,適用する地域を100km程度に限定すれば,ここで採用された全天日射量から大気混濁度,および大気混濁係数を評価する方法が有効であると確認された.