著者
大久保 篤
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.241-250, 1997-04-30
参考文献数
9

1995年2月5日午後, 若狭湾沖で特別観測を行っていた啓風丸の近くを渦状擾乱が南東進した. この渦状擾乱について, 主に啓風丸の資料を用いて解析を行った. 渦状擾乱は水平スケール約100kmで, 700hPaより下層の擾乱であった. そして, 約半日前に北陸地方の沿岸を東北東進した渦状擾乱と2つで, 1つのメソαスケールの擾乱を形成しており, 上方には上層の擾乱が位置していた. 渦状擾乱は温暖前線, 寒冷前線の様相を示すシアーラインを伴っており, 温帯低気圧に似た構造をしていた. 啓風丸の10分間隔の海上気象観測値によると, これらと別のシアーラインが検出できた. シアーライン通過時の観測値の変化やレーダーエコー分布は「Tボーン構造をした温帯低気圧」に似ていた. なお, 海上風は渦状擾乱後面のシアーライン通過後が最も強く, その強風は下降してきた寒気によるものと考えた.
著者
大橋 喜隆 川村 隆一
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.277-291, 2006-04-30
参考文献数
28
被引用文献数
9

1996年から2003年の典型的な夏季静穏日を抽出して,中部日本域の山岳域とその周辺の沿岸域についてGPS可降水量の日変化傾向を調べた.可降水量の日較差は,山岳域は5〜8mm,沿岸域は2〜4mmであった.熱的低気圧に伴う地上風収束の最盛期とGPS可降水量の極大には3時間ほどの遅れが生じていた.日変化では,山岳域で可降水量の増加が減少よりも急激である傾向を示し,増加期は山岳斜面に沿う水蒸気輸送とその収束,減少期は山岳上空での一様な水平発散を主に捉えていると考えられる.沿岸域や内陸では可降水量の日変化は一般に不明瞭であったが,濃尾平野や静岡県沿岸においては夜間に可降水量が増加する傾向がみられた.また,盆地内では夜間の可降水量の漸増あるいは一定値を保つ傾向が観測され,局地循環に伴って輸送される水蒸気が盆地上空で局所的に収束している可能性が示唆された.
著者
片岡 久美
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.50, no.9, pp.705-714, 2003-09-30
参考文献数
14
被引用文献数
2

北太平洋西部中緯度を1961〜1990年に通過した台風について,気象庁編『TROPICAL CYCLONE TRACKS IN THE WESTERN NORTH PACIFIC 1951-1990』を用い,熱帯低気圧(TD)の期間や温帯低気圧化後の期間も含めて,経路の特徴を調べた.方法として,台風が,北緯25°〜45°の5本の緯線を通過した際の経度によって経路の東西方向の位置を,緯線を通過した回数によって北上の程度を,それぞれ代表させ,その特徴を全平均と月別平均の形で示した.また,中心気庄と経路との関係も調べた.得られた東西方向の特徴は,太平洋高気圧の影響で説明できた.北方向の特徴は,北上の程度が大きいほど25Nにおける中心気圧が低いなどの特徴が得られ,中心気圧の深さが,北上の程度に影響を与えている可能性が示唆された.また,この結果は,定義上の台風のみによる集計でも確認された.
著者
岩下 晴彦
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.42, no.12, pp.833-842, 1995-12-31
参考文献数
27
被引用文献数
5

1988年8月24日14時20分頃大阪国際空港(伊丹)付近で発生した突風を解析した結果,この突風は2つのダウンバーストによるものであり,約1時間半前に芦屋市付近で発生して東北東へ進んだエコーと北北西から南下したエコーが合体して成長し活発になった時に発生したことがわかった.ダウンバーストに伴う最大瞬間風速は,空港の滑走路南端寄りの風速計で14.6m/sと18.2m/sでその間隔は8分間であった.空港では強風の発生する約30分前から降水域に入って明瞭な気温降下と約1hPaの気圧上昇があった.2番目のダウンバーストの終了時には一時的で急激な湿度降下(humidity dip)と約1hPaの気圧降下が見られた.地上で降雹は報告されていない.
著者
神田 学 石田 知礼 鹿島 正彦 大石 哲
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.7-15, 2000-01-31
参考文献数
12
被引用文献数
14

局地的対流性豪雨とGPS可降水量の時空間変動の相関関係が, 首都圏における集中豪雨を1事例として検討された.解析には, 国土地理院GPS連続観測システムのRINEXデータ(GPS標準フォーマットの1つ)からGAMIT(GPS解析汎用ソフトウエアの1つ)により算出された30分解像度のGPS可降水量が用いられた.このGPS可降水量は, ゾンデ観測・SINEXデータ(GPS標準フォーマットの1つ)から得られた可降水量との比較, および可降水量を算出する際のパラメータ感度分析により, r.m.s=2.37mm程度の精度を持つ事が確認された.また, (1)GPS可降水量の時間位相が降雨量の位相に対して1〜2時間程先行する事, (2)GPS可降水量が増加すると1時間〜3時間後に降水量が増大する確率が高く, その確立はGPS可降水量の増加が大きい程高く, 又その際の降水量の増加量もGPS可降水量の増加が大きい程高くなる事, (3)降水量の最盛期に可降水量は既に減少を開始する事, が示され, 集中豪雨に対してGPS可降水量が先行指標として利用出来る可能性が示唆された.
著者
瀬古 弘 吉崎 正憲 楠 研一 つくば域降雨観測実験グループ
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.93-103, 1998-02-28
参考文献数
13
被引用文献数
5

1995年8月16日, 東北地方を横切って東西に延びる寒冷前線が南下した時に, 関東地方で南西から北東に線状に並んだスコールラインが見られた。このスコールラインの成熟期の構造を, つくばのドップラーレーダー, アメダス, 気象官署や地方自治体(群馬県, 埼玉県, 栃木県, 茨城県)の観測データなどを用いて解析した。スコールラインの中では, 強い降水域が進行方向前面に並び, 後側に弱い降水域が広がっていた。スコールラインの移動に相対的な地上風の分布を見ると, 降水域では冷気外出流に伴う発散があり, その前面では前方からの暖かい風との収束がみられた。一方, 高度2〜4 kmの水平風をみると, 強い降水域では後方へ吹き出し, 弱い降水域では後ろからの乾いた空気の吹き込みが見られた。地上の気圧のメソスケールの変動を見ると, 降水域の前面で低圧, 強い降水域で高圧, 降水の止むところでは低圧であった。規模は小さいけれども, 本事例のスコールラインはアメリカ中西部や熱帯で見られるものとよく似た特徴を持っていた。
著者
小倉 義光
出版者
日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.52, no.9, pp.691-696, 2005-09
著者
小倉 義光 加藤 輝之 高野 功
出版者
日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.52, no.11, pp.869-876, 2005-11-30
参考文献数
4
被引用文献数
1
著者
小倉 義光
出版者
日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.37, no.7, pp.p439-465, 1990-07
被引用文献数
3
著者
加藤 輝之
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.395-398, 2007-05-31
参考文献数
10
被引用文献数
3

1 0 0 0 OA 2005年の大雨

出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.430-432, 2006-05-31

今年の梅雨入りは南西諸島を除いて平年より遅く,特に,九州南部,北陸,東北北部では平年に比べ2週間程度遅れた.梅雨明けは沖縄と東北で遅く,東北では平年に比べ10日前後遅かった.その他は平年並みか平年より早い梅雨明けとなった.梅雨時期の雨量は,九州南部から東海にかけては,平年より少なかったが,南西諸島では,6月に活発な梅雨前線の影響を受け平年よりかなり多かった.6月には梅雨前線が南西諸島から本州南岸に停滞することが多く,南西諸島では記録的な大雨となったが,6月終わりごろからは梅雨前線が本州に停滞することが多くなり,北陸地方などで大雨となった.梅雨入りは概ね平年よりも遅く,東北地方を除き梅雨明けはほぼ平年並か早かった.9月初めに上陸した台風第14号の影響で九州,中国,四国地方では降り始めからの総雨量が9月の月間平均雨量の2倍を超え,特に宮崎県では総雨量が1,000mmを超えた.
著者
木村 富士男 谷川 亮一 吉崎 正憲
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.44, no.11, pp.799-807, 1997-11-30
参考文献数
6
被引用文献数
16

晴天静穏時の大気下層における水蒸気輸送と, それによる可降水量の日変化を調べるため, 1995年7月24日から29日までの6日間, 関東地方の3地点(丸沼, 前橋, つくば)において, オメガゾンデなどによる集中観測を行った. 過去の研究で, アメダスやレーダーの解析などにより, 夏期の北関東山地や中部山岳域では降水頻度が高いことが示されている. また理論的にも静穏日には山岳域に水蒸気が集まりやすいことが予想されているが, これらを確認するための, 晴天静穏日の山岳域における水蒸気量の観測は例が少なかった. 今回の観測の結果, 山岳域と平野域とで水蒸気量の日変化に顕著な違いがみられた. 山岳域の丸沼では, 局地循環によると思われる水蒸気の日変化が高度4500mまで及び, 午前中から夕方にかけて可降水量が増加した. 一方で, 山岳域の麓の前橋では, 午前中に可降水量の急減がみられ, その後次第に回復した. これらの結果から, 水平規模の大きな局地循環による水蒸気輸送と, 可降水量の日変化との間に密接な関係があることが明らかになった. さらに, 夏期の局所的な降水頻度の地域分布との関係についても示唆に富む結果が得られた.
著者
中井 専人 川村 隆一
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.45, no.12, pp.895-905, 1998-12-31
参考文献数
30
被引用文献数
1

1992年6月5日09UTC(00UTC=09JST)から18日06UTCに梅雨前線付近に現れた74個のメソスケール雲クラスターの出現特性を調査した.雲クラスターの寿命と最大雲域面積との間には正相関があり, 平均値はそれぞれ12.4時間, 7.1×10^4km^2であった.これらは日本付近の雲クラスターについて過去に報告された値に近く, 熱帯や北米大陸上で報告された値より小さかった.メソαスケール雲クラスター(MACC)の多くは13時間以上の寿命を持ち, 前線付近に出現するものが多かった.また, 夜間から早朝にかけて多く出現する弱い傾向があった.メソβスケール雲クラスター(MBCC)は12時間以下の寿命を持つものが多く, 出現には日変化も前線との位置に対する依存性も明瞭ではなかった.MACCの多かった期間は, 雲クラスター出現域で前線の影響と考えられる強い鉛直シアーが見られた.MBCCの多かった期間は, 雲クラスターの出現域が前線から離れた亜熱帯高気圧の勢力下にあった.
著者
鵜野 伊津志 天野 宏欣 木下 紀正 荒生 公雄 村山 利幸 松井 一郎 杉本 伸夫
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.17-29, 2003-01-31
参考文献数
21
被引用文献数
6

地域気象モデルRAMSと結合した黄砂の輸送モデルを開発した.この輸送モデルでは,黄砂の発生源の特定に,NDVI植生インデックスと積雪被覆率データを利用し,発生条件には土壌分類に従った臨界摩擦速度マップを利用した.また,粒径別輸送,乾性沈着,湿性除去,重力沈降のプロセスもモデル内に組み込んだ.1998年4月10日〜25日にかけての東アジア域の大規模な黄砂エピソードに適用し,その輸送解析を行った.1998年4月14日〜15日に主にゴビ砂漠〜黄土高原で発生した黄砂は,寒冷渦に巻き込まれる形で日本列島を西から東に横断するように輸送されるのがシミュレートされた.寒冷渦の通過に伴い,ダストの鉛直分布は,最初に濃度の濃い層が高い高度に現れ,続いて低い位置へと変化することがモデルの鉛直空間分布から示され,これはライダー観測の結果を合理的に説明していた.大量の黄砂が寒冷渦の西側の沈降性の逆転層内にトラップされて輸送されたため,観測されたダスト層は2〜3km以下の比較的低高度であった.