著者
高藪 出 金光 正郎
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.57, no.7, pp.435-447, 2010-07-31
被引用文献数
1
著者
神田 学 森脇 亮 鈴木 譲 ロート マティアス オーク ティム
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.453-462, 2000-06-30
被引用文献数
7

密集低層住宅街(世田谷)の接地境界層において, 渦相関法とシンチロメーター法を併用した乱流フラックス観測を行い, 以下の結論を得た.(1)世田谷住宅街における放射収支・熱収支解析データを提示し, その特徴を示した.(2)2高度におけるシンチロメーター計測により, 顕熱と同時にゼロ面変位を推定する手法を提案した.推定されたゼロ面変位は, 平均的にはMacDonald et al.(1998)の形態学的手法から算定された値とほぼ一致した.また, ゼロ面変位が大気安定度に依存することを指摘した.(3)渦相関法とシンチロメーター法の比較により乱流フラックスの空間代表性が検討された.シンチロメーター法のソースエリアは渦相関法のそれに対して, 不安定時で2〜3倍の広さを持つ.30分平均値での顕熱は両手法で有意な差がない.顕熱の標準偏差は大気安定度に関わらずシンチロメーター法の値が小さい.これは計測スパンの長いシンチロメーター法における渦の空間積分効果であると考えられる.
著者
神田 学 森脇 亮 横山 仁
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.44, no.10, pp.723-731, 1997-10-31
参考文献数
21
被引用文献数
10

明治神宮で行われた集中観測データを森林環境気象モデルに同化させ, 神宮の森の気候緩和機能と大気浄化機能が定量的に評価された. その結果以下の結論が得られた. 1) 数点のポロメーター計測データから未知パラメータを非線形回帰させた気孔コンダクタンスモデルは, 気象学的測定から得られた群落気孔コンダクタンスの傾向をよく表現した. 2 )この気孔特性を森林環境気象モデル (NEO-SPAM2) に同化させて熱収支計算を行ったところ, 実測値を良好に再現した. 3) 神宮の森の気候緩和機能を大きく左右する植物の活性度 (気孔コンダクタンス) は, 樹冠部ほど大きく, 下方へ向かうほど減少している. また植物の活性度は午前中の早い時間帯に最も盛んであることが示された. 4) 本モデルを用いて, 神宮の森における汚染物質吸収量 (鉛直下向きフラックス) を算定したところ, その日中の平均値は, 観測結果と定量的によく一致した. またピーク時のNO_2フラックスを神宮の森全体の面積に換算すると, 乗用車93台分が排出するNO_2量に相当することが明らかとなった. 5 ) また汚染物質吸収は早朝に効率的に行われること, 樹冠付近の葉への吸収が活発なことなど, 観測で得られなかった大気浄化の時空間変動特性が示された.
著者
木内 豪
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.48, no.9, pp.661-671, 2001-09-30
被引用文献数
6

本論文では, 夏期と冬期の温冷感指標を得るため, いくつかの温冷感指標の適用性について検討を行った.検討対象とした既存の指標は, 不快指数, 風力冷却指数, 新標準有効温度SET^*である.また, 体温調節に関する温度情報の統合の概念を適用した温度負荷量TLと, 作用温度と風速を変数とする簡易な式で表される温冷感指数TSIの2つを新たに提案した.これらの指標について夏期及び冬期の屋外空間における温冷感の現地実験結果との対応について比較した結果, 夏期はTLとTSIが温冷感との相関が高く, 冬期はTSIとSET^*が温冷感との相関が高かった.したがって, TSIを用いれば夏期, 冬期ともに実測の気象範囲において精度よく簡便に温冷感を推定できることがわかった.提案した指標を用いて気象要因が人間の温冷感に及ぼす影響度合いについて調べ, 夏期, 冬期における温冷感の気温, 風速, 湿度への依存特性を示した.
著者
平沼 洋司
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.48, no.7, pp.507-511, 2001-07-31
著者
松村 伸治 謝 尚平
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.45, no.10, pp.781-791, 1998-10-31
参考文献数
24
被引用文献数
7

季節風の吹き出しは冬季日本および日本海の経年気候変動をもたらす最も重要な要素の一つである.本研究は, 現在入手可能な船舶, 地上, 衛星観測データを用いて, 冬季季節風変動の影響を総合的に調べたものである.日本冬季降水量の変動パターンは日本海側と太平洋側とに分かれており, 季節風が強い年には日本海側で降水量が多く, 太平洋側では逆に少なくなる.一方, 日本海上の降水量, 水蒸気量はともに季節風が強いときに減少していることが衛星データを用いた解析から示された.しかし, 日本列島に近付くにつれ雲水量が増加しており, 日本海側で降雪量が増えていることが示唆された.また, 季節風の強い年に海面水温(SST)が低くなるという影響は日本海南部(40°N以南)のみにしか現れず, 北部においては季節風よりも海洋の内部変動による影響が大きい.このようなSST変動の南北相違は日本の気温にも現れており, 全国的には季節風と地上気温とが有意な負相関を示すものの, 北日本では相関係数が小さくなっている.以上のように, 40°N以南の日本海・日本列島上の気温変動が2〜3年周期を持つ季節風の強弱に強く影響される一方で, 10年スケールの変動が北日本に見られることも分かった.後者の変動要因に関する詳しい解析は今後の課題である.
著者
伊藤 久徳
出版者
日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.35-51, 2007
参考文献数
36
被引用文献数
1
著者
栗山 佳恵 山本 勝
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.55, no.9, pp.737-746, 2008-09-30
参考文献数
15

1988年から2006年の寒候期(11月から3月)において,那覇では「吹き出し開始初期から厚い北風層が卓越し,それが維持されるもの(N型)」と「吹き出し開始から下層の北風層が徐々に発達するもの(S型)」の2つの寒気吹き出し構造が見られた.そこで,その経年変化や特徴的な気圧配置を明らかにし,海面水温(SST)や冬季モンスーンの経年変化と那覇周辺域の寒気吹き出し構造の関係を調べた.寒候期平均のNINO3海域SST平年偏差は1000hPa南北風と相関が高く,00/01年までの降水量とも相関が高い.また,那覇周辺海域のSSTは海面気圧や1000hPa比湿と相関が高く,北極振動指数は900hPaの相対湿度と相関が高い.さらに本研究では,総観規模の気象解析もおこなった.寒気吹き出し初期の500hPaの太平洋高気圧の張り出しがS型とN型の構造を決定づける.また,エルニーニョと関連して東シナ海上空500hPaの南風が強い冬季では,S型が卓越する.
著者
川上 紳一 東條 文治
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.50, no.11, pp.829-830, 2003-11-30
参考文献数
2
被引用文献数
1
著者
渡部 浩章
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.449-455, 2007-05-31
参考文献数
7
被引用文献数
2

福井豪雨をもたらした線状降水域について,1.5kmまたは5kmの分解能を持つ気象庁非静力学モデル(JMA-NHM)で詳しく調べた.福井県の西海上では,実況の解析雨量に対応する線状降水域をほぼ再現した.中層では梅雨前線に沿って高湿度領域となっており,前線付近での風向は一様に西北西であった.下層では前線に沿って前線南側の西風と前線北側の北西風により線状の収束域が持続していた,線状降水域の風上に次々と積乱雲(降水セル)が発生して,バックビルディング型の特徴を示した.降水セルは線状降水域に沿って時速約50km/hで東南東進していた.降水セル下部の収束と上部の発散は,ともに10^<-3>/s以上の大きさであった.また,雨滴の蒸発による冷却効果は見られなかった.
著者
藤部 文昭
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.403-412, 1993-06-30
参考文献数
13
被引用文献数
3

北日本に記録的な強風をもたらした台風9119, 5415(洞爺丸台風)および6118(第2室戸台風)について, メソα〜β規模における強風の特徴を比べた.中心域の気圧・風速分布は台風ごとに違い, 台風9119は中心付近の広い低圧部=弱風域とその外側(南東側)の南西強風, 台風5415は鋭い気圧中心に集中した強風, 台風6118はメソ寒冷前線に対応するトラフとその後面(西側)の北西強風が特徴的であった.どの台風の場合も, 東北地方の南西〜北西強風は急に吹き出す傾向があった.このうち台風5415と6118においては, 強風の吹き出しはシャープなメソ寒冷前線の通過に対応し, 気温の急降下を伴った.これに対して台風9119の場合には, 中心後面からの寒気流入が緩やかで, 明瞭なメソ寒冷前線は現れず, 強風開始は一時的な昇温を伴った.この昇温は下層の安定層破壊によると推測される.
著者
新野 宏
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.309-312, 1995-05-31

去る2月3日から16日まで,科学技術庁振興調整費による重点基礎研究「シビアウェザーの発生機構に関する基礎的研究」の遂行のため,NCAR(アメリカ)のSenior Scientistのリチャード・ロットゥンノ博士が気象研究所に滞在された.博士は1949年生まれ.メソスケール現象を中心に,大気境界層の乱流からハリケーンや温帯低気圧に至るまでの幅広い分野の力学に関する論文を数多く発表されている.来日の機会をとらえてお話を伺った.
著者
野口 泰生
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.48, no.10, pp.747-757, 2001-10-31
参考文献数
31
被引用文献数
5

親潮の異常南下が注目される東北地方太平洋岸で海面水温変動の特徴を緯度経度1度のグリッド水温(1950〜)で検討した結果, 常磐沖を含む中緯度帯に一年を通して水温が長年低下傾向にある海域が広範囲に確認され, 夏の常磐沖水温変動には明瞭な6年周期が見られた.東北地方太平洋岸の気温も1950年頃から1980年代後半まで一年を通して低温化傾向にあったが, 夏の低温化は東北地方太平洋岸の局地的現象で, この中にやはり6年の周期性が認められた.また, 沿岸から内陸に向かって気温に海の影響が認められた.常磐沖の長期的な水温低下は, 宮城県江ノ島の長期海面水温データや北太平洋指数(Trenberth, 1990), 冬の北太平洋SST指数(Deser and Blackmon, 1995)から判断して, 高緯度大気変動に伴う長期変動の一部である可能性が高く, 同海域では40〜50年の長周期的変動と6年の短周期的変動がオーバーラップしていると推測された.
著者
中島 映至
出版者
社団法人 日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.185-188, 1987-03
著者
原 由香里 佐竹 晋輔 鵜野 伊津志 竹村 俊彦
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.51, no.10, pp.719-728, 2004-10-31
参考文献数
16
被引用文献数
3

2000年から2002年にかけて日本における黄砂観測日数は急激な増加傾向を見せたが,2003年は一転して非常に観測日数の少ない年となった.このような黄砂現象の年々変動のメカニズムを明らかにするため,領域ダスト輸送モデルを用い,1993〜2003年の11年間の春季)2月20日から4月30日)を対象に黄砂の発生・輸送過程のシミュレーションを行った.黄砂観測日数データやTOMS Aerosol Indexを用いた比較から,モデル結果は観測された年々変動を再現していることが確認された.また,シミュレートされた黄砂現象の年々変動から,黄砂多発年と非多発年の間には大気境界層内の輸送経路や輸送量に明らかな違いが見られた.更に,ECMWF客観解析データを用いた気象場の解析から,モデル結果の発生量と発生源域の強風発生頻度の間には強い相関が見られ,ジオポテンシャル高度のアノマリー解析から発生源域の強風発生頻度や輸送経路が説明されることが明らかとなった.