著者
中井 専人
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.187-199, 2015-03-31

多雪,少雪の地域的な分布と変動を定量的に把握するため,積雪深観測地点ごとの冬季最深積雪をもとにした"多雪指数"を定義し,その全国分布図を作製した."多雪指数"を用いることにより,積雪の多い冬でも広域の積雪分布の特徴がかなり異なることを示し,山雪-里雪,西偏-北偏,太平洋側-日本海側という経験的に言われている多雪の偏りについて定量化を行った.平均多雪指数と冬季モンスーン,大循環等の指数との関係を調査したところ,2010年代では1980年代より温かくても多雪になる傾向,また寒冬及び冬季アジアモンスーンが強いほど多雪になりやすい傾向が示された.北極振動指数,WP指数(西太平洋パターン指数),Nino3.4指数についてはいずれも負の値が大きいほど多雪となりやすいという結果が得られたが,多雪指数の変動のうちこれらを説明変数として説明できるのは半分弱であった.
著者
鵜沼 昂 村田 文絵
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.119-125, 2012-02-29

2005-2009年の5年間の気象庁降雨レーダー及び気象庁メソ数値予報モデルの高知市上空850hPa面における風を用いて,閾値を30mm/hとした四国地方における降水の風向別頻度分布を作成した.次にその頻度が高い地域において30mm/h以上の降水が2時間以上持続する降水系のうち線状を成すものを停滞性の線状降水帯として抽出した.その結果,低気圧や前線の影響下においてS或いはSW風時に特定の場所に高頻度で発生する南西-北東或いは西南西-東北東の走向をもつ3本のラインを抽出した.このうち南西-北東の走向をもつものは窪川-高知-繁藤ラインと佐喜浜-日和佐ラインでそれぞれ14例と9例みられた.また西南西-東北東の走向をもつものは安芸-魚梁瀬ラインで6例みられた.その他台風に伴うSE風時に現れやすい南-北の走向をもって室戸岬から北に伸びるラインを3例抽出した.
著者
植田 宏昭 安成 哲三
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.199-215, 1998-03-31
参考文献数
14
被引用文献数
4

気候平均場に見られる150°Eでの7月下旬のconvection jump(対流活動の突然の強化)と梅雨明けとの関係を、1993/94年の日本付近の冷夏/暑夏時について調べた。Convection jumpを左右する25°N、150°E付近の7月上中旬の海面水温は、1993(94)年は29℃以下(以上)であった。このため1993年は顕著なconvection jumpが見られず、梅雨明けも明瞭ではない。一方1994年は7月上旬のフィリピン周辺の対流強化による熱源の影響が中緯度偏西風帯に及ぶことにより定常ロスビー波応答が生じ、同時に西南日本で梅雨明けした。続いて7月中旬のconvection jumpによって関東以北も梅雨明けが引き起こされ、偏西風の北上によって定常ロスビー波が消滅した。Convection jump領域を含む盛夏期の20°N付近での対流活動は、1994年は1993年に比べ相対的に活発で、これに伴う上昇流が日本上空で収束していた。
著者
新田 尚
出版者
日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.56, no.11, pp.894-900, 2009-11-30
参考文献数
12
著者
記載なし
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.410-413, 2004-05-31

(1)今年の梅雨入りは,沖縄地方では平年より遅く,奄美地方はやや遅かった.九州から本州にかけては,6月10日前後にほぼ一斉に梅雨入りした.梅雨明けは,沖縄地方と奄美地方ではともに平年並みであったが,それ以外の地方では平年よりかなり遅れた.西日本では梅雨明けの直前に集中豪雨による災害が数回発生した.梅雨期間の総降水量は西日本では平年を大きく上回った所が多かった.(2)台風の発生数は21個と少なかったが,早い時期から日本への接近があり,発生した台風の半分以上の12個が日本に接近した.また,5月には台風第4号が,8月には台風第10号が四国に上陸した.
著者
植田 宏昭 小塙 祐人 大庭 雅道 井上 知栄 釜江 陽一 池上 久通 竹内 茜 石井 直貴
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.58, no.9, pp.777-784, 2011-09-30

筑波山の東西南北4斜面上に,標高約100m間隔で気温ロガーを設置し,2008年6月1日から2009年5月31日までの期間において,30分間隔の通年観測を行った.斜面温暖帯を定量的に議論するために,麓からの逆転強度を斜面温暖帯指数(Thermal Belt Index;TBI)として定義した.TBIの大きさは,冬季を中心に極大となり,標高200〜300mを中心に斜面温暖帯が形成されていた.斜面温暖帯の年間発生日数を各斜面で比較すると,西側103回,東側99回,南側59回,北側35回であった.斜面温暖帯を規定する広域の逆転現象との関係を議論するために,平野部に設置されている気象観測鉄塔データと斜面上の気温を比較した.
著者
鈴木 知道 玄地 裕 飯塚 悦功 小宮山 宏
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.383-391, 2001-06-30
被引用文献数
8

東京都で発生しているヒートアイランド現象に対し, 統計解析的アプローチをとることによって, 真夏の東京都の気温が地域と時刻によってどのように変化するのかを明らかにした. 着目したのは気温日変化パターンであり, 解析には東京都各所100地点において観測された1時間間隔のデータを4日分用いた. 統計解析手法の一つである主成分分析をこのデータに適用した結果, 気温日変化パターンの変動を代表する特性値である3つの主成分が得られた. 3つの主成分の吟味から, これらは気温レベル, 気温の日較差, 気温変化の緩急を表しているといえる. そして観測された100地点に対し, 主成分分析の解析結果をもとにグループ化を行った. その結果, 観測地域をそれぞれ特徴を持つ7つのグループに分類できた. また, 同時期のアメダスのデータを用いて解析の妥当性を検証した.
著者
中西 幹郎 菅谷(大鶴) 真子
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.51, no.10, pp.729-739, 2004-10-31
被引用文献数
2

午前中晴れた夏の日(午前晴天日)の午後に東京湾周辺で発生する雲列と,関東平野規模の局地気象および午後の降水との関係を調べるため,午前晴天日を静止気象衛星の可視画像に基づいて6つに分類し,特徴的な雲列が現れた2つのタイプと快晴に相当するタイプを解析した.東京湾を囲むような雲列の日は,相模湾沿岸で南寄りの風,鹿島灘沿岸で東寄りの風が吹き,午前晴天日の中でも格別,平野で午後に降水がある日(平野降水日)になりやすかった.平野降水日は850〜500hPaの上空の湿度が高く,14時頃までに山岳域で積乱雲が発生した.雲列は,この積乱雲やそれに伴う発散風が1つの誘因となって発達し,雲列の直下,多くは埼玉県南部に降水をもたらした.ほかの2つのタイプの日は,上空の湿度が平均的に低く積乱雲が発生しにくいだけでなく,関東平野全域で南寄りの風が吹いて山岳域の積乱雲や発散風の影響が平野に及びにくいため,平野降水日にほとんどならなかった.
著者
中西 幹郎 菅谷 大鶴 真子
出版者
日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.51, no.10, pp.729-739, 2004-10-31
参考文献数
16
被引用文献数
2

午前中晴れた夏の日(午前晴天日)の午後に東京湾周辺で発生する雲列と,関東平野規模の局地気象および午後の降水との関係を調べるため,午前晴天日を静止気象衛星の可視画像に基づいて6つに分類し,特徴的な雲列が現れた2つのタイプと快晴に相当するタイプを解析した.東京湾を囲むような雲列の日は,相模湾沿岸で南寄りの風,鹿島灘沿岸で東寄りの風が吹き,午前晴天日の中でも格別,平野で午後に降水がある日(平野降水日)になりやすかった.平野降水日は850~500hPaの上空の湿度が高く,14時頃までに山岳域で積乱雲が発生した.雲列は,この積乱雲やそれに伴う発散風が1つの誘因となって発達し,雲列の直下,多くは埼玉県南部に降水をもたらした.ほかの2つのタイプの日は,上空の湿度が平均的に低く積乱雲が発生しにくいだけでなく,関東平野全域で南寄りの風が吹いて山岳域の積乱雲や発散風の影響が平野に及びにくいため,平野降水日にほとんどならなかった.
著者
岩坂 泰信
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.47-52, 2014-01-31
著者
柴田 清孝
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.60, no.9, pp.709-722, 2013-09-30

厳冬期の2013年1月12日に凍結した風蓮湖(根室)ごしに距離10〜20kmの範囲に1つの虚像の下位蜃気楼と数個の虚像の上位蜃気楼を併せ持つ蜃気楼が観測された.この蜃気楼について安定成層の温度プロファイルを仮定してレイ・トレーシングを行い,観測された蜃気楼を定性的に再現することができた.また,これらの成因について調べ,曲率半径のプロファイルが極小層をもつとき,その近辺の全反射による光が蜃気楼を形成することがわかった.極小層の下に極大層がある場合は,この層によるあまり曲げられないレイが重なり,ある距離で多像になる.下位蜃気楼のみがある場合も安定成層による全反射で再現することができた.曲率半径の極値の高度は温度の変曲点高度に対応し,安定成層で温度が下に凸から上に凸に変わる変曲点で曲率半径は極大,逆に上に凸から下に凸に変わる変曲点で曲率半径は極小になる.さらに,複数の距離で複数の虚像を示す蜃気楼は大気の温度構造の情報量を多く含むので,逆問題を解くには有利であり,蜃気楼から温度構造が得られる可能性について言及した.
著者
日下 博幸 西森 基貴 安成 哲三
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.369-378, 1998-05-31
被引用文献数
9

最高および最低気温偏差の季節変化パターンに着目した主成分分析を, 日本の24観測点について個別に行った.その結果に基づき, 比較観測点を用いることなく, 1観測点のデータから都市化に伴う過去90年間の気温上昇量を推定した.最低気温の第1主成分は, 冬季に大きな値を持ち, 年間を通して全て同符号となる季節変化パターンである.固有ベクトルとスコア時系列から推定された最低気温偏差の時系列(T′_min)には, 昇温のトレンドが見られる.また, この時系列のトレンド(ΔT′_min)と観測点のある都市の人口の対数との間には, 正の相関(相関係数0.76)がある.以上のこと等から, 第1主成分の季節変化パターンは主として都市気候のパターンであり, 時系列のトレンドは都市化に伴う気温上昇率であると推定された.また, このトレンドは0.4〜3.7℃/100年であり, 多くの地点で1℃/100年を越えている.一方, 日本における過去90年間の最低気温の上昇に対して, バックグラウンドの気候変化の影響は0〜1℃/100年程度であり, 昇温の要因として都市化の影響を無視できない大きさであることが明らかとなった.一方, 最高気温の季節変化パターンは最低気温と異なる.推定された最高気温偏差の時系列(T′_max)には最低気温のそれほど明瞭なトレンドは見られない.この結果, 過去90年間の最高気温の変動には, 都市化の影響が顕著に現れていないことが確認された.
著者
加治屋 秋実
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.409-417, 2008-05-31
参考文献数
11

2002年10月7日に伊豆大島で竜巻による突風災害が発生した.この竜巻と竜巻をもたらした親雲について,ドップラーレーダーと地上気象観測資料などを用いて解析を行った.竜巻の親雲は,温帯低気圧の暖域内の潜在不安定でエネルギーヘリシティーインデックス(EHI)が大きし)環境場において発達し,直径約6kmの下層のメソサイクロンをともなうスーパーセルであった.竜巻による突風は,メソサイクロンの渦度が最大に達した直後に発生した.時空間変換解析によると,このスーパーセルにともなうガストフロントが認められ,竜巻はガストフロント付近に発生したと考えられる.
著者
大原 利眞 鵜野 伊津志
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.44, no.12, pp.855-874, 1997-12-31
被引用文献数
6

冬季に東京湾上で形成される局地前線(房総前線)の3次元構造をメソスケール気象モデルによってシミュレートするとともに, 光化学反応を含む物質輸送モデルを用いてNO_2汚染の生成メカニズムについて解析した. 4次元データ同化手法を用いたメソスケール気象モデルは房総前線の形成・消滅過程を再現した. 計算結果によると, 東京湾上には水平風の収束域が形成され, 内陸域から前線方向に吹く下層風は収束域で上昇し反転流となる. また, 前線において南西風の暖気は下層冷気によって持ち上げられる. 前線北側の内陸域では夜間, 弱風条件下での放射冷却と山岳地域からの重力流(冷たい空気塊)の流入によって地上付近に強い逆転層が形成される. 次に, メソスケール気象モデルで計算された気象データをもとに, 光化学反応を含む物質輸送モデルを用いてNO_2濃度分布の時空間変化をシミュレートした. その結果, 前線周辺の地上におけるNO_2濃度変動の基本的特徴が再現された. NO_2高濃度汚染は, 内陸域における弱風・強安定条件下での水平移流・鉛直拡散の抑制, 山岳地域からの重力流による汚染物質の取り込みと輸送, 前線周辺における弱風域の存在等の複合した要因によって発生する. また, 前線付近では上昇流によって地上の汚染物質は持ち上げられ, 上層において内陸方向に輸送されることがシミュレーションによって示された.
著者
中島 映至 竹村 俊彦
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.997-999, 2009-12-31
被引用文献数
1