- 著者
-
大林 真也
- 出版者
- 数理社会学会
- 雑誌
- 理論と方法 (ISSN:09131442)
- 巻号頁・発行日
- vol.30, no.1, pp.1-11, 2015 (Released:2016-07-10)
- 参考文献数
- 22
受賞論文では,成員の入れ替えのある流動的な集団において,どのようなメカニズムで助け合いが維持されるのか,というテーマを扱った.具体的には,コミュニティ・ユニオン(個人加盟型労働組合)で行われている助け合いを対象として,このテーマに取り組んだ.方法は経験的調査と数理的研究を組み合わせた分析的物語(analytic narrative)と呼ばれる方法を用いた.まず聞き取りと観察に基づいた経験的調査を行い,次に数理モデルを用いて分析を行い,対象となる助け合いのメカニズムに言及した.受賞論文の意義は,(1)現代的な課題である流動的な社会関係を対象として,協力が達成されるメカニズムに言及したこと,および(2)経験的調査と数理的分析を組合せることにより,社会現象に即した数理モデルを作成し,具体的な社会現象の説明を行ったことにあると考えられる.本稿では,後者の方法論に関して,その重要性を論じ,数理社会学および社会学全体に対して持つ意義を整理する.