著者
上田 護國
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.115, no.2, pp.70-74, 2020-02

近年,清酒の売上に占める特定名称酒の割合が増加傾向にあり,その結果蔵では多品種少量生産が常態化してきている。一方,近年,杜氏集団の後継者不足,酒造メーカーの零細化等により,酒造経験の比較的浅い社員杜氏やオーナー杜氏が増加している。ベテラン杜氏達は長い経験と卓越した技術を取得し,素晴らしい吟醸酒を醸出しているが,彼らと同じように習熟した技術を得るのは並大抵ではない。一般の吟醸麹造りは,揉み上げ時の水分が固定されず,麹の状貌を見て状況を判断し,手入れと積替え,掛け布等により品温と状貌をコントロールしながら製麹する。これは経験に裏付けられた高度な官能検査能力と技術を必要とすることを意味する。そこで,「誰にでも,簡単に,再現性よく造れる」をテーマに試行錯誤の結果,蒸米の吸水率を制御指針とする製麹(通称タライ麹,以下「上田流製麹」)技術の開発に至った。喜ばしいことに本製麹技術は,近年多くの蔵で検討していただいているが,中には基本的な考え方を誤解している例も散見されるようになってきた。ここでは上田流製麹を改めて解説すると共に,その効果を例示して技術の正しい普及を図ることとした。
著者
河村 幸雄
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.95, no.6, pp.386-394, 2000-06-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
22
被引用文献数
1 1

わが国では, 大豆は煮豆, 納豆, きな粉, 豆腐, また味噌, 醤油など発酵食品として広く利用され, 畑の肉といわれるほど, 蛋白質に富み, 栄養的にも優れた重要な食品である.近年は, 栄養だけではなく, 生活習慣病の増加にともない, 大豆の体調調整機能が大きくクローズァッされている。かねて, 食品中の蛋白質の生理機能の研究に従事され, 味噌の高血圧防止効果はACE阻害ペプチド “セリルトリプトファン” によることなどを発見され, 大豆の生理機能に関する最前線の研究をまとめた “ダイズのヘルシーテクノロジー” の編者でもある著者に, 発酵食品を中心に大豆の健康機能性について詳細に解説していただいた。
著者
渡辺 茂夫
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.86, no.9, pp.640-644, 1991-09-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
6

社会生注を営む人間に常に付き纏う精神的ストレスを解消する手段として, 飲酒は重要な位置を占めているが, 音楽も亦, 然りである。音楽の中の「1~fのゆらぎ」が精神的安定に効果が高いと言われている。飲酒あるいは音楽が人間の感性に与える影響を分析しながら, 音楽と飲酒の関わりについて解説していただいた。
著者
伊藤 俊彦 高橋 仁 志賀 拓也 佐藤 勉 中沢 伸重 岩野 君夫
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.108, no.6, pp.453-460, 2013 (Released:2018-01-12)
参考文献数
13
被引用文献数
4 2

清酒麹に残存するアミノ酸について,品種の異なる麹米5点と麹菌17株を用いて清酒麹85個をシャーレ法で製麹し,レベル変動に関与する要因について検討したところ以下の知見を得た。1.麹の残存アミノ酸はグルタミンとアルギニンが多く,次いでリジン,グルタミン酸,ロイシン,チロシン,アラニンの順であった。2.麹米タンパク質が酵素分解されて生成する全アミノ酸の約80%は麹菌の増殖に利用され,約20%が麹の残存アミノ酸となることが推定された。3.麹の残存アミノ酸量の多い麹はタンパク質分解酵素活性が高かった。4.麹の残存アミノ酸量は麹米品種と麹菌株に共に影響された。5.麹菌株の選択により麹の残存アミノ酸量を約半分に低減できる可能性がある。
著者
井上 喬
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.99, no.5, pp.315-323, 2004-05-15
被引用文献数
2 2

古くからジアセチルは発酵飲食品の品質を左右する重要な香気成分である。筆者は長年発酵飲食品中で最も弁別閾値の低いビール中でのジアセチル生成メカニズムとその制御について研究されてきた。ここでは全般的なジアセチル問題と新しい技術を駆使した制御問題を取り上げて貰った。
著者
岩瀬 平
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.89, no.10, pp.805-811, 1994-10-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
19

新嘗祭, 大嘗祭に神前に供える白酒・黒酒は, その製造方法が醍醐天皇の勅命により編集された律令の施行細則法である「延喜式」に定められている。その中で黒酒を造る際に使用される木灰は久佐木 (臭木) というクマツヅラ科の低木の灰であるが何故久佐木を使うのか, また, 仕込配合や製成酒の数値は経験則によるものなのか, 筆者はそのことについて中国の「易」と「陰陽五行説」に基づいて仮説を展開する。
著者
原田 勝二
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.88, no.12, pp.938-942, 1993-12-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
2

お酒には生まれつき強い人と弱い人があり, 強い人はいくら飲んでも顔色ひとつ変えないが, 弱い人はお酒を飲むとすぐに顔が赤くなり, 心臓がどきどきし, 頭が痛くなる。こうした体質は遣伝するものと古くから漠然と考えられていたが, 最近になって, その原因として体内のアセトアルデヒド脱水素酵素に活性型と不活性型の2種類があり, この組み合わせによって遺伝していることが詳しい分子遺伝学的研究によって明らかになった。
著者
佐藤 幸徳
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.111, no.5, pp.315-319, 2016

高島屋新宿店で2015年5月28日から6月2日までの6日間,「研究心と豊かな発想で生まれた,大学のおいしい成果を一堂に」と謳われた第8回「大学は美味しい!!」フェアが,NPO法人「プロジェクト88」(代表理事高橋菜里氏)主催のもとに開催され,全国大学34校が参加した。秋田県立大学も純米吟醸「究(きわむ)」を出展した。林農水大臣,石破地方創生大臣,安倍昭恵首相夫人他も臨席され好評であった。これまで大学発ブランドの日本酒を比較した報告は無かったので調査し読者の参考に資する。
著者
老川 典夫
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.4, pp.189-197, 2015 (Released:2018-04-23)
参考文献数
21
被引用文献数
1 5

近年の分析技術の進歩により,D-アミノ酸は医学,薬学分野において様々な生理機能との関連が明らかとなってきた。また,食品分野においても呈味性や機能性の面から大変注目され,呈味性を改善するための調味料や機能性を訴求する健康食品,美容食品などに利用されている。D-アミノ酸は乳酸菌を始めとする微生物が関与する発酵食品中に広く分布することから,清酒中のD-アミノ酸についても大変興味が持たれるところである。本稿では,清酒に含まれるD-アミノ酸と製造方法の関係や味への影響について解説頂くとともに,その生成機構についても解説頂いた。清酒の多様化という観点からの研究開発に大いに参考となることから,是非ご一読をお勧めしたい。
著者
中島 淳
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.89, no.11, pp.882-888, 1994-11-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
8
被引用文献数
1

排水問題は, 地球環境規模での問題である。醸造等の食品製造業, 特に中小企模のメーカーにとっては切迫している問題である。本稿では, 排水対策の中でも, BOD負荷量低減のための対策について解説していただいた
著者
星 靖子 鈴木 整
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.111, no.3, pp.120-126, 2016 (Released:2018-05-30)
参考文献数
7

アルコールの種類を問わず,スパークリング飲料は場を華やかに変え,気分を爽快にさせてくれる。マイナーだった発泡清酒を一躍注目商品に変えたのが,この「すず音」と言えよう。日本酒らしさを排除しながら日本酒の独自性は守る,固定観念にとらわれない新たな商品開発に必要な姿勢を教えていただいた。
著者
十川 浩
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.85, no.9, pp.588-594, 1990-09-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
48
被引用文献数
2 2

ビールと人類との係り合いの中からビールの機能性を論じるとき, その多くは致酔性に関連したものといえる。本稿では食品の機能性に準じて幅広い見地から解説していただいた。三次機能 (生理活性, 生体調節機能) の解明については, 今後の研究の発展に期待したい。
著者
岸本 宗和 山本 哲楠
出版者
日本醸造協会
巻号頁・発行日
vol.112, no.11, pp.758-764, 2017 (Released:2018-03-23)

Cabernet SauvignonおよびMerlotの新梢伸長期に摘心と花穂の切除を行って得られる副梢果房について,果実品質および副梢果房を用いた赤ワインの成分組成について検討した。Cabernet SauvignonおよびMerlotの摘心摘房処理区の開花,着色開始,収穫の時期は対照区と比較して1ヶ月以上遅くなった。摘心摘房処理区の着色開始から収穫までの最高および最低気温の平均は対照区と比較して5.2-8.0℃低くなり,冷涼な秋にブドウの成熟を移行できることが示された。摘心摘房処理区の副梢果房は,対照区と比較して果皮アントシアニン含有量が2倍以上多く含まれ,醸造されたワインの色調が濃かった。副梢果房を用いる本栽培方法は,温暖化が進む我が国のブドウ栽培にとって温暖化対応技術の一つとして期待される。
著者
宇都宮 仁 木田 信 牧 則光 磯谷 敦子 岩田 博 西谷 尚道
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.101, no.6, pp.446-457, 2006
被引用文献数
4

1.ヘッドスペースSPME法による焼酎及びホワイトスピリッツの中高沸点香気成分分析条件を検討した。高級アルコールや脂肪酸エチルエステル等の共通する成分に加えて, 甘藷焼酎にはテルペン類及びサリチル酸メチル, 泡盛には1-オクテン-3-オールといった特徴のある成分が検出され, 本法は中高沸点成分の分析に有用であった。<BR>2.一般成分 (pH, 酸度, TBA価), 酵素法で測定したアセトアルデヒド及び酢酸, 直接ヘッドスペース法で測定した7成分, ヘッドスペースSPME法で測定した20成分を合わせた32成分を用いて, 本格焼酎 (28), 花酒 (1), 甲類 (3), 甲乙混和 (2), ウオッカ (3), ラム (3), アラック (1), テキーラ (1), ピンガ (1) のクラスター分析を行ったところ, 酒粕焼酎2点を除き, (1) 本格焼酎, (2) 甲類・甲乙混和・ウオッカ・ラム, (3) その他のグループに類別された。<BR>3.ステップワイズ変数選択を行い, 酢酸, 酢酸エチル, イソアミルアルコール, 1-ドデカノールを用いて「本格焼酎 (28)」,「甲類・甲乙混和・ウオツカ・ラム (11)」,「中国白酒 (4)」のカテゴリーの判別分析を行うと誤判定1で判別が可能であった。<BR>4.本格焼酎 (28) 間では, メタノール, 1-プロパノール, イソブタノール, カプリル酸エチルを用いて, 誤判定1で甘藷, 泡盛, 米, 麦, ソバ, 黒糖, 酒粕の判別が可能であった。<BR>5.本格焼酎の特徴は, 高級アルコール及び低沸点のエステルが多いことであったが, 中国白酒より酢酸, 酢酸エチル, アセトアルデヒドが少なく, 穏やかな香味を持つと考えられた。
著者
鈴木 崇 横瀬 正英
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.102, no.8, pp.578-584, 2007

日本ではスピリッツという酒類の概念は一般的には, ウオッカやジンなどを指すが, 欧米では蒸留酒一般を, 広くスピリッツと呼ぶ場合が多い。世界各国の酒類制度は, それぞれの国の歴史や文化に影響を受けながら変遷して来ており, 言わば酒類制度は, その国の酒類に関する歴史, 文化の裏返しであるとも言える。著者らは, カナダのケベック州のスピリッツを中心にした酒類制度を, 行政, 酒税制度, 組織, 許認可, 歴史など, 多面的な角度から調査した。現在の欧米の酒類制度と日本の酒類制度を文化や歴史を踏まえて比較するうえで, 参考になる調査となっている。
著者
小野 博通
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.105, no.8, pp.522-529, 2010-08-15

一昨年発覚した事故米の不正流通問題や酒米の差し替え事件などにより,清酒,焼酎に対して消費者に少なからぬ不安や不信感を与えた。このような事件の再発を防止するため,昨年公布された米トレーサビリティ法がいよいよ施行される。米の取引等に係る記録の作成保存関係が本年10月1日から,また来年7月1日からは消費者に対する米に関する産地情報の伝達が施行されることとなる。<BR>その施行に先立ち,具体的な事例なども含めて,トレーサビリティ法の詳細について解説をお願いした。
著者
中村 圭寛
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.86, no.3, pp.200-207, 1991

偶然に発見されたアスパルテームは甘味料として, アメリカで1981年, 日本で1983年に使用が認可された。甘味の質は砂糖によく似ており, 砂糖の約200倍の甘味度をもち, 果実7レーバー増強の効果をもつ。蛋白質の成分からできているダイエット甘味料として, 欧米及び日本では大きな注目を集めている。