著者
青島 均
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.106, no.1, pp.19-27, 2011 (Released:2016-06-13)
参考文献数
27
被引用文献数
1 1

茶やコーヒーは,抗酸化活性を持つカテキンあるいはクロロゲン酸などのポリフェノールを含むため,健康に良いといわれている。しかし,ポリフェノールは,酸素と接すると過酸化水素を生成してしまう。醤油や味噌は,緑茶に加えると過酸化水素の生成を抑制した。さらに魚醤は,高温の下でも過酸化水素を分解した。魚醤による反応は,魚醤に含まれる耐熱性のカタラーゼによるものと推定された。したがって,魚醤,醤油や味噌は,食品中での有害な過酸化水素生成を抑制することにより,健康に役立つ可能性がある。
著者
髙峯 和則 吉﨑 由美子 島田 翔吾 髙屋 総一郎 玉置 尚徳 伊藤 清 鮫島 吉廣
出版者
日本醸造協会
巻号頁・発行日
vol.106, no.1, pp.50-57, 2011 (Released:2012-12-06)

芋焼酎の中にローズオキサイドはシス体およびトランス体が検出され,それぞれ0.8~4.6μg/Lおよび0.3~l.9μg/Lであった。ローズオキサイドの閾値は25%アルコールでは0.35μg/L,芋焼酎では14μg/Lであった。閾値での評価は「甘い」, 「華やか」, 「バラ様」であった。ローズオキサイドは一次もろみとサツマイモからは検出されなかった。モデルもろみ(pH4.2,アルコール15%)を30℃で5日間加温するとシトロネロールからローズオキサイドへ変換された。しかしネロール,ゲラニオール,リナロールおよびα-テルピネオールからは変換されなかった。シトロネロールからローズオキサイドへの変換は蒸留工程およびモデルもろみをpH3.5以下にすることで促進された。麹菌と酵母によるシトロネロールからローズオキサイドへの変換は確認されなかった。シトロネロールはゲラニオールを前駆体として酵母により変換されたが,麹は変換に関与しなかった。以上のことから,ゲラニオールから酵母の微生物的変換作用により生成したシトロネロールが発酵過程で酸触媒による化学的変換作用によりローズオキサイドに変換し, 蒸留工程で変換が促進されることが明らかになった。
著者
恩田 匠
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.109, no.3, pp.168-180, 2014 (Released:2018-03-06)
参考文献数
4
被引用文献数
5 8

シャンパンの製造には,ベースのワインをブレンドして各製品に相応しい酒質を造り上げるアサンブラージュが重要なポイントの一つであると言われる。では,実際にはどのようにして毎年ほぼ同じ酒質のノンヴィンテージ・シャンパンが造られるのだろう? アサンブラージュの方法は永く各生産者の秘密とされていたが,シャンパーニュ委員会初の外国人研修生となった筆者に,その秘密を解き明かしていただいた。
著者
大久保 洋子
出版者
日本醸造協会
巻号頁・発行日
vol.112, no.3, pp.161-166, 2017 (Released:2017-06-26)
著者
和佐野 成亮 服部 良太
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.109, no.4, pp.212-218, 2014

レストランなどで食材の誤表示問題が発生し,食品の表示に再び世間の注目が集まったのは記憶に新しい。酒類についても原材料の適正表示は法令遵守の観点のみならず,商品に対する消費者の信頼性確保のためにも重要な事項であり,酒類業者は自社が販売している製品の真正性を確保する必要がある。本稿では酒類の必須成分であるエタノールの安定同位体を新たに開発した方法で分析した酒類原料の期限推定技術について解説して頂いたので,参考にして頂きたい。
著者
飯島 隆
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.113, no.10, pp.588-612, 2018-10

経済連携協定(Economic Partnership Agreement: EPA)とは,関税削減といった自由貿易協定(Free Trade Agreement: FTA)に係る取極に加えて,非関税障壁の除去,知的財産や投資,協力などといった様々な分野に係る連携取極を二国間(バイ)や複数国間(プルリ)で締結するものである。世界貿易機関(World Trade Organization: WTO)による多国間(マルチ)自由貿易交渉が停滞する中,それを補完する観点から,WTO協定内の関税及び貿易に関する一般協定(General Agreement on Tariff and Trade: GATT)第24条により,WTOの無差別原則と矛盾しないものとして許容されているEPAが,世界各国で積極的に活用されている。我が国においても2002年11月に発効した日シンガポール・EPAを皮切りに,2018年6月末現在で25ものEPA交渉を行い,うち15ものEPAが既に発効している。EPAは,酒類を取り巻く環境に対しても様々な影響を与える。日チリ・EPAは,日本市場における輸入ワインの勢力図を塗り替えたというだけでなく,日本におけるワイン飲用の習慣を一層浸透させることに貢献したと言えるだろう。また,2005年4月に発効した日メキシコ・EPAでは蒸留酒の地理的表示(Geographical Indication: GI)の相互保護が実現したほか,環太平洋パートナーシップ協定(Trans-Pacific Strategic Partnership Agreement: TPP)では,それに付随した交渉において米国が蒸留酒の容器容量規制撤廃に向けた手続き開始に合意するなど,EPAを通じ,日本産酒類の輸出環境に資する成果が様々な形で得られている。とりわけ,欧州連合(European Union: EU)とのEPAである日EU・EPAは,2013年4月に交渉を開始したが,EUが世界最大の酒類輸出経済圏であること,また歴史的・文化的背景から酒類に係る独自の哲学を有し,またそれに係る様々な規制・制度が古くから存在していることから,酒類環境に多大な影響を与えるものになることが交渉開始以前から想定されていた。日EU・EPAは2017年7月6日に大枠合意(agreement in principle),同年12月8日に交渉妥結(finalisation of the negotiations),2018年7月17に署名に至ったが,事実,酒類に関し,過去のEPAとは比較にならないほど様々かつ大きな影響を与える事項が合意された。今回,酒類にかかる合意内容について,基本的事項から技術的事項まで幅広く含めて解説する。
著者
鰐川 彰
出版者
日本醸造協会
巻号頁・発行日
vol.107, no.8, pp.559-570, 2012 (Released:2013-10-08)
著者
輿水 精一
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.90, no.3, pp.162-166, 1995

ウイスキーを水で薄めて飲む飲酒スタイルは日本独自のものであり, アルコール代謝能力の弱い日本人が高アルコール飲料を飲むために考えだした飲酒法と言える。これまでは飲む直前に水で割るため混濁などは問題にならなかったが, いざ, 水割りの状態で商品化すると, もろもろの問題が派生してくることがわかった。水割りウイスキーの開発に携わられた筆者にその経緯を解説していただいた。新商品が新たな需要を掘り起こし, ウイスキー市場の活性化に役立つことを期待したい。
著者
山田 潤 松田 秀喜
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.104, no.11, pp.866-873, 2009-11-15
参考文献数
26
被引用文献数
2 3

かつお節は古来より使用されてきた日本の伝統的な調味料である。培乾した荒節にカビ付けした枯節は発酵食品といえる。かつお節のDPPHラジカル消去活性は,100℃,30分間の抽出時に最も強い値を示し,鰹だしの抗酸化活性成分として,クレアチニンとフェノール系の2-methoxy-4-methyl-phenol,4-ethyl-2-methoxy-phenolを同定し,さらに鰹だしにより加熱調理時のイワシの酸化が抑制されることを明らかにしたので解説していただいた。鰹だしは醤油加工品であるめんつゆやだし入り味噌などに使用されており,これらの製品においても抗酸化作用が期待される。
著者
吉田 元
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.102, no.11, pp.823-828, 2007-11-15
参考文献数
26
被引用文献数
4

現在清酒は, 台湾, 韓国, 中国, ベトナム, オーストラリア, カナダ, 米国, ブラジルなど多くの国で造られている。本稿によると, 20世紀初めからの台湾における清酒醸造は, これらの先駆けであり四季醸造技術や理研酒など様々な試みが行われている。<BR>先人達の努力と経験に学ぶところ, 日本と台湾の深いつながりについて考えさせられるところが多い技術史である。
著者
山本 奈美 戸塚 昭
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.85, no.5, pp.341-344, 1990-05-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
6
被引用文献数
5 5

ノーズ・クリップ法でワインの官能評価をおこない, 赤ワインは味と香りの両方に白やロゼと判別される特徴を持つこと, ワインのブドウ品種の判別や熟度の評価には味よりも香りの方が重量な要因であることが示され, ワインの官能評価における香りの重要性が確認された。終わりに, 審査にご協力いただいたパネリスト各位に, 深謝致します。
著者
佐藤 和夫 西村 顕 小林 美希 進藤 斉 高橋 康次郎
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.108, no.2, pp.122-129, 2013 (Released:2017-12-28)
参考文献数
49
被引用文献数
1 1

1.醪の生成アルコールを17%以下とした液化仕込みによる清酒製造において,酒粕中の酵母を再利用した高密度酵母による繰り返し仕込みを長期間継続して行うことができ,平均で約3日の醪期間の短縮効果がみられた。2.繰り返し仕込みの醪では,酵母の増殖量は少なかったことから,何らかの増殖阻害現象が生じたと考えられた。3.醪の圧搾は粕中の酵母の増殖能や発酵能に影響しなかった。また,酵母のメチレンブルー染色率は10%以下を維持し,生酸菌や野生酵母による顕著な汚染は生じなかった。4.繰り返し仕込み回数が多くなると製成酒のアミノ酸度や着色量が増大して品質評価上の問題が生じたことから,実現可能な繰り返し仕込み回数は数回程度と考えられた。
著者
児玉 貴志
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.106, no.6, pp.342-352, 2011 (Released:2016-12-12)
参考文献数
39

遺伝子組換え技術を利用した農作物は日本ではほとんど栽培されていないが,諸外国では除草剤耐性,害虫抵抗性,耐病性,保存性などの性質を遺伝子組換え技術によって増強した農作物が数多く栽培されており,日本にも輸入されている。日本国内で遺伝子組換え農作物を流通する際には法律に基づいて表示をすることが必要であるが,そのためには遺伝子組換え農作物を検出する技術の確立が極めて重要である。本稿では,PCRを用いた遺伝子組換え農作物の検出技術について詳しく解説していただいた。
著者
福田 央 韓 錦順
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.113, no.2, pp.105-114, 2018-02

輸入されているカシャーサとラム酒の低沸点香気成分及び中高沸点香気成分84成分を分析・比較した。カシャーサとカリブ海諸国及びインド洋諸国のラム酒では34成分に有意差が認められた。ステップワイズ法によりカシャーサ及びカリブ海諸国及びインド洋諸国のラム酒の判別分析を試みたところ,β-フェネチルアルコール,コハク酸ジエチル及びチオ酢酸S-メチルにより分類され,33点中31点が適切に判別された。判別精度を検証したところ90.9%の精度であった。また,カシャーサと日本産のラム酒では19成分に有意差が認められ,ステップワイズ法により判別分析を試みたところ,シトロネロール及びフルフラールにより適切に分類され,判別精度を検証したところ100%の精度であった。
著者
小崎 道雄 タマン ジョティ 片岡 二郎 山中 茂 吉田 集而
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.95, no.2, pp.115-122, 2000
被引用文献数
11

シッキムは, 国境をネパール, ブータンおよび中国に接するインド22番目の州であるが, 食文化は中国やネパールの影響を強く受けている。著者らは, この周辺地域の発酵食品のル-ツを調査研究しており, 本稿においてはシッキムにおける酒類とそれに関わる微生物相について, 解説していただいた。
著者
山根 善治 武宮 重人 川瀬 直樹 佐伯 宏
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.92, no.3, pp.224-227, 1997-03-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
8
被引用文献数
3 5

清酒中での脂肪酸の閾値を, エタノール濃度15%(v/v) のホワイトリカーをべースにして測定した結果, 酢酸39.3ppm, 酪酸2.7ppm, カプロン酸2.3ppm, カプリル酸2.4ppm, カプリン酸3.1ppmとなった。また, 酢酸, 酪酸は酸臭, カプロン酸, カプリル酸, カプリン酸は油臭と感じる傾向にあることが分かった。清酒に脂肪酸を添加したときの官能評価を4種類の清酒をべ一スにして行った結果, 酢酸, カプリル酸, 酪酸, カプロン酸, カプリン酸の順に評価が悪くなることが分かった。酢酸を60ppm添加しても無添加のものと有意な差はなく, 官能評価には影響しないことが分かった。逆に酢酸以外は4ppm又は8ppm添加すると無添加のものと有為な差が生じ, 官能評価にマイナスの影響を与えることが分かった。酢酸, 酪酸は酸臭, カプロン酸, カプリル酸, カプリン酸では油臭, ほこり臭, ろ過臭, 袋香という指摘が多かった。最後になりましたが, 官能評価にご協力いただきました各審査員に深謝します。

1 0 0 0 OA 味噌の機能性

著者
海老根 英雄
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.85, no.2, pp.70-75, 1990-02-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
24
被引用文献数
3 3

原爆を投下された長崎で, 放射能の害をわかめの味噌汁が防いだ, という有名な話がある。これらは食品の機能性という点からみると, 一番注目されている3次機能ということになる。本稿では, 味噌の研究の第一人者である著者に, 多くの研究例をあげて解説していただいた。
著者
佐々木 定
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.101, no.4, pp.198-206, 2006-04-15
参考文献数
17
被引用文献数
1

長期間低迷してきた日本酒の需要は, 最近になって回復の兆しが見えつつある。この機会を捉え需要回復へつなげるため, 消費者ニーズに合った味わいの日本酒を提供する必要性を説き, その具体策として, 全国新酒鑑評会の在り方, 美味しいと思われるような旨味のあるお酒の提供などについて述べられている。また, わが国の総人口の減少, 高齢社会など, 人口問題を要因とする市場構造の急速な変化への対応についても提言されている。
著者
大西 範幸
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.86, no.3, pp.161-171, 1991-03-15 (Released:2011-09-20)

最近ではコンピューダがワープロと電卓の延長として日常使われているが, この箱に電話線を一つ付けると今までにない多くの世界がパソコン通信で広がる。今回は兵庫県西宮市のパソコンネット「情報倉庫」西宮についての紹介を兼ね, パソコン通信やデータベースの基本的な解説と「情報倉庫」内の酒のデータベースののぞき方から実際の使用方等について解説していただいた。