著者
長山 格 赤松 則男
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.80, no.12, pp.3127-3138, 1997-12-25

文字認識において, 文字輪郭はしばしば用いられる重要な特徴であり, その抽出には輪郭の追跡処理や微分オペレータ等の n×n マスクによるフィルタ処埋が用いられる. しかし, これらの処理には多くの演算が必要であり, 特に大容量画像や大量の画像を処理する場合は処理時間が長くなる要因となる. これに対して本論文では, フィルタ演算を用いることなく高速に文字画像の輪郭を抽出する手法 (DTB; Double-Threshold Binarization) を提案する. すなわち, 濃淡画像として得られる文字画像の濃度こう配に注目し, 異なる二つのしきい値による2値化処埋と XOR 演算により文字輪郭を簡単に抽出することができる. 二つのしきい値を決定する方法としてニューラルネットワークを応用する. DTBの実際的な評価を行うため, ノイズが混在する手書き郵便番号画像に適用し, 輪郭追跡法および微分オペレータ, Sobel オペレータ等の従来用いられている輪郭抽出フィルタと比較検討した. その結果, 処理の高速性, ノイズに対する頑健性, および抽出された文字輪郭の品質などの点において DTB の特長が明らかになった. 更に, より高速な処理を実現するために提案手法の高速化アルゴリズムを示し, 従来手法と比較して最大1/20以下の処理時間で文字輪郭の抽出が可能であることを示す.
著者
中前 栄八郎 西田 友是 金田 和文 多田村 克己
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.76, no.8, pp.1515-1527, 1993-08-25
被引用文献数
5

コンピュータグラフィックスは,その誕生から30年を過ぎ,その適用範囲は極めて多岐にわたり,90年代,完全に応用の時代に入った.ここでは,ホトリアリズムの中でも大気や水など,3次元空間に分布した気体や液体およびその中の漂遊微粒子(ちり,煙,霞,混濁微粒子等)の光学現象のモデル化によるホトリアリスティックな画像生成手法について議論する.すなわち,光源として,強い方向性を与えることのできる点光源,太陽直射光,大気の散乱による2次光源としての天空光を対象とし,被照体としては,一般の固体のほかに,上述の空気分子,エーロゾル,水分子,混濁粒子による光の散乱,吸収および水面における反射,屈折を考慮した光学モデルを考える.このモデルによって,スポットライト下の煙や,ヘッドライトによる光束,晴天,曇天下の風景,霧の効果,水質による水の色の変化,水中照明,宇宙から見た地球など,ホトリアリスティックな画像生成が可能になることを示す.
著者
九津見 洋 内藤 榮一 荒木 昭一 江村 里志 新居 薫治
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.84, no.6, pp.1149-1157, 2001-06-01
被引用文献数
17

インターネット利用初心者をメインターゲットとしたホームページ情報を簡単に入手するためのツールとして, ホームページの閲覧履歴からユーザの嗜好を学習し, その嗜好にあった新たなホームページを推薦するソフトウェア"ウェブナビゲーター"を開発したので報告する.ユーザ嗜好の学習では, 興味の変化に対する即応性と, 観測データに含まれるノイズに左右されない頑健性が重要である.本ソフトにおいては, 過去のユーザプロファイルと現在閲覧したホームページの特徴ベクトルを合成するパラメータを設定しており, よりユーザの興味の推移に合ったパラメータ値の決定が課題である.ここでは, ユーザが「興味がある」または「興味がない」と判定した複数のホームページを用いて, この割合のパラメータを学習により求める.このパラメータの時間的変化を観察することにより, ユーザの興味の推移を調べることができる.本論文では, 様々なユーザの興味の推移を実験的に調べることにより, 本ソフトによるホームページ推薦の妥当性を検証した結果について述べる.
著者
関本 信博 西村 拓一 高橋 裕信 岡 隆一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.84, no.5, pp.747-757, 2001-05-01
被引用文献数
8

動画像や音声などの大規模な時系列データベースの中から、逐次入力される時系列クエリーと類似した時系列区間を検出する方式、「Rutic法」を提案する。従来、逐次入力される時系列クエリーを扱う方式としてRIFCDPやIPMがあったが、これらは比較的計算量が多く、検索対象のデータベースが大きくなった場合のリアルタイム検索に不向きであった。本方式は逐次入力される時系列クエリーに対してフレーム入力ごとに検索出力を可能とする。また、本方式は計算量が少ないため、リアルタイムでのスポッティング検索を実現する。本論文では、Rutic法のアルゴリズムを示し、動画像検索に用いた実験を行い他方式と比較することでその有効性を検証する。
著者
村上 仁一 水澤 紀子 東田 正信
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 = The transactions of the Institute of Electronics, Information and Communication Engineers. D-II (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.85, no.7, pp.1157-1165, 2002-07-01
被引用文献数
15

録音編集方式による音声合成において,可変部の単語件数が多い場合,必要な音声をすべて同一話者の音声で録音するのは困難である.本論文では,必要な単語の一部を同一話者の声で録音し,その音声波形から切り出した音節波形を信号処理をしないで接続することで,録音していない単語音声を合成する方法を検討した.本方式は,各音節の韻律的な情報として単語のモーラ数と音節の単語内モーラ位置を使用し,ピッチ周波数やパワーの定量的な分析や予測を行わないのが特徴である.日本の地名を合成対象として必要録音件数の調査を行ったところ,1万7千件の録音音声から4,5,6モーラ語の地名10万5千件が合成できることがわかった.また,地名を合成して聴覚実験を行ったところ,合成音声の品質も十分実用的なものであることがわかった.
著者
佐賀 聡人 牧野 宏美 佐々木 淳一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.77, no.8, pp.1620-1629, 1994-08-25
被引用文献数
23

本論文では,ペン入力システムにおいて手書きによる直接的な図形入力ヒューマンインタフェースを実現することを目的として,ファジー理論を応用したオンライン手書き曲線同定法「ファジースプライン曲線同定法(Fuzzy Spline Curve Identifier,FSCI)」を提案している.FSCIは,手書きされた曲線の形状のみならずその書かれ方の丁寧さ加減をもファジー情報として利用することにより,その曲線が「線分」,「円」,「円孤」,「だ円」,「だ円孤」,「閉自由曲線」,「開自由曲線」の7種類の基本的な曲線プリミティブのいずれを意図して書かれたものかを推論し,かつその形状パラメータを同定する.書き手が本手法の性質を利用することにより,7種類の基本曲線プリミティブの中から自分の意図する曲線を自然な描画動作表現によって選択し,同時にその形状パラメータを直接的にシステムへ入力することが可能となる.FSCIは通常の線図形の構成要素として必要最少限の曲線プリミティブの同定を実現しており,その意味でペン入力による直接的な図形入力ヒューマンインタフェースの汎用的な要素技術と位置づけられる.
著者
石寺 永記 荒井 祐之 土屋 雅彦 宮内 裕子 高橋 信一 栗田 正一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.873-880, 1993-04-25
被引用文献数
16

我々人間の視覚系は,点パターンのように離散的な対象でも仮想線を知覚でき,色や明るさの段差がなくてもそこに明りょうな主観的輪郭を知覚することがある.これは補間問題と考えることができる.そこで,本論文では生理学的データに基礎をおく階層的視覚情報処理モデルを提案し,仮想線と主観的輪郭の知覚といった補間問題に応用する.主観的輪郭を形成するためには,実際の輪郭,主観的輪郭の通る点,そしてその輪郭の伸びていく方向を決定することが重要であり,本モデルではこれらの処理を並列処理で実現する.このモデルは2種類のSimpleセル(S typeとL type)の出力から,大域的処理により輪郭の検出と点パターンの補間を行うComplexセルと,主観的輪郭が通ると考えられるエッジの端点や曲率の高い点を検出するHypercomplexセルをモデル化する.この処理はすべて並列処理で行われる.またこれらの情報が伝達されるときに重み付けをすることによって主観的輪郭の伸びる方向を決定する.こうした階層的な処理によって得られた情報を統合することによって実際のエッジと主観的輪郭が同様に検出されるようなモデルを構成した.
著者
岡 一博 松井 甲子雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.80, no.5, pp.1186-1191, 1997-05-25
被引用文献数
23 5

画像データの著作権保護の一手段として署名情報を画像内に密かに埋め込んでおく方法がある. 本論文では, その埋込み位置の決定に関数を導入し, ブロックごとに埋込みを施すことを提案する. まず, 署名したい原画像と埋め込みたい署名データを準備する. 埋め込む署名データはサイズが原画像の縦横各1/3である2値または多値画像とする. ここで原画像を3×3画素のブロックに分割し, 署名データ1画素に対し原画像の1ブロックを対応させる. 更に, 埋込み関数を用いて埋込み位置を一意に決定する. 次に, 選択されたビットプレーン上の画像情報に依存して埋込みを施す. このとき, 画質維持と署名の強度保持のため, 画素値の補正を行う. その結果, 画質の劣化が少なく攻撃にも強い署名法となることを示す.
著者
西川 俊 高橋 秀知 小林 正幸 石原 保志 柴田 邦博
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.78, no.11, pp.1589-1597, 1995-11-25
被引用文献数
31

講演,講義などにおいて,健常者の話をリアルタイムで(即時に)ほとんど正確かつ忠実に文字に変換,表示し,聴覚障害者に伝える新しい音声情報の伝達手段として,リアルタイム字幕表示システム(RSVシステム)の研究開発に成功した.従来,聴覚障害者への音声情報の伝達手段は,口語(読唇術)と手話通訳と要約筆記しかなく,どの方法も大きな欠陥を持っていた.最近,コンピュータを利用したリアルタイム文字化システムの開発が試みられているが,多くの問題がある.RSVシステムでは,1991年に我々の1人(柴田)が開発した日本語高速入力用ステノワードキーボードを大幅に改良し,パソコンに接続する.そして,話者の話を高速入力,かな漢字変換し,高速字幕合成装置に送る.これを字幕として話者などを映したビデオ映像に合成し,リアルタイムで表示できる.このシステムの大きな特徴は,先にすべての読みを表示し,その後でかな漢字混じり文を表示することにより,聴覚障害者の中でも特に言語力の低い者に対する情報伝達を配慮したことである.そして,視聴実験により,この読みの効果を検証し,報告する.
著者
相澤 清晴 石島 健一郎 椎名 誠
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 = The transactions of the Institute of Electronics, Information and Communication Engineers. D-II (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.86, no.6, pp.807-815, 2003-06-01
参考文献数
14
被引用文献数
42

筆者らは,センシングデバイスと情報処理機器の小型化が進み,ウェアラブルなビデオ機器により個人の長期間の体験映像をそのまま映像として記録することが可能になると考えている.しかしながら,長期間の体験映像を取得記録できたとしても,その大量な映像データ中から個人にとって重要な部分をどのように選び出して見るかという問題が残る.個人にとって興味ある映像など重要な部分を選び出すためには,その個人の主観を反映させて映像を要約する手法が必要になる.本論文では,ウェアラブル機器で記録した個人体験映像の要約と構造化について論じ,主観を反映させた効率の良い映像要約のために,映像と同期記録した脳波による実験を示し,精度良く興味映像を抽出し得ることを示す.
著者
徳田 恵一 益子 貴史 宮崎 昇 小林 隆夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.83, no.7, pp.1579-1589, 2000-07-25
被引用文献数
65

HMM(hidden Markov model)による時系列の統計的モデル化手法は, 特に音声認識における音声スペクトル列の統計的モデル化手法として広く成功を収めている.HMMは, 離散的なシンボル列を扱う離散分布HMMと、連続値をもったベクトル列を扱う連続分布HMMとに大別されるが, 実際の観測系列には, 離散的なシンボルと連続値が時間的に混在したものがあり, 従来のHMMでこのような観測系列をそのまま取り扱うことはできない.音声のピッチパターンは, このような系列の例である.この問題を解決するため, 本論文では, 可変次元の多空間上における確率分布に基づいたHMMを新たに定義し, 拡張されたHMMのモデルパラメータの再推定アルゴリズムを与えている.拡張されたHMMは, 離散分布HMM, 混合連続分布HMMを特別な場合として含み, 更に離散シンボルと連続値が時間的に混合した観測系列をモデル化することができる.
著者
森 大樹 内海 章 大谷 淳 谷内田 正彦 中津 良平
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.84, no.1, pp.102-110, 2001-01-01
被引用文献数
27

非同期多視点画像を用いて人物追跡を行う手法を提案する.提案手法では, 多視点で非同期に得られる観測情報をカルマンフィルタにより統合し人物追跡を効率的に行う.試作システムは, 非同期に動作して各視点の画像を処理する複数の観測ノードと人物の追跡を行う追跡ノード, 発見を行う発見ノードからなる.各観測ノードは追跡ノードから送られる予測観測値に基づいて画像特徴と追跡モデルの対応付けを行う.モデルに対応づけられた画像特徴は追跡ノードに送られ, 追跡モデルの更新が行われる.対応づけられない画像特徴は発見ノードに送られ, 新規人物の発見に用いられる.本手法により, 同期型システムに見られる視点数の増加による処理効率の低下, 観測間の冗長性の増大といった問題の発生を抑制しながら, 大規模な追跡システムの構築が可能になる.実画像を用いた実験により, 本手法の有効性を示す.
著者
竹村 安弘 多田羅 勝義 中島 真人
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.88, no.10, pp.2152-2162, 2005-10-01
被引用文献数
6

筋ジストロフィー患者らの人工呼吸中の神経筋疾患患者における人工呼吸回路不全の早期発見を目的として, 呼吸運動モニタ装置を用いた異常検出方法を提案し, その有効性を検証した. 使用した呼吸運動モニタ装置は非接触の三次元視覚センサを応用したもので, 長期間のモニタリングが必要な患者の使用に適している. 異常状態のデータ取得は被検者に大きな負担をかけるため, 正常状態と異常状態の識別領域を形成するための十分なデータが取得できないことから, 判定時点直前の一定期間の状態の生起確率をそれ以前の確率分布から推測し, それが設定された誤報率を下回ったときに異常と判定する方法を考案し, 更に過去の状態に関係なく呼吸停止を判定する機能を組み合わせて検出漏れを防ぐ仕組みとした. 被検者7名による延べ12回の終夜呼吸運動波形測定データにおいて, 本方法による検出テストを行ったところ, 患者の呼吸状態に合わせて60秒から600秒で異常検出を行うとともに, 誤報は3回に抑えられた. これらの結果から, 本方法は人工呼吸回路不全の発見に有効であることが確認された.
著者
後藤 真孝
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.84, no.1, pp.12-22, 2001-01-01
被引用文献数
40

本論文では, 複数の楽器音が混在したモノラルの音楽音響信号に対して, メロディーとベースの音高(基本周波数)を推定する手法を提案する.従来の音高推定手法や音源分離手法は, たかだか三つの音の混合音しか扱うことができず, 市販のCDによるジャズやポピュラー音楽の音響信号には有効に機能しなかった.本手法は, 混合音下で安定に抽出できない基本周波数成分には依存せず, 意図的に制限した周波数帯域(メロディーは中高域, ベースは低域)にある高調波成分が支持する最も優勢な音高を求める.その際, 音源数を仮定せずにあらゆる音高の高調波構造が混在しているとみなして混合音をモデル化し, EM(Expectation-Maximization)アルゴリズムにより各高調波構造が相対的にどれくらい優勢かを推定する.更に, マルチエージェントモデルを導入し, 各エージェントが音高の時間的な軌跡を追跡することで, 最も優勢で安定な音高の軌跡を得ることができる.本手法に基づくシステムを実装して実験した結果, 市販のCDからサンプリングした実世界の音響信号に対し, メロディーとベースの音高をリアルタイムに推定できることを確認した.
著者
小杉 信
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.77, no.4, pp.672-681, 1994-04-25
被引用文献数
51

顔画像認識の全自動化のためには,画面内の顔の検出から認識まで一貫した処理が必要である.しかし,従来のように,形状特徴を用いた検出や認識を,柔物体の典型である顔に適用することは非常に困難である.そこで,本論文では顔画像による個人識別への適用を前提とし,濃淡情報のみを用いてCoarse-to-fine処理により画面内の顔画像を探索し,これを認識に適用する.まず人間の頭部を連続的な多重解像度モザイクを用いて画面内から見つけ出す.更にモザイクにより頭部領域内から顔の中心部を検出し,目や鼻部分のヒストグラムにより正確な位置を決定する.この探索アルゴリズムを動画から得た100人に適用した結果,髪により目が隠されているものなどを除く97%の探索・位置決めに成功した.更に,探索成功後の結果を認識に適用した結果,99%の認識率を得た.また,本手法は,画面内の任意の位置にある大きさの顔画像を探し出すことが可能であり,加えて,背景は不均一でもよいこと,カラーは不要であることなど,従来の入力画像に対する制約を大きく低減し得たものである.
著者
保坂 良資
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.86, no.4, pp.571-578, 2003-04-01
被引用文献数
3

近年我が国では,患者環境での医療事故が増加している.その多くは,看護師の過誤とされている.しかし中には,物品の管理が適正であれば未然に防ぐことができた事例もある.患者環境では,患者を中心に各医用物品は従属的な関係にある.この従属性が満たされない場合,前述の事故が発生する.適正な患者環境モニタシステムが実現すれば,事故を予防することができる.ここでは,長波帯RFIDをタグとして利用することで,患者環境のモニタを可能とする方法について提案する.この方法では,患者及びそれに従属するすべての医用物品にタグを貼付する.これを,随時ワイヤレスでモニタすることで,他の患者に関連した物品が混在することを予防できる.また本システムではタグが自動的に認識されるため,その運用に際して,看護師らの業務負荷の増大は少ない.本論文では,改良を施した長波帯RFIDタグの認識特性を,現場を模した環境で検証し,実現可能性を確認した.
著者
志久 修 三嶋 博文 姉川 正紀 中村 彰
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.76, no.11, pp.2452-2455, 1993-11-25

本論文では平行線分の線幅に応じた直径をもつ円形テンプレートと画像との適合度(黒画素密度)を特徴量とした,平行線分の中心線抽出法を提案する.また,この方法を国土地理院発行の1/25,000地形図からの平行線分の抽出に適用した結果について述べる.
著者
中村 善一 豊田 順一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.510-518, 1994-03-25
被引用文献数
12

筆跡から個人性を機械的,客観的に抽出することは,筆者認識をコンピュータで自動的に行うための基礎的な課題である.本論文では,オンラインで入力された筆跡に現れる個人性を.書写技能に基づく特性により抽出することを提案する.筆跡に個人性が現れるのは,各個人が習得している書写技能に個人差があるためと考え,書写技能に基づいて機械的に抽出可能な特性値を定義した.これら特性値が個人性を表すかどうかを評価するために,4人の筆者が「チキュウ」という文字をタブレット上の一定枠内に筆記としたサンプル各々50個に対して特性値を抽出し,各特性値ごとに筆者4水準の一元配置分散分析を行った.その結果,230個の特性値のうち223個が有意水準5%で有意となり,個人性を表すことが確認できた.更に,特性値の個人内でのばらつき,特性値間の相関関係を変異係数(標準偏差/平均)と相関係数を求めることにより明らかにした.また,定義した特性値を用いた筆者認識の可能性を検討するために,同じサンプルについて識別実験と照合実験を行った.その結果,識別率100%,誤棄却率,誤照合率はともに0%であった.
著者
尾形 利文 牧野 秀夫 石井 郁夫 中静 真
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.80, no.11, pp.3101-3107, 1997-11-25
被引用文献数
13

視覚障害者が屋内を単独歩行するための位置検出・案内方法について検討し, 実際に位置案内装置を開発して動作実験を行った. 具体的には, 屋内位置情報提供手段としてバーコードに着目し, 更に公共の建物内で利用することを考慮して, 通常我々の目には見えない非可視型バーコードを用いた. 位置検出・案内装置としてはCCDカメラ, パーソナルコンピュータおよび音声合成装置を用いて, 画像処理によるバーコード標識の検出と音声による案内を行った. 建物内での目的地誘導実験では, 作成した位置データファイルから目的地までの経路を自動探索し, 経路移動中に検出された誘導情報を音声により案内した. 大学内廊下で行った動作実験では, 移動速度3km/hの場合, 検出距離0.2〜1m, バーコード長240mm以上の条件下で位置情報を正確に取得し, 音声案内可能であることを確認した. 更に, 誘導実験では, 移動中にバーコード標識を検出し誘導情報の音声案内を行いながら目的地までの誘導が可能であった.
著者
牧野 秀夫 森下 文仁 阿部 好夫 山宮 士郎 長谷川 勝 石井 郁夫 中静 真
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.80, no.11, pp.3094-3100, 1997-11-25
被引用文献数
12

3次元物体の実時間音声案内を目的に, 同一形状でも種類の異なる物体の識別が可能な音声案内方法を検討した. 具体的には, 従来開発してきたテレビカメラによる図形情報案内システムを基本とし, 更に物体識別には従来の画像処理による方法に代わり, バーコードを用いることとした. しかし, 物体に通常のバーコードを貼付する方法では, 視覚障害者用教材を他の障害者教育に応用する場合問題があり, また日用品等に応用した場合はプライバシー保護の点からも適切ではない. そこで, 通常の可視光領域では検出されず赤外線にのみ優れた反射特性をもつ顔料を用いたバーコードを作成し, これを物体識別用に用いる方法を考案した. 実験では, 識別用の積み木表面に貼付した見かけ上同一色のバーコードから個々の情報が自動的に読み取られ, 更にパーソナルコンピュータに接続された音声合成装置から3秒以内に物体案内情報が出力されることを確認した. 本論文ではリ非可視型バーコードの具体的な検出方法と音声案内結果について報告する.