著者
河田 佳樹 仁木 登 隈崎 達夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.1134-1145, 1996-06-25
被引用文献数
55

血管障害は, 心臓病や脳卒中に関連して死亡数の大きな疾病である. この診断や治療のためには微妙な動脈瘤や狭窄の位置, 形態, 大きさなどの定量的な血管の解剖学的情報が求められる. 本論文では, コーンビームCTで計測した高精度な3次元血管画像を用いて血管の診断や治療を支援する3次元血管像処理アルゴリズムについて述べる. コーンビームCTはX線源と2次元検出器からなる高速回転撮影装置で撮影したコーンビーム血管造影画像からショートスキャンのコーンビーム画像再構成法を用いて3次元血管再構成画像を得るものである. 3次元血管像処理アルゴリズムはこの3次元血管再構成画像から血管走行方向の抽出, 血管断面積の計測, 血管経路の選択や経路の距離計測, 病変形態の表示や容積の計測を可能にするものである. これらは3次元2値血管画像の細線化や血管芯線のグラフ表現抽出に基づいている. これらを患者の3次元血管再構成画像に適用し, 血管の診断や治療計画を支援することに有効であることを示す.
著者
中村 高雄 片山 淳 山室 雅司 曽根原 登
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.87, no.12, pp.2145-2155, 2004-12-01
被引用文献数
18

電子透かし技術の応用として,印刷物などのアナログ画像中に埋め込まれている透かし情報を読み取り,アナログ情報からディジタル情報に導くシステムが提案されている.本論文では,近年普及してきたカメラ付携帯電話機を上記システムの端末として適用する際に必要となる,高速処理可能な電子透かし検出方式を提案する.提案方式は棒線を利用した幾何ひずみ補正方法と,微少な幾何ひずみと雑音に対するロバスト性をもつ高速な電子透かしアルゴリズムにより構成される.また,サービス運用上必要となる検出透かし隋報の信頼性についても定量評価方法を示す.実験の結果から,比較的計算処理能力の低い携帯電話機上で動作するJava Applicationとして提案方式を実装した場合でも,1秒程度の処理時間で処理を行うことが可能であることを示し,提案方式の有効性を確認できた.
著者
森山 剛 坂内 正夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.84, no.6, pp.1122-1131, 2001-06-01
被引用文献数
29

本論文では, テレビドラマ映像の心理的内容に基づいた要約映像の生成手法を提案する.従来の映像要約の研究では, カットなどの映像の構造を利用する方法やビデオ中のオブジェクトに基づく方法などがほとんどであった.一方テレビドラマに対しては, 映像コンテンツの心理的な展開(盛り上がりなど)を視聴者は重要視していると考えられるが, 映像の心理面に基づいた方法はまだ提案されていない.テレビドラマは, 物理的構成要素としてトラック構造(カッティング、登場人物のセリフ, BGM, 効果音)を有しているが, 演出家などは特定の心理的な印象を表現するために経験的知識に基づいてその時間的構造を巧みに操作していると考えられる.そこで本研究では, この経験的知識に基づき, 心理的に重要な箇所をそれに対応するトラック構造の時系列パターンとして検出し, 要約映像を生成する手法を提案する.実験において本手法をテレビドラマ映像に適用した結果, 約14分の1の時間長に圧縮でき, 更に主観評価実験の結果, 本編内容の保存性能及び切出しの自然性に関しても本手法の有効性が示唆された.
著者
黒柳 奨 岩田 彰
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.267-276, 1996-02-25
被引用文献数
32

人間は, 両耳間の信号の時間差(ITD:Inter-aural Time Difference)と音圧差(ILD:Inter-aural Level Difference)を用いて, 音源の方向を知ることができる. 我々は神経細胞の機能を模倣したパルスニューロンモデルを用い, 2信号間からITDとILDを独立に抽出する聴覚神経系モデルを提案している. 今回, この聴覚神経系モデルの上層に新たなパルスニューラルネットワークを追加し, 入力信号間の特定のITD,ILDにそれぞれ特異的に反応するマッピングニューロン群を構築した. この新たな聴覚神経系モデルに対して, 計算機上でシミュレーションを行った結果, 入力信号間のITD,ILDの変化によってマッピングモデル内での発火ニューロンの位置が変化することが確認され, 本モデルが単純なパルスニューロンモデルの組合せのみでITD,ILDをマッピング可能であることが示された.
著者
浅野 三恵子 下辻 成佳
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.80, no.1, pp.131-138, 1997-01-25
被引用文献数
8

入力された帳票が既登録帳票のどのフォーマットに最も類似しているかを識別するシステムにおいて, セル (枠) に記入された文字や, コピーによって起こるかすれやつぶれ, スキャナ入力による傾きやゆがみなどに影響されずに, 帳票種別を識別する手法を提案する. 帳票文書は一般に, 水平・垂直線分に囲まれたセルで表現できる. セルの中心点をそのセルの代表点とした場合に, 帳票識別は入力画像から得られる点と登録されている帳票上の点とのマッチングの問題として考えることができる. 本論文では, この点マッチングを2次元ハッシュテーブルを用いて実現する手法を提案する. これにより入力画像上の点の揺らぎに対してロバストな帳票識別処理が実現でき, 登録帳票数が増加しても識別に要する時間はある程度一定に抑えることができる. また, 帳票文書同士の類似度によりシステムに登録されている帳票相互の類似性を数値化することができ, 登録帳票が指定された際にシステムの識別能力を予測できる.
著者
大平 栄二 阿部 正博 小松 昭男 市川 熹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.76, no.3, pp.586-595, 1993-03-25
被引用文献数
5

本論文では,自然言語によるデータベース検索を主なタスクとするシステムを対象として,制限の少ない柔軟なユーザインタフェースを実現するための対話制御の枠組みについて述べている.ここでは,(1)まず対話管理の有効な方式の一つである発話対に基づいた対話管理法を,発話と発話対との間の結合関係をも統一的に扱うことが可能な枠組みに拡張するこにより,利用者とシステム間の対話の主導権を柔軟に制御することを可能とした.(2)更に,ATMSをベースとした非単調推論を適用することにより,利用者からの入力の解釈を誤った場合にも,その修復が可能な対話制御の枠組みを示した.これにより,効率的で,対話性の優れた検索システムを実現可能である.
著者
林 純一郎 村上 和人 輿水 大和
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.80, no.8, pp.2102-2109, 1997-08-25
被引用文献数
10

横顔似顔絵生成では, 顔部品の輪郭認識が最も重要である. 特に, 平均顔と中割り法を用いて個人性特徴の抽出と誇張を行う場合には, 二つの顔の輪郭点の対応付けの自動化が似顔絵生成上, 重要かつ最も大きい課題となる. 筆者らは, 顔画像からの簡易な輪郭抽出法, 輪郭の階層的再標本化法, および中割り法と部分領域のアフィン変換の組合せによる輪郭と顔の内部部品デフォルメ法を組み合わせることにより横顔似顔絵生成法を構築した. そして, 正規化のための2点の手入力を除いて自動生成を実現した. 本論文では横顔似顔絵生成の完全自動化のための諸課題および改善手法について整理・検討する.
著者
谷塚 昇 カーン Md.モスタフイズル ラマン
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.85, no.5, pp.825-832, 2002-05-01

深宇宙にある銀河階層のシステム(QSO)から放射される電波の観測値時系列を解析し,システムの進化・自己組織化に関する数理的・情報論的な構造を研究した.解析にはべき乗則の方法,及び時系列再構成状態空間写像法を使った.べき乗則の解析から,システムのダイナミックスの構造が進化していると考えられること,状態空間写像法の解析から,3次元状態空間上でアトラクタ様のパターンを得たこと,相関積分によるGP法から力学系の推定次元が限定された次数であることを示した.
著者
池田 浩二 長岡 浩司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.76, no.9, pp.2109-2115, 1993-09-25
被引用文献数
2

本論文では,隠れ素子なしのボルツマンマシンを用いた学習における結合パターンの決定という問題を扱う.これは,統計的モデル選択問題の一種である.モデルの良さを表す規範のとり方としては多くの方法が提案されているが、ここではMDL(minimum description length)を用いた選択法を考える.ボルツマンマシンにおける結合パターンの総数は素子数と共に爆発的に増加するので,すべてのモデルの中からMDL最小となるモデルを探索する従来の方法では,計算量的に膨大な負担を強いられる.また,MDLを求める際の対数ゆう度の計算では,あらゆる状態に関するエネルギー値をすべて求めるという手続きが必要であり,これはボルツマンマシンの分散並列性を大きく損なう.そこで,MDLを用いたモデル選択において計算量を軽減するための方策として,「隣接モデル探索」および「対称化ゆう度差SLD」という二つのアイデアを導入する.簡単な場合について計算機シミュレーションを行い,これらの方法の有効性を検証する.
著者
澤井 一義 吉田 正樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.87, no.11, pp.2054-2061, 2004-11-01
被引用文献数
2

近年,高齢社会を迎えて独居高齢者が増加している.そこで,独居高齢者の在宅健康管理を目的として,家屋内にセンサを設置し,長期間のモニタリングが実施されている.本論文は,日常生活における在宅高齢者の異常状態(体調不良でどこかにとどまっている場合,転倒や急激に体調が悪化して動けなくなった場合)を検出することを目的として,実際の高齢者宅に取り付けられた様々なセンサの動作時刻のデータから被験者(高齢者)の異常状態を検出するアルゴリズムの開発を行った.そのアルゴリズムとして,被験者に何らかの異常があった場合に長時間センサが反応しなくなると考えて,すべてのセンサの出力信号のORをとるという簡単な論理演算を用いたアルゴリズムを開発した.更に,センサの反応しない時間に対して,検出率にどう影響があるのかを検討した.その結果,センサの反応が2時間15分ない場合に異常と検出するのが妥当となった.
著者
小林 巌 岩本 正敏 柴田 千陽 鎌田 貴之 布川 博士 宮崎 正俊
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.J81-D2, no.5, pp.954-961, 1998-05-25

肢体不自由ユーザを含んだ操作場面での利用を目的として,Table-Top型コンピュータについて検討した.Table-Topとは,複数のデバイスを用いて,複数のユーザが1台のコンピュータの操作をそれぞれが同時に行うことができるコンピュータ操作環境である.このTable-Topの実現モデルを考察し,モデルに基づきTable-Top型コンピュータのプロトタイプを試作した.このプロトタイプは,Windows95をOSとし,Table-Top用のアプリケーションを装備するコンピュータを本体としている.入力デバイスが2個のマウスであり,これらはI/O Device Network(I/O-DN)に接続されている.I/O-DNの管理や調整を行うために,プログラム可能なマイクロコントローラ(Microchip社製PIC16F84)を用いて作製されたI/O-DN ManagerがI/O-DNに接続される.コンピュータ本体とI/O-DN Managerの間はRS-232Cで接続し,通信制御によりI/O-DN Managerからデバイスの認識情報がコンピュータ本体に伝達される.簡単なアプリケーションを用いて,このプロトタイプを試用した結果,Table-Topの基礎的な機能が実現できることを確認した.考察では,このTable-Topの波及効果や課題について展望した.
著者
井上 光平 浦浜 喜一
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.J83-D2, no.3, pp.957-966, 2000-03-25

共起関係行列すなわち個体と項目の共起関係の表に基づいて個体及び項目をファジークラスタリングする方法を提案する.ここで用いる方法は固有値問題に帰着させるグラフスペクトル法と呼ばれる方法の一種であり,逐次にクラスタを抽出する.類似度行列に基づく方法を共起関係行列に応用し,階層的ファジークラスタリングにも拡張する.本方法では個体のクラスタリングと同時に項目のクラスタ情報も得られる.本クラスタリング法の応用例としてキーワードによるデータ検索を挙げる.クラスタリングは大域的なデータ構造をある程度抽出しているので,Latent Semantic Indexing法のように個々のデータのノイズに頑健な検索が行える.ファジークラスタリングはハードクラスタリングでは落ちてしまう細かい情報も保持するので個体レベルの検索も行える.
著者
益子 宗 星野 准一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.88, no.3, pp.585-595, 2005-03-01
被引用文献数
2

映画やゲームをはじめとするマルチメディアコンテンツにおいて, 仮想俳優が会話をするアニメーションが多く見られるようになった.しかし, そのようなアニメーション作成は発話内容や会話状態など多くの要素を考慮する必要があるため, 多くの時間や手間がかかるといった問題がある.そこで, 本論文では会話に連動した仮想俳優の頭部・眼球動作を簡易に生成する手法を提案する.本手法では, 視線角度を頭部と眼球の回転角の和とし, 視線方向によって頭部と眼球の回転の割合を動的に変更する動的分担機構を考え, 頭部と眼球の複合的な動作を生成する.また, 頭部と眼球の動作を生成する二つのモジュール間で同一の会話状態を共有することにより, 会話に連動した頭部・眼球動作を生成する.最後に, 提案した手法を用いて会話に連動した仮想俳優のアニメーションを示す.
著者
諸岡 健一 浜元 和久 長橋 宏
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.88, no.7, pp.1269-1277, 2005-07-01
被引用文献数
7

実環境でロボットが適応的に行動するには, 他者動作の認識機能と, 自己動作の生成機能が必要である.我々は, 現在, 他者動作認識モジュールと自己動作生成モジュールからなるシステムを開発中であり, 本論文では, 自己動作に基づく他者動作認識に焦点を当てる.認識及び生成モジュールは, それぞれ隠れマルコフモデル(HMM)と強化学習によって構築される.このとき, HMMの推定では, 一般に, 多数の学習用データが必要であるが, 実世界で十分な数の動作データを取得できる保証はなく, したがって, HMMの精度が低下する可能性がある.そこで, 本論文では, 強化学習の学習結果に基づくHMMの新たな推定法について述べる.強化学習の状態価値関数をいくつかのクラスタに離散化し, 各クラスタをHMMの各状態と対応づける.これにより, 価値関数値に基づいてHMMの出力分布を推定し, HMMの精度の向上が可能となる.実験により, 提案手法によるHMMは, 学習データが少数の場合でも, 認識精度の低下を抑えることができることを確認した.
著者
永野 秀尚 柏野 邦夫 村瀬 洋
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.87, no.5, pp.1179-1188, 2004-05-01
被引用文献数
6

音声が音楽に重畳した音響信号(蓄積信号)中から,参照信号として与えられた音楽が音声の背景に含まれる区間(目的区間)を見つけ出すことを背景音楽探索と呼ぶ.本論文では,この背景音楽探索を高速に行う手法について述べる.背景音楽探索では,探索の目的となる目的区間においても,他の音声の重畳により,その音響信号は参照信号と著しく異なり,参照信号を蓄積信号と直接照合する手法での探索は困難である.そこで,参照信号のスペクトログラムを時間周波数領域において多数の小領域に分割し,これらの小領域スペクトログラムと類似度の高い小領域スペクトログラムをもつ時点を蓄積信号のスペクトログラムから探索し,その探索結果を統合することで,目的区間を探索する手法を提案する.本手法は,参照信号の各小領域スペクトログラムと類似度の高い小領域スペクトログラムのみを,蓄積信号のスペクトログラムから,高速な探索手法を用いて探索することで,背景音楽探索全体を高速に行うことを特徴とする.実験では,各小領域スペクトログラムの探索に時系列アクティブ探索法(TAS)を用いることで,約30分の蓄積信号からの15秒の目的区間の背景音楽探索を1秒未満で行うことができた.
著者
久米 徹 新田 義彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.77, no.5, pp.959-969, 1994-05-25
被引用文献数
6

日本語解析の基礎である形態素解析においては,考え得る多数の解の中から何らかのゆう度基準に従って適切な解を選択する必要があり,多くの研究がなされてきた.しかし,これらの研究知見の蓄積を統合的に分析し,更に高度なゆう度基準を発見・構築するためには,次の2者が必要と考えられる.すなわち,(1)ゆう度基準を記述するための見通しよい枠組みと,個々のゆう度基準から独立した汎用アルゴリズム,(2)ゆう度基準の性質を比較できるデータ.これに対応すべく,我々は(1)「最ゆう解=最小コスト解」の対応による一般的なゆう度基準記述法と動的計画法に基づく汎用解析アルゴリズムを構築し,これらに基づき(2)4種のゆう度基準の比較データを得た.(1)のアルゴリズムは最小からN位のコストまでに対応する解を導出でき,計算効率はO(nNlog_2(1+N))のオーダである.また,このアルゴリズムが通常のビームサーチ法よりも優位である点も示した.ゆう度基準の比較は,このアルゴリズムを利用し6種類の指標を導入して行ったが.その結果,文節数最小法を若千群細化するだけで,簡易かつ高精度のゆう度基準が得られることを示せた.
著者
石井 抱 石川 正俊
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.J81-D2, no.8, pp.1920-1926, 1998-08-25

直線や円などの特定の形状に基づく画像特徴は,環境に対応したロボットの視覚制御を行う場合に有効なものであり,ハフ変換などのアルゴリズムの高速化が重要となる.特に,従来のビジョンシステムの限界であったビデオ信号(30Hz)を大幅に上回る高速なフレームレートを実現する超並列・超高速ビジョンチップの開発が進むにつれ,画像のフレームレートの高速性を生かしたアルゴリズムが実現可能となる.本論文では,フレームレートが高速なビジョンの特徴を用いることにより単純化された直線抽出法を提案し,超並列・超高速ビジョンチップシステム上においてμsオーダで高速に処理可能であることを示す.
著者
渡辺 大地 千代倉 弘明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.83, no.5, pp.1344-1352, 2000-05-20
被引用文献数
6

近年, インターネットの普及と3次元描画ライブラリの機能向上に伴って, 三角形メッシュに対する最適化の研究が盛んである.しかし, 多くの最適化の手法では形状がもつ意匠的な特徴が失われるという欠点をもつ.本論文では, 数種類のパラメータを与えることによって, 事前に三角形メッシュのもつ特徴稜線を自動的に抽出する手法を提案する.本手法を用いることにより, 最適化の形状特徴を表す稜線をできるだけ反映させることが可能となる.次に, パラメータ変更による再計算が非常に高速になるような設計, 三角形メッシュの位相分布が規則的なものとそうでないものの双方に対応などの特徴を述べる.最後に, いくつかのデータで本手法の有用性を示す.
著者
栗田 多喜夫 麻生 英樹 梅山 伸二 赤穂 昭太郎 細美 章隆
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.257-266, 1996-02-25
被引用文献数
9

本論文では, 多層パーセプトロンの中間層の各ユニットに独立なノイズを加えたとき, 学習結果がどんな影響を受けるかについて考察し, ノイズを付加することによりネットワークが構造化されることを示す. 具体的には, 中間層が1層のみで, 出力層の入出力関数が線形のネットワークの中間層の各ユニットに独立なノイズを加えた場合の誤差逆伝搬学習アルゴリズムの平均的な振舞いを解析し, 中間層から出力層への結合荷重はより小さな値をとるようになり, 逆に, 入力層から出力層への結合荷重は中間層の出力が0か1に近づくようになることを示す. これは, 中間層の各ユニットにノイズを付加することにより, ネットワークが自動的に構造化されることを意味している. その結果として間接的に汎化能力の高いネットワークが構成されることが期待でき, 学習におけるノイズの役割として非常に興味深い. 更に, パターン識別問題と論理関数の学習問題に対して, ノイズを加えて学習した場合とノイズを加えないで学習した場合を比較し, ノイズを加えることによりネットワークが構造化されることを実験的に確かめた.
著者
相原 恒博 大上 健二 松岡 靖
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.J74-D2, no.10, pp.1486-1487, 1991-10-25

人間の顔を識別する特徴パラメータとして,横顔の輪郭線をP形フーリエ記述子で表し,識別に有効な係数の個数を実験的に求めた.横顔輪郭線の4個のフーリエ係数で,31人の横顔認識が100パーセント正しく行えることを確かめた.