著者
古川 亮 今井 正和 烏野 武
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.1054-1063, 1996-06-25
参考文献数
13
被引用文献数
20

連続画像から物体の運動を解析することは, 重要でかつ困難な問題であり, これに対して多くの研究がなされてきた. 本論文で提案するActive Tubesは, 非剛体物体の運動を解析するためのモデルの一つである. このモデルは, Kassらの提案したSnakesを時間軸に沿って重ねたものとみなすことができ, Snakesと同様のエネルギー最小化の手法を用いて時空間画像中の物体を抽出する. 当初, Active Tubesの収束アルゴリズムとして, Greedy Algorithmを用いていた. しかし, Greedy Algorithmはノイズなどの影響を受けやすいため, 新しいアルゴリズムとしてRandomized Greedy Algorithmを提案する. 提案されたアルゴリズムはGreedy Algorithmと同程度に高速である上に, ノイズに対してより頑健である.
著者
藤吉 弘亘 梅崎 太造 今村 友彦 金出 武雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.80, no.6, pp.1627-1634, 1997-06-25
被引用文献数
19

本論文では, ナンバープレートの重心位置を出力するように学習させたニューラルネットワークを使用して, プレート領域を抽出する方法を提案し, その有効性を示す. 学習パターンの提示位置は, 乱数で与えられるため, 毎回異なるパターンがニューラルネットワークに学習され, 汎化能力の高いニューラルネットが形成される. 学習パターン中に含まれるナンバープレートの最適学習面積, バンパーとヘッドライト部分の抑制学習による効果, および学習パターンの拡大縮小と濃度値変換による効果について検討する. 地下駐車場で撮影された595台の車に対して評価実験を行った結果, それぞれ98.5%, 98.7%および100%の検出率を得た.
著者
工藤 育男 友清 睦子
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.76, no.3, pp.624-635, 1993-03-25
被引用文献数
10

日本語の対話文における省略の補完方法について述べる.日本語の省略には,従来の扱われてきたフォーカスの省略(ゼロ代名詞)とは異なる種類の省略がある.例えば,「〜して頂けませんか」という謙譲表現を使う場合には,「あなたガ,私ニ」が省略される.この省略は,文脈中に照応すべき先行詞が存在せず,述部の表現から推定できるという特色がある.また,フォーカスの省略よりも頻度が多いにもかかわらず,あまり議論されてこなかった.この論文では,このような日本語の述部の語い的特性による省略を扱う機構について提案する.日本語の述部,すなわち,助述表現,動詞の特性,ダ文の補語に着目し,処理を行う.そのために,対話コーパスを用い,大量の例文調査を実施し,述部の語い的特性について省略補完の観点から分類を行う.この分類に基づいて,省略補完機構を実現する.実験の結果は,クローズドデータテストで93.2%の成功を収めた.また,未知の助述表現への対応するための方法として,弛緩法を提案する.情報量として重要でない部分を段階的に落としていき,マッチングを図るものである.この方法で,91.2%の未知の助述表現に対処できることを示す.
著者
森田 真司 山澤 一誠 寺沢 征彦 横矢 直和
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.88, no.5, pp.864-875, 2005-05-01
被引用文献数
36

カメラを使った遠隔監視においては, 環境を常に広範囲に撮影し, かつ注目対象の実時間での検出・追跡が求められる.環境を常に広範囲に撮影するために回転カメラを用いる方法や全方位画像センサを用いる方法が提案されている.前者では見回しに機械的な時間遅延が生じる.これに対し後者では観測者の視線変化からその方向の画像提示までの時間遅延が少ないが, 取得した全方位画像を直接, 計算機に伝送しており, ネットワークを介した実装には至っていなく, ビル全体など多くのセンサを必要とする環境には適用できない.本論文ではネットワークを介して複数の全方位画像を伝送する遠隔監視システムについて述べる.本システムは監視環境側をサーバ, 監視者側をクライアントとしたサーバ/クライアントモデルであり, サーバ側において移動物体の検出, クライアント側において移動物体の位置推定及び物体方向の画像提示による追跡を行う.また, ネットワークを利用した画像及び物体の検出情報の伝送を行うことで, クライアント側での一極集中型遠隔監視を実現する.
著者
荒木 昭一 横矢 直和 岩佐 英彦 竹村 治雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.79, no.10, pp.1704-1711, 1996-10-25
被引用文献数
32

従来の動的輪郭モデル(Snakes)では,Snakes内部の複数対象物を独立して抽出できないため,対象物の数だけ初期輪郭を与える必要があった.本論文では,Snakesによる複数対象物の自動抽出を目的として,複数対象物を包含するように初期輪郭を一つ与えるだけで,それらを独立して抽出できるSnakesを実現するため,面積項による収縮型のSnakesが変形の際に自己交差を起こすという挙動に着目し,Snakesを自己交差部分で切り離して複数に分裂させる分裂型の輪郭モデルを提案する.提案手法は,分裂により生じた小さな輪郭モデルを消滅させることにより,画像中に散在するノイズや抽出対象外の小物体に捕獲されにくく,初期輪郭を対象物から離して与えても安定して対象物を抽出できるため,例えば,画像の枠を初期輪郭として,複数対象物を自動的に抽出することもできる.提案手法の有効性を示すため,まず人工画像を用いた動作確認実験を行い,次に実画像を用いた実験として,顕微鏡写真からの複数細胞の抽出および動画像を用いた複数移動物体の抽出・追跡への適用例を示す.
著者
向川 康博 中村 裕一 大田 友一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.80, no.6, pp.1555-1562, 1997-06-25
参考文献数
12
被引用文献数
32

本論文では, あらかじめ用意された複数の顔画像を適切に組み合わせることで, 任意方向から見た任意表情の顔画像を生成する手法について提案する. 頭部の3次元形状や, 表情変化のための精密なモデルを用意する必要はない. 顔表面上に配置した特徴点の, 任意方向・任意表情の場合の2次元座標は, 少数の基底ベクトルの線形結合で表現できる. 更に, 特徴点を頂点とする三角形パッチに, 複数の顔画像から得られるテクスチャを重み付け平均してマッピングする. さまざまな表情をもつ顔画像を用意し, 実際の表情変化を素材として用いることで, 自然な表情の見え方を生成できた.
著者
森本 正志 美濃 導彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.88, no.8, pp.1398-1411, 2005-08-01

本論文は, 回転・拡大縮小などの幾何学的変換によらない画像識別のための手法として, 直線パラメータから得られる不変量を用いた直線不変量ヒストグラムマッチング法を提案する. 画像の構造記述パラメータから得られる不変量を用いた識別では, 幾何学的変換への不変性だけでなく, 雑音重畳などに起因するパラメータ抽出誤差やパラメータ欠落などが存在しても安定した識別ができることや, 大量のデータの中から少ない計算量で識別できることも重要である. 本手法では, 直線パラメータ集合から不変量を算出することで抽出誤差の影響を抑え, 直線不変量集合をヒストグラム化したデータセットに基づくマッチングと交差角インデックスサーチによりパラメータ欠落・誤抽出及び計算量への対処を行う. また, 可変フィルタリングによりヒストグラム化に伴う性能低下を補償する. 実画像における直線抽出性能測定からパラメータ抽出誤差・変動要素数条件を設定し, その条件に基づいた識別評価実験により本提案手法の有効性を確認した.
著者
黒瀬 能聿 矢野 米雄 冨田 豊
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.80, no.4, pp.933-942, 1997-04-25
被引用文献数
21

近年のコンピュータ化により, 大学におけるCAD教育としては, 2次元CADシステムによる単なる製図教育にとどまるのではなく, 3次元CAD教育の必要性が叫ばれている. 3次元CADでは, より自由な形状設計を行うために, 自由曲線や曲面の取扱いが重要なテーマの一つである. 筆者らは, これまで3次元CAD教育を進める上で, 学習者にとって理解が困難であると考えられる自由曲線や曲面の創成教育を支援するシステムを提案した. しかし, これまでのシステムはパーソナルコンピュータによるスタンドアローン環境であり, 教材管理の困難さ, 学習履歴収集の困難さ, マルチメディア化の困難さ等の問題点があった. 一方, 近年のインターネットの普及には目を見張るものがあり, マルチメディア化が可能なインターネットを教育に利用する試みも各地で開始された. インターネットを利用することで, 我々のシステムの問題点は解決する. 本論文では, インターネットを利用した学習支援システムを提案する. 本システムは, インターネット上で展開することで, 大学内だけの利用にとどまらず, 広く学内外からの利用が可能になった.
著者
大塚 尚宏 大谷 淳 中津 良平
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.80, no.8, pp.2129-2137, 1997-08-25
被引用文献数
17

表情認識は, マン・マシンインタフェースの高度化, 画像通信における伝送量の削減等を実現するためには重要な技術である. 本論文では, 連続出力確率密度分布をもつ隠れマルコフモデル(HMM)を用いて不特定多数の人物の顔動画像から表情を認識する手法を提案する. 本手法では, まず動画像中の連続する2枚の画像から得られるオプティカルフローを積算して顔の各位置の移動ベクトルを求め, そのフーリエ変換の低周波成分を認識のための特徴ベクトルとして抽出する. 次に, 連続出力確率密度分布をもつHMMを使って基本表情ごとに特徴ベクトルの時間変化のパターンを学習させて認識のためのモデルを作成する. HMMの出力を連続的な特徴ベクトルとすることにより, 離散的なシンボルを用いる場合に問題となる量子化誤差のない高精度なモデル化が実現できた. また, 出力確率分布を多次元正規分布の荷重平均として近似することにより, 人物ごとに異なる表情の特徴をモデル化することができた. 4人の被験者(男性3人, 女性1人)からの顔動画像を用いて実験したところ高い認識率が得られた.
著者
芳澤 伸一 馬場 朗 松浪 加奈子 米良 祐一郎 山田 実一 李 晃伸 鹿野 清宏
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.85, no.3, pp.382-389, 2002-03-01
被引用文献数
16

十分統計量と話者距離を用いた音韻モデルの教師なし学習法を提案する.提案法では,音響的に近い話者群の十分統計量を用いて統計処理計算により正確に適応モデルを構築する.提案法では,(1)発声話者に音響的に近い話者を選択し,(2)選択された話者の十分統計量を用いて発声話者に適応した音韻モデルを作成する.十分統計量の計算は適応処理の前にオフラインで行う.提案法では発声話者の音響的に近い話者群の十分統計量を用いて統計処理計算に基づき適応化を行うため高い認識率を獲得することができる.また,少量の発声文章で適応処理が行われる.更に,十分統計量をオフラインで計算することにより適応時の処理が短時間で行われる.話者クラスタリングによる方法と比較すると,提案法では発声話者のデータによりオンラインで動的に話者クラスタを決定するため,適切な話者クラスタを獲得することができる.認識実験により,少量の発声文章により適応を行った場合,MLLRより高い認識率を獲得できることを示す.
著者
齊藤 剛史 金子 豊久
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.84, no.7, pp.1419-1429, 2001-07-01
被引用文献数
20

本論文では野草の自動認識法について提案する. 一つの野草について真上かそれに近い斜め上の角度から撮影した花画像と葉画像の2枚を1セットとして用いる. クラスタリング法を用いて各画像から対象物(花, 葉)を抽出し, 花画像から10個, 葉画像から11個の特徴量を求め区分的線形識別関数により認識を行う. 我々は春から初夏にかけて大学キャンパス付近に生育する34種各20セットの野草を収集し実験を行った. 実験結果ではすべての特徴量(21)を用いた場合96.0%の認識率を得た. 次に認識において特に有効な特徴量を選び出す実験を行い, その結果花画像から6個, 葉画像から2個の特徴量が有効であることを示し, 96.8%の認識率を得ることができた.
著者
勝山 裕 武部 浩明 黒川 浩司 齊藤 孝広 直井 聡
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.88, no.8, pp.1740-1749, 2005-08-01
被引用文献数
2

文書管理システムにおいて, OCR結果の候補文字情報と, キーワード領域の推定を使い, 通常のテキスト検索エンジンで高精度に文書画像を検索できる技術を提案する. この手法では, 文書画像は最初に通常のOCRで文字認識される. 次に, OCRの出力したテキストから, 形態素解析によりキーワード領域が推定される. 候補文字ラティスがこの領域から求められ, 未登録語単語領域ではk-th DP処理により, 名詞単語領域では更に単語辞書との整合により, 候補文字ラティスから文字列が抽出される. 最後に, 通常のテキスト検索エンジンによる高精度な検索を可能にするために, 抽出された文字列は通常のOCRの出力したテキストに追加される. 49枚のOHP文書画像を対象にした検索実験では, 検索精度は, 通常のOCRの出力したテキストのみで検索再現率90.1%, 適合率100%であったが, 提案手法では再現率98.2%, 適合率100%を達成した. また, 処理時間は通常のOCR処理とほぼ変わらず, テキスト量もOCRの出力したテキストの約6倍程度に収まった.
著者
山本 公洋 内藤 昭三
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-2, 情報・システム 2-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.81, no.12, pp.2790-2801, 1998-12
参考文献数
11
被引用文献数
1

本論文では, 解(標本)が複数のスキーマへと線形分割可能な組合せ最適化問題を対象として, 遺伝アルゴリズムの交叉によるスキーマ保存機構を, 任意の1種類のスキーマに着目して, サンプルビット列集合における着目するスキーマを含有する標本(着目標本)の個数の増減という観点から考察する.着目標本数の経時変化は, 淘汰の複写機能による増殖と交叉や突然変異の破壊機能による減衰が均衡する点の有無によって, 2種類の相(安定相と非安定相)に分かれることを示す.着目標本の適応度平均とサンプルビット列集合全体の適応度平均との大小関係に依存して, 安定相-非安定相間の相転移が発生することを示す.遺伝的アルゴリズムにおいて交叉率を高く設定することで, スキーマがサンプルビット列集合全体へ均等に埋め込まれ, 着目標本の適応度平均が高くなり, 均衡点が発生して, 着目標本数が一定に保たれることを示す.最後に, 計算機実験に基づき, 交叉によるスキーマ保存機構に関する考察が妥当であることを示す.
著者
平井 有三 落合 辰男 安永 守利
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.84, no.6, pp.1185-1193, 2001-06-01
被引用文献数
9

ディジタル回路を用いて, すべてのニューロンが非同期に動作するパルス密度型ディジタルニューラルネットワークシステムを開発した.システム規模は, 1008個のニューロンが7ビットの精度をもつ100万個以上のシナプスで相互結合されたハードウェアであり, 世界最大規模のものである.本システムの特徴は, ディジタル回路を用いながら個々のニューロンの動作が非線形1次微分方程式に従うことにある.したがって, 1000次元の非線形連立1次微分方程式を連続時間でしかも並列的に解くことができるシステムとなっている.1000個を超えるニューロンを物理的に相互結合するために, パルス密度を用いて信号線数を削減し, シナプス結合係数の精度を7ビットに抑え, シナプス出力の空間加算をパルスのOR回路で簡略化するなどの手法を用いた.これらの簡略化にもかかわらず, 手書き数字を用いた最近傍法による識別実験結果は, 浮動小数点演算を用いたワークステーションと比較して遜(そん)色がないことがわかった.本システムはインターネットに接続されており全世界からアクセス可能である.ホームページアドレスは, http://www.viplab.is.tsukuba.ac.jp/である.
著者
横井 博一 吉野 慶一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.76, no.3, pp.698-708, 1993-03-25

ニューラルコンピュータのハードウェア化における問題点の一つは,配線が複雑になるこである.筆者の1人が提案したFolthretは,神経細胞の離散時間学習しきい素子モデルをフーリエ級数信号により実現したニューラルコンピュータ用基本素子で,配線の複雑化の問題をかなり解決できる.本論文は,このFolthretの学習能力を調べることを目的としている.そのためまず,Folthretをアナログ回路とディジタル回路両方が混在した形で電子回路化した.その結果,基板サイズが15cm×15cm,ICの数が26個の回路規模となった.基板面積の半分は結合荷重用メモリ部が占めた.次に,電子回路化したFolthretを用いて,10個の数字および26個の英文字のパターン認識に関する学習実験を行った.これと同時に,離散時間-離散情報学習しきい素子による計算機シミュレーションも行った.その結果,電子回路化したFolthretは,離散時間-離散情報学習しきい素子と同様,実験で用いたどのパターンの認識も学習できることが示された.また,学習完了までの学習サイクル数と出力を調べたところ,離散時間-離散情報学習しきい素子に大体近い動作をしていることが確認できた.
著者
阿川 雄資 岡田 英史 関塚 永一 大塩 力 南谷 晴之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.397-405, 1993-02-25
被引用文献数
8

微小循環系は生体組織における物質交換という重要な役割を担っており,その血管内における赤血球動態を解析することは,極めて重要である.従来,点計測が主流であった微小循環計測において,顕微鏡と超高速VTRシステムを用いて記録されたラット腸間膜の血流画像を動画像処理することにより,2次元の速度情報を得ることが可能となる.しかし,従来用いられていた濃度こう配法に基づく動画像処理法は,その性質方速度の速い対象に適用できず,またノイズに弱いという欠点をもっていた.そこで本研究では,動画像処理法として局所相関法を採用し,更に速度ベクトルの推定に階層画像を用いることによって,流速の速い細動脈などにも適用できるだけでなく,高速でかつ安定した測定の行える処理アルゴリズムを開発した.このシステムを用いて,ラット腸間膜上の細動脈・細静脈などの微小血管(管径約20〜50μm)の血流速度計測を行い,本システムの有効性を示すと共に,血流分布に関するいくつかの新しい知見が得られた.
著者
安永 守利 高見 知親 吉原 郁夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.84, no.10, pp.2280-2292, 2001-10-01
被引用文献数
7

大量な画像データに対する高速な認識処理は, 産業の様々な分野で要求されている.我々は, 画像認識処理に内在している並列処理可能性に着目し, FPGA(Field Programmable Gate Array)の書換え可能性を利用した細粒度高並列な専用付加ハードウェアにより, 高速認識処理を実現しようと考えた.このために本論文では, 統計的パターン認識手法の一つであるParzen Window法をハードウェア化のために拡張することを提案する.この提案手法により, 画像パターンデータから直接パターン認識回路を生成することができる.これにより, サンプルパターン数と同数の並列度を有する専用回路が, 複雑な演算器等を使用せずに構成できる.したがって, 高速なパターン認識処理を小規模なハードウェアで実現できる.パターンデータを直接回路化することは, 対象問題ごとに異なる集積回路(1問題1品種)を最適設計することである.これは, 従来の方法, すなわちフォトマスクベースの集積回路(汎用1品種)を作成し問題の個別性にはソフトウェアで対応する方法とは根本的に異なる.このような個別対応の専用ハードウェアは, FPGAを利用することで実現できる.本論文では提案ハードウェアを試作し, 顔画像認識を題材に本方式の有効性を評価する.具体的には, 実験結果をニューロコンピュータや超並列計算機を用いた従来技術と比較し, 認識精度, 動作速度(認識処理時間), 回路規模の観点から評価する.その結果, 認識精度は従来手法とほぼ同程度(ベンチマークデータで95.8%)であったが, パーソナルコンピュータより2, 000倍以上高速で, 更に, ニューロコンピュータや超並列計算機より55〜125倍高速なナノ秒オーダの認識処理が可能なハードウェアを1ボードで実現することができた.
著者
三富 文和 藤原 冬樹 山本 正信 佐藤 泰介
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.J88-D2, no.4, pp.716-726, 2005-04-01

本論文は,習慣的な行動を確率文脈自由文法(SCFG)で認識するための新しい手法を 提案する.習慣的な行動でその動作が文法化されている例として茶道を取り上げ,その点前の識別を目標とする.これまで,SCFGによる動作認識では,動作を画像から記 号列に変換し,記号列を構文解析し認識に至っていた.この記号化は不確定さを伴う ため,構文解析には記号化の誤りを修正する機能が必要であった.本論文では,記号 化の誤りを少なくするために,まず,動作を角加速度に基づきセグメンテーションす る.動作セグメント列に対応可能な基本動作列を発生させ,その中から構文解析により導出可能なものを残す.このとき,対応可能な基本動作列の数は,動作セグメンテーションの誤りが少ないため多くはならない.認識過程では,残された基本動作列に対し,最も大きな事後確率をもつ点前を認識結果とする.これは,ベイズ推定の意味で誤りの最も少ない認識結果となり,同時に最適な記号化が得られる.なお,SCFGの生成確率を多重化することにより,一つの文法で複数の点前を認識できるようにしている.
著者
藤田 昌彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.88, no.7, pp.1278-1290, 2005-07-01
被引用文献数
2

運動学習理論の新しい枠組みを提案する.随意運動の計画段階では, 特に弾道的な運動では運動実行段階も含めて, 視覚系や末梢部からのオンラインフィードバックに依存しない前向きの情報フローで処理を行うのが主であり, 運動-誤差評価-修正運動を繰り返して間欠的に学習を進めていると思われる.基本的な考えとして, 最初の運動指令が修正運動指令を少しずつ取り込むなら, 運動学習はうまくいくはずである.場所符号化された運動指令のユニット群から適切な修正運動ユニットを学習信号が指定し, その修正運動指令の成分を長期減弱の学習機構を通して小脳が皮質下降路や大脳皮質内回路の運動指令に徐々に付与するというフィードフォワード連合学習を提案する.付与する指令が修正運動でなく共同運動であれば階層的な連合学習回路によって運動協調を組織できる.提案する学習の回路と機構に基づいて, 眼球運動saccadeにおける適応を小脳皮質の長期減弱機構で説明する.
著者
池田 成宏 萩原 将文
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.81, no.6, pp.1328-1335, 1998-06-25
被引用文献数
7

本論文では新しい知識表現方法(領域表現)とそれに基づく新しいニューラルネットワークを提案する.知的なシステム構築のためには, 知識表現は根本的かつ重要な問題である.局所表現と分散表現がその代表例であるが, それぞれ一長一短ある.領域表現はいわば局所表現と分散表現の中間的な知識表現方法であり, 両者の長所を有する.提案する領域表現に基づく新しいニューラルネットワークでは上位概念は下位概念を含むという包含関係などを用いることにより, 階層構造をもつ知識の表現が可能となっている.ネットワークは複数のKohonen特徴マップ層からなり, それらは近傍Hebb学習という新しい学習アルゴリズムに基づいて結合され, 全体として多方向連想メモリを構成している.計算機シミュレーションにより上位概念からの知識の継承や不完全な知識からの想起などについて調べ, 領域表現とそれを実現するニューラルネットワークの有効性を確認した.