著者
原田 隆史 吉村 紗和子
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.65-72, 2010-05-15 (Released:2010-07-10)
被引用文献数
3 2

オンライン書店のサイトをはじめとして,読者自身が図書の感想などを投稿するオンライン書評サイトが増加してきている。本研究は,このようなオンライン書評の持つ特徴を,新聞書評などと比較することで明らかにするものである。書評中の各文を,評価対象,評価の視点,評価の客観性,評価極性(肯定的か否定的)かという4つの観点から分類し,集計した。その結果,1) 評価対象は「作品に対する評価」がどの書評でも評価組全体の約9割を占め,書評ごとの変化は見られない,2) 評価の視点について,新聞書評では「作家の表現手法」などが全体の48%を占めるのに対し,オンライン書評では「ストーリー」や「場面」がほとんどである,3) 新聞書評では客観的な表現や肯定的な評価がほとんどであるのに対し,オンライン書評では主観的な表現や否定的な評価も多く多様な内容であることが明らかとなった。
著者
田辺 浩介 松田 朝彦
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.497-502, 2021-12-18 (Released:2022-02-19)
参考文献数
13

研究データを保存するためのデータリポジトリには,データファイルに加えて,生成された研究データのコンテキストを表現するための複雑なデータ構造を扱うことが求められる.この課題を解決するための仕組みとして,「研究データパッケージング」という考え方が提案されている. 本発表では,提案されている研究データパッケージングフォーマットのひとつであるROCrateを用いて,データの作成者,装置・試料の情報,ファイル・ディレクトリの構成などの多様なメタデータを保持しながら,データリポジトリに対して機械的かつ大量のデータ登録を試行した事例を報告する.
著者
金 甫榮
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.383-388, 2022-12-18 (Released:2023-01-27)
参考文献数
9

本発表では,『渋沢栄一伝記資料』の別巻第1,2に収載されている渋沢栄一の日記および予定表である「集会日時通知表」のテキストデータを,TEIを用いて再構築した事例研究の成果について論じる.『渋沢栄一伝記資料』は,日本近現代史研究において重要な資料とされているが,そのテキストデータが可視化・分析されたことはまだない.本研究では,テキストデータの信頼性向上と多様なデータ分析を可能にするための構造化を行い,その成果をウェブサイト「渋沢栄一ダイアリー」で公開した.この研究過程で,TEIによるテキストの構造化が何をもたらしたかを考察する.
著者
長岡 千香子 古川 雅子 林 正治 孫 媛 山地 一禎
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.424-427, 2022-12-18 (Released:2023-01-27)
参考文献数
8

現在,国内の複数の研究・高等教育機関では,自大学で提供した講義の映像をまとめたOpenCourseWare (OCW),教育用ガイドライン,自学用教材等の学習・教育用コンテンツを,誰でも無償で利用できるOpen Educational Resources(OER)として公開している.これらのOERを公開するためのプラットフォームの種類は多様であるが,その一つの手段として,機関リポジトリ上で公開する試みがみられる.本発表では,日本国内のOER公開に関する取組,機関リポジトリで実際に公開されているOERへのアクセス状況の集計,機関リポジトリ上でOERを公開する際の検討事項等を通じて,OER公開用プラットフォームとしての機関リポジトリの可能性について検討・考察する.
著者
和佐 好智 弘原海 清
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.41-47, 2003-05-12 (Released:2016-12-12)
参考文献数
7
被引用文献数
2 2

岡山理科大学の本研究室では,地震危険予知を試みる方法の一つとして宏観異常現象を利用している.宏観異常現象は,大地震発生前に震源地周辺で多く認められる自然や動物の異常のことである.この宏観異常現象を利用して地震危険予知を行うためには,より迅速な収集・公開システムが必要である.このため,研究室のWebサイト(e-PISCO)上でインターネットを使った宏観異常情報の収集・公開を2000年9月15日より開始した.この収集・公開を可能にしたシステムが宏観異常情報システムである.この宏観異常情報システムの機能強化の内容と,2002年12月までの運用結果を紹介する.
著者
西澤 正己 孫 媛
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.240-245, 2022-05-28 (Released:2022-07-01)
参考文献数
9

2003 年に「景品表示法」の新設等があり,これに伴って大学等の研究機関を第三者機関としたアカデミックマーケティングが行われることが多くなってきている.ここでは2015 年にスタートした機能性表示食品制度において2022 年3 月時点で届出のある5120 件中,機能性の科学的根拠として「最終製品を用いたヒト試験」が選択された274 件あり,この中で「販売中」となっている171 件の届出情報の根拠論文を予備調査した結果を事例調査とともに報告する.投稿先は上位3誌に70%が集中し,著者所属で大学等研究機関が関係するものは46.8%あった.
著者
白鳥 孝幸 村井 源
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.276-282, 2020

<p> 「ハッピーエンド」と「バッドエンド」は物語における最もメジャーなカテゴライズであるが,これまでの研究においてそれらに関する計量的な分析はほとんど行われていなかった.本研究では,乙一の短編小説における喜劇性と悲劇性の抽出を目指した.まず,対象データを3 ジャンルに分類し,分類語彙表に基づいた新たな極性辞書を作成した.また,極性辞書を用いてテキスト中の極性語を抽出した.そして,抽出した極性語から,階層的クラスター分析と重回帰分析を用いて,ハッピーエンド作品とバッドエンド作品における特徴の抽出を試みた.その結果,物語の終盤四分の一における「好・愛・敬」にカテゴライズされる極性語がハッピーエンドに寄与していることが明らかになった.また,物語の終盤四分の一における「悲・哀」にカテゴライズされる極性語がバッドエンドに寄与していることが明らかになった.</p>
著者
和佐 好智 弘原海 清
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.41-47, 2003
参考文献数
7
被引用文献数
2

岡山理科大学の本研究室では,地震危険予知を試みる方法の一つとして宏観異常現象を利用している.宏観異常現象は,大地震発生前に震源地周辺で多く認められる自然や動物の異常のことである.この宏観異常現象を利用して地震危険予知を行うためには,より迅速な収集・公開システムが必要である.このため,研究室のWebサイト(e-PISCO)上でインターネットを使った宏観異常情報の収集・公開を2000年9月15日より開始した.この収集・公開を可能にしたシステムが宏観異常情報システムである.この宏観異常情報システムの機能強化の内容と,2002年12月までの運用結果を紹介する.
著者
曽根原 士郎 齋藤 敦子
出版者
Japan Society of Information and Knowledge
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.32-37, 2010-02-26
被引用文献数
1

一般的に、手書きでの情報記録手段は、教育現場において学習・記憶・理解の効果を高めると言われている。しかし、近年のビジネス現場ではパソコンへのキーボード入力が主流であり、特に若いビジネスワーカーはそれらデジタルツールを巧みに使いこなしながら、効率的に業務を行っている。本実験では手書き記録手法の良さを再認識すると同時に、これからのビジネスワーカーがデジタルツールを用いてさらに生産性を高めていく可能性が示唆された。
著者
後藤 佑斗 三原 鉄也 永森 光晴
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.192-197, 2021

<p> Web上で提供されるマンガには内容に基づく探索のためにタグやキーワードなどの主題語が付与されているが,意味的な探索のための構造化が不十分で,その活用は限られている.本研究では日本十進分類法(NDC)の持つ主題の意味関係に即した探索のために,Web上でマンガと共にその内容を示すタグおよびマンガのあらすじの2種の情報を利用して,マンガと主題に基づくLinked Data版日本十進分類法(NDC-LD)を機械的に結びつける手法を提案する.タグを利用した手法ではNDC-LDの相関索引語とタグの文字列の類似度に基づいて同一性を判定しリンキングを行った.あらすじを利用した手法ではあらすじ文中のNDCの見出し語と相関索引語についてTF-IDFを用い,特徴語として抽出されたものをリンキング対象とした.更に,マンガ146作品に対してこれらの提案手法を適用し,人手による分類及び機械学習によるNDCの推定手法と比較した結果,提案手法が人手での分類の再現に有効であった.(393文字)</p>
著者
村井 源 松本 斉子 佐藤 知恵 徃住 彰文
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
pp.1101130023, (Released:2011-01-25)
参考文献数
16
被引用文献数
8 1

本論文では,計量的な物語構造の分析を実現するために,人文的な物語分析の古典的手法であるプロット分析を援用し,分析結果に対する計量的解析を行った.プロット分析は人文学的手法であるが,一致度の計算を実施することでプロット分割と分類の正当性の数値的評価を行った.プロット分類の結果に対してn-gram分析を行うことで物語構造の連続的パターンを抽出した.また同様にχ二乗検定を用いて頻出プロットの時代的変化を抽出した.さらに,テーマとプロットの関係を分析するために計量的手法で物語のテーマ語を抽出し,作品をテーマごとに分類した.このテーマの分類結果を用いて,各テーマのプロット的な特徴を抽出した.本論文での分析はプロットへの分割と分類を計量的指標を用いつつも人手で行うという点で,完全な自動化の実現ではないが,本論文の成果は将来的な物語分析の完全な自動化の基礎になると期待される.
著者
吉川 次郎 高久 雅生 芳鐘 冬樹
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
pp.2020_037, (Released:2020-11-06)
参考文献数
49
被引用文献数
2

Wikipedia 上の学術文献の参照記述の追加における持続可能性を明らかにするために時系列分析を行った.英語版全体での編集と参照記述の追加を比較した結果,両者は推移の特徴が異なり,参照記述の追加には伸び悩みが見られず近年においても一定の規模である.参照記述を追加する編集者は,2011 年以降は毎年4 月と11 月に多い点で周期的な特徴がある.参照記述を初めて追加した編集者(新規参加者) の過半数は,多くの年で1ヶ月のみ関与し,近年になるにつれてその傾向が強まっているが,近年でも一定の規模を維持している.周期的な特徴や新規参加者の規模の維持については,大学の授業を通じたWiki Education 参加者による影響が挙げられ,今後もこの活動が継続するとすれば,持続可能性は高いと考えられる.
著者
佐藤 翔 石橋 柚香 南谷 涼香 奥田 麻友 保志 育世 吉田 光男
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.268-283, 2019

<p> 本研究では非専門家にとっての論文タイトルの「面白さ」を得点化し,Twitterからの言及数が多い論文と言及されたことのない論文でこの得点に差があるかを検証した.Twitterからの言及数データはCeek.jp Altmetricsから収集し,2008年に出版された論文の中でTwitterからの言及回数が特に多い論文103本と,言及回数が0の論文の中からランダムに選択した100本を分析対象とした.4名の非専門家が各論文タイトルの「面白さ」を7段階で評価し,その点数の合計を「面白さ」得点と定義した.分析の結果,Twitterからの言及数が多い論文グループと,言及数が0の論文グループで「面白さ」得点には有意な差が存在し,Twitterからの言及数が多い論文の方がタイトルが「面白い」傾向が確認された.さらに,この差は分野別に分析しても確認された.</p>
著者
長塚 隆
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.155-162, 2020
被引用文献数
2

<p>近年,地域・自治体資料のデジタル化が進展しているが,どの程度デジタル化・オープン化されているかの把握は難しい.神奈川県の政令指定都市(横浜・川崎・相模原)を対象に,国立国会図書館デジタルコレクションやインターネット資料収集保存事業,および各市ホームページや図書館蔵書検索システムを使用してメタデータおよびデジタル資料を調査し,デジタル化とオープン化の進展を推測し,国立国会図書館と公共図書館との連携のあり方など今後の課題について考察した.</p>
著者
渡辺 葵 高久 雅生
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.172-179, 2015-05-23 (Released:2015-07-11)
参考文献数
21

現在,うろ覚えのマンガを探す手段には,図書館でのレファレンス質問や質問応答サイト(2ch,Yahoo!知恵袋等)を使う方法がある.そこで,本研究では,それらの質問応答サイトにおける,うろ覚えマンガの質問を調査した.分析には2ちゃんねるおよびYahoo!知恵袋から計300件の質問を抽出し,使用した.分析にあたっては11カテゴリを定義し,各質問にカテゴリ付与を行った.さらに,その質問に対して解答を提供するための情報源となる10の書籍,Webサイトについて11カテゴリに対応する情報源の有無を判断した.調査の結果,検索支援の需要が高いカテゴリとして,マンガのジャンルと登場人物の行動,特徴についての記述の3つが導き出された.
著者
天野 晃
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.373-376, 2017-12-02 (Released:2018-02-09)
参考文献数
6

スペクトラルグラフ理論は、グラフの特性をその隣接行列の特性多項式の問題として扱う理論およびテクニックの総称である。主な応用として化合物における構造解析があり、系統の近い分子の比較や構造の特徴量の算出に用いられる。この報告では、従来の理論を改良した、分子の系統の近遠に係わらずさまざまな分子構造の量的マッチが可能となるインデックス作成法を提案する。
著者
青山 俊弘 山地 一禎 池田 大輔 行木 孝夫
出版者
Japan Society of Information and Knowledge
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.380-394, 2013-10-18
参考文献数
30

機関リポジトリでは,機関内で生成されたコンテンツが書誌情報からなるメタデータとともに保管され,インターネットを介して公開される.一方,機関内ウェブサイトでも,大学の研究者要覧や学部,研究室レベルでの業績一覧などで,機関リポジトリコンテンツのメタデータと重複した情報が公開されている.情報の同一性を担保したり,入力の煩雑な作業を軽減するためには,ある特定のサイトから入力された情報が,各々のサイトで共有できる仕組みの導入が不可欠である.本研究では,機関リポジトリを,そうした学内における業績情報の起点とするためのフレームワークの構築と実装を行った.提案システムでは,従来のリポジトリシステムのみの運用では行えなかった,機関リポジトリ設置者以外の手によるメタデータ設計,メタデータ入力を可能にした.これにより,機関リポジトリ外で専門的あるいは補足的な情報を機関リポジトリ内の基本的なメタデータに付加し,シームレスに公開するプライベートリポジトリが実現できる.このシステムによって,ウェブインターフェース上の操作のみで,機関リポジトリと連携したサプリメントファイルの公開や,研究者要覧等の自動生成,分野リポジトリの構築などを実現することができる.
著者
宮本 健弘 笠原 禎也 高田 良宏 松平 拓也 林 正治 松木 篤 上田 望
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.306-309, 2018-12-08 (Released:2018-12-21)
参考文献数
4
被引用文献数
1

近年のオープンサイエンスの活発化に伴い, 人間と機械の双方に可読性を持つリポジトリシステムの需要が高まっている. このような背景から, 本研究では, 国立情報学研究所が開発したWEKO を用いて, 金沢大学環日本海域環境研究センター及び同国際文化資源学研究センターのデータリポジトリの構築を行っている.従来, WEKO へのコンテンツの一括登録には, Windows でのみ動作するソフトウェアが必要であった. 我々は, ICT に精通しているとは限らないデータ所有者が, リポジトリ上のデータ管理を行えるように, OS に非依存なブラウザからファイルをアップロードするだけでコンテンツの一括登録に加え, メタデータやコンテンツの追加登録・更新等が可能なデータ管理システムを構築した. 特に更新機能では, 「更新フラグ」属性を用いて, コンテンツの世代管理とその公開方法の制御を可能にした. 本稿では両センターのデータリポジトリと構築したデータ管理システムの概要を述べる.
著者
河瀬 彰宏
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.105-110, 2018-05-26 (Released:2018-06-08)
参考文献数
11

本研究の目的は,R.Schumann 作曲《子供の情景》とA.C.Debussy 作曲《子供の領分》の旋律を計量比較し,作曲家ごとの子供らしさの描写の差異を明らかにすることである.本研究では《子供の情景》と《子供の領分》の共通点・相違点を探るために,比較対象として同時期に作曲された両作曲家の作品群を用意した.計77 曲のデータから音高の使用頻度を特徴量として抽出し,線形判別分析を用いて両作曲家の「子供らしさ」の差異を明らかにした.