著者
津田 雄一
出版者
日本惑星科学会
雑誌
日本惑星科学会誌遊星人 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.149-155, 2014-06-25 (Released:2017-08-25)

はやぶさ2は,小惑星サンプルリターン探査技術を推し進めるミッションであり,初代はやぶさの技術蓄積を橋頭保として,サンプルリターン探査技術を確実なものとし,かつ新たな探査技術を実証するプログラムである.はやぶさ2は,基本設計思想は初代はやぶさを踏襲することで,開発期間の短縮とヘリテージに依拠した信頼性確保を目指している.一方で,システム設計には,工学上の挑戦的要素を随所に配して,探査技術の発展とミッション価値の増大に貢献している.小天体探査を工学面で持続的に発展させるには,技術の継承と革新の両面をにらみながら,ミッションを組み立てていくことが重要である。はやぶさ,はやぶさ2,そしてその次へ.我が国の小天体探査は続く.
著者
橘 省吾 はやぶさ2サンプラーチーム
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.261-268, 2013-12-25

「はやぶさ2」計画では,地上での汚染や大気圏突入によるサンプリングバイアスのないC型小惑星試料を地質情報とともに複数地点から採取し,地球にもちかえることをめざす.リターンサンプル(<5mm)の詳細分析と,リモートセンシング機器,小型ランダーで得る天体スケール(km)から表層粒子スケール(cm-mm)での構造・物質・熱といった現在の情報をリンクさせ,対象小惑星(1999 JU_3)そのものの形成と現在までの進化を理解するだけでなく,太陽系の誕生から最初期の物質進化,そして,地球の海や生命の材料となる揮発性元素の最終進化の場としての小惑星の役割を明らかにする.
著者
杉本 大一郎
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.211-221, 2011-09-25
参考文献数
11

中澤清さんが「林太陽系の日々」と題して,「林忠四郎先生の人となり」について,3回にわたって連載された.そこでの話は,中澤さん(林研究室大学院8期生)が京都大学に在籍された時期(1965〜1982年度)に,また研究については太陽系起源に限ったものであるとされている.それを補うものとして,林研究室開設の頃のことと,林先生の京都大学定年退官(1985年3月)以降のことについて書いて欲しいと,小久保編集委員に頼まれた.そう言われても,私が林研究室に在籍したのは大学院生の5年間(1959〜1964年度)だけだし,私は物事が済んだらさっさと片付けてしまう性格なので,記録は殆ど残っていない.それでも,林先生の研究のもう一つの大きい柱である星の進化をとおしての関係だったし,中澤さんが関係されなかった側面のことがいくつかあるので,それを紹介したい.ただし話は,私が直接に関わったことを断片的に述べるだけのことになるのを,お許しいただきたい.
著者
佐々木 貴教 スチュワート グレン・R 井田 茂
出版者
日本惑星科学会
雑誌
日本惑星科学会誌遊星人 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.254-261, 2011
参考文献数
23

巨大ガス惑星周りの衛星は,惑星集積の最終段階に形成された周惑星円盤内で作られたと考えられている.これまでに複数の衛星形成モデルが提案されてきたが,木星の衛星系と土星の衛星系の特徴の違いを,その形成過程から説明することはできていない.そこで本研究では,木星と土星の形成過程が衛星形成に与える影響に注目した.最新の惑星形成理論をもとに,われわれは以下の2つの仮説をおいた:1)木星系では原始惑星系円盤に溝が形成され,土星本体の形成が遅い土星系では溝が形成されない,2)また溝形成の違いに伴って衛星形成時の周木星円盤には内縁が生じ,周土星円盤には内縁が生じない.以上の違いを考慮して,周惑星円盤における衛星形成のシミュレーションを行った結果,現在のような2種類の異なる衛星系が必然的に生まれうることがわかった.このように衛星形成は母惑星の形成過程に大きく影響される.逆に言うと,衛星は木星と土星の形成過程や系外巨大ガス惑星の形成過程を解く鍵となりうる.
著者
脇田 宏
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.105-110, 1999-06-25
参考文献数
7
著者
千秋 博紀 滝田 隼 荒井 武彦 福原 哲哉 田中 智 岡田 達明 関口 朋彦 坂谷 尚哉 はやぶさ2TIRチーム
出版者
日本惑星科学会
雑誌
日本惑星科学会誌遊星人 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.120-125, 2015

TIR(中間赤外カメラ)は,8から12ミクロンの波長帯で熱輻射の2次元イメージングを行う.ターゲット天体の1自転分の撮像から表層物質の熱履歴をもとめ,そこから熱物性を推定する.表層物質の熱物性は,ミッション遂行に必要な情報であるばかりでなく,その後の天体の運命を決める重要な情報である.
著者
國中 均
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.109-112, 2013-06-25

宇宙工学は,宇宙への往来の実現を目指し,技術を切磋琢磨してきた.その成果の端的な例は,「はやぶさ」にて実現された地球〜小惑星間往復航行(2003年〜2010年)である.それにより,科学や技術分野を越えて,より大きな世界観を得ることができた.次の新しい知見を得るために,科学的な意義はもちろんのこと,「宇宙を自在に往来する独自能力の維持発展」と「人類の活動領域の宇宙への拡大」という宇宙工学・宇宙探査に跨る目標を担い,「はやぶさ2」小惑星探査ミッションが開発中である.
著者
津田 雄一
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.149-155, 2014-06-25

はやぶさ2は,小惑星サンプルリターン探査技術を推し進めるミッションであり,初代はやぶさの技術蓄積を橋頭保として,サンプルリターン探査技術を確実なものとし,かつ新たな探査技術を実証するプログラムである.はやぶさ2は,基本設計思想は初代はやぶさを踏襲することで,開発期間の短縮とヘリテージに依拠した信頼性確保を目指している.一方で,システム設計には,工学上の挑戦的要素を随所に配して,探査技術の発展とミッション価値の増大に貢献している.小天体探査を工学面で持続的に発展させるには,技術の継承と革新の両面をにらみながら,ミッションを組み立てていくことが重要である。はやぶさ,はやぶさ2,そしてその次へ.我が国の小天体探査は続く.

2 0 0 0 OA ALMAの紹介

著者
立松 健一
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.185-188, 2008-09-25

日米欧の国際プロジェクトとして建設中のALMAに関して,計画の概要と現在の進捗を説明する.日本は,全部で80台のアンテナのうち,16台(ACAと呼ばれる)を担当している.日本のアンテナ4台と北米のアンテナ5台が,既にチリ現地に設置されている。また,ACA用の相関器をチリ現地に設置完了した.2008年2月には米欧に先駆け,日本のアンテナを用いて,ALMAに納入されるアンテナとして初めて天体の電波写真の撮影に成功した.
著者
平田 直之 宮本 英昭
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.271-280, 2011-12-25

土星系の魅力的な衛星は,タイタンやエンセラダスだけではない.カッシーニ探査機の活躍によって得られたさまざまな知見は,その他大勢の小型衛星も,太陽系科学において極めて興味深い対象であることを示している.小型衛星は,その小さな重力場や弱い熱的変成履歴という意味で小惑星と対比できるだけでなく,その特徴的な形態や表層の状態が,ほかの衛星や周囲の環と複雑な相互作用の結果であることから,土星系における衛星や環の形成や進化の鍵を握っていると考えられる.本稿では,こうした多様性に富む土星系小型衛星の姿と推定される内部構造,さらには進化史について概説するとともに,今後の探査で期待される観測について議論する.
著者
奈良岡 浩
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.94-101, 2013-06-25
被引用文献数
1

小惑星探査機「はやぶさ」が持ち帰った粒子の有機化合物分析に関する顛末について記述した。S型小惑星表面上に有機化合物が存在するかはおもしろい問題であるが,今のところ,はやぶさ粒子にイトカワ固有の有機物は発見されていない.これからの「はやぶさ2」やNASA「OSIRIS-REx」計画に期待するとともに,このような惑星物質研究を成功させるためには,長期の視点で積極的な若い研究者を育てることが必須である.
著者
小林 憲正
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.94-99, 2011-06-25
被引用文献数
1

土星最大の衛星のタイタンは,窒素・メタンなどからなる濃厚な大気を有し,紫外線,土星磁気圏に捕捉された電子,宇宙線などのエネルギーにより多様な有機物ともやの生成が観測されている.カッシーニ=ホイヘンス探査により,タイタン表面に液体エタンなどからなる湖沼の存在が明らかとなり,また地下にアンモニア水が存在することが示唆された.また,種々の地上模擬実験により,模擬タイタン大気から炭化水素,ニトリル等の有機物や,高分子態有機物「ソーリン」が生成すること,ソーリンの加水分解によりアミノ酸の生成が報告されている.これらの有機物と,液体メタン・エタンもしくはアンモニア水との相互作用により生命の誕生の可能性も議論されている.次期の土星系探査におけるタイタンの有機物・生命探査の可能性について議論する.
著者
廣瀬 史子 あかつきプロジェクトチーム
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.126-129, 2015-06-25

金星探査機「あかつき」は今年(2015年)12月に再び金星に会合する.2010年12月の金星周回軌道投入に失敗した後からの軌道設計には多くの困難が伴った.寝ても覚めても軌道を考える日々が続いたが,ようやく金星への道筋が決定し,奇しくも金星周回軌道投入に失敗した日からちょうど5年後の同日,12月7日に金星周回軌道に投入する.軌道の再設計に際して直面した困難を紹介すると共に,金星周回軌道投入までの計画を述べる.
著者
木村 淳 佐々木 晶 藤本 正樹
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.146-151, 2013-09-25

日本が木星系探査に参加する. 2012年5月に欧州宇宙機関(ESA)の大型惑星探査プログラムとして選定され2022年の打ち上げを目指す木星氷衛星探査機JUICE(ジュース: JUpiter ICy moons Explorer)は,日本チームもその開発に参加する国際協同計画として始動した.太陽系最大の衛星ガニメデの周回探査とエウロパ,カリストのフライバイ探査を行って氷の表面に広がるテクトニクスの全容や内部海の存否を明らかにし,さらに木星大気や磁気圏プラズマ環境などの調査を通して,木星と衛星,それらの相互作用の様相をつまびらかにする.日本のコミュニティにとって数年前まではただの夢だった木星探査へついに手が届くようになった経緯を記し,これからのあゆみを連載していく.
著者
吉川 真
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.9-13, 2008-03-25

国際天文学連合で採決された惑星と準惑星の定義において,この2つの種別を区別するのは「その天体の軌道近くから他の天体を排除したかどうか」である.文字通りにこの定義を当てはめると,水星から海王星までの惑星は,惑星ではなくなってしまう.なぜならば,これらの天体の軌道付近には,小惑星や彗星といった太陽系小天体が多く存在するからである.ここでは,天体の軌道運動に着目して,"さすらいの天体"と"共鳴天体"というものを定義し,これらを除いて考えれば,惑星と準惑星の区別がこの定義で可能であることを示す.
著者
白石 浩章 山田 竜平 石原 吉明 小林 直樹 鈴木 宏二郎 田中 智
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.283-288, 2012-09-25
参考文献数
15

多点ネットワークを構成して火星表層環境および内部構造を観測するペネトレータミッションを提案する.現在の火星内部で生じているダイナミクスを反映する地震活動度と熱的状態を調査するとともに,地球型惑星の分化過程を反映する地殻-上部マントル構造と固体内部から表層および大気層への物質輸送過程に関する知見を得ることを目的とする.ペネトレータモジュールは突入速度300m/secで火星表層下2〜3mに潜り込むプローブ本体に,耐熱シールドと空力減速機構の役割をする膜面展開型柔構造エアロシェルを統合することで小型軽量なシステムを構成する.周回衛星から分離された4機のペネトレータは,火成活動の可能性が指摘されるElysium地域に最大300km間隔のネットワークを構成して地震観測や熱流量観測を行う.一方,柔構造エアロシェルには圧力計,温度計,磁力計,カメラを搭載して大気突入時のモニタリングを行う.
著者
礒田 颯 市川 瑞 植松 千春 及川 雄也 山口 正勝
出版者
日本惑星科学会
雑誌
日本惑星科学会誌遊星人 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.148-154, 2012

本報告は,高等学校授業科目「課題研究」において約7ヶ月間で行った研究成果である.本研究では,人の立ち入ることのできない環境(火山地帯,宇宙等)での活動を想定した無人探査ロボット(以下,ローバー)を,高校生自らの手で設計から製作を行い,伊豆大島において動作検証を行った報告である.本ローバーは,不整地の走破能力を備えるため,駆動部には「ロッカーボギー機構」を採用している.独自の運用システムを開発し,オペレーター側とローバー側の双方向から,リアルタイムでデータの送受信を行い,ローバーの動作状況の監視も可能としている.校内での模擬不整地の走破実験,および,伊豆大島三原山溶岩砂漠地帯における実証実験では,一定の条件下において安定した走行を行えることを確認した.