著者
鈴木 大介 住 貴宏 MOAコラボレーション
出版者
日本惑星科学会
雑誌
日本惑星科学会誌遊星人 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.40-47, 2015

重力マイクロレンズ法は,氷境界の数倍外側に位置する惑星を検出する事ができ,地球質量程度の惑星にまで感度がある.この手法によって30個以上の惑星が発見され,それらは他の観測手法では検出が難しい惑星である.また,重力マイクロレンズ法でのみ検出可能な浮遊惑星も検出され,それらの数量まで見積もられている.日本,ニュージーランドが主体の国際共同研究グループ,MOAはこれまでの惑星検出に多くの貢献をしてきた.本稿では,重力マイクロレンズ法の原理,MOAの日々の観測について説明する.また,惑星が発見されたときのエピソードを交えて,これまでの重要な発見を紹介する.
著者
佐伯 和人 坪井 直 林 宏昭
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.126-135, 2001-09-25
参考文献数
7
被引用文献数
3
著者
永谷 圭司 大木 健 Britton Nathan 佐藤 毅一 野寄 敬博 高橋 悠輔 山内 元貴 秋山 健 吉田 和哉
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.121-129, 2012-06-25

火山噴火時には,その噴火の規模によって定められる危険区域に人が立ち入ることはできない。そのため,噴火予測や住民の避難計画の策定を目指した遠隔操作型の不整地移動探査ロボットによる火山定点観察,移動観察の実現が求められている。ただし,これを実現するためには,不整地環境における高い走行性能,高い位置推定精度,遠隔操作のための長距離通信,長時間活動を支えるための電源といった,様々な技術課題が存在する.これらの課題は,月・惑星における移動探査を行う探査ローバーの技術課題にオーバーラップする部分が少なくない.そこで,本研究では,不整地軟弱土壌における走行性能ならびに,不整地環境におけるロボットの高精度な自己位置推定の実現を目指し,車輪型/クローラ型不整地移動ロボット4台の走行試験を,伊豆大島裏砂漠ならびに,三原山で実施した.本稿では,各走行試験の概要ならびにロボットを紹介すると共に,火山観察ならびに月・惑星探査ロボットに今後必要となる技術課題について考察する.
著者
関根 康人 高野 淑識 矢野 創 船瀬 龍 高井 研 石原 盛男 渋谷 岳造 橘 省吾 倉本 圭 薮田 ひかる 木村 淳 古川 善博
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.229-238, 2012-09-25

エンセラダスの南極付近から噴出するプリュームの発見は,氷衛星の内部海の海水や海中の揮発性成分や固体成分の直接サンプリングの可能性を示した大きなブレイクスルーであるといえる.これまでカッシーニ探査によって,プリューム物質は岩石成分と相互作用する液体の内部海に由来していることが明らかになったが,サンプリング時の相対速度が大きいこと,質量分析装置の分解能が低いことなどの問題があり,内部海の化学組成や温度条件,海の存続時間など,生命存在の可能性を制約できる情報は乏しい.本論文では,エンセラダス・プリューム物質の高精度その場質量分析とサンプルリターンによる詳細な物質分析を行うことで,内部海の化学組成の解明,初期太陽系物質進化の制約,そして生命存在可能性を探ることを目的とする探査計画を提案する.本提案は,"宇宙に生命は存在するのか"という根源的な問いに対して,理・工学の様々な分野での次世代を担う若手研究者が惑星探査に参入し結集する点が画期的であり,我が国の科学・技術界全体に対しても極めて大きな波及効果をもつ.
著者
大谷 栄治 倉本 圭 今村 剛 寺田 直樹 渡部 重十 荒川 政彦 伊藤 孝士 圦本 尚義 渡部 潤一 木村 淳 高橋 幸弘 中島 健介 中本 泰史 三好 由純 小林 憲正 山岸 明彦 並木 則行 小林 直樹 出村 裕英 大槻 圭史
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.349-365, 2011-12-25
被引用文献数
1

「月惑星探査の来たる10年」検討では第一段階で5つのパネルの各分野に於ける第一級の科学について議論した.そのとりまとめを報告する.地球型惑星固体探査パネルでは,月惑星内部構造の解明,年代学・物質科学の展開による月惑星進化の解明,固体部分と結合した表層環境の変動性の解明,が挙げられた.地球型惑星大気・磁気圏探査パネルは複数学会に跨がる学際性を考慮して,提案内容に学会間で齟齬が生じないように現在も摺り合わせを進めている.本稿では主たる対象天体を火星にしぼって第一級の科学を論じる.小天体パネルでは始原的・より未分化な天体への段階的な探査と,発見段階から理解段階へ進むための同一小天体の再探査が提案された.木星型惑星・氷衛星・系外惑星パネルは広範な科学テーマの中から,木星の大気と磁気圏探査,氷衛星でのハビタブル環境の探査,系外惑星でも生命存在可能環境と生命兆候の発見について具体的な議論を行った.アストロバイオロジーパネルでは現実的な近未来の目標として火星生命探査を,長期的な目標として氷衛星・小天体生命探査を目指した観測装置開発が検討された.これらのまとめを元に「月惑星探査の来たる10年」検討は2011年7月より第二段階に移行し,ミッション提案・観測機器提案の応募を受け付けた.
著者
荻原 正博 井田 茂
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.89-97, 2009-06-25

観測技術の発展に伴い,低質量の系外惑星が発見され始めており,特にM型星での系外惑星探査が注目を集めてきている.M型星は低光度であるので,ハビタブルゾーンが中心星近傍に存在するが,そのような領域では円盤ガス面密度が大きく,半径方向の惑星移動が惑星形成に大きな影響を及ぼすと考えられる.そこで,本研究ではM型星周りでの地球型惑星形成を,円盤ガスを考慮に入れたN体シミュレーションで調べた.計算の結果,中心星近傍の地球型惑星の軌道構造は惑星移動速度に大きく依存することがわかった.また,これまで発見されている中心星近傍のスーパーアース(地球質量の数倍程度の惑星)は,惑星移動速度が遅い状況で形成したと解釈できる.更に,惑星移動によって多くの氷成分が内側領域に輸送され,惑星は概して水を多く含むことが示唆された.
著者
橘 省吾 浦川 聖太郎 吉川 真 中村 良介 石黒 正晃
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.4-13, 2013-03-25

地球外始原物質(より古い情報を記憶する物質)の科学は私たちの太陽系の歴史を銀河の歴史と実証的につなげる唯一の手段である.「はやぶさ」「はやぶさ2」の探査天体よりさらに始原的な情報が残されている可能性が高く,また来る10年に往復探査が可能な天体である107P/Wilson-Harrington(彗星/小惑星遷移天体)へのサンプルリターン探査を提案する.本探査計画は惑星物質科学の進展のみならず,太陽系初期につくられる揮発性物質を多く含む小天体の物理的特性を明らかにできる探査であり,惑星形成論においても大きな貢献をなすものである.
著者
太田 宏 丸山 茂徳
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.133-143, 1996-09-25
参考文献数
11
被引用文献数
1
著者
板垣 春昭
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.186-189, 1996-12-01
著者
秋山 演亮
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.102-108, 2013-06-25

2008年に制定された宇宙基本法に基づき2012年7月にようやく関連する法案が成立し,我が国の宇宙開発は総理直下のプロジェクトとして大きく体制が変更がされた.また2013年1月には改訂宇宙基本計画も発表され,新しい宇宙政策が進められつつある.本稿ではこのような体制変更が行われた理由,および新体制が目指す宇宙政策に関して解説し,それらを踏まえた上で,今後の科学・探査計画の立案・遂行にあたり必要となる考え方に関して解説と意見陳述を行う.
著者
鈴木 睦
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.102-104, 2009-06-25

プラネットCは,衛星バス及び搭載機器のフライトモデルが完成し,組み立ての第一段階として噛み合わせ試験(一噛み)が2008年11〜12月末に実施された.ここではプラネットCの開発フェーズの中での「一噛み」の位置づけと打ち上げまでの試験について紹介する.
著者
木村 淳
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.10-15, 2012-03-25

太陽系最大の衛星である木星系のガニメデは,金属核起源の双極子磁場を持つ唯一の衛星である.一方でその内部構造の推定には観測量が不足しており,金属核や岩石マントルの量比には大きな不確定性が残されている.本稿では,ガニメデ内部熱史に関する数値シミュレーションを行い,磁場の発生に必要な金属核の熱的状態を制約条件に用いて内部層構造の量比を制約した研究をレビューするとともに,衛星エウロパやカリスト,タイタンといった磁場を持たない(しかし大きさ等でガニメデと類似性を持つ)衛星との進化史の違いについても議論を広げる.
著者
吉川 一朗 土屋 史紀 寺田 直樹
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.16-21, 2012-03-25

EXCEED計画は,惑星周辺に分布するプラズマが発する極端紫外光を地球周回軌道から分光・撮像する衛星計画である.地球型惑星の大気散逸と,木星型惑星に見られる回転支配型磁気圏でのエネルギー輸送の問題に焦点を当て,地球とは異なる磁気圏特性の理解を目指す.宇宙航空研究開発機構・宇宙科学研究所の小型科学衛星1号機(Sprint-A)に選定され,2013年の打ち上げに向けて開発が進行中である.
著者
関根 利守
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.139-146, 2011-06-25

衝突現象は,天体表面をはじめ至る所に衝突クレータとして,隕石中の組織や鉱物特性として,あるいは地球上の地層の中の衝突起源ガラス小球にもその痕跡を観察することが出来る.このような衝突によって生じる衝撃波の種々の効果を理解し,地球惑星物質に対して衝突現象として記録された痕跡から過去に遡ってその衝突プロセスを解明するには,衝突実験を通した再現実験が不可欠である.本稿では,これらの基礎的理解の為に,衝突実験を通して得られた結果や現状について述べ,問題点を指摘すると同時に衝撃変成度の定量化に向けた展望を試みる.特に衝撃プロセスでの温度履歴の重要性を指摘することに重点を置き,衝撃変成度の定量化に寄与することを目的にする.
著者
富岡 尚敬
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.154-160, 2011-06-25
被引用文献数
1

コンドライト隕石が経験した衝撃圧力は,衝撃回収実験によるケイ酸塩鉱物の変形,再結晶,溶融,相転移の組織と隕石組織との比較をもとに見積もられてきた.しかし,天然の衝突現象と室内の衝撃実験とでは,衝突体のサイズに起因する圧力タイムスケールの大きな違いという本質的問題を抱えている.最近の静的高圧実験によるケイ酸塩の相転移実験の結果は,衝撃実験に基づく従来の圧力スケールは,コンドライトが実際に経験した圧力を過剰に見積っている可能性を示唆している.
著者
中村 正人
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.68-71, 2011-03-25

2010年12月7日に予定されていた「あかつき」の金星周回軌道への投入は失敗した.「あかつき」は今,太陽の周りを公転する軌道上にあり,約6年後に再び金星と会合する可能性がある.