著者
森 数馬 Mori Kazuma モリ カズマ
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科対人社会心理学研究室
雑誌
対人社会心理学研究 (ISSN:13462857)
巻号頁・発行日
no.10, pp.131-137, 2010

近年、音楽の社会心理学的研究が比較的盛んに行われている。しかしながら、それらの研究のほとんどは、日常聴取される多くの音楽に含まれている歌詞について十分に考慮していない。本研究は、日常の音楽聴取における歌詞の役割について検討を行った。131 名の学生・社会人が質問紙に回答した。質問紙は、歌詞に関する音楽聴取傾向の項目、Juslin & Laukka(2004)を参考にした音楽と感情に関わる項目およびRentfrow & Gosling(2003)のSTOMP による音楽の好みについての項目から構成された。調査の結果、歌詞は多くの人に重要視されており、その理由は歌詞に感情移入するためであることが示された。また、歌詞は情動を喚起するのに重要な役割を担うこと、聞きやすく軽快な音楽を好んで聴取する人に重要視されていることが示唆された。これらの結果から、音楽聴取において歌詞は欠かすことのできない要素であると考えられた。
著者
藤本 学 Fujimoto Manabu フジモト マナブ
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科対人社会心理学研究室
雑誌
対人社会心理学研究 (ISSN:13462857)
巻号頁・発行日
no.4, pp.77-85, 2004

本論では、集団内の全ての二者関係の親密さを基に、ノ亅・集団の構造を明らかにするソシオプロフィール法の紹介を行なった。従来、集団構造の分析方法として、ソシオメトリーが広く用いられてきた。しかし、この調査方法は、潜在的に倫理面やプライバシーに関する問題を抱えているため、現代社会において実施が困難になっている。一方、ソシオプロフィール法では、現時点での二者関係がどの程度親密な状態かを評定させることによって、相手への好悪感情を間接的に聞くなど、調査の実施に伴う問題の低減が図られている。また本論では、ソシオプロフィール法の活用例として、同輩集団の構造の時系列的変化について事例的検討を行なった。その結果、同輩集団は初期段階で急激に親密になった後、親密さを維持したまま集団構造を力動的に変化させていったことが明らかとなった。この調査により、ソシオプロフィール法が集団構造を把握する上で有用な方法であることの一端が示された。
著者
小川 晃子 Ogawa Akiko オガワ アキコ
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科対人社会心理学研究室
雑誌
対人社会心理学研究 (ISSN:13462857)
巻号頁・発行日
no.4, pp.21-30, 2004

本研究は、電子コミュニティの援助的な機能に着目し、自助グループにおける援助的な機能の成立状況を明らかにすることを目的としている。高齢者の家族介護者に対する支援を意図して開設されたWWW掲示板を事例とし、44ヶ月に及ぶ7,162件の書き込み記録を分析した。その結果、電子コミュニティにおいては、構成員の同質性に基づく共感的な書き込みにより、帰属意識の強いコミュニティが形成されることが明らかになった。電子コミュニティにおける援助行動は、仮想チームともいえる協働関係で提供されることが多く、情緒的援助にとどまらず対面的な関係を伴う手段的援助に及ぶ場合もあり、自助グループを電子コミュニティで形成することの効果が明らかになった。しかし、オフ会という対面的なコミュニケーション機会が、CMCで成立している電子コミュニティの異質性を高め、このコミュニティの崩壊をもたらす危険性をもっていることも、電子コミュニティの崩壊過程の分析により示唆された。
著者
丸山 利弥 今川 民雄 Fujiyama Toshiya Imagawa Tamio マルヤマ トシヤ イマガワ タミオ
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科対人社会心理学研究室
雑誌
対人社会心理学研究 (ISSN:13462857)
巻号頁・発行日
no.2, pp.83-91, 2002

本研究は、ストレス対処方略としての自己開示が、自己開示以外のストレス対処方略とどのような効果の違いがあるのかを、ストレッサー間の比較と合わせて、調査、検討するものである。このために、2つの要因を取り上げる。第1 の要因は4つに分類したストレスイベントのタイプである。第2に、ストレス対処方略の選択に影響する要因として「自力解決可能性」、「自己責任性」、「(ストレスの)深刻さ」の3つを検討に加えた。結果から、1) ストレスイベントに関わらず、自己開示は他のストレス対処方略よりもストレスを低減させること、2) ストレス対処方略の選択に関わる3要因の効果はストレスイベントによって異なることが確かめられた。
著者
板山 昂 Itayama Akira イタヤマ アキラ
出版者
大阪大学大学院 人間科学研究科 対人社会心理学研究室
雑誌
対人社会心理学研究 = Japanese journal of interpersonal and social psychology (ISSN:13462857)
巻号頁・発行日
no.18, pp.165-171, 2018-03

資料本研究の目的は、厳罰傾向である厳罰志向性の高低による情状酌量の余地の程度、および量刑の重さの差異を検討するとともに、厳罰志向性と情状酌量の余地の程度、量刑判断における世代差を検討することであった。結果として、大学生と保護者で厳罰志向性の強さに差異はみられなかったものの、厳罰志向性は量刑判断に大きな影響を与えること、大学生と保護者の間で量刑の重さには大きな差が生じることが明らかとなった。本研究では、幼女が無差別に殺害される事件と介護疲れ殺人を評価対象としており、保護者は幼女が殺害された事件では被害児童の親に、介護疲れ殺人ではわが子に介護される(または自分が親を介護する)ことを考え(視点取得)、量刑の重さを判断したものと考察された。
著者
正高 杜夫 釘原 直樹 Masataka Morio Kugihara Naoki マサタカ モリオ クギハラ ナオキ
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科対人社会心理学研究室
雑誌
対人社会心理学研究 = Japanese journal of interpersonal and social psychology (ISSN:13462857)
巻号頁・発行日
no.15, pp.95-99, 2015-03

本研究は、集団形成の過程の違いが、内集団バイアスに与える効果について吟味する。具体的には、実験室において形成された最小条件集団から、同様の手続きを用いてさらに集団を分割する事により、集団の形成過程を再現した。実験の結果、内集団バイアスにおける否定的認知傾向(外集団蔑視)が集団形成の過程で生起することは示されなかった。一方、集団形成の過程において、内集団への好意的行動傾向(内集団ひいき)が変化することが明らかになった。以上の結果より、集団間の境界の明確さが内集団ひいき行動に影響を与えることが示唆された。
著者
中井 彩香 沼崎 誠 Nakai Ayaka Numazaki Makoto ナカイ アヤカ ヌマザキ マコト
出版者
大阪大学大学院 人間科学研究科 対人社会心理学研究室
雑誌
対人社会心理学研究 = Japanese journal of interpersonal and social psychology (ISSN:13462857)
巻号頁・発行日
no.18, pp.77-84, 2018-03

原著本研究は、妬みにはネガティブな行動を導く悪性妬みと、ポジティブな行動を導く良性妬みという2つのサブタイプがあるとするサブタイプ理論が、悪性妬みと良性妬みに該当する言葉のない日本においても支持されるか調べた。過去の妬み場面を想起させ、当時の感情や動機、行動を回答させた。妬みを単一の感情とするモデルと2つの感情とするモデルを比較したところ、後者のモデルが適切であることが示された。悪性妬みは他者に向けられたネガティブ感情(敵意)を含む感情であり、他者を低める行動を導く一方で、良性妬みは自己に向けられたネガティブ感情(劣等感)を含む感情であり、自己を高める行動を導くことが確認された。相手の成功を内的要因に帰属するほど、悪性妬みが生じにくく、良性妬みが生じやすいという先行研究の結果も再現された。この結果は、妬みのサブタイプ理論は言語の種類に依存しないことを示唆している。また、本研究のもう1つの貢献点として、悪性妬みを感じたときは問題焦点型コーピングと情動焦点型コーピングの両方が行われるが、良性妬みを感じたときは問題焦点型コーピングが行われやすいことが明らかにされた。Envy is a painful emotion that arises from social comparisons with others. Recent research has identified two types of envy; malicious and benign. The present study investigated whether these envies also exist among the Japanese. Participants in the study were asked to describe a situation in which they experienced envy. Next, they answered certain items measuring their causal attribution of other people's high achievement, feelings toward themselves and others, motivations (including pulling others down, seeking to advance oneself, and emotion- focused coping) and actions. The data fit the two-subtype model of envy better than the single-type model. They showed that malicious envy led to a pulling-down motivation aimed at damaging the position of person viewed as superior, whereas benign envy led to a moving-up motivation aimed at improving one's own position. These results suggested that the types of envy existed among the Japanese. Furthermore, malicious envy caused people to engage in both problem-focused and emotion-focused coping, whereas benign envy caused only problem-focused coping.
著者
相田 直樹 礒部 智加衣 アイダ ナオキ イソベ チカエ Aida Naoki Isobe Chikae
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科対人社会心理学研究室
雑誌
対人社会心理学研究 = Japanese journal of interpersonal and social psychology (ISSN:13462857)
巻号頁・発行日
no.15, pp.39-44, 2015-03

人は、所属欲求のため、拒絶された後に笑顔へ注意が向くことが示されている(DeWall et al.,2009)。また、拒絶感受性が高い人は平時において拒絶顔から注意をそらす傾向があることが知られている(Berenson et al.,2009)。拒絶感受性とは、不安をもって拒絶を予測し、素早く知覚し、過敏に反応する特性である。曖昧な拒絶後に、拒絶感受が高い人は笑顔に注意を向けることができるだろうか。本研究ではドットプロープ課題を用いて、次の代替仮説を検討した。拒絶感受性が高い人は、曖昧な拒絶後に笑顔に注意を向ける、もしくは、拒絶後に注意を向けるだろう。実験の結果はこれらの仮説に反し、拒絶感受性が高い人は、拒絶を経験しない統制条件において、拒絶顔に対する注意を高めることのみが示された。つまり、曖昧拒絶条件における選択的注意は、拒絶感受性による影響を受けなかった。拒絶感受性と不適切な反応の関係について考察した。It has been demonstrated that after an experience of being rejected, individuals pay increased attention to smiles, because of their fundamental need to belong (DeWall et al., 2009). Other research suggests that people with high rejection sensitivity tend to avoid attending faces showing rejection (Berenson et al., 2009). Rejection sensitivity is the disposition to anxiously expect, readily perceive, and intensely react to experiences of being rejected. Do rejection sensitive people also attend to a smile after experiencing an ambiguous rejection? In this study, we use the dot-probe task and examined the following predictions after an ambiguous rejection: highly rejection sensitive people would pay attention to (i) a smiling face, or (ii) disgust face. Contrary to these predictions, results indicated that in control condition, in which there was no rejection, highly rejection sensitive people highly attended only to the disgust faces. On the other hand, in the ambiguous rejection condition, selective attention was not affected by rejection sensitivity. We have discussed the relationship between rejection sensitivity and inappropriate reactions.
著者
釘原 直樹 クギハラ ナオキ Kugihara Naoki
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科社会心理学研究室
雑誌
対人社会心理学研究 (ISSN:13462857)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.1-6, 2015-03-31

災害や緊急事態の人間行動に関する研究結果は人々の一般的イメージ(パニックや反社会的行動の発生)とは異なる。実証的研究データの多くが、人は緊急事態では人間関係や社会規範に基づいた順社会的行動をすることを示している。ここでは、実証的研究の結果に基づき危機事態の行動や意思決定について述べることにする。
著者
樽井 この美 五十嵐 祐 タルイ コノミ イガラシ タスク Tarui Konomi Igarashi Tasuku
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科対人社会心理学研究室
雑誌
対人社会心理学研究 = Japanese journal of interpersonal and social psychology (ISSN:13462857)
巻号頁・発行日
no.16, pp.33-39, 2016-03

本研究は、集団討議場面において集団成員が問題解決に寄与する言動をしないことを沈黙として捉え、集団内での沈黙を抑制する要因について検討した。集団内の圧力への屈服、ネガティブなフィードバックへの恐れ、現状維持といった沈黙の要因は、制御焦点(Higgins,1997)のうち予防焦点と関連すると考えられることから、本研究では、集団討議場面において、予防焦点の優勢な個人の発言時間が促進焦点の優勢な個人よりも短くなると予測し、隠れたプロフィール課題を用いて3名集団での集団討議実験を行った。分析の結果、制御焦点の操作によって発言時間に有意な差はみられなかった。その一方で、促進焦点が優勢となっている場合、特性的な予防焦点が発言と関連しており、特性的予防焦点と、促進焦点のプライミングの交互作用が発言に影響する可能性が示唆された。This study investigated psychological factors that decrease in-group silence.Silence is regarded as behaving passively or doing nothing to influence group decision making in a group,and lead by in-group pressure,threats of getting negative feedback,and status quo. Based on the regulatory focus theory,this study used a hidden profile task in a group with three members and predicted that a minority member in the group primed with prevention focus is likely to speak shorter than those with promotion focus. Results showed that no significant differences were found between promotion focus and prevention focus priming.On the other hand,trait prevention focus of the minorities increased an illocutionally act in the promotion-focused condition.Implication of the result interpreted by the impact of activated motivation on the avoidance of criticism for passive involvements in group tasks among people with chronic prevention focus.
著者
中山 満子 Nakayama Michiko ナカヤマ ミチコ
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科対人社会心理学研究室
雑誌
対人社会心理学研究 = Japanese journal of interpersonal and social psychology (ISSN:13462857)
巻号頁・発行日
no.16, pp.41-46, 2016-03

PTA活動は子どもを持つ親のほとんどが経験する向社会活動の一種である。本研究は、ボランティアなどの援助行動から得られる援助成果が活動継続意図につながるという先行研究(妹尾・高木,2003)を受けて、必ずしも自発的とは言えないPTA活動においても、実際の活動から得られる効果認識と自身の得る内的報酬が活動継続意向につながるのかどうか、さらにこれらがPTA以外の向社会的活動への参加意向にもつながるのかどうかを検討した。10歳から15歳の子どもを持ちPTA活動の経験のある母親120名を対象にWeb調査を行った。その結果、自分の行った活動が役にたつと感じ、自己評価と人間関係の広がりという内的報酬を得ることで、PTA活動の継続意図につながること、またその影響はPTA活動のみにとどまらずにボランティア活動や地域の活動にも波及しうることが示された。さらにその影響は、PTA活動での負担を重く感じている群で特に顕著であることも示された。PTA activity is a kind of prosocial behavior that almost all of parents rearing children experience.The present study examined PTA activities in line with Senoo & Takagi(2003)in which helper obtained the helping effects through the activities such as volunteering and the helping effect determined helpers'motivation of continuing their activities.Research question is whether their finding is applied to PTA activity which is not necessarily executed voluntarily.Furthermore,it was tested that helping effects obtained in PTA activity affected other prosocial behavior such as volunteering or activities in neighborhood a ssociation.Web survey was administered for 120 middle-aged women who had children and have experienced PTA activities.The main results were as follows:(1)Perceived effect of PTA activity and obtained internal reward,i.e.,elevation of self-evaluation and establishment of new relationship,positively influenced the intention to continue PTA activity, (2)this was applied to other prosocial activities,(3)these effects were obtained clearer in groups who felt burdens heavily in PTA activity.
著者
竹内 穂乃佳 釘原 直樹 Takeuchi Honoka Kugihara Naoki タケウチ ホノカ クギハラ ナオキ
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科対人社会心理学研究室
雑誌
対人社会心理学研究 = Japanese journal of interpersonal and social psychology (ISSN:13462857)
巻号頁・発行日
no.16, pp.27-32, 2016-03

Previous studies have revealed that observer's tendencies to attribute to unfortunate victims is affected by the victims'environments and by their willingness to resist disaster. A number of scholars tackle this issue in America, after 9.11,however, this topic has not been very thoroughly studied in Japan. In this study, we used 3 terms ("fault","carelessness"and"responsibility")to study, whether blame attribution differed between case of murder and terrorism.A2×2×2 mixed design (will vs. no will)×(high risk vs.low risk of encountering disaster)×(murder vs.terrorism)was used.The results revealed that in concerning"fault",observers attribute more blame to the victims in both the will and high risk conditions.Furthermore,in the case of the term"careless",observers attribute more blame to victims in the low risk and murder conditions. However, concerning"responsibility", observers'attributions did not differ between any of the conditions. These results suggest observers'blame attribution was influenced by the attaching of labels (fault, carelessness, and responsibility) to the victims'behaviors.従来、第三者の災害被害者に対する責任帰属は本人の抵抗の意思や周りの環境によって変化するといわれてきた。この問題に関してアメリカでは9.11テロ事件以降研究が増加した一方で、日本での研究はほとんど行われていないのが現状である。そこで、本研究では帰属ラベルに「落ち度」、「隙」、「責任」を用い、さらにテロと殺人によって責任帰属が異なるのか否か検討をした。本研究の実験デザインは(被害者の意思(事件現場に自発的に行ったか否か):有条件・無条件)×(災害に遭遇する可能性:高条件・低条件)×(災害の種類:殺人条件・テロ条件)の3要因混合計画であった。その結果、被害者の自発的意思有条件の方が無条件よりも、災害に遭遇する可能性高条件の方が低条件よりも被害者に「落ち度」があるとされた。さらに災害に遭遇する可能性が低い場合には殺人条件の方がテロ条件よりも「隙」があるとされた。一方、帰属ラベルが「責任」の場合は条件間の差異は見出されなかった。以上から、帰属ラベルがテロ被害者への責任帰属に影響を与えることが示唆された。
著者
大工 泰裕 阿形 亜子 釘原 直樹 Agata Ako Kugihara Naoki Daiku Yasuhiro ダイク ヤスヒロ クギハラ ナオキ アガタ アコ
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科対人社会心理学研究室
雑誌
対人社会心理学研究 = Japanese journal of interpersonal and social psychology (ISSN:13462857)
巻号頁・発行日
no.16, pp.21-26, 2016-03

Currently,scams are one of the biggest social problems in Japan.This study investigates whether empathetic observation increases individuals'awareness of their own vulnerability to scams.Moreover, we compared individuals'evaluation of imagined others' vulnerability to that of their own vulnerability.We presented two fraud scenarios (scenarioA and scenarioM)to university students and asked them to rate the victim's responsibility for being defrauded and their own or imagined others'vulnerability to scams. A2×2 between-participants design was used to analyze the relationship between empathetic observation (empathetic,non-empathetic)and the target of vulnerability evaluation(self,others).The results of an ANOVA revealed that empathetic observation did not affect attribution; therefore, the possibility of a failed manipulation was implied. As for vulnerability awareness,the interaction effect was significant in scenario M,which contrasted our expectations. Problems and implications are discussed.詐欺被害が近年大きな社会問題となっており、関係各所が様々な対策を講じているものの一向に問題が解決する気配はみられない。その原因として、詐欺に対する脆弱性認知が十分に向上していないことが考えられる。本研究ではそのような背景を踏まえ、詐欺被害事例を読んだ際に被害者に共感的観察を行うことが、詐欺に対する脆弱性認知を向上させるのかということについて、2種類の詐欺被害事例(事例A, M)を用いた質問紙によって検討した。また、同時に他者に対する脆弱性も評価させ、自己に対する脆弱性認知との比較も試みた。その結果、共感的観察の操作に問題があった可能性が示唆され、事例Aでは脆弱性認知の変化は見られなかった。一方、事例Mでは当初の予測とは異なり、共感的観察が逆効果となる可能性が示唆された。今後は、より統制された状況の設定や、新たな共変量を加えたモデルの開発などさらなる検討が必要とされる。