著者
横山 智哉 稲葉 哲郎 Yokoyama Tomoya Inaba Tetsuro ヨコヤマ トモヤ イナバ テツロウ
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科対人社会心理学研究室
雑誌
対人社会心理学研究 = Japanese journal of interpersonal and social psychology (ISSN:13462857)
巻号頁・発行日
no.14, pp.45-52, 2014-03

本研究は、政治的な話題を話すことの抵抗感について検討した。具体的には、日頃話していると想定される9つの話題の中から、より政治的関連性が強い話題を話すことにどの程度抵抗を感じるのか、またその抵抗感を低減する要因も併せて検討した。20代から60代の有権者300名を対象にWeb上で、調査を行ったところ、日常的に話している9つの話題の中では、「国や政府に関する話題」が相対的に最も話すことに抵抗を感じる話題であった。しかし、実際には「国や政府に関する話題」を話す際に感じる抵抗の程度は非常に低いことが示された。また、抵抗感を低減する要因として、ハードな争点的知識が効果を持つ一方で、新聞閲読頻度が抵抗感を高めていることが明らかとなった。
著者
釘原 直樹 Kugihara Naoki クギハラ ナオキ
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科対人社会心理学研究室
雑誌
対人社会心理学研究 = Japanese journal of interpersonal and social psychology (ISSN:13462857)
巻号頁・発行日
no.14, pp.1-15, 2014-03

スケープゴーティングとは、何らかのネカティブな事象が生起、あるいは生起が予見されている際に、事態発生や拡大・悪化に関する因果関係・責任主体が不明確な段階で、原因や責任をある対象に帰属したり、その対象を非難することが、一定の集合的広がりをもって行われることである。また因果関係の枠外にある対象に対する責任帰属や非難、そしてそのような認知や行為が共有化されていくプロセスもスケープゴーティングに含める。このスケープゴーティングにおいて、対象となるものをスケープゴートと呼ぶ。ここでは、スケープゴーテイングの発生プロセスに関するモデルを構成し、さらにスケープゴーティングを促進するマスメディアの報道特性やスケーフゴートの時間経過による変遷プロセス(波紋モデル)について述べる。The scapegoating was typical kinds of collective attribution of causes and responsibility and blaming a certain targets when people perceive that negative events occurred in past or will occur in the future. The targets of scapegoating may be selected on the basis of ambiguous or no causal relationship to the negative event. Here I proposed a total scapegoating model and discussed characteristics of mass media publicity. And finally, a scapegoat transition model (the ripple widening model) was presented.
著者
安部 健太 Abe Kenta アベ ケンタ
出版者
大阪大学大学院 人間科学研究科 対人社会心理学研究室
雑誌
対人社会心理学研究 = Japanese journal of interpersonal and social psychology (ISSN:13462857)
巻号頁・発行日
no.17, pp.53-60, 2017-03

原著スポーツ場面において、ホームチームのほうがアウェイチームよりも有利だとするホームアドバンテージが指摘されてきた。ホームアドバンテージを生じる要因には習熟因子、移動因子、ルール因子、観客因子が挙げられる(Courneya & Carron, 1992)。観客因子に注目したとき、観客の人数や密度を比較した分析はなされてきたものの、純粋に観客の不在の効果を分析した研究は少ない。これはスポーツの試合において観客がいることが一般的だからである。そこで本研究では、インフルエンザ感染の拡大により複数の無観客試合が実施された2008-09シーズンのメキシコのサッカーリーグを対象として分析を行い、観客因子の効果を検討することを目的とした。分析の結果、選手のパフォーマンスにはホームアドバンテージの傾向が認められたものの、観客の有無による差異はみられなかった。一方で審判の判定は、観客の有無による警告数に差が一部認められた。
著者
今村 夕貴 釘原 直樹 イマムラ ユキ クギハラ ナオキ Imamura Yuki kugihara naoki
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科対人社会心理学研究室
雑誌
対人社会心理学研究 = Japanese journal of interpersonal and social psychology (ISSN:13462857)
巻号頁・発行日
no.16, pp.47-52, 2016-03

本研究は、Bem(2011)の予知的恐怖回避実験の結果を再検討することを目的とした。Bem(2011)の研究については、これまで多くの追試が行われている。しかしながら、一貫した結果は得られていない。Galak, Leboueuf,Nelson&Simmons(2012)は、Bem(2011)による実験の結果は参加者数の過多による帰無仮説の誤棄却であると主張している。したがって本研究では、実験参加者数を減らし、Bem(2011)の主張を再検討した。加えて、山羊・羊効果(Schmeidler,1945)から、超心理現象を信奉する程度が実験結果に影響すると考えられる。そのため、超自然現象信奉尺度(中島・佐藤・渡邊,1993)得点と参加者が予知能力の信奉する程度を分析に用い、Bem(2010)の主張を詳細に検討した。結果、実験条件間に有意な差は認められず、Bem(2011)の研究は再現されなかった。The purpose of the study was to reexamine the experiment of precognitive avoidance of negative stimuli (Bem,2011).Although, several researchers have attempted to replicate the results of Bem's study,they have had inconsistent results.Galak,Leboueuf,Nelson&Simmons(2012)criticized that the result of Bem's study was derived from large sample size and false rejection of null hypothesis. Therefore, we reexamined Bem's study by assembling adequate number of participants. In addition,because the degree of believing in psi is said to have effects on precognitive ability(sheep-goat effect(Schmeidler,1945)),we me asured the score of Paranormal Belief Scale(Nakajima,Sato&Watanabe,1993)and compared the performance of participants who have different level of believing in psi.Our results did not match those reported by Bem;thus,we were not able to replicate the 2011 precognitive ability study.
著者
鶴田 智 Tsuruta Satoshi ツルタ サトシ
出版者
大阪大学大学院 人間科学研究科 対人社会心理学研究室
雑誌
対人社会心理学研究 = Japanese journal of interpersonal and social psychology (ISSN:13462857)
巻号頁・発行日
no.18, pp.173-178, 2018-03

資料近年、インターネットやSNS上で犯罪者を誹謗中傷するなど、誰でも容易に社会的制裁を行うことができるようになった。社会的制裁とは犯罪者への非法的な制裁行為とされ、犯罪者の社会復帰の妨げとして問題視されている。法制度上の刑罰があるにも関わらず、なぜ社会的制裁が起きるのか。先行研究によれば、法的制裁(刑罰)と社会的制裁には相補的な関係性があり、法的制裁が社会的制裁を促進(または抑制する)可能性がある。本研究は、刑事事件の犯罪者に対する法的制裁と社会的制裁の相補性の検証を目的とした2つの実験を行った。その結果、客観的指標(社会的制裁の強さ、法的制裁の重さ)の影響による法的制裁と社会的制裁の相補性は確認されなかったが、主観的評価(社会的制裁の強さ認知、刑の重さ認知)において、法的制裁と社会的制裁の相補性の存在が示唆された。よって、人々の主観的評価に影響を及ぼす事で、客観的な法的制裁と社会的制裁の相補性を実現できると考えられる。社会的制裁が引き起こす問題を解決するために、今後は人々の主観的評価に影響を及ぼす要因を検討する必要がある。
著者
木村 昌紀 余語 真夫 大坊 郁夫 Kimura Masanori Yogo Masao Daibo Ikuo キムラ マサノリ ヨゴ マサオ ダイボウ イクオ
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科対人社会心理学研究室
雑誌
対人社会心理学研究 (ISSN:13462857)
巻号頁・発行日
no.7, pp.31-39, 2007-03

本研究では、他者の感情表出に対する感受性を測定する「情動伝染尺度(Doherty, 1997)」の改訂を行い、共感性や精神的健康との関連性を検討した。363名の大学生が質問紙に回答した。因子分析の結果から、"喜び伝染"、"悲しみ伝染"、"怒り伝染"、"愛情伝染"の4つの下位因子が抽出され、各因子の内的整合性および再検査法による信頼性が確認された。また、共分散構造分析の結果から、1因子モデルよりも4因子モデルのほうが、適合度が高かった。加えて、他者の感情表出に対する感受性は、認知的共感性よりも情緒的共感性と有意な関連を示していた。さらに、喜び伝染のようなポジティブ感情の感受性が高い人は精神的健康が良かった一方、悲しみ伝染や怒り伝染のようなネガティブ感情の感受性が高い人は精神的健康が悪かった。これらの結果から、特定の感情について伝染しやすい人が、別の感情についても伝染しやすいとは限らず、感情の種類によって精神的健康への影響が異なることが示唆された。情動伝染のメカニズムを考える場合、感情の種類によって独立したプロセスを仮定する必要がある。
著者
高松 礼奈 Takamatsu Reina タカマツ レイナ
出版者
大阪大学大学院 人間科学研究科 対人社会心理学研究室
雑誌
対人社会心理学研究 = Japanese journal of interpersonal and social psychology (ISSN:13462857)
巻号頁・発行日
no.18, pp.53-59, 2018-03

原著本研究は、人身的ジレンマを判断課題に使用し、多くの人びとを救うことを目的とした特定の他者への危害の肯定に影響を与える要因として共感を検討した。そこで、犠牲となる特定の他者に対する共感を操作し、危害の肯定率に変化が生じるか質問紙実験を行った。結果、犠牲者に共感しにくい社会的属性をフレーミングしたところ(低共感条件)、直接的危害を与える功利主義判断をする傾向が高くなった。また、犠牲者に共感するよう教示してから判断課題を行なったところ(高共感条件)、危害を与える功利主義判断をする傾向が低くなった。このことから、ジレンマ状況において、共感を操作するフレーミングは功利主義判断に影響を及ぼすことが示された。The present study examined the effect of empathy on utilitarian judgment in sacrificial dilemmas by manipulating empathy with a victim. Results showed that participants who read a modified version of Footbridge dilemma in which the victim is described as a released convict were more willing to sacrifice him to save more people. In the empathy-inducing condition, participants performed a perspective-taking task to increase empathic concern for the victim and were less likely to make utilitarian judgment. These suggest that utilitarian judgment in high-conflict dilemmas is not only based on a calculation of greater good, but is also susceptible to interpersonal cues, such as empathy with the victim.
著者
望月 正哉 澤海 崇文 瀧澤 純 吉澤 英里 Mochizuki Masaya Yoshizawa Eri Takizawa Jun Sawaumi Takafumi ヨシザワ エリ サワウミ タカフミ モチズキ マサヤ タキザワ ジュン
出版者
大阪大学大学院 人間科学研究科 対人社会心理学研究室
雑誌
対人社会心理学研究 = Japanese journal of interpersonal and social psychology (ISSN:13462857)
巻号頁・発行日
no.17, pp.7-13, 2017-03

原著In recent years, some forms of interpersonal communication among the youth are labeled as "ijiri". The current paper investigates what characteristicsijiri is perceived to have, in comparison with similar types of behavior, teasing and bullying. We identified conceptual characteristics of each behavior in an open-ended preliminary survey. In a following study, we asked participants to rate to what degree each feature would characterize each of the three kinds of behavior while taking an observer's perspective. Results revealed that ijiri was perceived to be different from teasing and bullying based primarily on intention of the behavior: ijiri was perceived to carry more positive features such as the provider's and receiver's mutual intention to get closer to each other while less holding negative characteristics such as malicious and contemptuous attitudes toward the receiver.近年、若年者を中心とした対人コミュニケーションのなかでいじりという言葉が用いられる場面がある。本研究では、対人行動におけるいじりとはどのような特徴をもつ行動と認識されているのかについて、類似する行動と考えられるからかいやいじめとの比較を通じて検討した。初めに自由記述による予備調査を実施し、いじり、からかい、いじめがもつ概念的特徴を見出した。そのうえで、本調査では、第三者の立場から、いじり、からかい、いじめにおいて、それらの概念的特徴がどの程度あてはまるのかを評価させた。その結果、いじりは他の2つの行動に比べ、好意や互いが仲良くなりたいといった肯定的な特徴をもちつつ、悪意や受け手をバカにするといった否定的な特徴をもたないと評価されていた。このことから、いじり行動はからかいやいじめ行動と比較して、それぞれの意図性などをもとにして異なる特徴をもつと認識されていることが示された。