著者
賀来 康一
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.10, pp.977-982, 1997-10-25
参考文献数
5
被引用文献数
10 2

鶏肉国内流通が国産ブロイラー正肉(もも肉とむね肉)価格(以下,価格)形成に及ぼす影響を検討した.'73年~'94年の,国内流通鶏肉に関し,流通形態別国産鶏肉と輸入鶏肉の内訳•総流通量•構成比率の変化を計算した.'88年~'94年の,価格の年間平均値と価格差を計算した.鶏肉輸入増が,価格へ及ぼす影響を検討した.(1)'87年~'94年の,国産鶏肉流通量減少の理由は,鶏肉輸入増である(P<0.01).(2)'73年~'94年に,国内流通に占める国産鶏肉屠体•中ぬき,解体品,輸入鶏肉の比率は,59.3,37.3,3.4%から8.9,59.7,31.4%へ変化した.(3)'88年から'94年に,もも肉価格は上昇,むね肉価格は下落し,価格差は拡大した.(4)価格差拡大の原因は,鶏肉輸入増(P<0.01),主に正肉の輸入増(P<0.01),タイと中国からの輸入増(P<0.05)であった.(5)鶏肉輸入増は,国産ブロイラーむね肉価格への影響が大きい.
著者
土肥 宏志 山田 明央 圓通 茂喜 福川 胎一郎
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.474-480, 1997-05-25
被引用文献数
3

オーチャードグラス(Dactylis glomerata L. cv. Akimidori),ペレニアルグラス(Lolium perenne L., CV. Friend),トールフェスク(Festuca arundinacea Schreb. cv. Lubrette)トメドーフェスク(Festuca pratensis L. cv. Tolnosakae)のエーテル抽出物から,コールドとラップ法を用い揮発性の化学物質を捕集した.その揮発性物質について,ガスクロマトグラフとガスクロマトグラフー質量分析計を用い分析を行った.その結果,緑の葉の特有なにおいを示し,また,広く植物界に存在することが知られている,シス-3-ヘキセノール(青葉アルコール)とトランス-2-ヘキセナール(青葉アルデヒド)が調べたどの牧草においても多量に検出された.そこで,この青葉を示すにおい物質を乾草に3段階の異なる濃度(50μg,5mgと100mg)で添加し,ヤギの採食に及ぼす影響を調べた.シス-3-ヘキセノールを100mgと5mgを添加した乾草に対するヤギの採食は,無添加の乾草に対する採食に比べ有意に抑制され,50μgの添加では有意でにはないが採食が抑制された.しかし,トランス-2-ヘキセナールは,どの濃度においても採食に影響を示さなかった.これらの結果により,草食家畜の採食する牧草に念まれている,青葉特有のにおいを示すシス-3-ヘキセノールが,ヤギの採食行動を抑制する作用のあることが示唆された.
著者
山内 邦男 清水 誠 高宮 幸江 川上 浩 GANGULI N. C.
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.329-335, 1983

2種のインド水牛,Murrah種とSurti種,より得た乳からカゼインと乳清蛋白質を単離し,その性質を調べた.全カゼインの電気泳動パターンとアミノ酸組成は2種の水牛乳でほとんど同じであった.Murrah種の水牛乳からα<sub>s1</sub>-, α<sub>s2</sub>-, β-,およびκ-力ぜインをAmberliteCG-50およびDEAE-Sephadexクロマトグラフィーによって単離,精製した.各カゼイヤのアミノ酸組成は,イタリア水牛のカゼインについて報告されている値と一致していた.スラブ電気泳動で水牛乳α<sub>s1</sub>-カぜインは複数のバンドを示した.ホスファターゼ処理によってバンドは1本になることから,この不均一性はりん酸化の違いによるものと考えられた.α<sub>s1</sub>-, α<sub>s2</sub>-, β-およびκ-カゼインの量比は40:9:35:12であり,α<sub>s2</sub>-カゼインの比率が低い点でイタリア水牛(α<sub>s1</sub>-とα<sub>s2</sub>-カゼインがそれぞれ30および18%)と異なっていた,Murrah種とSurti種の全乳清蛋白質をスラブゲル電気泳動,SDSゲル電気泳動によって比較した結果,両者はほぼ同様のパターンを示した.また,抗-ウシ乳清蛋白質血清を用いた免疫電気泳動の結果,水牛乳の主要乳清蛋白質は牛乳のそれと免疫化学的に類似していることが示された.
著者
小松 正憲 横内 圀生 阿部 恒夫 小澤 周司 北沢 貴一
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.7, pp.493-497, 1981
被引用文献数
2

農林水産省岩手種畜牧場と福島種畜牧場における後代検定娘牛ホルスタイン種407頭,ジャージー種30頭を用いて,κ-力ゼイン(κ-cn),β-ラクトグロブリン(β-1g),αS1-カゼイン(αS1-cn),β-カゼイン(β-cn)座位の遺伝子型と乳量との関連性につき検討した.乳量記録はホルスタイン種では初産のもの,ジャージー種では初産から8産までのものを使用した.なお,ジャージー種における乳量は,産次が同一でないため成年型に換算して分析を行なった.分析方法は,ホルスタイン種の3年度の乳量記録では,乳量を集団平均,牛乳蛋白質型の効果,種雄牛の効果,誤差に分けた二元分類データととして最小二乗法により分散分析を行なった.残りのホルスタイン種とジャージー種の乳量記録については,種雄牛あたりの娘牛の数が少なかったため,乳量を集団平均,牛乳蛋白質の効果,誤差に分けた一元分類データとして分散分析を行なった.またあわせて,乳量の全分散に占める牛乳蛋白質型の効果の割合についても推定した.牛乳蛋白質型の判定は,既報の尿素加澱粉ゲル電気泳動法によって行なった.その結果,κ-cn型だけは常に,乳量の全分散の少なくとも数パーセントの割合を占める効果をもっていることが推察された.またκ-cn型間で乳量に統計的有意差が認められたのは,集積データのうち岩手種畜牧場のものであり,乳量の平均値をκ-cn型間で比較すると,κ-cn AB型の乳量は他のホモ型のそれよりも常に多かった.他の牛乳蛋白質型であるβ-1g型,α<sub>S1</sub>-cn型,β-cn型,およびκ-cnとβ-1g両座位におけるヘテロ座位数と乳量とには関連性は認められなかった.また牛乳蛋白型と脂肪率,無脂固形分率との間にも,一定の関連性は認められなかった.
著者
田先 威和夫 茗荷 澄
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.153-158, 1964-06-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
4

黄色とうもろこしを54%含む産卵用配合飼料と,とうもろこしの全量または半量をマイロに置換した飼料を用いて産卵鶏を飼育し,体重,斃死,産卵率,卵重,飼料要求率および卵黄色について調査した.その結果,体重,斃死の状況および卵重については両飼料間に差異はみとめられなかつた.産卵率および産卵に対する飼料要求率においても,統計上明らかな差異は求められなかつたが,全期間を通じてマイロはとうもろこしに劣るように観察された.しかも,とうもろこし飼料をマイロ飼料に変更することにより産卵率は低下し,逆にマイロ飼料をとうもろこし飼料に置換することにより産卵率が向上することから,実用上とうもろこしはマイロよりも優れた産卵用穀物飼料であると考えられる.なおマイロの産卵率を底下させる原因がさらに明らかにされれば,マイロの産卵用飼料に利用される可能性や,とうもろこしに代替し得る量的比率の決定も明らかにされよう.マイロ飼料を与えた鶏の卵黄は,黄色とうもろこし飼料を与えたものよりも黄色度が淡いことが観察された.これはアルファルファミールや, β-apo-8'-carotenoicacid ethylester (β-caroteneの一誘導体)の添加により改善されるが,しかし黄色とうもろこし給与時の卵黄色に完全に復することはなく,卵黄着色効果に対する黄色とうもろこしの優秀性が確認された.
著者
市川 意子 市川 忠雄 溝本 朋子
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.9, pp.780-786, 1996-09-25
参考文献数
11
被引用文献数
2 2

限局した一地方で得られたウシ乳房炎から分離した黄色ブドウ球菌の毒素産生性パターンと,同じ地域の病院患者から得られた黄色ブドウ球菌が同じパターンをもっているかどうかを検討し,地域的に同じパターンの黄色ブドウ球菌がウシとヒトとの感染症に分布している可能性をみた.用いた黄色ブドウ球菌は,1990年10月から1993年9月までの間に千葉県館山市付近における132の酪農家のウシ乳房炎乳から分離した290株と,1992年11月から1993年3月の間に,病院患者から分離した131株である.その結果,1) ウシ乳房炎乳からの分離株では,コアグラーゼVI型が最も多く,毒素は57.9が産生していてエンテロトキシン(SEA~D)が51.7%,毒素性ショック症候群毒素-1(TSST-1)が31.7%を占めていた.エンテロトキシン産生株中でSECが47.3%と最も多かった.2) ヒト臨床分離株では,コアグラーゼはII型が最も多く,ウシ株に多かったVI型はなかった.毒素は73.3%が産生していてエンテロトキシンが68.7%,TSST-1が45.0%を占めていた.エンテロトキシン産生株中でSECが54.4%と最も多かった.3) コアグラーゼ型と毒素産生の組合せで最も多かった菌株は,ウシではVI型,SEC,TSST-1の組合せで全体の19.3%,ヒトではII型,SEC,TSST-1の組合せが全体の36.6%であった.4) 卵黄反応は,ウシ株およびヒト株でそれぞれ68.5%および96.2%の陽性割合であった.前者ではVI型,SEC,TSST-1株の97.8%が陰性であったのに対して,後者ではII型,SEC,TSST-1株の95.8%が陽性であった.5) 同じ地域におけるヒト臨床分離株とウシ乳房炎からの分離株との間に,毒素産生プロフィールの共通性は認められなかった.
著者
渡辺 伸也
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.81, no.1, 2010-02-25

体細胞クローン牛由来畜産物の安全性確認は,全国畜産場所長会の「畜産技術開発推進に関する提案」や地域の畜産推進会議の要望事項として,ここ数年来,独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構畜産草地研究所に寄せられてきた重要な要望事項のひとつであった.畜産草地研究所では,全国の関係機関の協力を得,体細胞クローン牛およびその後代牛の健全性や生産物性状の調査を進め,2008(平成20)年3月,「体細胞クローン牛・後代牛の健全性ならびに生産物性状に関する国内調査報告書」を取りまとめるなど,その要望に応えるよう務めてきた.<BR>食品安全委員会は,この国内調査報告書をはじめとした国内外の参考資料に基づく慎重な審査ならびにリスクコミュニケーションやパブリックコメントを実施し,新開発食品評価書「体細胞クローン技術を用いて産出された牛および豚ならびにそれらの後代に由来する食品」を公表した(2009(平成21)年6月25日).これを受けた農林水産省の通達(同年8月26日)の内容は,実質的に1999(平成11)年11月に出された体細胞クローン牛の出荷自粛要請の継続であった.<BR>このような情勢を受け,今回の問題別研究会では,「体細胞クローン技術の取り扱いと利用方向」というテーマを設定し,体細胞クローン牛豚およびその後代に関するリスク評価の経緯やその結果ならびにリスク管理機関(厚生労働省と農林水産省)の方針や考え方を担当官から参加者にわかりやすく説明していただくとともに,参加者の質問にも答えてもらうことにした.あわせて,現在の農林水産省の方針を踏まえた体細胞クローン技術の利用方向として,「クローン検定」と「医学・医療への利用」に関する研究について,参加者の認識を深めるため,関係する理論や実践に詳しい専門家より最新の研究情報を提供していただくことにした.<BR>担当官の説明に対し,参加者からは,「食品安全委員会の審査によって,体細胞クローン牛豚の安全性が確認されたにもかかわらす,農林水産省は,なぜ,これらの動物の規制を続けるのか」という声があがった.農林水産省の担当官からは,規制する根拠として,「低い生産効率など,商業生産に見合わない技術段階」と「国民理解の醸成不足」が提示された.これに対して,参加者からは,「どこまで生産効率を高めたら規制を解除できるのか,その基準を教えて欲しい(研究者)」,「消費者は皆よく知っている.規制を続けることがサイレント・マジョリティの声ではない(消費者)」などといった質問や意見がだされた.研究会で提起された論点の詳細については,「体細胞クローン家畜の生産効率向上へ向けた将来展望(12月15日)」の分もあわせて,「畜産草地研究所研究資料(10号 ; 予定)」に掲載し,今後の議論の参考に資したいと考えている.<BR>最後に,年末のご多忙な時期にもかかわらず,研究会の講師を務め,また,原稿の取りまとめにもご協力いただいた諸先生に感謝いたします.

2 0 0 0 OA 畜産経営学

著者
松岡 忠一
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2-4, pp.39-40, 1954 (Released:2008-03-10)
参考文献数
8
著者
蔡 義民 増田 信義 藤田 泰仁 河本 英憲 安藤 貞
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.72, no.10, pp.536-541, 2001-10-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1 14

低未利用飼料資源を有効に利用するため,容易に流通できるポリドラムサイロを用い,食品産業廃棄物である茶飲料残渣の飼料調製•貯蔵技術を検討した.茶飲料生産工場から排出された緑茶飲料残渣には乳酸菌は検出されず,好気性細菌および酵母が高い菌数で分布していた.茶飲料残渣に含まれるグルコースなどの可溶性炭水化物(WSC)がきわめて少ないため,飼料作物のようなサイレージ発酵が出来なかった.飼料作物から分離された乳酸菌株Lactobacillus plantarum FG1または市販乳酸菌剤Lactobacillus rhamnosus SN1とAcremonium属菌由来のアクレモニウムセルラーゼを添加して茶飲料残渣サイレージを調製した.乳酸菌とセルラーゼを添加した茶飲料残渣サイレージはpH値が低く,乳酸含量が高い良質なものが調製され,125日間の貯蔵中に変敗しなかった.また,茶飲料残渣サイレージにはタンパク質,機能性成分であるカテキン類,カロチンおよびビタミンEなどが豊富に含まれた.
著者
渡辺 晴彦 宮崎 昭 川島 良治
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.12, pp.706-712, 1975-12-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
18

肥育牛に尿素を含む飼料を与えたとき,尿石症の発生が少ない傾向のあることが観察されている.そこで尿石症に対する尿素の作用を確かめるために,めん羊を用いて尿素給与時の水分代謝と尿中ミネラル濃度を検討した.めん羊6頭を2区(だいずたん白質区と尿素区)に分け,予備期14日間,試験期10日間よりなる2期について,ラテン方格法による試験を行った.試験期間中には飲水量,尿量,糞中水分量,尿のpH,尿の浸透圧,血液のヘマトクリット値,尿中のCa, MgおよびP濃度を測定し,その結果を分散分析した.その結果,試験の時期間に有意差(P〈.01)を認めたが,尿素給与の影響のみを調べたところ,代謝体重当たりの尿量は尿素給与時に31%増加し(P〈.05),飲水量は17%増加した.一方,糞中水分量,尿の浸透圧,血液のヘマトクリット値,尿のpH,尿中のCaおよびP濃度には尿素給与による影響はみられなかった.しかし尿中のMg濃度は尿素給与時にやや低かった.そのため,尿素の給与は飲水量と尿量を増加させることによって尿石症の発生を予防するのではないかと思われた.なお,本試験ではめん羊の代謝体重当たりの飲水量と尿量との間には,r=0.931という高い正の相関を認めた.
著者
松石 昌典 加藤 綾子 石毛 教子 堀 剛久 石田 雄祐 金子 紗千 竹之中 優典 宮村 陽子 岩田 琢磨 沖谷 明紘
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.423-430, 2005-11-25
被引用文献数
2 13

名古屋コーチン肉を特徴づけているおいしさの要因を明らかにするため,ブロイラーと合鴨肉を比較対象として,官能評価と遊離アミノ酸などの分析を行い,以下の結果を得た.名古屋コーチンとブロイラーの加熱もも肉の2点嗜好試験では,味は両者間で差はなかったが,香り,食感および総合評価で前者が有意に好ましいと判定された.両者の2点識別試験では,うま味の強さは両者間で差がなかったが,品種特異臭と推定される名古屋コーチン臭と硬さが名古屋コーチンが有意に上位にあると判定された.両鶏のもも肉から調製したスープの2点識別試験では,うま味の強度はブロイラーが強い傾向にあった.コク味はブロイラーが有意に強かった.両スープにおける遊離アミノ酸の総モル数はブロイラーが多い傾向にあり,グリシン,ヒドロキシプロリン,セリン,アスパラギン,β-アラニン,アラニンおよびプロリンはブロイラーが有意に多かった.その他のアミノ酸は有意差がなかったが,ブロイラーが多い傾向にあった.名古屋コーチン加熱もも肉と合鴨加熱むね肉の2点識別試験では,うま味強度は名古屋コーチンが大きい傾向にあった.合鴨臭と硬さは合鴨が有意に上位にあると判定された.重量比でブロイラーもも挽肉8に合鴨むね挽肉2を混合したパティは,名古屋コーチンもも挽肉パティとは香りを根拠にした3点識別試験で識別できなかった.以上の結果より,名古屋コーチンと合鴨を特徴づけているおいしさの要因は,味ではなく,両者の互いに類似した特有香と豊かな噛みごたえであり,ブロイラーはうま味とコク味の強いスープを与える特性を有していると結論された.
著者
前原 正明 村澤 七月 中橋 良信 日高 智 加藤 貴之 口田 圭吾
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.79, no.4, pp.507-513, 2008-11-25
被引用文献数
4 3

黒毛和種572頭のロース芯から得た脂肪交雑の脂肪酸組成をガスクロマトグラフィーにより分析した.ロース芯を画像解析した値と,各脂肪酸との関連性を調査した.モノ不飽和脂肪酸(MUFA)割合の平均値は57.0%(去勢 : 56.4%,メス : 58.3%),ロース芯脂肪割合の平均値は44.4%(去勢 : 45.6%,メス : 41.6%)であった.MUFA%は出荷月齢およびBFSナンバーと正の相関を示した(それぞれ0.27,0.25 : <I>P</I> < 0.01).BMSナンバーと有意な相関を示した脂肪酸はステアリン酸(-0.11 : <I>P</I> < 0.01)のみであった.MUFA%はあらさ指数(0.16)および最大あらさ指数(0.11)と正の,細かさ指数(-0.17)と負の相関係数を示した(<I>P</I> < 0.01)が,ロース脂肪割合(0.04)とはほぼ無関係であった.脂肪交雑の平均階調値はMUFA%と負(-0.38)の,パルミチン酸と正(0.43)の相関係数を示した(<I>P</I> < 0.01).
著者
神谷 誠
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.5, pp.277-282, 1958

各種獣毛のアミノ酸組成をPaper chromatographyを用いて分析し,これを比較検討した結果は次のごとくである。<br>1) この分析においては,17種のアミノ酸が定量された。このほかにtryおよびlanthionineの存在が推定きれる。一般に多量に存在するアミノ酸はcys, glu,asp, leuおよびargであつて,hisはつねに少量であり,hyproは存在しない。<br>2) glu, lysおよびala以外のアミノ酸含量は,動物の種類により有意の差を示す。また酸分解により生じるアンモニア態窒素量の動物の種類による差異も有意である。<br>3) 各種獣毛について,cys対比アミノ酸組成の比較検討を行なつた。その組成において,コリデール種緬羊毛とアンゴラ種家兎毛,三毛猫毛と大黒鼠毛とはそれぞれ類似のアミノ酸組成をもつ。<br>4) 獣毛のアミノ酸組成からみると,cys, glu, asp,leuおよびargがその蛋白構成の共通的主要アミノ酸であつて,その他のアミノ酸をふくめて動物の種類により有意の差を示すのである。<br>5) アミノ酸組成の分析法として,緬羊毛について,Paper chromatographyによる方法を他の分析法と比較検討した結果,これが本研究の目的に使用し得ることを確認した。
著者
口田 圭吾 八巻 邦次 山岸 敏宏 水間 豊
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.121-128, 1992
被引用文献数
1 1

牛枝肉規格は,牛肉の価値を判断する上で重要な指標となるが,その判定は,スタンダードを基準にしているものの,肉眼的方法により行なわれている,また,脂肪交雑の粒子の大きさおよび形状なども,肉質の判定において重要な要因となっている.本研究では,それらの形質をコンピュータ画像解析により数値化する方法を検討した.また,1975年から1988年までの14年間に実施された,黒毛和種および日本短角種産肉能力間接検定時に撮影されたロース芯断面の写真に対して,開発した方法を適用し,得られた画像解析値に関する遺伝的パラメータを算出し,従来の格付による評価値と画像解析値との比較を行なった.遺伝的パラメータの推定にはHARVEYのLSMLMW(1986)を使用し,要因として年次-検定場,年次-検定場内種雄牛および検定開始時日齢への1次および2次の回帰をとりあげた.黒毛和種および日本短角種のロース芯断面内脂肪割合はそれぞれ7.88%,5.18%であり品種間の有意性が認められた.また,脂肪交雑粒子の大きさを示す面積値および形を表す形状値は両品種で有意差が認められなかった.画像解析で算出したロース芯断面内脂肪割合の遺伝率は黒毛和種が1.09,日本短角種が0.45であった.画像解析で算出した脂肪割合と格付による脂肪交雑評点との間の表型相関は,黒毛和種が0.63と比較的高かったものの,日本短角種では0.14と非常に低い値を示した.このことは,脂肪交雑程度が低い品種に対する肉眼による格付の難しさを示唆しているものと考えた.
著者
小澤 壯行 平井 智絵 Lopez-Villalobos Nicolas 西谷 次郎
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.199-205, 2010-05-25
参考文献数
22

近年,山羊飼養の見直しと飼養熱の高まりがわが国において着実に定着しつつある.しかし,山羊産品の商品化には隘路が多く消費者の受容性が高い産品が早期に求められている.そこでメキシコで広範に嗜好されている山羊ミルクジャムであるCajeta(カヘタ)を開発試作し,これと市販の牛ミルクジャムを用いて10代から60代の男女計394名に対して官能試験,市販価格の推定および製品栄養成分分析を実施することにより,当該製品の受容性を明らかにするとともにその将来性について考察を加えた.この結果,山羊ミルクジャムは色調では牛ミルクジャムと比べて評価が高いものの,かおり,味および総合的評価などでは有意に評価が劣った.しかし被験者の7割以上が山羊ミルクジャムの総合評価に対して「普通」以上の評価を下していることからも,今後,山羊臭の改善などを行うことにより,商品化および市場参入が十分可能であることが示唆された.
著者
広岡 博之
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.94, no.1, pp.1-13, 2023-02-25 (Released:2023-03-29)
参考文献数
104

本総説では,主として食用にコオロギ,飼料用にアメリカミズアブの幼虫,機能性成分を期待してシロアリについて幅広い視点からこれまでの関連研究を概観し,今後の課題について検討した.コオロギとアメリカミズアブの幼虫の生産は,家畜生産と比べて飼料効率が高く,温室効果ガスの排出量が低いものの,飼育環境の温度調整のためエネルギーの利用性において劣ることが報告されている.昆虫の家畜化,機能性,ウェルフェアや生命倫理,消費者の受容性についても先行研究を紹介した.コオロギやアメリカミズアブの大量生産のための育種改良には,家畜やそのモデル動物としての昆虫の育種改良に関する研究蓄積が,また飼育管理には家畜の飼養標準策定のための研究手法が役に立つと考えられた.一方,シロアリについては,飼育環境下での増産に成功し,さらに人の健康に関連する機能性成分が発見できれば,その利用価値は大いに高まると期待できる.
著者
額爾敦 巴雅爾 西田 武弘 松山 裕城 細田 謙次 塩谷 繁
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.76, no.3, pp.295-301, 2005 (Released:2006-08-16)
参考文献数
27
被引用文献数
10 5

混合飼料(TMR)中の緑茶飲料製造残渣サイレージ(TGS)配合割合の違いが泌乳牛の飼料摂取量,ルーメン発酵および乳生産に及ぼす影響を調べた.ホルスタイン種泌乳牛4頭を用い,TMR中TGSを乾物比で0,5,10および15%配合とするTGS0,TGS5,TGS10およびTGS15の4区を設け,4×4ラテン方格法による飼養試験を実施した.乾物摂取量は,TGS0に比べTGS5で変化がなかったものの,TGS10で減少する傾向にあり,TGS15で有意に減少した(P<0.05).乳量は,TGS0とTGS5に比べTGS15で有意に低下した(P<0.01).乳タンパク質率と乳脂率は,4区間に差はなかったが,乳糖率は,TGS15で有意に低かった(P<0.05).ルーメン内容液のpHおよび総VFA濃度に区間差はなかったが,プロピオン酸のモル比率はTGS15で,アンモニア態窒素濃度はTGS10とTGS15でそれぞれ有意に低かった(P<0.05).以上の結果から,TGSは,乳量30kg程度の泌乳牛用TMRの素材として利用でき,乾物比5%程度の配合であれば乳量,乳成分に影響しないと考えられた.
著者
松山 裕城 堀口 健一 高橋 敏能 萱場 猛夫 石田 元彦 西田 武弘 細田 謙次 朴 雄烈
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.395-404, 2004 (Released:2006-07-26)
参考文献数
37
被引用文献数
2 2

第一胃刺激用具(RF)の投与およびサイレージ調製したビール粕の給与が,圧ペン大麦主体の濃厚飼料多給与条件下の去勢牛から発生するメタンに及ぼす影響について検討した.供試動物は,ホルスタイン種去勢雄牛4頭(平均体重698kg),給与飼料は,チモシー乾草(TH),ビール粕サイレージ(BS),圧ペン大麦および大豆粕を用いた.給与量は,代謝エネルギー換算で維持要求量とした.処理は,TH配合の飼料とBS配合の飼料のRF無投与処理,それぞれの飼料給与時にRFを1頭あたり3個ずつ,経口的に第一胃へ投与したRF投与処理の合計4処理とした.その結果は,以下の通りであった.1)乾物の消化率は,BS配合の飼料給与時がTH配合の飼料給与時に比べて有意に低く(P<0.01),RFを投与することでは有意に高くなった(P<0.05).2)一日可消化有機物1kg摂取量あたりのメタン発生量は,飼料間に差がなかったが,RFの投与では有意に減少した(P<0.01).3)第一胃内容液のpHは,いずれの処理においても差がなかった.プロトゾア数は,飼料間に差がなかったが,RFの投与では有意に減少した(P<0.05).4)液相部と固相部の第一胃通過速度は,RFを投与すると有意に高まった(P<0.05).これらの結果から,圧ペン大麦主体の濃厚飼料多給与条件下の去勢牛から発生するメタンは,BS配合の飼料を給与しても影響がなかったが,RFを投与すると消化率を低下させることなく,メタン発生量を抑制することが可能であった.
著者
岡野 彰 島田 和宏 居在家 義昭 大石 孝雄
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.7, pp.458-464, 1984-07-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
26
被引用文献数
1 1

昭和13年から57年までの45年間に農林水産省中国農業試験場畜産部で飼養されていた黒毛和種雌牛221頭の計1167回の妊娠例について,初産年齢と各産次別の繁殖性を調べ,あわせて生涯にわたる生産性について検討した.分娩後の発情回帰日数および空胎日数はそれぞれ平均67.7日および125.5日であった.全産次を通してみた平均分娩間隔は,417.5日であった.流産と死産の発生は,ほとんどの妊娠回次に認められ,その発生率は5.3%であった.流産と死産後の発情回帰日数は平均47.9日,また空胎日数は平均132.8日であり,発情回帰日数については,正常分娩後の日数に比べて有意に短かった.初産および最終産年齢は,それぞれ平均2.53および8.15歳であり,平均生涯産子数は5.4頭であった、しかし,初産年齢が2.01~3.00歳の雌牛は,2.00歳以下および3.01歳以上の雌牛に比べ,生涯産子数が多く,繁殖供用年数の長い傾向が認められた.調査対象雌牛の最高産次は,15産であったが,5産後までに51%,8産後までに83%の雌牛が死亡するか淘汰された.淘汰された調査対象雌牛のうち76%はなんらかの繁殖障害が原因であった.以上のことから,黒毛和種雌牛の適切な繁殖供用開始月齢はおよそ15~20ヵ月齢であり,一方淘汰とその年齢を考えあわせると,雌牛の繁殖供用限界は,7~8産を得る9~10歳が目安であると考えられた.
著者
入江 正和
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.92, no.1, pp.1-16, 2021-02-25 (Released:2021-04-03)
参考文献数
146
被引用文献数
9 3

和牛では脂肪交雑の改良が進み,脂肪質が注目されようになり,食味に対する研究も進んできたためとりまとめた.和牛脂肪はオレイン酸など一価不飽和脂肪酸含量が高く,融点が低い.脂肪質評価法ではわが国の食肉市場において非破壊で迅速な携帯型近赤外光ファイバ法の応用が進み,和牛の育種改良や銘柄化に応用されている.官能検査では和牛やWagyu肉は,多汁性,やわらかさ,風味の全ての食味性で優れ,消費者の嗜好性も高い.脂肪融点の低さは,舌触りの良さと多汁性の高さに関係する.遊離したオレイン酸,リノール酸は舌に脂肪味を感じさせる第六の呈味物質として注目され,甘味,うま味も刺激する.多価不飽和脂肪酸は酸化臭の原因になる一方で,遊離一価不飽和脂肪酸と共に,甘い香りのラクトンや脂っぽい香りのアルデヒド等の前駆物質となる.以上から和牛肉で脂肪質は,食感,多汁性,風味のすべての食味性に影響する重要な形質である.