- 著者
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ファイザー製薬株式会社農産事業部農産開発部
- 出版者
- 日本農薬学会
- 雑誌
- Journal of Pesticide Science (ISSN:1348589X)
- 巻号頁・発行日
- vol.17, no.4, pp.S323-S325, 1992-11-20 (Released:2010-08-05)
酒石酸モランテルの安全性評価のため各種毒性試験を行なった.その結果, 本剤の急性毒性は比較的弱く, 普通物に該当する. 眼に対する刺激性はわずかに認められたが, 薬剤の希釈により刺激性は軽減した. また, 皮膚に対する刺激性はなかったが, 皮膚感作性は陽性であり, 皮膚にアレルギー反応を生じる可能性があると判断された. 一方, 6か月毒性試験では高用量群 (27,500ppm) において, 死亡例の発生, 体重の減少, 摂餌量の減少, 剖検時の全身性の消耗, 諸器官の萎縮性変化などがみられたが, 本剤投与による特異的な変化は認められなかった. 変異原性は陰性であった. また, 催奇形性に関しても問題はなかった.酒石酸モランテル液剤であるグリンガードは昭和57年11月に登録を取得した. また, 8%液剤であるグリンガード・エイトは昭和61年7月に登録を取得し, マツノザイセンチュウの侵入・増殖を阻止して松枯れを防止する樹幹注入剤として使用されている.酒石酸モランテルは, 定められた使用基準を遵守すれば, 安全性が確保されるものであり, 松枯れを防止する有用な農薬として上市以来好評を得ている.