著者
Eiki Watanabe Nobuyasu Seike Sayuri Namiki
出版者
Pesticide Science Society of Japan
雑誌
Journal of Pesticide Science (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.186-191, 2019-08-20 (Released:2019-08-20)
参考文献数
24
被引用文献数
5

A micro liquid–liquid extraction has been applied to sample preparation in the current authorized method for clopyralid in compost. The method rendered matrix effects practically negligible during determination with ultraperformance liquid chromatography-electrospray ionization tandem mass spectrometry with an improved limit of quantification of 0.7 µg/kg dry weight. Moreover, it had good accuracy and reproducibility. Therefore, the method is proposed as a highly effective routine analytical technique for investigating the actual status of clopyralid residue in compost.
著者
Kenji Kai
出版者
Pesticide Science Society of Japan
雑誌
Journal of Pesticide Science (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
pp.J19-02, (Released:2019-07-26)
参考文献数
63
被引用文献数
15

Microorganisms produce and secrete a variety of secondary metabolites including fatty acids, polyketides, terpenoids, alkaloids, and peptides. Among them, many molecules act as chemical signals that play important roles in inter-/intra-species microbial communication or the interaction with host organisms. In this review, I focus on our recent reports of the microbial signaling molecules involved in bacterium–fungus, bacterium–plant, and fungus–plant interactions. Their potential contribution to pest management is also discussed.
著者
三宅 敏郎 満井 喬
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌(Journal of Pesticide Science) (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.17-24, 1995
被引用文献数
2

抗幼若ホルモン活性物質として知られるプレコセン2のセジロウンカに対する生物活性を検討した. その結果, プレコセン2は, 処理時のウンカのステージ, 処理期間 (取り込み量) を変えることにより1) 速効的な殺虫活性, 2) 早熟変態 (prothetely, 抗幼若ホルモン活性), 3) 過剰脱皮 (metathetely, 幼若ホルモン様活性) という3種の異なった作用を引き起こすことが認められた. このうち, 早熟変態については幼若ホルモン様活性物質であるNC-170の同時処理により作用の発現が打ち消されたが, 天然のJH-1, JH-2, JH-3の同時処理では打ち消されなかった. 一方, 抗幼若ホルモンであるプレコセン2が, なぜ metathetely を誘起するのかは不明であるが, 今回の実験結果における"処理期間と metathetely 発現との関係", および, 過去, バッタ類で観察された同様の結果から推測すると, 虫体に取り込まれたプレコセン2の量が不十分であると, アラタ体を完全に不活性化できず, 逆に幼若ホルモンの生合成/分泌を一時的に促進する効果があるものと思われる.
著者
Atsushi Ishihara Kana Ando Anna Yoshioka Koichi Murata Yu Kokubo Noriko Morimoto Naoki Ube Yukinori Yabuta Makoto Ueno Shin-ichi Tebayashi Kotomi Ueno Kumiko Osaki-Oka
出版者
Pesticide Science Society of Japan
雑誌
Journal of Pesticide Science (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
pp.D18-063, (Released:2019-03-12)
参考文献数
36
被引用文献数
10

We investigated the effect of treatment with hot water extracts from the spent mushroom substrates (SMSs) of Lentinula edodes and Hypsizygus marmoreus on the resistance of rice leaves to Pyricularia oryzae infection. The spraying of the SMS extracts clearly suppressed the development of lesions caused by Py. oryzae infection. The accumulation of phytoalexins momilactones A and B, oryzalexin A, and sakuranetin was markedly induced by the spraying of extracts. The enhanced expression of defense related genes PR1b and PBZ was also found in leaves sprayed with the extracts. Treatments with the extracts also affected phytohormone levels. The levels of N6-(Δ2-isopentenyl)adenine and trans-zeatin markedly increased in response to treatment, whereas the levels of salicylic and jasmonic acids were largely unchanged.
著者
王 敬銘 東 マスミ 吉澤 結子
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.58-62, 2011

植物揮発性オキシリピン類は,生体防御を始め,さまざまな生物活性を示すことが知られている.ヒドロパーオキシリアーゼ(HPL)は,植物揮発性オキシリピン類の生合成に重要な酵素である.本研究では,植物揮発性オキシリピン類の生物意義をより詳細に解析する新しい試みとして,その生合成を阻害する化合物の探索を行った.合成した12種類イミダゾール系化合物のHPL阻害活性を検討の結果,化合物3{1-[2-benzyloxy-2-(2,4-dichlorophenyl)-ethyl]-1H-imidazole}が明瞭な阻害活性を示した.そのIC50は約39μMであった.また,化合物3とHPLの結合活性を調べた結果,そのKdは約13.5μMであることが明らかとなった.
著者
三浦 友三 馬渕 勉 東村 稔 天沼 利宏
出版者
日本農薬学会
雑誌
Journal of Pesticide Science (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.235-240, 2003

ピラフルフェンエチル(pyraflufen-ethyl)は日本農薬(株)によって創製され、実用化されたプロトポルフィリノーゲン酸化酵素(Protox)阻害型除草剤である。本化合物はコムギに対して高い安全性を示すと共に広範囲の広葉雑草に対して10g a.i./ha前後の低薬量で極めて高い除草活性を示す。特にコムギ栽培における難防除雑草の一つであるヤエムグラ(Galium aparine)に卓効を示す。ピラフルフェンエチルは日本ではムギ用除草剤として、エコパートフロアブルの商品名で1999年に農薬登録の許可を得て販売を開始した。また同時に果樹園の下草防除や非農耕地の非選択性除草剤として、グリホサートトリメシウム塩との混合剤であるサンダーボルトの販売も開始した。さらに、2001年バレイショ枯凋剤として、デシカン乳剤の販売を開始した。これらは海外においても14か国で登録・上市され、数か国で開発途上にある。本稿では、ピラフルフェンエチルの創出の経緯、工業的製造法、構造活性相関、除草活性、作用機構、各種毒性試験結果について概要を述べる。
著者
西口 沙也加 村田 晃一 宇部 尚樹 上野 琴巳 手林 慎一 寺石 政義 奥本 裕 森 直樹 石原 亨
出版者
Pesticide Science Society of Japan
雑誌
Journal of Pesticide Science (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.191-197, 2018-08-20 (Released:2018-08-20)
参考文献数
46
被引用文献数
8

イネにおいて1 mM のジャスモン酸を処理することで蓄積量が増加する化合物の探索を行った.その結果,2つの化合物1と2の蓄積量が増加することがわかった.マススペクトルとHPLCにおける保持時間を標準品と比較することで,1と2をそれぞれ13-oxooctadeca-9,11-dienoic acid(13-KODE)および9-oxooctadeca-10,12-dienoic acid(9-KODE)と同定した.これらの化合物の蓄積はイネごま葉枯病菌の感染によっても誘導された.一方で,各KODEをイネの葉に処理すると,抵抗反応に関連する二次代謝産物のサクラネチンやナリンゲニン,セロトニンの蓄積が誘導されたため,これらのKODEが病害応答に関与していることが示唆された.KODEと同じくα,β-不飽和カルボニル構造を持つ化合物について,同様の活性があるか調べたが,KODEの作用は再現されなかった.二次代謝産物の誘導には一定の長さをもった炭素鎖など他の構造因子が必要であると考えられた.
著者
片木 敏行 於勢 佳子
出版者
Pesticide Science Society of Japan
雑誌
Journal of Pesticide Science (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.69-81, 2015-08-20 (Released:2015-08-20)
参考文献数
176
被引用文献数
6 47

The toxic effects of pesticides on earthworms, one of the most important bioindicators in the terrestrial environment, are closely related to their body burden determined by uptake, metabolism and excretion processes. Not only the passive diffusion via the outer skin from a dissolved fraction of pesticide but also the ingestion of contaminated soil and food governs the uptake process, with each contribution controlled by either the hydrophobicity of the pesticide or the soil organic matter. Although the available information is limited, earthworms are likely to metabolize pesticides via hydrolysis and oxidation (Phase I) followed by conjugation (Phase II), and low bioaccumulation is observed as a result for most pesticides. The acute toxicity in the soil exposure can be partly explained by the dissolved fraction of pesticide in pore water, but the contribution of dietary uptake and metabolism should be further studied to correctly evaluate pesticide toxicity.
著者
Kenji Kai Keiji Mine Kohki Akiyama Satoshi Ohki Hideo Hayashi
出版者
Pesticide Science Society of Japan
雑誌
Journal of Pesticide Science (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.283-286, 2018-11-20 (Released:2018-11-20)
参考文献数
18
被引用文献数
8

3種のペプタイボール,trichorizin HA II (1), HA V(2)およびHA VI(3)をTrichoderma harzianum HK-61株を植菌したオカラ培養物より単離した.それらの化学構造は,機器分析と化学誘導体化により確定した.Trichorzin類は,キュウリモザイクウイルスがササゲに感染するのをμMオーダーで阻害した.
著者
伊東 敏行
出版者
日本農薬学会
雑誌
Journal of pesticide science (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.66-72, 2010
被引用文献数
1

日本冷凍食品協会によれば、2008年の冷凍食品生産額は国内生産量約6600億円、海外輸入を合わせると約9000億円を超える規模となっている。2008年における日本の冷凍食品消費量は約250万トンであり、そして国民一人当たりの消費量は現在約19.4kgである。これが、現在の日本における冷凍食品の実態である。この中で、味の素冷凍食品株式会社(以下、当社)は、主な業務としてギョーザやシュウマイなどを代表とする冷凍食品の製造・販売を行っており、年間約1100億円の販売規模に達している。その生産拠点は国内9工場、海外8工場の合計17工場になる。一方、現在日本における食料自給率はカロリーベースで40%であり、そのため海外からの食料輸入に依存せざるを得ない状況にあることは周知のとおりである。冷凍食品においても図1のとおり、その輸入量(冷凍野菜輸入量+調理冷凍食品輸入量)は、約100万トンであり、われわれ冷凍食品を製造するメーカーにとっても国産のみならず海外に原料を求めまた製品生産を検討し、それに依存していかなければならない現状にある。その輸入食材は、検疫を通過後国内に流通するが、検疫では食品のリスクを想定し、残留農薬等色々な検査が行われているが、さらに国内のお客様から安心・安全の信頼を得るためには輸入食材の残留農薬に対する各企業の対応は避けて通れない状況にある。ここでは、当社における取り組みを中心に、中国冷凍野菜の製造行程における残留農薬に対する対応状況について紹介する。
著者
中平 国光
出版者
日本農薬学会
雑誌
Journal of Pesticide Science (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.357-366, 1998-08-20 (Released:2010-08-05)
参考文献数
36
被引用文献数
3 3
著者
ラハマン G. K. M. M. 本山 直樹
出版者
Pesticide Science Society of Japan
雑誌
Journal of Pesticide Science (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.387-391, 2000
被引用文献数
3

有機リン殺虫剤クロルピリホスの畑土条件下での残留性を千葉と松戸の黒ボク土を用いて土壌の滅菌処理, 温度 (15, 25, 35℃) や水分 (20, 30, 40%) を変えて室内実験により研究した. 土壌からメタノールで抽出後, 85%リン酸処理によって残留するクロルピリホスを遊離させ, 再びメタノールで抽出した. 遊離したクロルピリホスは千葉土壌で最大18%, 松戸土壌で10%検出されたが, 長期間土壌中に残留した. 土壌中の半減期は千葉土壌で28日, 松戸土壌で14日であり, 温度の上昇に伴って分解は速くなった. メタノールで抽出されない残留体は千葉>松戸であり, 有機炭素含量と正の相関を示し, 土壌有機物への吸着が示唆された. 両土壌とも滅菌処理によって分解速度は遅くなったが, 遊離するクロルピリホスは酸処理によってあまり差がなかった.
著者
Andrew J. Crossthwaite Aurelien Bigot Philippe Camblin Jim Goodchild Robert J. Lind Russell Slater Peter Maienfisch
出版者
Pesticide Science Society of Japan
雑誌
Journal of Pesticide Science (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.67-83, 2017-08-20 (Released:2017-08-20)
参考文献数
158
被引用文献数
49

ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)は,カチオン選択性細孔の周囲に配置された5つのタンパク質サブユニットからなるリガンド作動性イオンチャネルである.いくつかの天然および合成殺虫剤は,nAChRと相互作用することによってその効果を表す.ここでは,ネオニコチノイドとその関連化合物の標的害虫に対する薬理作用についてまとめた.無脊椎動物に内在するnAChRを構成するサブユニットの量比は不明であるが,昆虫の受容体調製物において,ネオニコチノイド結合部位の存在が明らかにされ,これら殺虫剤は広範囲のnAChRに対して異なる薬理作用を表すことが示された.スピノシンは,主に鱗翅目のような咀嚼害虫を防除するために使用されるに対して,ネライストキシン類縁体は接触および浸透作用を介してイネおよび蔬菜害虫に使用されるが,これら殺虫剤の薬理作用は特有で,ネオニコチノイドの薬理作用とは異なる.
著者
Yoshiaki Nakagawa Hisashi Miyagawa
出版者
Pesticide Science Society of Japan
雑誌
Journal of Pesticide Science (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.177-178, 2017-11-20 (Released:2017-11-24)
参考文献数
5
被引用文献数
1
著者
原田 和生 黒野 友理香 長澤 沙弥 小田 知佳 那須 雄大 若林 孝俊 杉本 幸裕 松浦 秀幸 村中 聡 平田 收正 岡澤 敦司
出版者
日本農薬学会
雑誌
Journal of Pesticide Science (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
pp.D17-036, (Released:2017-10-26)
参考文献数
16
被引用文献数
4

根寄生植物は重要農作物に寄生し収量を低下させるため,世界の食糧生産に深刻な被害を及ぼしている.近年,我々は放線菌Streptomyces ficellusの生産するノジリマイシン(NJ)が根寄生植物種子の発芽を阻害することを見出した.本研究ではS. ficellusのNJ生産性向上を目指した培地改良,および未精製培養物の根寄生植物防除剤としての適用可能性について検討した.従来のNJ生産培地に使用されていたPharmamedia™を他の汎用的な培地成分に置換したところ,マリンブロスによりNJ生産量が向上した.4日間培養を行ったところ,培地中のNJ含量は710 mg/Lに達し,従来の17倍まで向上した.得られた培養液を各寄生植物種子に処理したところ,NJ 標準溶液と同等の発芽阻害活性を示した.本研究で示した当該培養法は根寄生植物防除剤生産開発につながると期待される.
著者
塩野義製薬株式会社植物薬品開発部 武田薬品工業株式会社アグロ事業部農薬研究所
出版者
日本農薬学会
雑誌
Journal of Pesticide Science (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.557-561, 1991-08-20 (Released:2010-08-05)

トリフルラリンの安全性評価のための各種毒性試験を実施した.本剤の急性毒性は弱く普通物に該当する. しかし乳剤, 粒剤ともウサギにおいて眼刺激性が認められ, 乳剤では皮膚刺激性も認められた. また乳剤ではモルモットにおける皮膚感作性が陽性であった. 一方, 原体のサルにおける経皮吸収率は約0.1%ときわめて低く, ウサギにおける亜急性経皮毒性試験でも全身性の毒性症状は認められなかった.慢性毒性/発がん性試験では, 中間・高用量群のラットおよびマウスに体重増加の抑制, 肝臓重量の増加, および進行性糸球体腎症 (炎), 腎結石等の腎毒性が認められた. イヌでは高用量群に肝臓重量の増加が認められたのみであった. 発がん性はマウスでは認められず, ラットでは中間・高用量群で膀胱腫瘍, 全用量群で腎臓腫瘍の発生率が上昇したが, 腫瘍の総発生率にはトリフルラリン投与による影響は認められなかった.ラットにおける2世代繁殖試験では繁殖に及ぼす影響は認められず, 催奇形性試験では, ラットでは1000mg/kg/日以下, ウサギでは225mg/kg/日以下の用量で催奇形性は認められなかった. 各種変異原性試験の結果はすべて陰性であった.薬理試験ではトリフルラリンに特異的な作用というよりもむしろ急性中毒症状と考えられる異常歩行, 振戦等の中枢神経系に対する影響が認められたが, トリフルラリンのおもな薬理作用は利尿作用および肝機能抑制作用であった. 本剤の解毒薬としてはグルタチオン, グルクロン酸アミドおよび硫酸アトロピンが有効であった.トリフルラリンは昭和41年, 乳剤の大豆, ラッカセイ, カンショ, ナタネ, 小麦, ニンジン, キャベツ, 大根, トマトで日本において初めて登録され, 昭和44年には2.5%粒剤のラッカセイ, 3.0%粒剤の水稲に登録された. その後他作物への適用拡大を順次実施し, 畑作物, 野菜を始め, 花き花木, 工芸作物, 果樹, 公園・庭園等幅広い分野に登録された.トリフルラリンの登録保留基準値は, 米, 麦・雑穀, 果実, 野菜, イモ類, 豆類, 茶のいずれも0.01ppm (ただしニンジンは0.2ppm) と設定されている.トリフルラリンは定められた使用基準を遵守すれば安全性の高い農薬であり, 有用な農業資材の一つとして上市以来好評を得ている.
著者
陳 き 太田 広人 佐々木 健介 尾添 富美代 尾添 嘉久
出版者
日本農薬学会
雑誌
Journal of pesticide science (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.473-480, 2011-11

(R)‐オクトパミン(OA)との相互作用に関わるカイコ由来β‐アドレナリン様オクトパミンレセプターのアミノ酸残基を同定するために,オルトステリック部位と予測される部位に1アミノ酸置換をもつ7変異体を作製してHGK-293細胞に発現させ,(R)‐OAとの反応により細胞内cAMPレベルを上昇させる活性を測定した。その結果,S206A変異体は活性を保持していたが,その他の変異体(D115A,S202A,Y300F,Y300N,Y300L,Y300A)は活性を示さなかった。この結果とホモロジーモデリング/ドッキングシュミレーションの結果から,Ser202とTyr300は(R)‐OAのフェノール性ヒドロキシル基と相互作用し,Asp115はβ‐ヒドロキシル基及び側鎖アミノ基と相互作用することが推察された。
著者
井藤 和人 生嶋 隆博 巣山 弘介
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.51-54, 2003
被引用文献数
1

除草剤ザークD51(ダイムロン・ベンスルフロンメチル、ZD)および殺菌剤フジワンモンカット(イソプロチオラン・フルトラニル、MC)粉剤が水田土壌における微生物群集構造に及ぼす影響についてバイオログGNプレートを用いた室内実験により評価した。ZDは常用量の50倍の濃度においてもバイオログプレートの発色にかかわる微生物群集構造を変化させることはなかった。一方、MCは常用量では微生物群集構造に影響を及ぼさなかったが、50倍量では少なくとも4週間にわたりバイオログパターンを明確に変化させた。この時点においてバイオログプレートで測定した炭素源利用活性には影響が認められなかった。MCが微生物群集構造に及ぼす影響の大きさを評価するため、水田土壌の微生物群集構造に大きく影響を及ぼすことがこれまでに明らかにされている土壌の湛水による影響とMC(常用量の10倍の濃度)による影響の大きさとを比較した。MCを添加してから1週間後では土壌の湛水による影響の方が大きかったが、4週間後にはMCによる影響の方が大きかった。このように、農薬の影響による土壌微生物群集構造の変化の大きさと自然環境条件下における土壌微生物群集構造の変化の大きさを比較することにより、農薬が土壌微生物群集構造に及ぼす影響の大きさを評価することができると考えられた。
著者
遠藤 正造 鶴町 昌市
出版者
Pesticide Science Society of Japan
雑誌
Journal of Pesticide Science (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.82-86, 2001
被引用文献数
49

1989~1992年に東南アジアと日本で採集したトビイロウンカとセジロウンカの感受性を比較した. トビイロウンカ: 1989, 1990年に採集したマレーシア個体群のマラソン感受性は日本のそれの約1/7と低く, ダイアジノン, カルボスルファン感受性も若干低い傾向が認められた. また1992年の検定結果では, ベトナム南部及びタイ個体群のマラソン感受性は, 日本及びベトナム北部のそれより若干低かった. しかし, 他の薬剤に対する感受性はこれらの個体群間で大きな差はなかった. セジロウンカ: 1989~1990年個体群の薬剤感受性を比較した結果, マレーシア個体群のマラソン感受性は日本のそれの約1/6と低かった. しかし, 他の薬剤に対する感受性はこれらの個体群間でほとんど差はなかった. また, 熱帯地域においてもこれら2種のウンカは1977~1992年の間に各種薬剤に抵抗性が発達したことが確認された.
著者
安藤 哲 河合 岳志 松岡 可苗
出版者
日本農薬学会
雑誌
Journal of pesticide science = 日本農薬学会誌 (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.17-20, 2008-02-20
参考文献数
18
被引用文献数
1 23

蛾類昆虫の分泌する性フェロモンは,ボンビコールのような末端官能基を有するタイプIの化合物群(直鎖の炭素数: C_<10>〜C_<18>)と,末端官能基を含まない不飽和炭化水素およびそのエポキシ化物からなるタイプIIの化合物群(直鎖の炭素数: C_<17>〜C_<23>)に大別される.昆虫の種の多様性を反映しフェロモン成分も多様であり,それは生合成の原料ならびに関与する酵素系の違いに起因する.ボンビコールの生合成研究を踏まえ,シャクガ類が生産するタイプIIの性フェロモンの生合成,ならびに頭部食道下神経節から分泌されるホルモン(性フェロモン生合成活性化神経ペプチド,PBAN)による生合成の制御機構に関して追究した.その結果,エポキシアルケニル性フェロモンの前駆体(トリエン)はフェロモン腺では生産されず,またPBANはフェロモン腺が体液中に存在する前駆体を取込む過程を活性化することが判明し,タイプIの性フェロモンでの知見とはかなり異なることがわかった.さらに,PBANをコードするcDNAを同定し,シャクガのPBANは構造もユニークであることを明らかにした.