著者
SunYoun Lee Takahiro Ito Kohei Kubota Fumio Ohtake
出版者
Association of Behavioral Economics and Finance
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.11, no.Special_issue, pp.S22-S26, 2018 (Released:2019-04-10)
参考文献数
17

This paper estimates the effects of childhood experiences of wearing school uniforms at a public elementary school for 6 years on behavioral traits in adulthood. The school uniform experience can be endogenous if preferences and characteristics of the school and parents are involved in the decision of schools to implement school uniforms. To examine the effect of school uniforms, we exploit the exogenous variation in the expansion of the apparel industry across regions which the Japanese government used as a catalyst in stimulating the economy and the regional variations in prefectural governors’ initiatives for enhancing regional profitability, both of which are found to affect the adoption of school uniform policies. We first find that the childhood experience affects the formulation and development of an individual’s personality traits that are characterized by self-esteem and self-efficacy. Second, it increases reciprocal inclinations, inequity aversion, pro-social tendencies, and preferences for the government’s redistribution policies. We discuss the reasons behind the consequences of school uniforms on noncognitive traits and social preferences, with a focus on an individual’s perception of similarity with others formulated by the childhood experience as an important determinant that affects the behavioral traits.
著者
和泉 潔 松井 藤五郎
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.43-46, 2011 (Released:2012-03-29)
参考文献数
11

金融市場は世の中の経済活動の活発さを反映しているはずである.だからもし,みんなが持っている平均的な景況感を早く正確に知ることができたら,株価が予測できるはずだ.Web上の大量のテキスト情報から現在人々が経済状況に対して抱いている気分を抽出することが出来るかもしれない.専門家でないごく普通の人たちが,経済と直接は関係ないような事柄について書いたものから,金融の専門家が発信する市場に関わる様々なニュースや経済レポートまで,web上には常に大量のテキスト情報が溢れている.機械学習を用いたテキストマイニング手法によって,テキスト情報と市場変動の関係性を発見し市場分析に応用する最新研究事例を紹介する.
著者
水門 善之 内山 朋規
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.12, no.Special_issue, pp.S49-S52, 2019 (Released:2020-03-17)
参考文献数
5

本研究では,金融市場で取引されるインフレーションスワップ(以下,インフレスワップ)のレートに注目することで,市場参加者の“インフレ期待(インフレ予想,Inflation Expectations)”の計測を行った.日本では,2019年10月に消費税率の8%から10%への引き上げが予定されていることから,現在(2019年7月),金融市場で織り込まれているインフレ期待には,消費増税の影響が反映されている.この点を踏まえ,本研究では,増税の織り込みの影響を除去することで,インフレ期待部分の抽出を行った.加えて,インフレ期待の形成過程を考察するため,市場のインフレ期待と連動性の高いQUICK短観のインフレ期待(見通し)の,調査データを用いて期待の頻度分布の検証を行った.結果,平均値として定義される人々の期待インフレ率の変化を主導していたのは,インフレ期待の分布において,相対的に高いインフレ期待を抱いていた層であることが確認された.
著者
石部 真人 角田 康夫 坂巻 敏史
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.230-234, 2010 (Released:2011-06-27)
参考文献数
8

ボラティリティの高い銘柄は相対的に低リターンであるというボラティリティ効果の原因を探るために,下方リスクの性質を調べた.下方リスク測定の基準として,平均,ゼロ,相対の3つを調べた結果,この中でプロスペクト理論の損失回避概念と最も整合的なゼロが基準として適していることが分かった.上方リスクの性質も調べた結果,将来リターンとの関係は下方リスクではトレードオフ,上方リスクでは逆トレードオフとなることが確かめられた.結局,リターンリバーサル効果は下方および上方リスクの複合効果として説明可能である.また,これら3つのリスク相互の影響関係を調べると,下方リスクと上方リスクはそれぞれ固有の効果を持つが,ボラティリティはこの2つのリスクの反映に過ぎないという可能性が高まった.
著者
廣瀬 喜貴 後藤 晶
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.13, no.Special_issue, pp.S19-21, 2020 (Released:2021-03-24)
参考文献数
9

本研究は,地方公共団体が開示している会計情報は幸福と結びついているのか,を検証するために,各都道府県が開示している財務書類から会計指標を計算し,アンケート調査で得られた幸福度との関連を分析した.本研究の結果は,以下の3点である.第1に,多くの資産形成がなされている都道府県の住民ほど幸福度が高い.第2に,現世代の負担が将来世代の負担よりも相対的に高い都道府県の住民ほど幸福度が低い.第3に,住民一人当たり負債額が大きい持続可能性が低い都道府県の住民ほど幸福度が低い.これらの結果は,これまで伝統的に分析されてきた財政指標のみでは得られなかった結果である.これまで会計情報は財務情報の補足資料として位置づけられてきたが,2017年度から新たに全面適用となった地方公会計基準にもとづいた会計指標は主観的な幸福度と関連しており,会計情報の有用性を示した点が本研究の貢献である.
著者
木成 勇介 黒川 博文 大竹 文雄
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.10, no.Special_issue, pp.S9-S11, 2017 (Released:2018-04-12)
参考文献数
4

本研究は,個人の成績にのみ依存して報酬が決定する歩合制と他の被験者の成績にも依存して報酬が決定するトーナメント制のどちらを好むかに関する経済実験中の被験者に,間接的に各被験者の相対的な成績に関する情報を伝達することで感情を惹起させ,感情が意思決定及び意思決定の個々の要因に与える影響について考察する.分析の結果,情報を与えられたグループはそうでないグループと比較して,怒りや嫉妬などで表現される負の感情が自身の予想順位に関する分散を低く見積もらせることがわかった.しかし,総じて,情報を与えられたグループにのみ感情が強く作用するという結果は得られず,両グループともに喜びや興奮で表現される正の感情が歩合制よりもトーナメント制での報酬を選択する確率を高めることを発見した.これは,正の感情が期待利得を高く評価させる,楽観性バイアスを発生させる,リスク許容度を高めることから生じている.
著者
寺地 一浩 近 勝彦
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.85-89, 2011 (Released:2012-03-29)
参考文献数
4

消費者行動に影響を与えるポイントについて,フレーミング効果を実証的に分析する.同じ記述表現において,ポイントに対する経験が高い消費者層は,ポイントに対する経験が低い消費者層に比べて,高い反応を検証した.フレーミング効果は,ポイントに対する経験の属性に依存して,消費者行動に影響を与えることを実証した
著者
黒川 博文 奥平 寛子 木成 勇介 大竹 文雄
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.11, no.Special_issue, pp.S1-S4, 2018 (Released:2019-04-10)
参考文献数
10

アイデンティティが競争選好に与える影響に男女差があるかどうかを検証する実験を行った.最小条件集団パラダイムによって被験者のアイデンティティを形成した.2人一組のペアをランダムに割り当て,ペアのアイデンティティが同じグループ(内集団)と異なるグループ(外集団)を作った.歩合制の下で実労働タスクを行い,その後,競争環境であるトーナメント制の下で実労働タスクを行った.その次のラウンドでは,歩合制かトーナメント制の報酬体系を選択した後に実労働タスクに取り組んだ.男性の場合,競争相手が外集団のときの方が競争を好むことが明らかとなった.女性の場合は,競争相手が内集団であろうと外集団であろうと競争を好まないことがわかった.男性が外集団との競争を好むようになったのは,外集団との競争でパフォーマンスが上昇し,さらに,自信過剰になったことが原因だと考えられる.
著者
石部 真人 角田 康夫 坂巻 敏史
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.88-92, 2009 (Released:2011-12-03)
参考文献数
8

先進国株式市場を対象に最小分散ポートフォリオを構築し,その実現リスクが期待通りに低いこと,および時価加重ポートフォリオとの比較検証を通して,最小分散ポートフォリオが時価加重ポートフォリオよりも優れた効率性を示すことを実証する.さらに日本株のリスク分位ポートフォリオを構築し,リスクとリターンのトレードオフが成立していないことを示す.
著者
高橋 義明
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.11, no.Special_issue, pp.S13-S18, 2018 (Released:2019-04-10)
参考文献数
10

幸福度は政策当局者にも利用されるようになり,世界幸福報告書の公表など国際比較も盛んになっている.世界幸福報告書では各国の幸福度を6つの要素で説明しているが,幸福度平均値の差はむしろ残差で生じている.残差が文化差を示すのかを検証するため,現在の幸福の投影元として「理想(イデア)の幸福度」(11件法)による測定を試みた.日本での5つの調査結果からは不幸せをプラスに評価し,高い割合で「中位の幸福度」を理想とする傾向があった.幸福度(現在)と理想の幸福度の得点差を考慮して幸福度(現在)を調整し,欧州各国の幸福度(現在)に関する頻度分布を利用してクラスター分析を行うと,日本はいずれの調査でもデンマークなど幸福度平均値が高い国と同じクラスターに分類された.以上から,今回提案された幸福度の測定方法を用いると,「アジアの人々の幸福度が低い」との悲観的な結論はえられず,むしろ北欧や中南米の人々の幸福度と差がないと解釈できることが示された.
著者
布施 匡章
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.114-117, 2015 (Released:2016-05-07)

本研究では,内閣府が実施した,神戸,名古屋,仙台の3都市アンケートデータを用いて,地域コミュニティの代理変数としてのソーシャル・キャピタルが,防災活動における自助・共助意識に与える影響について分析した.地域別,あるいは震災経験別による分析の結果,自助の防災意識は,ソーシャル・キャピタルだけでなく,年齢,学歴,年収等によって高まることが示唆されたが,共助の防災意識は,ソーシャル・キャピタルのみが影響し,特にネットワーク,互酬性の規範と呼ばれる地域行事や地域活動が影響する可能性があるとされた.また,震災を経験した住民は経験していない住民よりも,共助意識とソーシャル・キャピタルを高める活動との相関が高いことが分かった.地域行事や地域活動への参加を促す政策が,自助のみならず共助による防災につながると考える.
著者
山村 英司
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.75-87, 2019-01-22 (Released:2019-01-19)
参考文献数
92

所得の不平等は古くから経済問題で,不平等を小さくするため所得分配政策は適切にと取られるべきであると認識されている.2010年代に入り近年では国内の所得の不平等が原因となって,反グローバル主義が台頭し貿易自由化を推進してきた米国などが閉鎖経済を志向する政策を取るようになった.このような現実を反映し,21世紀に入り経済学において不平等や所得再分配の問題を考察する研究が数多くなされている.とりわけ人々の心理面を考慮に入れた行動経済学において,先端的手法により分析が進められ重要な知見が蓄積されている.本稿では古くも新しい不平等の問題を,経済学はどのように分析してきたかを振り返る.そして,行動経済学に残された今後の課題に触れる.
著者
髙橋 勇太 植竹 香織 津田 広和 大山 紘平 佐々木 周作
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.12, no.Special_issue, pp.S9-S13, 2019 (Released:2020-03-17)
参考文献数
7

本稿では,日本の地方自治体へのナッジの実装を推進する横浜市行動デザインチーム(YBiT)について,体制構築及び普及戦略の観点から分析することで,地方自治体におけるナッジの展開方法への示唆を得る.まず,体制構築については,先行研究をベースに海外諸都市のナッジ・ユニットとの比較を行った上で,専門性や行政・政治からのサポートなどの必要要素について整理した.地方自治体では,専門的な人材全てを内製化することが困難であるため,外部の専門家との連携が必須であると考えられる.次に,普及戦略については,地方自治体内にナッジを普及させる上での課題とそれへの対策について,独自に検討した普及プロセスモデルに基づき整理した.今後はこれらの実践モデルが理論化され,国内地方自治体でのナッジの実装や,国内のエビデンスが蓄積され,政策効果及び効率が向上されることが期待される.
著者
竹林 正樹 吉池 信男 小山 達也 鳥谷部 牧子 阿部 久美 中村 広美 平 紅
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.11, no.Special_issue, pp.S9-S12, 2018 (Released:2019-04-10)
参考文献数
7

【目的】シンプルな肥満予防介入として体重測定促進研修会を実施し,週1回以上の体重測定習慣化について比較検証することを目的とした.【介入・解析】青森県出先機関職員向け研修会の応募者(適格条件:体重測定頻度が週1回未満)から3人単位のクラスターを作成し,乱数表で無作為にクイズ群,行動宣言群,成功回顧群の3群に割り付け,RCT(1時間の研修会および一斉メールによる介入)を行った.また,別地域の職員を参照群に設定し,6か月後の体重測定行動を並行群間比較した.【結果・考察】クイズ群20人,行動宣言群22人,成功回顧群22人,参照群44人を解析した結果,介入3群全体で6月後体重測定者は44%(参照群2%,p<.001)であった.中でも成功回顧群は59%と最も高い効果がみられた.ただし,本研究にはサンプルサイズ等に関する限界がある.
著者
岩城 康史
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.11, no.Special_issue, pp.S31-S34, 2018 (Released:2019-04-19)
参考文献数
3

特許に付与されるIPC分類より算出した“技術領域の幅”による特許の価値への影響について分析した.その結果,1990年以降において,破壊的イノベーションに見られるような幅広い技術領域をカバーする特許を有する企業の価値が高まっていることが示唆された.
著者
Nakazono Yoshiyuki
出版者
Association of Behavioral Economics and Finance
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.239-242, 2012

In this paper, we use panel data to test whether Federal Open Market Committee (FOMC) board members' forecasts are rational. Rationality is rejected in the sense that forecasts by members are heavily dependent on previous own forecasts and last consensus made in FOMC. Furthermore, we reveal the strategic behavior of FOMC board members. Forecasts by governors, who always have voting rights, agree much with the previous consensus of FOMC members' forecasts. In contrast, non-governors, who rotate voting rights, exaggerate their forecasts: they aggressively deviate their forecasts from previous consensus. The former is <i>herding</i> behavior and the latter is <i>anti-herding</i> behavior. Our results imply that individual members behave strategically; governors want to present policy-consistent forecasts to the Congress and non-governors utilize their forecasts to influence decision making in FOMC.
著者
河野 敏鑑 八木 倫秀
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.11, no.Special_issue, pp.S39-S41, 2018 (Released:2019-04-19)
参考文献数
2

顧客の囲い込みや購買履歴の入手に用いられているポイント制度を統計指標の作成に活用する試みがある.こうした試みにはポイント制度に参加している全ての人の行動を把握した全数調査を元にしているというメリットがある一方,ポイント制度を利用する消費者特有のサンプリングバイアスが存在する可能性は否定できない.そこで,本研究では大学生を対象にアンケート調査を行い,個人がポイント制度を利用するのか否かを決定する要因を分析し,どのようなバイアスがあるのかを明らかにした.その結果,利用頻度が高い人,現在志向が弱い人,出席回数が多い学生の方がよりポイント制度を利用する傾向があることがわかった.つまり,ポイント制度を利用しようとする人は,それなりの計画性や忍耐を持ち合わせている可能性が高いと考えられる.よって,ポイント制度から得たビッグデータを用いる際には,こうしたバイアスに十分に注意する必要があると思われる.
著者
中川 宏道 守口 剛
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.197-200, 2012 (Released:2013-05-29)
参考文献数
5

「100人に1人がタダ」のような確率型プロモーションと「全員に1%値引き」のような確定型プロモーションとでは,どちらが消費者にとって魅力的なのであろうか.本研究では,確率型プロモーションについての実証研究をおこなう.Kahneman and Tversky (1979)のプロスペクト理論によれば,利得の領域では凹関数でリスク回避的,損失の領域では凸関数でリスク志向的となる.したがって,値引きのようなネガティブ・フレームにおいては確率型プロモーションの方が確定型プロモーションよりも選好され,ポイントプレゼントのようなポジティブ・フレームにおいては,確定型プロモーションの方が確率型プロモーションよりも選好されることが予想される.本研究において確率型プロモーションにおけるフレーミング効果について検証を行ったところ,ポジティブ・フレームでは確定型プロモーションが選択され,ネガティブ・フレームでは確率型プロモーションが選択される傾向が見られ,フレーミング効果が確認された.