著者
中根 洋治 奥田 昌男 可児 幸彦 早川 清 松井 保
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.182-194, 2011 (Released:2011-06-20)
参考文献数
23
被引用文献数
1

本研究の事例に取り上げた矢作川流域のほとんどが花崗岩地帯であり,沖積平野の広範囲に砂が堆積している.近年,住宅や工場・道路などへの利用が多い旧河道や後背湿地では,地震時に堆積砂が液状化し,豪雨時に低湿地が浸水する被害を受けやすい.本研究では,矢作川の旧河道や後背湿地の生成過程と現状を歴史的文献・資料,地盤調査・工事資料,現地踏査などにより把握すると共に,浸水や液状化による災害に対する危険性を検討した.その結果,河床低下により矢作川本川の越水の危険性は減少傾向にあるが,支川の内水排除対策が今後の重要課題であり,また本川や各支川の旧河道及び低湿地における浸水や液状化に対する危険箇所が数多くあることを具体的に明らかにした.さらに,開発に伴う災害危険区域の増加傾向と共に遊水地の必要性も指摘した.
著者
牧野 浩志 鈴木 一史 鹿野島 秀行 山田 康右 堀口 良太
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.I_1001-I_1009, 2015 (Released:2015-12-21)
参考文献数
7
被引用文献数
1 2

都市間高速道路のサグ部での渋滞発生要因については,上り勾配に伴う速度低下や車線利用の不均衡等が知られており,ITSを活用してそれらの是正を図る情報提供等の対策が実施されている.一方,渋滞発生前の高密度な交通流における車線変更行動と渋滞発生との因果関係に関しては,十分な知見が得られていない.本研究では,車線変更行動と減速波の発生・伝播の関係について,路側ビデオ映像に基づく時空間車両軌跡データ等を用いて分析を行った.また,サグ渋滞対策への一つのアプローチとして,車線変更行動を抑制する方策の合理性に関して示唆を得るため,臨界流下で車線変更を繰り返して先を急ぐアグレッシブドライバが,そうした行動によって短縮し得る所要時間について,ミクロ交通シミュレーションを用いて試行的に評価した.
著者
村上 大輔 堤 盛人
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.31-43, 2015 (Released:2015-04-20)
参考文献数
21

サンプル(標本)の適切な抽出方法の設計は,統計学における大きな関心事の一つである.空間データを対象とした空間統計学の一種である地球統計学においてもその重要性は同様であり,サンプル地点の配置の議論が近年活発化している.本研究では地価公示・都道府県地価調査における標準地・基準地の選定の問題,本稿では特に削減の問題を例に,地球統計学に基づくサンプリングデザインの方法の応用を試みる.まず,標準地・基準地がどのように選定されているかを概観する.次に,地球統計学の関連研究を簡単に整理した上で,地価公示・都道府県地価調査の主旨に整合したサンプリングデザインの方法を提示する.最後に,提示した方法を用いて茨城県内の地価公示と都道府県地価調査における標準地・基準地の地点を削減する問題を解きその有用性を確認する.
著者
羽鳥 剛史
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.231-247, 2016 (Released:2016-09-20)
参考文献数
19
被引用文献数
4

自然災害による想定外の事態に適切に対処する上では,地域住民一人一人が想定を超える災害が起こり得ることを理解することが重要である.本研究では,災害想定を巡る認知バイアスとして,想定外の災害事象が過小評価される問題を取り上げ,洪水災害を対象としてそうした認知バイアスを緩和するためのハザードマップの提示方法について検討する.そこで,洪水ハザードマップの提示に加えて,その前提条件に関する内省機会を付加した内省機会付加型ハザードマップを提案し,愛媛県大洲市肱川周辺住民605名を対象として,本ハザードマップの効果を検証した.その結果,内省機会付加型ハザードマップを閲覧することにより,洪水災害に関わる想定外の事態に対する認識が向上し,災害想定に関わる認知バイアスが緩和される効果が確認された.
著者
榎村 康史
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.I_103-I_110, 2012 (Released:2013-12-25)
参考文献数
18
被引用文献数
3

洪水ハザードマップは,住民が洪水の危険性を認識し,水害時に速やかな避難を行うためのソフト対策として近年急速に普及が進んできたものの,住民の認知・理解は十分とは言い難い状況にある.洪水ハザードマップが効果を発揮するためには,住民がマップを認知・理解し,防災意識を高める必要がある.本研究では,洪水ハザードマップの住民認知・理解向上のための課題を整理するとともに,熊本県内市町村を対象としたアンケート調査及び洪水ハザードマップの内容分析に基づき,洪水ハザードマップの住民認知・理解向上のための取組みの実態と問題点を明らかにする.また,洪水ハザードマップ改善のための試みとして,人吉市温泉町・下林地区住民を対象とした洪水ハザードマップに対する住民評価の把握の検討を行う.
著者
清田 裕太郎 岩倉 成志 野中 康弘
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.I_1059-I_1066, 2014 (Released:2015-05-18)
参考文献数
20
被引用文献数
1

2011年3月11日に発生した東日本大震災で首都東京の交通網は完全に麻痺した.道路交通網においても例外ではなく,大規模なグリッドロック現象が発生した.今後首都圏付近で発生する地震に備え,震災時におけるグリッドロック現象の時空間拡大プロセスの分析を行い,震災による渋滞現象の実態を明らかにすることを目的とする.本研究では,タクシープローブデータを解析し3月11日の首都東京のグリッドロック拡大を時系列で分析し,上下車線別のグリッドロック発生リンクの特定とボトルネックと推定される地点を抽出した.
著者
松下 哲明
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.1-10, 2019 (Released:2019-01-20)
参考文献数
29
被引用文献数
1

熊本地震では風評被害の低減に向け,観光客に対する助成制度(ふっこう割)が実施された.多くの観光客が利用したことが報じられているものの,施策の効果は定量的に評価されていない.そこで本研究は九州各県の宿泊観光統計を用い,ふっこう割が観光客の回復過程に及ぼした影響を分析した. その結果,熊本県と大分県は同じ割引率であったものの,熊本県は大分県よりも観光客の増加が少なかったことを示した.観光資源,宿泊施設,道路網など被害の有無が影響を及ぼした要因として考えられる.また,熊本県,大分県以外の地区は,復旧トレンドを大きく変化させるほどの影響は認められなかった.このような分析結果は予算規模,対象地区,割引率,割引期間など制度設計の改善に向けた基礎資料として有用と考える.
著者
犬飼 望 田中 伸治 中村 文彦 有吉 亮 三浦 詩乃 小根山 裕之 柳原 正実
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.I_1327-I_1338, 2018 (Released:2019-01-10)
参考文献数
17

交差点の平面幾何構造と交通制御を工夫し,右折車と対向直進車の交錯を減らすAlternative Intersections(以下,AI)と呼ばれる新しい交差点概念が海外にて提案されている.本研究ではAIが我が国でも交通制御の選択肢の1つになり得るという仮説のもと,適用に向けた知見を得ることを目的とする.日本に存在する交差点からAIの適用可能性があると考えられる交差点を選定し,観測データを基本入力値としたシミュレーションを用いてAIを仮想再現し,交差点処理性能評価を行った.また,従来型交差点と構造が大きく異なるAIを日本人ドライバーが迷いや違和感なく運転できるかどうかドライビングシミュレータを用いて検証した.その結果,我が国におけるAIの適用領域の目安を示し,日本人ドライバーにとってAIは工夫次第で受容性があることを明らかにした.
著者
田中 伸治 藤原 直生 桑原 雅夫
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.67_I_617-67_I_624, 2011 (Released:2012-12-28)
参考文献数
10

近年歩行環境への関心の高まりに伴い,歩行者の経路選択モデルや流動シミュレーション等が活発に研究されているが,これらに大きな影響を与える経路選択肢集合を生成する手法は十分に確立していない.本研究では携帯電話端末からのGPSデータを利用して,歩行者の経路選択肢となるリンク集合を推定することを試みた.この手法は,追跡調査やアンケート調査では取得が難しい行動実績データを大量かつ継続的に得られるという利点がある.まず使用するデータの特性を考慮したマップマッチングを行い,それに基づき経路選択に利用されたリンク集合を,経路長と,接続性指標であるインテグレーション値を用いて推定する手法を提案した.その結果,後者を用いることで経路選択リンク集合をより精度よく推定できることが明らかとなった.
著者
吉田 昇平 中村 文彦 田中 伸治 有吉 亮
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.I_765-I_772, 2015 (Released:2015-12-21)
参考文献数
7

近年導入が盛んなコミュニティバスについて,住宅地区内の狭隘な道路において大型車両は通行するべきでないとする問題点が存在することによって,一部の地域ではコミュニティバスの運行ルートの設定に難航している事例が存在している.本研究は,コミュニティバスの運行ルート計画において,幅員基準を満たす運行ルートを設定することが最も困難であることを示し,また一方で幅員基準に満たない場合でも運行ルートとして登録された道路も少なからず存在していることを明らかにした.幅員基準を満たさない道路においても登録された要因について,待避所などの整備状況や自動車交通量が影響していると考えられることを示した上で,幅員のみによって判断されないコミュニティバスの運行ルートに考慮できる道路の新たな指標の考え方について提案している.
著者
川崎 智也 轟 朝幸 小更 涼太 井口 賢人
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.I_799-I_808, 2017 (Released:2017-12-27)
参考文献数
19
被引用文献数
1

近年,日本に寄港するクルーズ客船の寄港回数やその利用者数が増加している.しかしながら,日本の一人当たりクルーズ客船の利用者数は欧米諸国と比較すると少ない.そこで本研究では,クルーズ客船観光ツアー未経験者を対象として,ツアーに対する参加意識に関するモデルを構築し,参加意識に影響を与える要因を特定した.分析の結果,低価格のカジュアル/スタンダードクラスのツアーを短期間で提供することにより,利用者が増加する可能性を示すことができた.また,フライ&クルーズの導入によりツアー日数を短縮することも有用であることが示された.退職者については温泉,日本食,日本語ツアーガイドなどの日本的なオプションサービスの提供が利用意識を向上させることが示唆された.
著者
筒井 正幸 石橋 知也
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.75, no.6, pp.I_287-I_297, 2020 (Released:2020-04-08)
参考文献数
26

本研究では,1962-65年に都市系の専門家の協力のもと西日本新聞社によって実施された「西日本都市診断」の内容に着目し,診断された21都市のうち9都市を事例に,各都市の診断の要点を整理したうえで,往時の都市診断の議論やその後の都市政策に及ぼした影響について考察することを目的とする.その結果,1960年代の計画にかかわる議論における西日本都市診断の位置づけとして全総や総合計画における論点を補完する役割を担ったこと,都市診断が「広域的視野」「多層スケールにおける各市の位置づけ」の2つの特徴を有すること,を指摘した.診断委員と総合計画審議委員の重複や内容の類似点等についての分析から往時の新聞という媒体のもつ都市政策への影響を指摘した.都市診断が総合計画を策定するための「参考資料」の役割を担ったことも指摘した.
著者
杉下 佳辰 日下部 貴彦 朝倉 康夫
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.I_781-I_792, 2016 (Released:2016-12-23)
参考文献数
26

局所的な障害が要因となり,連鎖的障害がシステム全体へ波及する現象をカスケード故障(cascading failure)と呼ぶ.ネットワークとして表現できる現実の社会システムでは,ごく少数のノードやリンクで発生した障害がネットワーク全体に壊滅的な損害をもたらし得ることが確認されている.本研究では,カスケード故障による壊滅的損害を回避することを目的とした損害抑制策を提案する.具体的には,局所的障害の発生直後に,Collective-Influenceと呼ばれる指標値の低いノードを意図的に除去することでネットワークにかかる負荷を軽減し,障害の波及を抑制する策を提案する.数値計算によって耐久性の低いネットワークに対しても提案策が効果的に働くことを示すとともに,提案策によって既存の方策を上回る損害抑制効果が発揮される可能性を示唆する.
著者
株本 啓佑 田中 皓介 宮川 愛由 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, pp.1-17, 2020 (Released:2020-01-20)
参考文献数
40

適正な公共インフラ政策についての世論形成やそれに基づく政策判断を促すためには,公衆一人一人の事実情報の認識形成のプロセスについての知見が重要な基礎的知見となる.本研究ではこうした認識に基づき,「公共政策におけるキッチュ」の存在についての心理実証実験を行った.これは,「明らかな危険性を含んだ公共政策を,崇高にして達成可能な美しい理想のごとく絶対化し,そのような姿勢をとるうえで都合の悪い一切の事柄を,汚物のごとく見なして排除したがる態度」という,特定事実を無視する不合理かつ不条理な態度を意味する.本研究では「公共事業の縮小」「緊縮財政」「新自由主義的な改革推進」の三つの政策について「キッチュ」の存在を確認する心理学実験を行い,その存在を実証的に示した.
著者
松下 岳史 木附 晃実 馬奈木 俊介
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.I_347-I_352, 2019 (Released:2019-12-26)
参考文献数
27

近年日本では,地方からの人口流出・東京一極集中が著しく,地方では生活利便性や経済面において様々な負の影響が生じている.政府は「まち・ひと・しごと創生基本方針2015」の中で,高齢者の地方移住を支援するとし,高齢者が健康な生活を送れるまちづくりを目指す「日本版CCRC」に取り組む自治体がある.そこで本研究では,過去10年間に引越経験を有する回答者のアンケートデータの結果を用いて,65歳以上と他の年代で居住地選択の理由に違いがあるかを分析した.その結果,65歳以上では他の年代と比較して,自然環境を重視していることを明らかにした.また年代に関わらず,利便性や住宅事情に関する項目が重視されていることも明らかにした.地方自治体は豊かな自然環境の整備とアピールによって,高齢者の移住を促すことができると考えられる.
著者
田中 晃代
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.I_259-I_265, 2012 (Released:2013-12-25)
参考文献数
5

本研究は,市議会議員の「まちづくり活動」に着目し,まちづくり活動に関する活動実態と思考パターンをもとに「参加型まちづくり」における市議会議員の役割を提示するものである.議員の活動実態については,「都市」「福祉・保健」「環境」「防災・防犯」の分野が多く,7割が地域活動や市民活動に従事していた.また,行政が設置するフォーラムや協議会にも出向くなどして「参加型まちづくり」に関わりを持っている議員も3割存在していることがわかった.さらに,議員の思考パターンを分析したところ,6つの因子(地域性,開示性,専門性,市民力,用語性,合議制)を見出した.以上のことから,市議会議員は,市民の活動を育て,現場の経験を活かして議会に役立てる等の役割があることがわかった.
著者
大澤 実 高山 雄貴 恩田 幹久 浅川 遼 池田 清宏
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.50-63, 2018 (Released:2018-02-20)
参考文献数
36

本研究では,我が国の人口分布の大域的特徴とその変遷を明らかにし,多地域空間経済モデルによる理論的予測と実現象との対応付けを試みる.具体的には,パワー・スペクトルに基づく簡便な空間周波数解析によって,1次元空間における理論的予測である (i) 集積の周期性と (ii) 輸送費用の低下に伴う集積数の減少を検出する.国勢調査をもとに,我が国の人口分布を1次元空間上に射影した人口分布データを1920年まで遡る複数年度にわたって作成し,提案手法を適用する.そして,我が国の人口分布の基本的特徴・時系列変化を明らかにし,理論予測との整合性を議論する.
著者
波床 正敏
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.I_809-I_820, 2016 (Released:2016-12-23)
参考文献数
22

フランスでは1981年にTGVが運行開始され,現在までに多くの主要都市に対してTGVサービスが提供されている.本研究では,フランスの幹線鉄道政策を振り返るとともに,近年の高速鉄道整備に伴う影響などについて分析するため,TGV導入前の1963年,導入直後の1985年,全国展開期の2005年の3年次について,主要都市間の各種所要時間指標を計測し,その特徴を考察した.その結果,最初のTGVが開通した直後の1985年以前では速度向上と乗り継ぎ利便の改善が図られることで総合的な利便性が大きく向上したが,1985年以後のTGVネットワークの全国展開期においては速度は向上したものの乗り継ぎ利便が悪化することが多く,総合的な利便性の改善は小さいことがわかった.
著者
萩田 賢司 森 健二
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.67_I_1055-67_I_1062, 2011 (Released:2012-12-28)
参考文献数
10
被引用文献数
1

太陽の眩しさは道路交通に悪影響を及ぼしており,様々な交通安全対策が実施されている.こうした悪影響の実態把握や対策効果を検証するためには,太陽の眩しさが交通事故発生に与える影響を定量的に示すことが必要である.しかし,このような研究は場所や路線を限定して行われてきており,不特定多数の道路で検証した例はみられない.本研究では,緯度経度情報と進行方向ベクトルが記録されている千葉県警の交通事故原票を活用して,事故発生時の太陽位置や太陽と車両の進行方向の方位角差を算出し,太陽の眩しさが事故発生に与える影響を検討した.その結果,日照時において,太陽が第一当事者からみて眩しいと考えられる位置に存在する場合には,交通事故が比較的多く発生しており,太陽の眩しさが道路交通に悪影響を与えていることが示された.
著者
中野 秀俊 大西 正光 小林 潔司
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.227-244, 2014 (Released:2014-12-19)
参考文献数
30

建設プロジェクト契約には多くの不確実性やリスクが介在する.イスラム法を意味するシャリーアは,不確実性に関わるガラールやマイスィルを禁止する.したがって,プロジェクトに関わる契約は,契約内容によってシャリーアに抵触する危険性を含む.シャリーアに準拠したプロジェクト契約を遂行する場合,契約マネジメントにおける不確実性への対処方法のシャリーア適合性が重要な課題となる.現在のところ,イスラームにおけるシャリーア適合性に関して厳密な定義や普遍的な法解釈が存在するわけではない.また,地域によって適合性の解釈に多大な多様性が介在する.本研究では,プロジェクトに関わる完備契約を対象として,契約のシャリーア適合性を判定する理論モデルを提案し,典型的な契約スキームのシャリーア適合性について考察する.