著者
山田 忠史 中村 昂雅 谷口 栄一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.67_I_801-67_I_811, 2011 (Released:2012-12-28)
参考文献数
29

本研究は,既存の商物一体型モデルを基にして,サプライチェーンネットワーク上の各主体(製造業者,卸売業者,小売業者,消費市場,物流業者)の分権的な意思決定や行動の相互作用を考慮した,商物分離型のサプライチェーンネットワーク均衡モデルを提案し,各主体の意思決定の定式化やサプライチェーンネットワーク全体の均衡条件を示す.また,比較対象の一つとして,卸売業者が介在せず,流通段階が削減された場合のサプライチェーンネットワークについても,均衡モデルの枠組みで定式化を行う.これらのモデルを用いて簡単な数値計算を行うことにより,流通形態の相違がもたらす,物資流動量(商品取引量,生産量,輸送量)やサプライチェーンネットワークの効率性の変化について,基礎的検討を行う.
著者
鈴木 春菜 北川 夏樹 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.228-241, 2012 (Released:2012-10-19)
参考文献数
26
被引用文献数
4

交通政策をはじめとした土木施設の整備・運用に関する意思決定において,社会学的・心理学的に及ぼされる影響を十分に踏まえることは必ずしも容易ではない.そのような影響のなかでも,経済状態などの客観的指標に比して主観的指標については十分な検討がなされていない.本研究では,交通行動が幸福感に及ぼす影響について検討するため,質問紙調査を実施して移動時の主観的幸福感の規定因を探索的に検討した. その結果,交通手段の違いによらない,個々の移動の幸福感の集積値として移動に対する幸福感を表すことができることが示された.また移動時幸福感の規定因として,移動時風景の選好の程度や移動目的,道路/車両の混雑度,移動中の活動が移動時幸福感に影響を及ぼすこと,交通手段によってその影響の有無や程度に差があることが示された.
著者
田中 皓介 外村 健太 寺部 慎太郎 栁沼 秀樹 康 楠
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.I_135-I_142, 2019 (Released:2019-12-26)
参考文献数
15

近年の日本では,国民が持つ土木への否定的な印象が指摘されている.既往研究では新聞報道の公共事業に対する批判的な傾向が明らかにされてきた一方で,例えば,殺人等の報道においては容疑者が,「会社員」ではなくあえて「土木作業員」と表記される事例も散見されるが,こうした報道も土木に対して間接的に否定的な印象を与えることが懸念される.そこで本研究は,土木に対する否定的な世論の形成要因を探るに当たり,犯罪報道の中でも特に凶悪犯罪報道における容疑者の職業表示を対象に報道状況を分析した.その結果,土木建設業関係者による犯罪の報道は,他の職業と比べても高頻度で見られた.しかしそれは土木建設業従事者がそもそも多く,犯罪者数もまた多いことによるもので,報道が偏向していることを示す結果ではなかった.
著者
清水 英範
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.I_1-I_20, 2014 (Released:2015-05-18)
参考文献数
94
被引用文献数
3 3

建築家ヴィルヘルム・ベックマンが明治19年(1886)に立案した東京の都市計画(東京計画)は,国会議事堂の位置を,現在と同じ永田町の丘に示した初めての都市計画である.しかし,この事実は歴史に埋もれ,これまで研究の対象とされてこなかった.本研究は,国会議事堂の位置選定に主眼を置いて,ベックマンの東京計画を初めて詳細に論じ,主に次のような事実を明らかにした.1) 彼の議事堂の位置選定は,当時の政府の方針や新聞・雑誌の報道とは異なる,斬新なものであった,2) それは,彼の確固とした意思と見解,そして,東京の地形への確かな理解に基づくものであった,3) 議事堂の位置を永田町の丘としたことは,放射状道路網の線形設計をはじめ,彼の東京計画全体に支配的な影響を与えた.
著者
西内 裕晶 塩見 康博
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.I_917-I_927, 2012 (Released:2013-12-25)
参考文献数
10
被引用文献数
1

本研究では,セグウェイをはじめとするパーソナルトランスポーターの交通手段としての工学的な位置づけを明確化するため,セグウェイの走行実験を行い,その走行挙動特性を整理する.具体的には,セグウェイの基本的な走行挙動特性(加速・減速・スラローム)を把握し,更に走行速度レベルが同程度と考えられる自転車との挙動(歩行者の追い抜きとすれ違い,急制動)を比較し,14名の被験者の乗車経験にも着目しながら,セグウェイの走行挙動特性を整理するものである.その結果,乗車経験による大きな挙動の違いは見られず,さらにその挙動性能は自転車と同様であることを確認した.
著者
河瀬 理貴 井料 隆雅 浦田 淳司
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.184-200, 2021 (Released:2021-07-20)
参考文献数
24

災害の影響を緩和する上で救援物資輸送は重要な課題である.救援物資の迅速かつ的確な輸送のために,我が国ではプッシュ型とプル型の二種類の戦略を計画している.しかし過去の災害では,ラストワンマイル輸送や被災地からの情報伝達でボトルネックが発生し,これらの戦略は期待通り機能しなかった.この経験に基づき,被災地に直接輸送する体制やICTに依存しない情報伝達体制が提案されている.本研究では,提案されたプッシュ型とプル型の戦略を定量的に評価するために,直接輸送が可能な輸送ネットワークや継続的な通信が不可能な情報ネットワークにおける在庫輸送戦略を分析する.その結果,直接輸送が最適であることを証明し,情報伝達が断続的な場合にプル型がプッシュ型よりも性能が低下する可能性とそれを回避する方策を示した.
著者
柿本 竜治 黒肥地 雄太
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.I_117-I_127, 2019 (Released:2019-12-26)
参考文献数
21
被引用文献数
1 1

本研究では,熊本県が実施した熊本地震の災害対応に係る調査の「課題が生じた点」のテキストデータを分析し,熊本県庁で生じた課題を整理分類するとともに,時系列的に災害対応状況を整理し,どの段階で課題が生じているかを把握する.包括的に課題を把握した後に,災害の応急復旧に深く関わった土木部の動きに着目し,初動の災害対応活動に生じた課題を把握する.さらに,災害応急復旧の現場が直面した課題の把握にあたり,実際に業務にあたった行政技術職員および建設業者にヒアリング調査を実施し課題を抽出する.本研究では,階層的に課題を把握していくことで,災害時の応急対応に生じた共通の課題を探り出し,迅速な災害対応を可能にする応急復旧体制の構築に寄与する知見を得ることを目的とする.
著者
藤井 達哉 一井 啓介 谷口 航太郎 谷口 守
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.I_259-I_268, 2019 (Released:2019-12-26)
参考文献数
28

我が国では,若年者の地方から都市への人口流出が,量の観点から問題視されているが,質に関して議論が行われていない.海外への頭脳流出は問題視されても,それより身近な国内における地方からの頭脳流出は看過されているのである.本稿では,大学入試偏差値を用いて地方からの頭脳流出の実態を分析し,その累積的影響を推計する方法を提案した.まず,大学進学者と大卒就職者を都道府県間移動の有無で集計し,地方別に各偏差値の学生が占める割合を分析した.次に,地方別・偏差値別の大卒残留者数を推計した.分析から,高偏差値の大卒者が地方から首都圏へ流出する構造を定量的に明らかにした.また,現在の大学進学者と大卒就職者の人口移動が将来にわたり続いた場合,地方から高偏差値の大卒残留者が累積的に減少していくことを示した.
著者
田中 皓介 長谷川 貴史 宮川 愛由 三村 聡 氏原 岳人 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.356-368, 2018 (Released:2018-11-20)
参考文献数
27
被引用文献数
1 1

近年の日本では大型店舗立地による雇用機会,税収,買い物客の増加が期待されるものの,その根拠は乏しい.それどころか先行研究では,大型店舗での買い物は地元商店での買い物に比べて,地域経済の活性化に繋がらないことが実証的に示されている.本研究は,京都市での先行研究の知見が他都市においても妥当するかを検証するため,岡山市を対象に調査・分析を行った.その結果,買い物支出のうち岡山市に帰着する割合は,地元小型商店,地元中型商店ではそれぞれ67.13%,55.21%であった.一方,天満屋,全国チェーンYではそれぞれ40.00%,28.48%に留まり,地元小型商店や地元中型商店の方がチェーン型大型店舗よりも,買い物支出が岡山市に帰着する割合が高いことが示された.こうした傾向は京都市を対象に行った先行研究の知見を支持する結果である.
著者
家田 仁 岩森 一貴
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.I_719-I_730, 2019 (Released:2019-12-26)
参考文献数
13

高速道路ネットワークが約1万kmにまで拡張され,高速バス輸送は今や年間1億人の輸送人員を担う重要な交通手段となっている.特に新幹線を持たない地域においては短距離から中長距離輸送まで,公共旅客輸送の主役の地位を占めるに到っている.この研究では,高速バス輸送における最も重要なインフラ施設ともいえる高速バスストップ(BS)に着目し,まず創始期の高速バス導入の意図とその後の変容経緯を歴史的に振り返り,それを踏まえてBSの設置タイプ別の整備状況と使用状況を調査し,その特性について交通学的見地から分析して一定の合理性を確認するとともに,地域的偏差特性に着目した考察を通じて,BSの整備と使用に関わる地域政治的もしくは意思決定論的性質の内在性を示唆したものである.
著者
明渡 隆浩 長野 博一 庄子 美優紀 伊東 英幸 藤井 敬宏
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.I_1029-I_1036, 2016 (Released:2016-12-23)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

わが国では,子育てと仕事の両立支援や女性が出産・育児のしやすい環境づくりに向けた検討が順次進められているが,子ども連れ世帯は就業状況・世帯状況・子どもの発育状況により,外出活動そのものが多様化しており,移動負担要因についても明らかにされていない部分が多い.そのため,これらを支援する内容もより複雑化することが今後予測される.本研究は,保育園および幼稚園通園世帯におけるご両親にそれぞれアンケート調査を実施し,移動時の負担と行動意識,世帯状況等の子育て環境,立地状況の整理を行ったうえで,共分散構造分析を用いて移動負担要因との関係性を定量的に示した.また,移動支援策の利用要因を数量化II類を実施し,共分散構造分析から得られた結果と同等の要因が影響していることが明らかになった.
著者
波床 正敏 中川 大
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.I_629-I_641, 2015 (Released:2015-12-21)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

1964年に世界初の高速鉄道である東海道新幹線が開業し,2014年で50年を迎えた.この間,わが国では複数の新幹線が整備されてきたが,厳しい経済合理性を求められる社会環境やオイルショック等が影響し,世界的に高速鉄道の役割が注目される昨今においても新幹線網整備は必ずしも活発ではない.このような現状のネットワークは,特に国鉄解体民営化以後の幹線鉄道政策に依るところが大きいと考えられる.そこで本研究では,国鉄民営化直後の1990年を基準とし,当時の予想としての2025年における将来人口分布や当時明らかになっていた旅客流動データ等を前提に遺伝的アルゴリズムを用いて幹線鉄道網を最適化した.探索結果と実際に実施された幹線鉄道整備を比較し,整備政策が適切であったかなどについて考察を行った.
著者
阪本 真 屋井 鉄雄
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.I_1089-I_1101, 2019 (Released:2019-12-26)
参考文献数
20

航空需要の増加に伴い,首都圏空港は更なる機能強化が必要とされている.海外では,従来の管制運用方式とは異なる先進的な管制運用方式の導入によって空港の機能強化が達成されている.本稿ではPoint Merge System(以下,PMS)と呼ばれる運用方式に着目し,従来の研究には見られない管制指示音声データを利用した分析により,PMSにおける管制指示及び航空機挙動の特性を定量的に明らかにした.次にこの結果を踏まえて先行研究で開発した基礎的なシミュレータの改良を進め,羽田空港にPMSを導入した場合の効果について基礎的な検討を行った.
著者
山口 修平 赤松 隆
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.109-127, 2019 (Released:2019-05-20)
参考文献数
17
被引用文献数
1

Fujita and Ogawa (1982)モデルは,複数都心が均衡状態として形成されることを示した都市経済学分野の代表的な集積経済モデルである.このモデルは複数均衡を持ち,中には実現不可能と考えられる不安定な均衡解も存在しうる.そのため,均衡解の安定性を吟味し尤もらしい解を選択する必要があるが,解の安定性を検証した研究は従来存在しない.本研究では,ポテンシャル・ゲームと確率安定性概念を用いて,Fujita and Ogawaモデルの安定均衡解の特性を明らかにする.空間設定を線分都市と円周都市として分析した結果,本モデルは以下の3つの特徴を持つことが示される: 1) 複数都心パターンが安定均衡解として創発する,2) 交通費用パラメータを減少させるにつれて安定解の都心数が単調減少する,3) 上記の2つは線分都市と円周都市に共通する性質である.
著者
吉田 惇 井元 智子 河野 達仁
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.47-58, 2019 (Released:2019-04-20)
参考文献数
18

日本各地でクマによる農作物被害や人身被害が増加している.本研究は,生物保全とクマ被害軽減を同時に考慮した社会的に望ましい土地利用のあり方を理論的に分析する.具体的には,(a)生態系サービス,(b)農作物被害,(c)農地におけるクマ遭遇リスク(人身被害,恐怖感)の外部性を同時に考慮し,ブナの本数および住宅地と農地それぞれの最適総土地面積条件を導出する.分析により,クマが住宅地に侵入しない場合は市場均衡で決まる総住宅地面積は社会的最適と一致すること,最適総農地面積は農地拡大による生態系サービスの質の低下とクマ被害の減少のトレードオフに依存して,市場均衡より大きい場合も小さい場合もあることを明らかにする.各外部性が最適政策へ与える影響についても整理する.クマが住宅地に侵入する場合の拡張も示す.
著者
青木 達也
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.I_331-I_344, 2017 (Released:2017-12-27)
参考文献数
16

本研究は足尾銅山の通洞地区にある選鉱所について,明治から大正前期の時代までの変遷と関連遺構を明らかにしようとするものである.既往の二次史料に加えて,このたび実施した史料調査によって得られた一次史料の内容を考証した結果,これまで明らかとなっていなかった通洞選鉱所の創業年代や移転年代およびそれらの位置のほか,有越索道,新梨子竪坑,新梨子斜坑,足尾鉄道との関係も明らかにすることができた.さらにこの知見に基づき遺構の残存状況を調査した結果,施設が存在していた箇所を推定するとともに残存状況を把握することができた.本研究で纏められた成果が今後の詳細調査へと引き継がれれば,これまで困難とされていた通洞選鉱所の産業遺産としての価値づけが可能になる.
著者
石橋 知也 松田 知己 東郷 浩樹 柴田 久
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.78, no.6, pp.II_273-II_284, 2022 (Released:2022-04-20)
参考文献数
18

石積みは,伝統的・文化的な風景を構成する重要な要素であるものの,被災した石積みの復旧方針・方法は自治体によってばらつきがあり,箇所ごとの対処にならざるを得ない状況にある.本研究は,平成24年九州北部豪雨によって被災した農村地区を有する自治体(うきは市,久留米市,八女市,伊万里市,武雄市,諫早市,大村市)での石積みの復旧実態,重要文化的景観を有する自治体(豊前市,唐津市,長崎市,平戸市,小値賀町)における被災した石積みの復旧実態,について職員へのヒアリング調査と現地調査から明らかにすることを目的とする.その結果,1)石積み復旧を促進する基準の見直し,2)石積み復旧に対する制度運用の有効性と課題,3)重要文化的景観における空石積み復旧の実態,4)重要文化的景観をめぐる課題への対応策,について指摘した.
著者
川崎 智也 轟 朝幸 小林 聡一
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.I_523-I_532, 2015
被引用文献数
1

首都圏の都市鉄道では,朝ラッシュ時に定常的な混雑が発生している.混雑緩和に対する一つの解決策として,時差通勤をした者に対して,抽選で賞金が当たる抽選型報奨金制度がある.本研究では,東京メトロ東西線利用者を対象として,オーダードロジットモデルを用いて抽選型報奨金制度を導入した場合の鉄道利用者行動モデルを構築し,当選金額および当選金額に対する感度分析を実施した.その結果,当選の期待値が100円の下で当選金額を28.9千円(当選確率0.33%)とした場合,定額型施策よりも時差通勤施策の参加者が増加する可能性が示され,混雑率は197.5%となり,現状の混雑率である199%から1.5%減少することが示された.当選金額を20万円(当選確率0.05%)と高額に設定すると,混雑率は196.9%まで減少し,定額型施策よりも0.6%低下した.
著者
橋本 成仁 厚海 尚哉
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.I_567-I_576, 2015 (Released:2015-12-21)
参考文献数
17
被引用文献数
2

本研究は,高齢者の幸福感を向上させる要素として余暇活動に着目し,高齢者の余暇活動が幸福感とどのように関わっているのかについて検討を行った.回答者を取り組んでいる余暇活動を元に類型化したところ,「多彩型」「平均型」「消極型」の3つの余暇活動タイプに分類された.また,幸福感を表す指標として主観的幸福感尺度(LSI-Z)を用い,この値と各余暇活動タイプとの関係について検討した.高齢者の幸福感の要因分析の結果,余暇活動タイプや経済状況の満足度,総合的な余暇活動満足度などが重要な要素となっていることが示された.総合的な余暇活動満足度を向上させるためには本人の健康状態とともに,一緒に活動できる仲間の存在や時間的余裕が重要な要素となることが明らかになった.
著者
山中 英生 亀井 壌史
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.I_623-I_628, 2015 (Released:2015-12-21)
参考文献数
15

国土交通省・警察庁が2012年発出した自転車ガイドラインでは自転車走行空間のネットワーク整備を推進するため,多くの街路において,車道部の活用を基本方針としており,自転車専用通行帯に加えて,自動車速度が低く,交通量の少ない道路では,車道部でのマーキングや指導帯等を用いて,車道混在形態の整備を進めることが示されている.しかし,我が国の自転車の利用者にとってこうした車道走行の安全感確保の視点からの評価に関して十分な研究はない.本研究では,走行中の自転車から,追越していく自動車の速度,離隔を計測することができるプローブバイシクルを開発し,安全感のプロトコル調査と組み合わせることで,自動車に追い抜かれる時の安全感モデルを開発した.