著者
加地 留美
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.182-187, 2012-03-01 (Released:2013-03-01)
参考文献数
29
被引用文献数
2 1

乳酸菌の摂取が生体に与える様々な保健効果の中で,免疫調節作用に強い関心と期待が集まっている.乳酸菌が免疫系に及ぼす効果は,腸内フローラの制御を介した間接的な作用だけでなく,乳酸菌と免疫担当細胞との直接的な相互作用を介して発揮されることが明らかになってきた.ここでは,乳酸菌の免疫調節作用に関する最新の知見を,受容体による認識に引き続いて起こる細胞内シグナル伝達系の活性化に焦点を当てて概説する.
著者
仲里 猛留 坊農 秀雅
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.873-877, 2016-11-20 (Released:2017-11-20)
参考文献数
13

次世代シークエンサー(NGS: next generation sequencer)の活躍によって,さまざまな生命科学の謎が解き明かされている.マイクロアレイ同様,NGSから得られるデータも公共データベースに収めることが論文投稿の条件となってきており,そのデータ量は約3.2ペタバイトにもなっている(ペタは10の15乗).これまでよく用いられてきたBLASTなどの配列類似性による検索手段ではもはや歯がたたず,それぞれのデータの付帯情報であるメタデータをたよりに必要な情報を探し出すことになる.膨大なNGSのデータベースから効率よくデータを取り出し,自らの研究に活用する方策を紹介する.
著者
堀田 国元 佐々木 博
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.57-62, 2011-01-01 (Released:2012-01-01)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

栄養価が高くヘルシーな食品として国際的にも受け入れられている納豆(糸引き納豆)は,大昔から明治時代まで,大豆を煮て稲藁苞に入れて保温し,稲藁の付着菌による自然醗酵に依存するという不衛生で不安定な方法でつくられていた.この方法に代わる近代的製造法が確立され,世に普及したのは,明治時代後半に澤村眞博士(東大農芸化学)が納豆は一菌種(Bacillus natto と命名)の働きによってできることを解明したことと,大正時代に半澤洵博士(北大農芸化学科応用菌学講座の開祖)が行なった実学的研究と普及活動によるところが大きい.半澤教授は,納豆菌の純粋培養と衛生的な容器を使用することが納豆を安定してつくるためのキーポイントと見抜き,経木(薄皮)を容器に用いる半澤式改良納豆製造法を確立した.そして,納豆容器改良会を組織し,また雑誌『納豆』を刊行して納豆製造業者を直接・間接に指導し,納豆博士と綽名された.さらに,半澤博士の指導を受けた三浦二郎氏(仙台市)が醗酵温度調節のために通気孔付きの納豆室(文化室と呼ばれた)を考案したことによって,安定した大量納豆製造の道が拓かれた.本稿では,以上の経緯について辿り,近代納豆の実現における応用菌学の貢献をクローズアップする.
著者
村田 篤志
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.265-267, 2015

本研究は,日本農芸化学会2014年度大会(開催地:明治大学)での「ジュニア農芸化学会」において発表された.日本を含め東アジア一帯に生息する捕食性テントウムシの一種であるナミテントウ(Harmonia axyridis)は,農作物に被害を与えるアブラムシの駆除を目的に日本から欧米に移入された.しかしナミテントウは,欧米在来の捕食性テントウムシ類を激減させるなど自然環境に大きな影響を与えたことから,生物多様性を脅かすおそれがあるとされ,侵略的外来種に指定されている.一方,日本ではほかの捕食性テントウムシと共存しており,生態系に悪影響を与えているという報告はない.発表者は,ナミテントウを含む日本在来の捕食性テントウムシ3種の捕食行動や餌となるアブラムシの種類を詳細に比較・解析することで,日本でナミテントウとほかの在来の捕食性テントウムシが共生できる原因を考察するなど,得られた結果は非常に興味深いものとなっている.
著者
品川 桃実 佐藤 結以 中村 祐希
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.356-357, 2011-05-01 (Released:2012-04-27)

本研究は,平成22 (2010) 年度日本農芸化学会大会(開催地 東京)での「ジュニア農芸化学会」において“優秀ポスター賞”に選ばれた.一般に,「黴(カビ)」という言葉から連想されるイメージはあまり良いものではない.しかし,カビのもつパワフルな能力が,私たちの食生活の豊かさに大きく貢献していることは言うまでもない.本研究では,カビを異なる視点から捉え,その芸術への応用の可能性を追究している.
著者
原 悠歌 井上 智香子
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.9, pp.650-651, 2011-09-01 (Released:2012-09-01)

本研究は,日本農芸化学会2011年度(平成23年度)大会(開催地 京都)での「ジュニア農芸化学会」において発表予定であったが,残念ながら東日本大震災によって大会が中止となった.日本農芸化学会和文誌編集委員会によって本研究を優れたものと選定し,掲載することとなった.市街化が進む水田地域における外来種ミシシッピアカミミガメの生態を明らかにしたもので,在来種への圧迫や食物連鎖のバランスなど生態系に与える影響を考察する上で重要な知見を得ている.
著者
松崎 政紀
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.406-413, 2012-06-01 (Released:2013-06-01)
参考文献数
39
被引用文献数
1

オプトジェネティックス(Optogenetics;光遺伝学)は,遺伝学的,光学的方法を組み合わせて生体組織の特異的細胞種における機能獲得,機能欠損を達成するものである(1).2005年にチャネルロドプシン-2の青色光照射による神経細胞活動の高速制御が発表されて以来(2),神経科学の分野で爆発的な進展と応用が始まっている.発現量の安定性など改良すべき点もまだあるが,神経科学も分子生物学における遺伝子ノックアウト法,強制発現法のような明快な因果関係を捉えることが可能なツールを手に入れ,新しい局面に入ったことは間違いない.ここでは,その歴史も含め,現在の進展状況とこれまでの応用例について概説する.