著者
田川 まさみ 田邊 政裕
出版者
千葉医学会
雑誌
千葉医学雑誌 (ISSN:03035476)
巻号頁・発行日
vol.82, no.6, pp.299-304, 2006-12-01
被引用文献数
2

コンピテンスとは専門職業人が,知識,技術を統合してある状況において専門職業人として業務を行う能力であり,倫理感や態度も求められる。PBLやOSCE導入の背景となっているコンピテンス基盤型教育は,教育プログラムの到達目標として一人前の医師に求められる能力であるコンピテンスを設定し,コンピテンス修得のための実践を伴う教育と,コンピテンス修得の程度を学習評価として行うものである。海外では医学部教育,研修医教育にこのコンピテンス基盤型教育が積極的に導入推進される動きがあることを概説する。
著者
落合 武徳
出版者
千葉医学会
雑誌
千葉医学雑誌 (ISSN:03035476)
巻号頁・発行日
vol.83, no.5, pp.173-176, 2007-10-01
著者
Hoshino Masami Haraguchi Yoshikura Hirasawa Hiroyuki Mizushima Iwanori Tanaka Chie Morita Yasumasa Yokoi Takehito Sakai Motohiro 星野 正己 ホシノ マサミ 水島 岩徳 ミズシマ イワノリ 田中 千絵 タナカ チエ 森田 泰正 モリタ ヤスマサ 横井 健人 ヨコイ タケヒト 酒井 基広 サカイ モトヒロ 原口 義座 ハラグチ ヨシクラ 平澤 博之 ヒラサワ ヒロユキ
出版者
千葉医学会
雑誌
千葉医学雑誌 (ISSN:03035476)
巻号頁・発行日
vol.82, no.3, pp.149-161, 2006-06-01
被引用文献数
1 3

Seven non-septic and twenty-two septic ICU patients with glucose intolerance were investigated by using bedside-type artificial pancreas (AP). IC was measured by the glucose clamp method (GC) in which BG level was clamped at 80mg/dL with two step insulin infusion rate (IIR) of 1.12 and 3.36mU/kg/min. Results: 1) IC could be estimated by the following formula: IC (mL/kg/min) =⊿IIR/⊿I≒2240/(I3-I1), (⊿IIR (mU/kg/min): difference of the amount of exogenous insulin infusion, ⊿I (mU/L): difference of the blood concentration of exogenous insulin, I1 (I3): blood concentration of insulin when IIR is 1.12 (3.36) mU/kg/min), because the difference between blood concentration of endogenous insulin when IIR was 1.12 mU/kg/min and that when IIR was 3.36mU/kg/min was small enough to be neglected. 2) IC was increased in 11 septic patients (50%) and was within normal limits in 8 septic patients (36%). 3) Among the factors which have been reported to influence IC in chronic diseases (age, body mass index, hyperlipidemia, blood lactate level, thyroid hormone, growth hormone, cortisol, organ dysfunction and its related parameters, etc.), only cardiac index was positively correlated with IC (y=3.3x+4.0, n=22, r=0.63, P<0.002).Conclusions: Measurement of IC on critical patients was established with our modified GC with two step insulin infusion. Hyperdynamic state was considered to be closely related to the increased IC.
著者
角南 祐子
出版者
千葉大学
雑誌
千葉医学雑誌 (ISSN:03035476)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.313-321, 1992-12-01

胸部エックス線写真の大動脈弓部石灰化所見は,一般に動脈硬化の指標として広く認められている。そこで今回大動脈弓部石灰化の年齢別変化を調べ,かつ今後の検診の参考にするため,住民検診時の間接写真を利用して大動脈弓部石灰化の年齢別分布,性差,地域差について検討した。さらに動脈硬化の諸要因と石灰化との関係も調べた。大動脈弓部石灰化出現率(以下石灰化率)は年齢とともに高率となり,高齢者では男性に比し女性の石灰化率が高かった。男女の石灰化出現のオッズ比(相対危険度)を算出すると,男性の女性に対する石灰化出現の危険性は有意に低かった。地域別に石灰化率をみると,農村部で最も高率で,漁村部,都市部の順に低率となり,その差は高齢者ほど顕著であった。動脈硬化の危険因子のうち,高コレステロール血症群,拡張期血圧高値群,喫煙群の三因子正常群に対する石灰化出現のオッズ比を性年齢別に算出したところ,女性では危険因子を有する群で有意に石灰化出現の危険性が高かった。石灰化の危険因子が単一の場合に比し,重複するとさらに石灰化出現の危険性が高くなる傾向が認められた。地域別に高血圧性疾患,虚血性心疾患,脳出血,脳梗塞等の動脈硬化性疾患の訂正死亡率をみると,都市部では他の地域に比し石灰化率と同様死亡率が低く,これらの関連が示唆された。石灰化出現は,大動脈系の内膜変化および動脈硬化性疾患の存在を示唆する所見であり,集団検診より診断できる所見として重要と考えられた。
著者
松田 兼一
出版者
千葉大学
雑誌
千葉医学雑誌 (ISSN:03035476)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, 1999-06-01
著者
小林 進 落合 武徳 堀 誠司 宮内 英聡 清水 孝徳 千葉 聡 鈴木 孝雄 軍司 祥雄 島田 英昭 岡住 慎一 趙 明浩 大塚 恭寛 吉田 英生 大沼 直躬 金澤 正樹 山本 重則 小川 真司 河野 陽一 織田 成人 平澤 博之 一瀬 正治 江原 正明 横須賀 收 松谷 正一 丸山 紀史 税所 宏光 篠塚 典弘 西野 卓 野村 文夫 石倉 浩 宮崎 勝 田中 紘一
出版者
千葉大学
雑誌
千葉医学雑誌 (ISSN:03035476)
巻号頁・発行日
vol.80, no.6, pp.265-276, 2004-12-01

千葉大学医学部附属病院において2000年3月から,2003年8月まで8例の生体部分肝移植手術を施行した。5例が18歳未満(7ヶ月,4歳,12歳,13歳,17歳)の小児例,3側が18歳以上(22歳,55歳,59歳)の成人例であった。2例(7ヶ月,4歳)の小児例は左外側区域グラフトであるが,他の6例はすべて右葉グラフトであった。2側が肝不全,肺炎のため移植後3ヶ月,2ヶ月で死亡となったが他の6例は健存中であり,元気に社会生活を送っている。第1例目は2000年3月6日に実施した13歳男児のウイルソン病性肝不全症例に対する(ドナー;姉22歳,右葉グラフト)生体部分肝移植である。現在,肝移植後4年3ヶ月が経過したが,肝機能,銅代謝は正常化し,神経症状も全く見られていない。第2例目は2000年11月23日に実施した12歳男児の亜急性型劇症肝炎症例である(ドナー;母親42歳,右葉グラフト)。術前,肝性昏睡度Vとなり,痛覚反応も消失するほどの昏睡状態であったが,術後3日でほぼ完全に意識は回復し,神経学的後遺症をまったく残さず退院となった。現在,術後3年7ヶ月年が経過したがプログラフ(タクロリムス)のみで拒絶反応は全く見られず,元気に高校生生活を送っている。第3側目は2001年7月2日に実施した生後7ヶ月男児の先天性胆道閉鎖症術後症例である。母親(30歳)からの左外側区域グラフトを用いた生体部分肝移植であったが,術後,出血,腹膜炎により,2回の開腹術,B3胆管閉塞のためPTCD,さらに急性拒絶反応も併発し,肝機能の改善が見られず,術後管理に難渋したが,術後1ヶ月ごろより,徐々にビリルビンも下降し始め,病態も落ち着いた。術後6ヵ月目に人工肛門閉鎖,腸管空腸吻合を行い,現在,2年11ケ月が経過し,免疫抑制剤なしで拒絶反応は見られず,すっかり元気になり,精神的身体的成長障害も見られていない。第4例目は2001年11月5日に行った22歳男性の先天性胆道閉鎖症術後症例である(ドナー:母親62歳,右葉グラフト)。術後10日目ごろから,38.5度前後の熱発が続き,白血球数は22.700/mm^3と上昇し,さらに腹腔内出血が見られ,開腹手術を行った。しかし,その後敗血症症状が出現し,さらに移植肝の梗塞巣が現れ,徐々に肝不全へと進行し,第85病日死亡となった。第5例目は2002年1月28日に行った4歳女児のオルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)欠損症症例である(ドナー;父親35歳,左外側区域グラフト)。肝移植前は高アンモニア血症のため32回の入院を要したが,肝移植後,血中アンモニア値は正常化し,卵,プリンなどの経口摂取が可能となり,QOLの劇的な改善が見られた。現在2年5ヶ月が経過したが,今年(2004年)小学校に入学し元気に通学している。第6例目は2002年7月30日に行った17歳女性の亜急性型劇症肝炎(自己免疫性肝炎)症例である(ドナー:母親44歳,右葉グラフト)。意識は第2病日までにほぼ回復し,第4病日まで順調な経過をたどっていた。しかし,第6病日突然,超音波ドップラー検査で門脈血流の消失が見られた。同日のCTAPにて,グラフトは前区域を中心とした広範囲の門派血流不全域が示された。その後,肝の梗塞巣は前区域の肝表面領域に限局し,肝機能の回復が見られたが,多剤耐性菌による重症肺炎を併発し,第49病日死亡となった。第7例目は2003年3月17日に行った59歳男性の肝癌合併肝硬変症例(HCV陽性)症例である(ドナー:三男26歳,右葉グラフト)。Child-Pugh Cであり,S8に4個,S5に1個,計5個の小肝細胞癌を認めた。ドナー肝右葉は中肝静脈による広い環流域をもっていたため,中肝静脈付きの右葉グラフトとなった。術後は非常に順調な経過をたどり,インターフェロン投与によりC型肝炎ウイルスのコントロールを行い,移植後1年3ヶ月を経過したが,肝癌の再発も見られず順調な経過をとっている。第8例目は2003年8月11日に行った55歳男性の肝癌合併肝硬変症例(HBV陽性)症例である(ドナー;妻50歳,右葉グラフト)。Child-Pugh Cであり,S2に1個,S3に1個,計2個の小肝細胞癌を認めた。グラフト肝は470gであり過小グラフト状態となることが懸念されたため,門脈一下大静脈シヤントを作成した。術後はHBV Immunoglobulin,ラミブジン投与により,B型肝炎ウイルスは陰性化し,順調に肝機能は改善し合併症もなく退院となった。現在移植後10ヶ月が経過したが,肝癌の再発も見られず順調な経過をとっている。ドナー8例全員において,血液及び血液製剤は一切使用せず,術後トラブルもなく,20日以内に退院となっている。また肝切除後の後遺症も見られていない。
著者
高橋 弦
出版者
千葉大学
雑誌
千葉医学雑誌 (ISSN:03035476)
巻号頁・発行日
vol.75, no.4, pp.209-213, 1999-08-01

動物実験より決定した感覚神経の分節性支配領域(皮節)の分布の規則性を報告し,その規則性を根拠として既存のヒト皮節図の再評価を行なった。あらかじめEvans blueを静注投与したラットの,前肢・後肢の脊髄神経を感覚神経のC線維の興奮強度で電気刺激すると,その脊髄神経の支配領域の皮膚に色素漏出が発生した。この方法を用いてラットのC1-T1(前肢),T12-S1(後肢)脊髄神経を刺激し四肢の皮節図を決定した。四肢の皮節は体幹部の皮節と同様に,原則として体幹前後輪を集回するループ状構造を示し,そして腹側面・背側面では中枢側に向かい四肢の中心軸へ収束し,前側面・後側面では末梢に向かい四肢の中心軸に沿って伸長していた。ラットとヒトの四肢は解剖学的に相同関係にあり,骨・筋・末梢神経の空間的位置関係も同一である。さらに,今回ラットに認められた皮節分布の原則性は,霊長類を含めた他の哺乳類においてもすでに報告されており,ヒトの皮節分布もこの原則性に従うことが演繹的に推論される。そこで,この原則性をもとに仮説的なヒト皮節図を描き,この仮説図からヒト皮節図を再評価した。その結果,神経根切断症例より得られた野崎の図(1938年)や,神経ブロックより決定したBonicaの図(1990年)などがこの皮節分布の規則性を比較的によく示しており,臨床応用にふさわしい図であると結論した。
著者
新見 將泰 中島 祥夫 坂本 尚志 遊座 潤 伊藤 宏文 三浦 巧 鈴木 晴彦
出版者
千葉大学
雑誌
千葉医学雑誌 (ISSN:03035476)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.97-104, 1994

近年,運動関連脳電位については手指の単純な屈伸運動に関する詳細な研究はあるが,発声に関する報告は少ない。本研究では,ピッチ変化と母音の変化における発声関連脳電位の変化を等電位図法と双極子追跡法(頭部均一媒質による)を用いて解析することを目的とした。18-35歳の健康な男女10名(右利き)を対象とし,高低数種類のピッチで母音を自己のペースで発声させた。脳波は頭皮上においた21個の表面電極より導出した。喉頭前面皮膚上においた加速度計波形の立ち上がりをトリガーとして用い,発声前2.5s,発声開始後2.5sの脳波を加算平均し,等電位図の作成と双極子追跡法により電源位置の推定計算を行い,被験者のMRI画像を用いて電源位置を検討した。発声に約1200ms先行して両側の中側頭部に緩徐な陰性電位が認められた。これは正常のヒト発声時の大脳皮質の準備状態を反映する発声関連脳電位と考えられた。この陰性電位は,分布範囲,強度とも左半球優位の場合が多かった。また発声のピッチを高く変化した場合には,右側の振幅の変化が,より大きくなる傾向があった。一般にヒトの発声において言語中枢は(左)優位半球に広く存在すること,発声周波数(ピッチ)の変化は(右)劣位半球の関与が大きいことが知られている。上記の結果はこの説に一致すると考えられた。発声に先行する陰性電位の電源部位は双極子追跡法により両側の中心前回下部付近に限局して分布した。発声のピッチや母音を変えても電源位置に変化は認められなかった。
著者
島 正之
出版者
千葉大学
雑誌
千葉医学雑誌 (ISSN:03035476)
巻号頁・発行日
vol.81, no.1, pp.1-9, 2005-02-01
参考文献数
41

わが国では硫黄酸化物による大気汚染は改善されたが,自動車交通量の増加に伴い,二酸化窒素や浮遊粒子状物質による大気汚染が問題となっている。とりわけ交通量の多い大都市部の幹線道路沿道部における大気汚染物質の濃度は高く,住民の健康に及ぼす影響が憂慮されている。われわれが千葉県で行った疫学研究では,学童の気管支喘息症状の有症率及び発症率は幹線道路沿道部において高かった。アレルギー等の多くの関連要因の影響を調整しても沿道部における喘息の発症率は統計学的に有意に高く,大気汚染が学童の喘息症状の発症に関与することが示唆された。近年,欧米諸国においても道路に近いほど呼吸器疾患患者が多いこと,大気汚染物質が喘息や気管支炎症状を増悪させることが数多く報告されている。幹線道路の沿道部に多くの人々が居住しているわが国にとって,自動車排出ガスによる大気汚染への対策は早急に取り組むべき喫緊の課題であり,自動車排出ガスと健康影響との因果関係を解明するために大規模な疫学研究を実施することが必要である。
著者
石出 猛史
出版者
千葉医学会
雑誌
千葉医学雑誌 (ISSN:03035476)
巻号頁・発行日
vol.87, no.4, pp.139-149, 2011-08-01

千葉大学医学部の源は,明治7年(1874)に創設された共立病院とそれを継いだ公立千葉病院である。病院の設立は千葉県の衛生行政の一環として行われた。旧幕時代の慶応3年(1867)佐倉藩では,主として下級藩士と領内の窮民を対象とした洋式病院が設立運営されたが,共立病院は千葉県民を対象とした洋式病院の嚆矢でもあった。千葉県では新たに医師になる者に対して,洋式医学を教育するための機関として,公立千葉病院に医学教場を設置した。一方従来の開業医を対象として,県内各地に医学講習所を設けて,洋式医学の教育を行った。共立病院・公立千葉病院の医師は通常の診療のみならず,医学生の教育・住民に対する種痘・梅毒検疫などの多種多様な業務をこなした。医学教場の卒業生は,公立千葉病院で診療にあたるか地域での診療に従事した。千葉県における近代の医療は,当初このような医師たちによって担われた。またこの時代の数少ない知識人として,地方の行政において指導的な役割を果たす医師も少なくなかった。
著者
三木 隆 佐藤 武幸
出版者
千葉大学
雑誌
千葉医学雑誌 (ISSN:03035476)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.1-6, 1987
著者
黒田 啓子
出版者
千葉大学
雑誌
千葉医学雑誌 (ISSN:03035476)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.67-74, 1989

古来,中国並びに本邦では,十字花科植物なずなは薬用植物として食されまたは利用されてきたが,その成分や薬理効果についての研究は,今世紀の初め,若干行われたにすぎない。我々の研究から,その抽出物が子宮収縮作用,抗胃潰瘍,抗炎症作用等いくつかの有用な薬理作用を持つことがわかった。次いで抽出物がマウスにおけるエーリッヒ固型癌の成長を抑制することも見出され,抗癌作用や抗胃潰瘍作用の有効成分としてフマール酸を単離,同定した。有効な抗癌性物質マイトマイシンCは副作用も強いがフマール酸と併用投与することにより,副作用のみが選択的に軽減される。フマール酸は,又,化学物質による発癌,例えば,ニトロフランによる胃癌や肺癌の誘発,アゾ色素やチオアセタミドによる肝癌の誘発を抑制する。これらフマール酸の活性は組織DNA合成を促進してこれら毒物による組織損傷を修復することを助けることに基づくものと考えられる。
著者
阿不拉 地里夏提 中島 祥夫 下山 一郎
出版者
千葉大学
雑誌
千葉医学雑誌 (ISSN:03035476)
巻号頁・発行日
vol.77, no.5, pp.347-357, 2001-10-01

母国語,外国語の認知過程における脳機能局在差異を明らかにすることを目的に,TVモニターに呈示された,1)母国語として漢字単語を外国語として英単語々黙読したとき,2) 2桁のアラビア数字を母国語と外国語で黙読したときの21チャンネル事象関連脳電位を記録し,解析した。1)での被験者は右利き健常成人9名(日本人5名,中国人4名),2)では右利き健常成人10名(日本人6名,ウイグル人4名)であった。その結果,単語認知及び数字認知の両タスクにおいて,刺激後200-300msの間で陰性電位が見られ,その振幅は外国語認知で母国語認知より大きかった。漢字と英単語を黙読したとき,漢字では両側側頭葉及び中心部に陰性電位活動が見られ,英語では左側側頭葉により大きい陰性電位活動が観察された。アラビヤ数字を母国語と外国語で黙読したときは全ての被験者で両側側頭葉及び後頭葉に陰性電位が観察された。これらの結果から,単語及び数字認知時の脳活動は母国語よりも外国語処理で強く,視覚呈示後200-300msで認知処理が最大となると考えられた。また,母国語(漢字と数字)の認知過程には右脳のイメージ処理と左脳の言語処理が同時に関わり,外国語(英語)の認知過程では従来指摘されている言語中枢との関連で左半球が優位であることが示唆された。