著者
湯浅 恭史 中野 晋 岡野 将希
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F6(安全問題) (ISSN:21856621)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.I_217-I_226, 2019 (Released:2020-03-12)
参考文献数
6

平成27年9月関東・東北豪雨及び平成30年7月豪雨では,河川の氾濫や堤防の決壊などにより深刻な浸水被害が発生し,地域の医療機関も被災する事態となった.被災した病院では診療機能が制限され,入院患者を他の病院に転院させざるを得ないケースがあった.被災地域の復旧・復興のためには,住民が安心して暮らすために地域医療の早期再開が望まれるが,被災病院によっては診療再開に長期を要することがあり,医療機関の浸水リスクへの対応は地域医療の継続を考える上での課題となっている. 本研究では,徳島県内の医療機関を対象として,自然災害への防災対策の実施状況についてアンケート調査を行った.調査結果から浸水災害を対象とした避難訓練やBCP策定などの対策が進んでいないことがわかった.豪雨災害で浸水被害のあった病院に対し,初動対応から事業再開の対応についてヒアリング調査を行った.これらの結果から,浸水被害を受けた際の早期復旧を実現するために取り組むべき対策や考え方について考察した.
著者
菊本 統 下野 勘智 伊藤 和也 大里 重人 稲垣 秀輝 日下部 治
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F6(安全問題) (ISSN:21856621)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.43-57, 2017 (Released:2017-10-20)
参考文献数
53
被引用文献数
1 2

自然事象の頻度や程度を表す危険源,自然災害にさらされる人口割合を表す曝露,自然災害に対する社会や経済の脆さを表す脆弱性を定義し,規準化した過去の災害記録や統計データの重み付け線形和により計算し,それらの掛け合わせとして自然災害に対するリスクを評価する統合的指標を提案した.そして47都道府県を対象としてリスク指標を算出し,各都道府県が内包するリスクの特徴を考察するとともに,指標の意義を説明した.最後に,指標を用いたリスクの分析と管理の方法について議論した.
著者
金井 純子 中野 晋
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F6(安全問題) (ISSN:21856621)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.I_131-I_136, 2018 (Released:2019-02-19)
参考文献数
20

本研究は2016年熊本地震における福祉避難所の運営状況について調査し,福祉避難所の運営上の課題について分析した.福祉避難所を開設した熊本県益城町の2つの特別養護老人ホームを対象に,避難者及び避難者に対する支援者の数がどのように変化したかを聞き取りと質問票によって調査した.地震発生から1週間の間,両施設では大きな混乱が生じた.その要因は被災によって出勤できる職員が少なかったことと多くの一般避難者を受け入れたことであった.このような混乱を避けるためには,BCPの中に福祉避難所の開設手順を加えることが必要である.
著者
疋田 智 玉田 正樹
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F6(安全問題) (ISSN:21856621)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, pp.1-9, 2020 (Released:2020-08-20)
参考文献数
20

本研究の目的は,我が国喫緊の課題である南海トラフ巨大地震に伴う津波からの避難に,自転車,中でも電動アシスト自転車の有効性を検討することである.検証方法としてマルチエージェントシミュレーション(MAS)を用い宮崎県日南市の油津地区をモデルとした.MASの結果,自転車による避難は,電動アシストの有無によらず避難者自身が助かる可能性を高めること,渋滞が軽減されることによりクルマの避難完了率も向上する可能性があるという結果が得られた.また電動アシスト率が高いほど避難完了時間が短くなることが分かった.電動アシスト自転車のみならず通常の自転車も避難に有効であるという結果は,国や自治体の津波避難計画において,徒歩とクルマだけではなく自転車を想定することが有益である可能性を示唆している.
著者
高田 知紀 藪内 佳順 佐藤 祐太
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F6(安全問題)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.I_165-I_174, 2020
被引用文献数
1

<p> 本研究の目的は,神社空間を核とした防災コミュニティを形成するためのひとつの実践モデルを提示することである.そのために本研究では,和歌山市・伊達(いたて)神社において社会実験を展開した.伊達神社の位置する有功地区は,地震,津波,河川氾濫,土石流,斜面崩壊など多様な災害リスクにさらされている地域である.地域防災上の課題としては,地域住民が種々の災害リスクのポテンシャルを認識していない,地域内で実効性のある避難計画が周知されていない,古くからの集落と新興住宅街の住民が交流できていない,といった点があげられる.これらの課題を解決するために,伊達神社において,氏子やその他の地域住民と神職,絵地図アーティスト,学識経験者がワークショップとフィールドワークを繰り返し,地域内の史跡名所を巡ることでハザードエリアが把握できる「無病息災マップ」を作成するプロジェクトを展開した.</p>
著者
及川 康
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F6(安全問題)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.82-91, 2017
被引用文献数
1

「津波てんでんこ」という言葉の津波避難時における意味・機能の重要性は,これまで繰り返し言及されてきた.しかし,「津波のときは,親でも子でも人のことなどは構わず,銘々ばらばらに一時も早く逃げなさい」という原義だけが表層的に理解され,「『津波てんでんこ』は利己的で薄情すぎる」という批判に繋がってしまう懸念についても,同時に言及されてきたことである.本稿は,このような批判がどの程度生じ得るのかを把握すべく行った調査の結果を報告するとともに,それを払拭するための方策について考察を加えるものである.その結果,「津波てんでんこ」に対する批判を回避して真の理解が得られるためには,一義的・表面的な原義を正確に提示するのみでは不十分であり,適切な解説・解釈が為されることが必要であることが確認された.
著者
加藤 駿平 金井 純子 中野 晋 湯浅 恭史 徳永 雅彦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F6(安全問題)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.I_131-I_139, 2020

<p> 平成30年7月豪雨では広島県の沼田川流域で堤防からの溢水や決壊が生じ,三原市内の複数の高齢者施設で浸水被害が発生した.そこで,被災した3施設を対象に被害状況,水害発生時の避難行動,被災後の業務再開状況等について聞き取り調査を実施した.また,聞き取り調査から得られた浸水過程や避難行動を確認し,詳細分析を行うため,各施設周辺の浸水痕跡調査及び沼田川流域を対象とした河川氾濫数値解析も実施した.浸水エリア内の微高地に立地する施設では臨時の避難場所の役割を果たしたが,避難者との連携が課題となった.深刻な床上浸水被害を受けた施設では緊急時の職員参集体制,近隣の支援者の確保など,水害を想定した具体的な避難計画の作成が急務であることが明らかとなった.また,災害休業時における雇用対策も事業継続上重要な課題であることがわかった.</p>
著者
金井 純子 中野 晋 山城 新吾 三上 卓
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F6(安全問題)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.I_211-I_218, 2020
被引用文献数
2

<p> 令和元年東日本台風では越辺川右岸0.0k付近の堤防決壊により,近くの高齢者施設(1法人2施設)や障害者施設(1法人6施設)が甚大な被害を受けた.被災した2法人を対象に,被害状況,避難行動,避難確保計画,被災後の業務再開状況等についてインタビュー調査を行った.また,浸水痕跡調査を実施した上で,破堤に伴う川越市内の氾濫進展状況を数値シミュレーションにより再現し,証言内容の検証を行った.高齢者施設と障害者施設の利用者の身体的特性や,避難方法,避難生活などの情報を施設特性に注目して整理し,施設特性を踏まえた避難確保計画と長期避難を想定した業務継続計画を検討しておくことの重要性について明らかにした.</p>
著者
伊藤 和也 高橋 弘樹 堀 智仁
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F6(安全問題)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.I_43-I_51, 2017
被引用文献数
2

東日本大震災では,津波による被害が広範囲に及び復旧・復興工事量は多く,労働者不足や資材価格の高騰などの問題が顕在化している.このような中,建設業の経験が無い新規参入者が建設業に従事して被災する事例も報告されており,平成23年~25年に発生した建設業での死傷者数819人のうち約1/4の193人が新規参入者による被災であった.そのため,新規参入者等への安全衛生教育の充実等を図る必要がある.本報では,新規参入者等への安全衛生教育ツールとして労働災害事例を「漫画化」した教育ツールの有効性に関して,建設業の労働安全衛生教育を実施している現役講師へのアンケート調査を実施した.その結果,災害事例の漫画化に対して分かりやすいと評価が高かった.一方で,安全衛生教育のツールとしては教育目的としての災害事例を選定が必要があることが示された.
著者
山口 健太郎 谷本 圭志 長曽我部 まどか 前波 晴彦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F6(安全問題) (ISSN:21856621)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.I_111-I_121, 2018 (Released:2019-02-19)
参考文献数
12

わが国における防災に関する社会的な関心は高く,またその関心に応えるための防災研究の推進が期待されている.しかし,社会的な関心/学術的な関心の状態と,それら双方の近接(もしくは乖離)の度合いを知ることは容易ではなく,このことは,社会的関心(社会ニーズ)に基づいた防災研究の戦略立案の困難さの原因となるであろう.この困難さの根本的な要因は,学術的な関心にせよ社会的な関心にせよ,それらを定量化するための手法が十分に開発されていなかった点が挙げられるが,近年ではテキスト解析手法が開発され,これらの分析が可能になってきている.加えて,分析するためのデータについても入手が容易になっている.そこで本研究では,テキスト解析を用いて,防災に関する学術的な関心と社会的な関心の近接度を実証的に分析する.
著者
湯浅 恭史 中野 晋 岡野 将希
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F6(安全問題)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.I_217-I_226, 2019

<p> 平成27年9月関東・東北豪雨及び平成30年7月豪雨では,河川の氾濫や堤防の決壊などにより深刻な浸水被害が発生し,地域の医療機関も被災する事態となった.被災した病院では診療機能が制限され,入院患者を他の病院に転院させざるを得ないケースがあった.被災地域の復旧・復興のためには,住民が安心して暮らすために地域医療の早期再開が望まれるが,被災病院によっては診療再開に長期を要することがあり,医療機関の浸水リスクへの対応は地域医療の継続を考える上での課題となっている.</p><p> 本研究では,徳島県内の医療機関を対象として,自然災害への防災対策の実施状況についてアンケート調査を行った.調査結果から浸水災害を対象とした避難訓練やBCP策定などの対策が進んでいないことがわかった.豪雨災害で浸水被害のあった病院に対し,初動対応から事業再開の対応についてヒアリング調査を行った.これらの結果から,浸水被害を受けた際の早期復旧を実現するために取り組むべき対策や考え方について考察した.</p>
著者
竹之内 健介 加納 靖之 矢守 克也
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F6(安全問題) (ISSN:21856621)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.I_31-I_39, 2018 (Released:2019-02-19)
参考文献数
19
被引用文献数
3

平成29年九州北部豪雨では,中山間地を含む多数の集落で甚大な被害が生じた一方,5 年前の災害経験などを踏まえ,住民が無事避難した事例も確認されている.本研究では,そのような避難に成功した地区などを対象に住民への聞き取り調査を行い,詳細な対応行動や避難につながった背景の分析を行った.調査の結果,地域独自の判断基準の存在が災害対応に効果的に機能していた事例が確認されるとともに,そのような判断基準が地域で継続して定着するような社会環境が存在していた.また当時の住民の対応行動の時系列分析を行い,各種災害情報との対応関係から,実際にその判断基準が災害時に有効に機能していたことを確認した.これらの結果を踏まえ,地域独自の判断基準(防災スイッチ)を災害時に有効に機能させる地域防災の検討と推進を提案する.
著者
平子 紘平 森崎 裕磨 藤生 慎 高山 純一 柳原 清子 西野 辰哉 寒河江 雅彦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F6(安全問題) (ISSN:21856621)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.I_41-I_51, 2018 (Released:2019-02-19)
参考文献数
18

東北地方太平洋沖地震において,高齢者や障がい者の被害も甚大であったことから,避難行動要支援者の名簿作成が各自治体に義務付けられた.一方,熊本地震において,庁舎の被災等により,名簿が活用できない事例が発生し,平時より避難行動要支援者の精緻な支援計画策定が重要視されている.本研究ではArc GISのNetwork Analystツールの到達圏解析を用い,道路ネットワークを考慮し,避難行動要支援者の避難施設へ到達可能性の検証を行った.本研究では,我が国における超高齢化に伴い,人数が莫大に増加している後期高齢者に着目し,中でも特に避難にケアを必要とする自宅に居住する要介護認定者を分析対象者とした.到達圏解析の結果,要介護認定者の避難時の実態と何人の要支援者が避難所まで到達できない可能性を持つのか,詳細な把握を行うことが可能となった.
著者
野村 泰稔 村尾 彩希 阪口 幸広 古田 均
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F6(安全問題) (ISSN:21856621)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.I_189-I_198, 2017 (Released:2018-02-08)
参考文献数
25
被引用文献数
3

近年,老朽化に伴う安全性の低下が懸念される社会基盤に対して,その構造健全性を如何に効率的かつ的確に評価するかが,維持管理計画を策定する上で益々重要となってきている.構造の健全性を評価する上で,ひび割れを検出することは,構造物の劣化や破壊を引き起こす大きな要因の一つであるため,特に重要である.本研究では,現在,各所で開発が進められている高所等,人が立ち入ることが困難な箇所の点検ロボットに実装するシステムを構築することを目的として,各種ひび割れの画像を深層畳み込みニューラルネットワークにより学習し,UAVやWebカメラ等により撮影される構造全体系の多数の画像に対して,リアルタイムにひび割れの有無・領域をスクリーニング可能なシステムの開発を試みる.
著者
本田 和也 橘 伸也 飯塚 敦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F6(安全問題)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.31-39, 2019

<p> 災害時の初期対応において,意思決定者は一刻も早く災害対応の決断を行う必要がある.この初期対応の迅速性を高める手段として,逐次得られる災害情報から被災者数を予測することで意思決定に利用するという考え方がある.</p><p> 本研究では死亡者数の経時変化を表す関数について検討を行い,発災後初期に被災規模を予測できる被害予測モデルの精度向上を考える.発災後初期の情報更新が多い事例については,死亡者数再現関数として双曲線関数を採用することで,ワイブル分布の場合よりも早い時点で信頼できる被害予測を行うことができることがわかった.また,出来るだけ初期にその災害の被災規模を予測できる被害予測モデルの運用方法を検討した.情報更新速度を向上させることで,本モデルを用いて災害初期段階で被害予測を行うことができると考える.</p>
著者
高田 知紀 高見 俊英 宇野 宏司 辻本 剛三 桑子 敏雄
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F6(安全問題) (ISSN:21856621)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.I_123-I_130, 2016 (Released:2017-02-21)
参考文献数
15
被引用文献数
2

本研究の目的は「延喜式神名帳に記載された式内社は,大規模自然災害リスクを回避しうる空間特性を有している」という仮説にもとづいて,特に四国太平洋沿岸部における南海トラフ巨大地震の想定津波浸水域と延喜式内社の配置の関係性を明らかにすることである. 高知県沿岸部777社,徳島県沿岸部438社について,それらの津波災害リスクについてGISを用いて分析を行ったところ,高知県では555社,徳島県では308社が津波災害を回避しうる結果となった.さらに,式内社について分析したところ,沿岸部に位置する式内社はそれぞれ,高知県内18社,徳島県内30社であり,そのうち津波災害のリスクがあるのは,高知県2社,徳島県2社の合計4社のみであった.この結果から,古来,信仰の中枢であり,また国家から幣帛を受ける官社であった式内社は,数百年に一度で襲来する大規模津波についても,その災害リスクを回避しうる立地特性を有していると言える.
著者
堀 智仁 玉手 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F6(安全問題) (ISSN:21856621)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.I_83-I_88, 2015 (Released:2016-01-31)
参考文献数
6

基礎工事用建設機械のような大型建設機械の転倒災害を調査すると,敷鉄板の端部に履帯が位置した際に大きな沈下が生じて転倒に至った事例が多く見受けられる.このような機械の安定設置に関する検討では,敷鉄板の敷設による接地圧の低減が考慮されている.しかし,履帯が敷鉄板の端部に位置した場合の接地圧増加についてはあまり考慮されていないのが現状である.建設機械は現場内を移動するため,敷鉄板の端部に機械が位置した状態でも支持されるか確かめる必要がある.本研究では,敷鉄板の敷き方と荷重分散の関係について実験的な解析を行った.その結果,敷鉄板を重ね敷きする場合,その重ね方によって荷重の分散効果が異なることが明らかになった.
著者
嶋田 宏 中野 晋 村田 進 丹羽 竜也
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F6(安全問題) (ISSN:21856621)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.I_125-I_130, 2015
被引用文献数
1

ミャンマー沿岸部では2008年5月に深刻な高潮被害を受け,約14万人の犠牲者を出した.これを受け沿岸部デルタ地帯の高潮被害を軽減するため,JICAによる自然災害早期警報システム構築プロジェクト<sup>1)</sup>(JICAプロジェクト)が実施されている.広範囲で入り組んだ沿岸各地に精度の高い高潮警報を住民に伝えるためには,ミャンマー国(麺国)の技術者が自立的に各地の潮位特性を分析できる技術を身につけることが重要である.筆者らはリボンテープを用いた簡易潮位計を用い短期間の観測から潮位推算を行ない,これらの手法を防災安全教育の一環として麺国の実情に合わせた継続的な展開が可能な基礎的観測技術の移転を行った.
著者
今井 裕太郎 小池 則満 西村 雄一郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F6(安全問題)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.I_66-I_73, 2012

木曽三川下流・伊勢湾岸の低平地においては、東海ネーデルランド高潮・洪水地域協議会が設置され、巨大台風に対する大規模な事前広域避難について検討がされている。そこで本研究では、名古屋市内の港区、南区、中川区の伊勢湾台風被害のあった公立小学校計6校の5年生もしくは6年生の保護者対象にアンケート調査を行った。その結果、事前広域避難そのものへの認識が低く、現状では円滑な広域避難は期待できないこと、ほとんどの家族が浸水域内に避難してしまうこと、大多数がマイカーで移動することが予想され、渋滞・駐車場対策が必要であることを述べた。また、上陸時間によって避難開始の時間が異なることから、呼びかけのタイミングが重要である可能性があることなどを指摘した。
著者
宇野 宏司 中野 晋 粕淵 義郎
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集F6(安全問題) (ISSN:21856621)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.I_23-I_28, 2011

南九州・霧島連山の新燃岳(標高1,421m)では,平成23年1月に52年ぶりの爆発的噴火が起き,宮崎・鹿児島両県で降灰や噴石による被害が報告された.先行きの見えない噴火活動が住民の生活や企業活動に与える影響は大きく,また長期化することが懸念される.本研究では,各種公表資料,自治体や企業でのヒアリング調査結果をもとに,本災害による事業所や自治体の被災状況と当時の対応,今後の対策について整理し,長期化する恐れのある火山災害時における企業の事業継続に必要な観点について整理した.<br> 突発的な今回の火山噴火は,当該地域の火山災害に対する防災体制の不備な点を明らかにした.今後,火山災害の影響を受けない地域をも含めたより広域的な連携関係を構築しておくことや,風評被害を防ぐための復旧過程での積極的な報道の利用等が重要であると考えられる.