著者
中澤 菜穂子 神山 千穂 齊藤 修 大黒 俊哉 武内 和彦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.II_141-II_150, 2014 (Released:2015-02-28)
参考文献数
43
被引用文献数
3 4

天然のキノコ・山菜は特用林産物として古くから利用され,その採取活動は様々な生態系サービスと関係している.これらの林産物は市場を介さない自家消費が多く,これまで定量的な価値評価はあまり行われてこなかった.本研究は,石川県七尾市の釶打地区を対象地に聞き取り調査を実施し,採取活動の実態を定量的に明らかにすることで,それらの経済的,文化的価値の評価を試みた.市場価格から金銭換算した結果,天然のキノコ・山菜による供給サービスは比較的高い経済的価値を有していることがわかった.また,文化的サービスの観点からは,採取活動は,その贈答や食文化の継承を通して,地区内外の交流を深めるという社会的意義を担っていること,採取行動と加工処理の過程においても,経験や技術に裏付けられた文化的な価値を有することが示された.
著者
田中 周平 垣田 正樹 雪岡 聖 鈴木 裕識 藤井 滋穂 高田 秀重
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.75, no.7, pp.III_35-III_40, 2019 (Released:2020-03-23)
参考文献数
10
被引用文献数
2 4

本研究では,下水処理場の処理工程におけるマイクロプラスチック(以下,MPs)の挙動と琵琶湖への負荷量を把握することを主目的として,2017年11月~2018年2月に4か所の流域下水処理場(分流式)の流入水,放流水,処理工程別において100μm以上のMPsを,流入水と放流水ではさらに10~100μmのMPsの分析を行った.その結果,下水,処理水,汚泥,スカムなどから合計30種類のMPsが検出され,流入水中のMPs濃度は158~5,000個/m3であった.放流水中のMPs濃度は0.3~2.2個/m3であり,放流先の琵琶湖水中のMPs濃度と同等であった.一方,10~100μmのMPsの除去率は76.3%であった.100μm未満のMPsの除去は急速砂ろ過を行っても不十分であると示唆された.4つの下水処理場からの合計負荷量は501,630個/日と推計され,晴天時の琵琶湖流入河川からの総負荷量とほぼ同じであることが示された.
著者
安藤 良徳 北島 正章
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.77, no.7, pp.III_191-III_197, 2021 (Released:2022-03-10)
参考文献数
24

下水中に含まれる新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を定期的にモニタリングする下水疫学調査は,感染流行の動向を集団レベルで把握できる手法として期待されているが,下水中のSARS-CoV-2の感染性に関する懸念が調査の普及を妨げる要因の一つになっている.本研究では,下水中SARS-CoV-2の感染性調査への適用に向け,VeroE6-TMPRSS2細胞を用いたウイルス培養に基づくSARS-CoV-2感染性評価法を確立した.この方法を用いて下水中の感染性ウイルスとウイルスRNAの量的関係を解析することで,PCR法によるSARS-CoV-2 RNA実測値に基づく感染性SARS-CoV-2粒子量の推定が可能になると期待される.
著者
山下 奈穂 郭 静 白川 博章 谷川 寛樹
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.77, no.6, pp.II_23-II_31, 2021 (Released:2022-02-09)
参考文献数
26

資源生産性は循環計画の大目標として掲げられている物質フロー指標であるが,本指標では物質フローを支える物質ストックの間接的な影響を評価できない点が課題であった.先行研究において,物質ストックを考慮した資源生産性の要因分解は行われているものの,物質ストックの価値はその用途や種類によって多様であることから,全ての物質ストックに一概に適用することは困難である.本研究では,提案型論文として日本の住宅を対象に要因分解式を試用し,住宅ストックの変化が資源生産性に及ぼす影響を明らかにした.分析の結果,2008年から2017年にかけてストックあたりのサービス発生効率の低下や空き家の増加による資源生産性への負の影響が明らかになった一方,住宅の長寿命化が資源生産性の向上に最も貢献していることが確認された.
著者
北村 友一 阿部 翔太 服部 啓太 山下 洋正
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.76, no.7, pp.III_121-III_130, 2020 (Released:2021-03-17)
参考文献数
22

本研究では,二次処理水を用いてゼブラフィッシュの胚・仔魚期の曝露試験を行い,ふ化率,生存率と網羅的遺伝子発現への影響,さらに,希釈およびオゾン処理による遺伝子発現影響の低減効果を調査した.二次処理水,オゾン処理水の曝露による遺伝子発現への影響レベルは,河川水の同様の曝露結果と比較した.その結果,二次処理水最大濃度(80%)においてもふ化率や生存率に影響は見られなかったが,遺伝子発現への影響は見られた.二次処理水の割合が減少するに従い,発現変動遺伝子数も少なくなることが確認された.二次処理水曝露により免疫,代謝,ストレス応答,シグナル伝達など様々な影響を受けていることが示唆された.二次処理水は10倍希釈,または,オゾン処理により,遺伝子発現への影響を河川水レベルまで低減できることがわかった.
著者
杉本 賢二 奥岡 桂次郎 秋山 祐樹 谷川 寛樹
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.73, no.6, pp.II_293-II_300, 2017 (Released:2018-04-01)
参考文献数
22

自然災害による被災地域の復旧・復興に向け,被災前の社会状況に回復するために必要となる資材投入量の把握や,効率的な災害廃棄物の処理計画が求められる.本研究では,空間・属性詳細なマイクロ建物データと,災害被害分布情報との重ね合わせにより「失った建築物ストック」を推計する手法の構築を目的とする.マイクロ建物データの建物情報より建築物ストック量の空間分布を推計し,それに平成28年熊本地震の計測震度分布による建物倒壊判定を行い推計した.その結果,熊本県における建築物ストックの約6割が震度6弱以上の強振動域に分布しており,全壊棟数の推計結果は被害調査報告に近しい値となることが示された.また,地震動による建物被害により260.7万トンの失った建築物ストックが発生し,その半分がコンクリートであることが明らかになった.
著者
靏巻 峰夫 藤川 滉大 中島 大雅 岡崎 祐介 佐藤 克己 吉田 綾子 森田 弘昭
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.76, no.6, pp.II_333-II_342, 2020 (Released:2021-03-08)
参考文献数
22

人口減少下に入った我が国では,公共サービスの量と質の維持が,今後,問題となると考えられる.下水道,ごみ処理分野でも同様な状況であり,早急な対策が必要である.下水道直投型ディスポーザー(以下,「DP」)の導入は,可燃ごみの減量化と取り扱いに難がある厨芥類の除外によってごみ処理での効率化が期待できる.一方で,下水道に投入された厨芥類によって下水処理への水質負荷の増大による負の側面がある.本研究ではDP排水の管路内での水質模擬実験のデータに基づき下水処理施設に到達する水質負荷の変化を予測し,その結果を反映した温室効果ガス(以下,「GHG」)排出量予測によって下水処理,可燃ごみ処理の影響を検討した.結果として,DP排水による下水処理での増加に比較して可燃ごみ減量による削減が大きく,直投型DPの導入はGHG排出量削減に寄与することを明らかにした.
著者
米田 一路 齋藤 美樹 西山 正晃 植木 洋 坂上 亜希恵 渡部 徹
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.78, no.7, pp.III_23-III_32, 2022 (Released:2023-03-10)
参考文献数
35

牡蠣を人為的にノロウイルスGII.2とGII.4に汚染する実験を行い,牡蠣に蓄積されたノロウイルス量の分析を行った.ノロウイルスGII.2(陽性率:80.0%)はGII.4(陽性率:60.0%)よりも牡蠣に蓄積されやすい傾向があった.遺伝子型に関わらず,高濃度のノロウイルスGIIを添加した人工海水で24時間飼育しても,ノロウイルスGIIを蓄積しない牡蠣が存在し,ウイルス蓄積量の多い牡蠣(中腸腺1g当たり約4.08log copies)と少ない牡蠣では100倍以上の個体差があったが,牡蠣のノロウイルスGII蓄積量は,個体重量や中腸腺重量とは相関がなかった.今回の実験で確認されたようなウイルス蓄積量の少ない牡蠣を選別して養殖できれば,より安全性の高い牡蠣の提供につながるだろう.
著者
森 祐哉 西山 正晃 米田 一路 渡部 徹
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.78, no.7, pp.III_307-III_316, 2022 (Released:2023-03-10)
参考文献数
30

山形県庄内地方を流れる赤川,最上川から大腸菌を分離し,その分離株について,系統発生群の分類とその薬剤感受性を評価した.1年間のモニタリングにより,653株の大腸菌が得られ,7つの系統発生群のうち,病原性の高いB2群に最多の217株(33.2%)が分類された.全大腸菌分離株のうち,1薬剤以上に耐性を示した株は175株(26.8%)であり,第三世代セフェム系抗菌薬であるCTXやCAZや,カルバペネム系抗菌薬(IPM)に耐性を示し,ESBL産生菌やCREの疑いが高い株が存在した.また,66株(10.1%)が異なる3つ以上のグループの抗菌薬に耐性を示す多剤耐性菌であり,その中には合計7薬剤に耐性を示す株も存在した.大腸菌による汚染度の低い河川から上記のような薬剤耐性大腸菌が検出されたという事実は,環境中における耐性菌のモニタリングの重要性を示している.
著者
鹿沼 俊介 藤野 創太 羽深 昭 木村 克輝
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.78, no.7, pp.III_33-III_41, 2022 (Released:2023-03-10)
参考文献数
26

嫌気性MBRにおけるSRTの延長とHRTの短縮が下水汚泥消化効率に与える影響を明らかにするため,SRTを3条件(30,60,90日),HRTを2条件(30,15日)設定し,各運転条件における糖,タンパク質および脂質の分解率を求めた.それら有機物分解率はSRTが30日の条件に比べ,60日や90日と長い条件において上昇した.バイオガス生成速度はHRT短縮に伴う有機物負荷上昇により,HRTが30日の条件に比べ15日での運転において約2倍に増加した.膜間差圧は最大で41kPaに達したが,比較的内径の大きい中空糸膜を用いてクロスフローろ過を行ったことで154日間膜洗浄および交換を行わずに連続膜ろ過がなされた.運転終了後の膜洗浄の結果,不可逆的無機ファウリングが支配的であった.無機ファウラントとしてCa,PおよびMgが多く抽出された.
著者
木下 朋大 盛岡 通 尾崎 平
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.II_1-II_8, 2012 (Released:2013-02-13)
参考文献数
22
被引用文献数
1 1

本研究の目的は,都市のみどり回廊の分析評価指標を提案すると共に,それら評価手法を用いて緑・オープンスペース分野の政策的インプリケーションを見出すことである.第一に,空間分布・配置構造から地域の拠点となるみどりの回廊性を分析する為,みどりの近接性指数(GA)と連担性指数(GS)を,第二に,歩行空間に沿った生活動線上のみどりの回廊性を分析する為,歩行経路選好性指数(UWT)を提案した.神戸市住吉川周辺地域でのケーススタディを通して,(1)既存公園の比較的近く(誘致範囲の3倍以内)であれば小規模であっても公園を創出することでみどりの近接性が高まること,(2)ある公園を行動の起点とし,人々の移動ベクトルを外向きと仮定したとき,既存公園の誘致範囲(250m)毎に複数の公園を設置することで,みどりの連担性は大きく向上すること,(3)快適性や安全性とトレードオフ関係にあると考えられる最短性や安全性を損なわない経路を創出することが,街路整備を通してみどりの回廊を形成する上で留意する点であることを確認した.
著者
石黒 泰 崔 广宇 藤澤 智成 安福 克人 奥村 信哉 玉川 貴文 Joni Aldilla FAJRI 李 富生
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.74, no.7, pp.III_415-III_422, 2018 (Released:2019-03-29)
参考文献数
21
被引用文献数
2

合併処理浄化槽の処理水槽内水の残存有機物に関連すると報告されている粒径0.5-1 μmの粒子の構成を明らかにするため,処理水槽内水中の粒子と細菌が水質に与える影響を調査すると共に浄化槽内の粒子と細菌の量的変動を解析した.処理水槽内水の細菌数とBODの間に有意な相関がみられ,細菌が残存有機物に関連していることが示された.浄化槽内の粒子数と細菌数の変動から,嫌気ろ床において細菌以外の有機性粒子の多くが除去され,処理水槽内水に存在する粒径0.5-1 μmの粒子の多くが細菌であることが示された.クラスター分析から接触ろ床槽内水,処理水槽内水では細菌が残存有機物に最も強く関連する因子であることが示された.これらのことから浄化槽処理水の残存有機物を減らすためには,細菌を減らす必要があることが示唆された.
著者
中村 謙吾 肴倉 宏史 川辺 能成 駒井 武
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.39-48, 2015 (Released:2015-02-20)
参考文献数
24

製鋼スラグの利用用途で,腐植物質との混合による磯焼け回復技術が注目されているが,製鋼スラグから溶出する重金属等の環境影響を検討する必要がある.本研究では純水による検討に加えて,海域利用を想定し,実海水を用いて振とう試験および浸漬式のシリアルバッチ試験を実施した.さらに,海域利用において要求される環境安全品質の考え方に基づき,海域利用への適合性について考察を行った.試験結果より,Cd,Pb,Cr,Bは,試験条件を変えた場合に,溶出濃度が港湾用途溶出量基準を超過することは確認されず,製鋼スラグ及び腐植物質の相互作用により,重金属類の溶出濃度は減少傾向を示した.また,本研究で想定した海域利用の環境安全品質を設定し,本試験結果を適用した結果,重金属類による海域汚染の原因となる可能性は低いことが示唆された.
著者
稲村 成昭 蛯江 美孝 山崎 宏史
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.74, no.7, pp.III_399-III_405, 2018 (Released:2019-03-29)
参考文献数
12

小型浄化槽からの温室効果ガスであるN2Oの1人当たりの排出量は,下水道に比べて,おおよそ5倍と著しく高い.そこで,浄化槽の特徴である流量変動に着目し,浄化槽における流入汚水量の時間変動を緩和する流量調整機能の有無によるN2O排出量の比較を行った.その結果,流量調整機能がある場合は,機能がない場合に比べて,N2O排出量は1/6以下に低減され,下水道とほぼ同じレベルになることが分かった.その要因として,流量調整機能がある場合,二次処理への汚水の一次的な流入汚濁負荷の集中が緩和されることにより,機能がない場合に比べて二次処理におけるORPの低下を最小限に抑えられるためと考えられた.なお,本研究を通じて,浄化槽においては,N2O排出量を制御する指標として,DOよりORPの方が適していると考えられた.
著者
柿島 隼徒 蛯江 美孝 村野 昭人 山崎 宏史
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.74, no.7, pp.III_391-III_398, 2018 (Released:2019-03-29)
参考文献数
23
被引用文献数
1 1

本研究では,戸建て住宅に設置されている浄化槽3基を対象に,浄化槽から排出される温室効果ガスCH4,N2O排出量を1年以上にわたり調査し,季節影響を踏まえた排出特性の解析を行った.その結果,CH4は,約90%が嫌気処理部から排出されており,N2Oは,約80%が好気処理部から排出されている事が確認された.CH4排出量は嫌気処理部に流入するDO量が低くなる際に増大する傾向となった.これは嫌気処理部底部の嫌気化が進むことでCH4生成量が増大するためであると考えられた.一方,N2O排出量は水温上昇期において,槽内のBODとNH4-Nが同時に高くなる際に増大する傾向となった.これは,浄化槽内に貯留する汚泥が可溶化しBODとNH4-Nが溶出することにより,好気処理部における硝化反応(亜硝酸酸化)が速やかに進行しなくなるためであると考えられた.
著者
古市 昌浩 酒谷 孝宏 蛯江 美孝 西村 修 山崎 宏史
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.74, no.6, pp.II_141-II_150, 2018 (Released:2019-03-29)
参考文献数
27
被引用文献数
1 1

浄化槽分野の低炭素化推進に際し,1990年からの20年余の技術開発による温室効果ガス排出量の推移を明らかにし,この結果を基にさらなる削減施策のあり方について考察した.5から10人槽の浄化槽を対象に1990年から2013年を調査期間として,浄化槽のライフサイクルにおける温室効果ガス排出量を分析した.その結果,2013年度生産品の排出量は1990年度に対し,一基当たり35%削減され,ブロワの省エネ化と浄化槽のコンパクト化は効果的な低炭素化手法であったことがわかった.また,我が国の排出量削減目標である2030年度マイナス26%(2013年度比)の本分野での達成は,現時点で最高性能を有する浄化槽の普及にて可能となるものの,長期目標(2050年までに8割削減)達成にはさらなる削減施策が必要と示唆された.
著者
澤田 竜希 風間 しのぶ 小熊 久美子 滝沢 智
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.77, no.7, pp.III_209-III_220, 2021 (Released:2022-03-10)
参考文献数
51

海水淡水化は,渇水に影響されず安定した水供給が可能な技術であるが,設置・運転管理の費用や技術の要求水準が高く,開発途上国における有効性の評価は定まっていない.そこで本研究は,世界の人口10万人以上の都市について,インターネット上の約75,000サイトから,web scrapingの手法を用いて世界の淡水化施設情報を収集し,データベースを作成した.その結果,稼働中157,計画中27,建設中1都市の合計185都市の情報が得られた.さらに,このデータベースを用いて世界銀行の1,386の国別指標から,海水淡水化施設の設置に適した都市に関わる4つの指標を選定した.これらの指標をもとに,今後,海水淡水化施設の設置可能性の高い開発途上国の都市人口を推計したところ,24ヶ国で約5,400万人と推計された.これらの結果から,本研究で用いたweb scraping手法の有効性が確認された.
著者
鳥居 将太郎 片山 浩之
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.76, no.7, pp.III_423-III_429, 2020 (Released:2021-03-17)
参考文献数
26
被引用文献数
1 1

ウイルスの遊離塩素耐性は水質に依存し,不活化に必要なCT値が水温,pHごとに定められてきた.近年,同じウイルス種内でも塩素耐性に違いがあることが示された.本研究は,高耐性株の存在が実際の浄水の塩素処理効率に及ぼす影響を評価することを目的とした.多摩川,相模川のF特異RNA大腸菌ファージGI型の塩素耐性を評価し,同種内の遊離塩素耐性のばらつきを考慮した不活化モデルを作成した.GI型野生株の86%(30/35株)で,実験室株MS2, frより塩素耐性が高かった.また,MS2の8 log不活化が期待できるCT値では,GI型野生株の全体不活化率が,5.3-5.6 logにとどまると算定された.環境水中におけるウイルスの消毒効果の推測では,実験室株によって代替するのではなく,種内の遊離塩素耐性のばらつきを算入した不活化モデルを採用すべきである.
著者
中川 啓 河村 明
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.I_131-I_140, 2017 (Released:2018-01-15)
参考文献数
18

地方都市であるU市では,今後の良好な環境の保全と創造に向けた環境行政を推進するため,環境行政の基本的な方向性を示す環境基本計画の策定に向けて,計画策定の前提となる現状把握に関する調査の手段として,市民に対するアンケート調査を実施している.本研究では,このアンケート結果を入力とした自己組織化マップによって,市民の環境に関する意識を分析した.その結果,関心がある環境問題,環境への取り組み,環境政策の満足度および重要度についての市民の意識構造が明らかになった.またアンケート結果の分類の一手段として,自己組織化マップが有効であることが確認された.
著者
池川 洋二郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.78, no.1, pp.30-41, 2022 (Released:2022-03-20)
参考文献数
47
被引用文献数
1

地球温暖化対策のオプションであるCCS(Carbon dioxide Capture & Storage)におけるCO2地中貯留に関して,当社の第2選択肢としてCO2ハイドレート貯留を研究している.これまでにCO2ハイドレート貯留のポテンシャル海域や貯留可能量などを報告している.さらに,CO2ハイドレート貯留は,海底下地層の温度・圧力が支配することから,日本周辺海域の約175万点のデータを海水温–圧力関係に整理し,太平洋と日本海について,それぞれ定式を本報告に示した.ここにおいて,海水と海底面の接触点の温度が一致する場合,これらの定式は海底面の温度の推定に利用できると考える.