著者
永渕 正昭 紀 朝栄 笹生 俊一 吉岡 豊
出版者
日本失語症学会 (現 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会)
雑誌
失語症研究 (ISSN:02859513)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.183-190, 1990 (Released:2006-07-06)
参考文献数
7
被引用文献数
4 4

日本語と中国語のbilingual aphasia の1例を紹介する。3歳で中国に渡り8歳まで日本語を話したが,終戦でその後中国に残留し,35歳で日本に帰国した男性が48歳で重度の運動失語になった。この失語回復を2年間観察したが,中国語の方が日本語より良好であった。そして言語機能は聴覚的理解と読解で回復はみられたが,発語と書字は実用的回復にいたらなかった。読解は漢字 (中国語) で可能になったが,「ひらがな」ではほとんど不可能であった。言語理解は乗物と飲食物に関するもので成績がよかったが,これは病前の趣味 (旅行) と職業 (中華料理店) が関係していると考えられた。これに関連して,二 (多) 国語使用者の失語回復について若干の考察を試みた。
著者
船越 昭宏 井上 有史
出版者
日本失語症学会 (現 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会)
雑誌
失語症研究 (ISSN:02859513)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.198-203, 1995 (Released:2006-06-02)
参考文献数
6

記憶に関する質問紙を,側頭葉切除術を受け,発作の抑制された側頭葉てんかん56名 (優位側切除群27名,非優位側切除群29名) に施行して,術後の主観的な記憶評価を調べ,記憶障害の自覚がどのような要因と関連するのかを検討した。優位側切除群は正常対照群15名に比べて記憶障害を強く自覚し,手術後に記憶機能が低下したと考えていた。一方,非優位側切除群は記憶障害を自覚せず,術前から術後にかけての変化の意識もなく,むしろ正常対照群より記憶の変化の自覚に乏しかった。術前術後にかけての記憶検査成績の変化,切除範囲の違い,薬剤数の変化は優位側切除群での記憶障害の自覚の高さを説明しなかった。しかし人格検査とは相関がみられ,内向的—神経症傾向と記憶障害の自覚が関連することが示唆された。以上,切除側と人格傾向が術後の記憶障害の自覚に強く影響すると考えられた。
著者
波多野 和夫 広瀬 秀一 中西 雅夫 濱中 淑彦
出版者
日本失語症学会 (現 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会)
雑誌
失語症研究 (ISSN:02859513)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.140-145, 1994 (Released:2006-06-06)
参考文献数
13
被引用文献数
5 2

反復性発話あるいは常同性発話の概念を整理し,さまざまな特徴を取り上げて,それによる分類を試みた。本稿では,この概念は可能な限り広く設定されており,反復言語,滞続言語のみならず,反響言語,再帰性発話などをも包含している。このような現象論としての症状学に立って,吃音症状,CV再帰性発話,部分型反響言語,音節性反復言語,語間代を含む音節レベルの反復性発話をまとめて検討した。特に,このうちの語間代 (Logoklonie) の問題に焦点を当て,自験症例の報告を通じて,その成立に関与する要因を検討することにより,発現機制に関する考察を試みた。
著者
玉井 顕 鳥居 方策 榎戸 秀昭 松原 三郎 三原 栄作
出版者
日本失語症学会 (現 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会)
雑誌
失語症研究 (ISSN:02859513)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.160-166, 1987 (Released:2006-11-10)
参考文献数
17
被引用文献数
6 6

近年,相貌失認という術語は熟知相貌に対する失認のみを意味するものとされているが,相貌失認患者はほとんど常に未知相貌の弁別・学習障害を有しており,未知相貌の弁別・学習能力が正常な相貌失認の症例は,これまでに5例1), 4), 11), 13), 16) が報告されているだけてある.この論文に報告したわれわれの症例は,上記のような解離を有する 6 例目 (本邦では初めて) の相貌失認症例である.頭部 CT scan の所見では,しばしば相貌失認発現と関連する右後頭葉内側面の障害はなく,後頭葉内側面のまぬがれた右後大脳動脈外側枝の閉塞がもっとも疑われた.本症例で観察された臨床面での特徴的な解離が CT 所見で認められた例外的な病巣部位と関連する可能性があり,興味深い症例と思われる.
著者
河村 満
出版者
日本失語症学会 (現 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会)
雑誌
失語症研究 (ISSN:02859513)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.185-193, 1988 (Released:2006-07-28)
参考文献数
27
被引用文献数
14 10
著者
小松 伸一
出版者
日本失語症学会 (現 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会)
雑誌
失語症研究 (ISSN:02859513)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.182-188, 1998 (Released:2006-04-26)
参考文献数
15
被引用文献数
1 2

エピソード記憶と意味記憶間の区分に焦点を当て,記憶システムを区分する研究アプローチの意義を論じた。まず,記憶モデルの中での両記憶の位置づけを検討した。近年の記憶モデルにおいては,長期記憶は宣言記憶と手続き記憶に二分され,エピソード記憶と意味記憶は宣言記憶を下位区分する概念であるとみなされている。しかし,手続き記憶とエピソード記憶,意味記憶間の関係,さらに,潜在/顕在記憶の位置づけに関しては研究者間で食い違いが認められることを明らかにした。次に,エピソード記憶と意味記憶間の区分をめぐる論点について展望した。両記憶をシステムの相違とみなすか,あるいは,想起モードの相違とみなすかに関してはいまだに結論が出ていないこと,事象間の階層的包含関係を的確に表現する概念としてエピソード記憶ではなく自伝的記憶が用いられるようになったこと,エピソード記憶を経由しなくても意味記憶内での知識獲得が起こりうることを論じた。
著者
大橋 正洋
出版者
日本失語症学会 (現 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会)
雑誌
失語症研究 (ISSN:02859513)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.194-199, 2002 (Released:2006-04-25)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

この数年,高次脳機能障害は,メディアや行政の用語として用いられるようになった。しかしながら,医学領域ではこの語の定義について見解は統一されていない。リハビリテーション医学の分野では,20年以上も以前から,診断や治療についての試みが行われてきた対象である。しかし,主な関心は脳血管障害による失語・失行・失認といった神経学的症候に絞られていた。この数年,救急医療の進歩によって,脳外傷などによるびまん性脳損傷の後,救命された人々がリハビリテーションの現場に来るようになった。これらの人々は,認知,情緒,心理社会的障害などを持つ傾向があり,これらの障害は評価や対応が困難である。高次脳機能障害を持つ人々を支援するためのシステムは,量的にも質的にも十分ではない。1998年,当事者組織が設立され,広報活動を行った結果,この用語が急速に注目をあびるようになった。
著者
亀井 尚
出版者
日本失語症学会 (現 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会)
雑誌
失語症研究 (ISSN:02859513)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.326-331, 1987 (Released:2006-07-28)
参考文献数
12

ITPAの下位検査である 「絵の理解」 と 「絵の類推」 を脳損傷による失語・非失語・痴呆患者に施行し, 意味の範疇的知覚を検討した.両検査の成績を比較してみると,非失語・失語・痴呆の順に成績が下降する現象が見られた.失語の場合, 「絵の類推」 の能力が低下すること,及び 「絵の類推」 における誤り方の特徴から,意味の知覚過程でより直観的な処理方式に依存する傾向が顕著であった.
著者
石合 純夫 横田 隆徳 古1川 哲雄 塚越 廣 杉下 守弘
出版者
日本失語症学会 (現 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会)
雑誌
失語症研究 (ISSN:02859513)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.259-264, 1990 (Released:2006-07-06)
参考文献数
16
被引用文献数
4 3

側頭葉後下部の出血性脳梗塞により,漢字の失書をきたした症例を対象とし,書取り不可能な漢字の視覚認知と書字動作に障害がないかを明らかにするため,写字過程の詳細な分析を行った。書取り可能な漢字と不可能な漢字から,字画数が一致するように選んだ28字の写字過程をアイカメラで記録した。手本の平均注視時間と平均注視回数は,書取り可能な漢字と不可能な漢字の間で差がなかった。また,平均書字時間も差がなく,写字過程における筆順の誤りは,書取り可能・不可能な漢字とも1文字ずつであった。以上より,書取り不可能な漢字であっても,手本を見て書くべき漢字がわかった場合には,ただちに自分の字体で正しく書き下すことができることが明らかとなった。このことは字画数が多いほど,また,習得学年が高いほど漢字の失書が重度となる点とともに,側頭葉後下部損傷による漢字の失書が,漢字の想起障害による可能性を示唆するものと考えられた。
著者
村西 幸代 河村 満
出版者
日本失語症学会 (現 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会)
雑誌
失語症研究 (ISSN:02859513)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.169-177, 1998 (Released:2006-04-26)
参考文献数
14
被引用文献数
2 1

左被殻に病変の主座を持ち,失語と構音障害を呈した3症例を経験した。3症例の症状は類似し,いずれも病初期に軽度の失語症状がみられたが1ヵ月以降の慢性期には消失し,構音の障害は病初期からみられ,その後も持続した。構音障害の特徴は自発話においては構音の歪みと韻律 (prosody) の障害が,課題発話の diadochokinesis では3音節の繰り返しが拙劣であった。しかし,復唱,音読で特に拙劣さが目立つことはなく,自発話と復唱および音読とに症状の乖離はみられなかった。この特徴は偽性球麻痺性構音障害,一側性錐体路の障害による麻痺性構音障害,脊髄小脳変性症による構音障害とは異なり,さらに Parkinson病,舞踏病,Wilson病などの両側錐体外路系に障害を持つ疾患で生ずる構音の障害とも異なっていた。3例の構音障害は左被殻周辺の病変に起因するものと考えられ,金子 (1989) らの左被殻病変例と類似し,失構音とは詳細には異なった特徴を有した。
著者
金子 真人 宇野 彰
出版者
日本失語症学会 (現 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会)
雑誌
失語症研究 (ISSN:02859513)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.270-278, 1989 (Released:2006-07-25)
参考文献数
21
被引用文献数
4 3

被殻出血により発症し軽微な構音の障害のみを呈した一例を経験した.本症例は発症時に軽度の失語症を認めたがその後消失し,構音面にのみ障害が認められた.本症例に対し以下の2点の目的から検討を加えた.第一に,構音の発話モダリティによる成績に差が認められないかが問題とされた.第2に,本症状の原因疾患および病巣が問題とされた.以上の点を検討するために,仮名音読,漢字音読,呼称を行ない発話にかかる持続時間の変動性係数が求められ,失語を認めない仮性球麻痺例と比較した.その結果,本症例の発話モダリティ間に有意な差が認められ,構音に音韻処理過程の障害が推察された.また,本症例は皮質下性失語からの移行型の可能性が示唆され,純粋語唖に近縁の一型ではないかと推察された.
著者
吉野 眞理子 山鳥 重 高岡 徹
出版者
日本失語症学会 (現 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会)
雑誌
失語症研究 (ISSN:02859513)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.136-145, 1999 (Released:2006-04-25)
参考文献数
22
被引用文献数
1

単語レベルで逐字読みではなく単語を全体として読むことを促すことを目ざした訓練としてフラッシュカード法に改良を加え,軽症の純粋失読症例に適用して読みの回復過程を検討した。症例は 28歳右利き男性で,左後頭葉AVM 摘出術後 2ヵ月~1年7ヵ月。MRI にて左後頭葉切除および左脳梁膨大・頭頂葉後部・側頭葉内側面の梗塞巣を認めた。神経学的には右同名性半盲,神経心理学的には,軽度の失読 (純粋失読),ごく軽度の漢字の失書,失算,言語性短期記憶障害が認められた。この訓練の結果,単語の音読時間は仮名 2~3文字語では改善を示し音読時間の短縮が非訓練語へも般化したが,4~5文字語では訓練語は改善したものの非訓練語への般化が乏しかった。一方,MOR法導入後,文章レベルの音読・読解能力の改善がなお続いた。この結果をふまえ,訓練の意義と純粋失読の回復機序について考察した。
著者
元村 直靖 豊田 勝弘 堺 俊明 井上 典子 澤田 徹
出版者
日本失語症学会 (現 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会)
雑誌
失語症研究 (ISSN:02859513)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.1056-1064, 1986 (Released:2006-08-04)
参考文献数
26
被引用文献数
2 2

The incidence and nature of verbal perseveration occuring after cerebrovascular disease were investigated. Out of 59 cases, verbal perseveration was found in 21 of 23 aphasic patients. The perseverative errors were classified into two types;clonic and intentional perseveration. Furthermore, intentional perseveration was divided into two types;immediate and delayed type according to temporal relation of a response to the original stimulus.    Clonic perseveration was found in 5 cases;one in naming and repetition tasks, 5 in series tasks. Intentional perseveration was found in 19 cases ; 17 in naming, 10 in repetition, and 19 in series teasks. There was no correlation between the duration of cerebrovascular disease and perseveration. On CT findings the lesions of frontal lobe, temporal lobe, parietal lobe, thalamus, and basal ganglia were detected. And there were tendencies that the larger the lesion was, the more frequent verbal perseveration was. The hypotheses of mechanism for producing perseveration were reviewed and verbal perseveration was supposed to be related with the disinhibition of memory trace.
著者
渡辺 俊三 田崎 博一 北條 敬 小泉 明 佐藤 時治郎 J. B. Baron F. Lhermitte
出版者
日本失語症学会 (現 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会)
雑誌
失語症研究 (ISSN:02859513)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.328-333, 1982 (Released:2006-08-11)
参考文献数
23

Musicians and nonmusicians were tested in the recognitions of four kinds of dichotically presented music stimuli : recorded tones, chords, rhythms and melodies. Nonmusicians were 18 subjects (A), who worked in fireman's agency in Paris, France, whose ages ranged from 18 to 28 years (average : 20.2 years) and whose years of musical experiences ranged from 0 to 5. Musicians were 8 students in musical college (Conservatoire national supérieur de Musique de Paris): 5 right-handed (B) and 3 left-handed persons (C), whose ages ranged from 18 to 25 years (average : 21.8 years), whose years of musical experiences ranged from 10 to 18 (average: 12.8 years).    1) In the tone test, the mean score for right and left ears were nearly the same for both A and B.    2) The chord test revealed a significant left ear superiority for A, and the tendency of the higher score in left ear was seen for B.    3) In the rhythm test, the score for the right ear had a tendency to be higher than the one for the left ear, both in A and B.    4) In the melody test, the score showed a tendency of left ear superiority for A, but the tendency of right ear superiority was seen for B.    Bever and Chiarello (1974) found a right ear reference in the detection of musical stimuli when they used musicians as subjects. Johnson made the dichotic listening task involving violin for musicians and nonmusicians. The musicians demonstrated a right ear superiority, while the nonmusicians performed better with the left ear. He interpreted that musicians mainly used the left hemisphere to process musical stimuli, while nonmusicians used the right hemisphere.    The results of Bever and Chiarello, and Johnson nearly agree with the results of our musical dichotic listening test for nonmusicians and musicians in France as well as the results of our former studies for pupils of chorus club in elementary school, stdents of philharmonic club in senior high school and students in musical college in Japan.
著者
大槻 美佳 相馬 芳明
出版者
日本失語症学会 (現 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会)
雑誌
失語症研究 (ISSN:02859513)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.182-192, 1999 (Released:2006-04-25)
参考文献数
21
被引用文献数
6 3

音韻性錯語と語性錯語の出現と病巣の関連を検討した。音韻性錯語については呼称と復唱で,その出現率を比較した。左中心前回損傷群ではその出現率に差異は認めず,左後方領域損傷群 (側頭-頭頂葉) では復唱よりも呼称でその出現率が有意に高かった。このことより,音韻性錯語は,音韻の取り出し・再生・実現のさまざまな過程の障害で出現し得ること,さらに,左中心前回損傷群ではモダリティーの違いに左右されない音韻実現過程の障害,また左後方領域損傷群では復唱で与えられる音が手がかりとなるような音韻の取り出し・再生過程の障害である可能性が示唆された。語性錯語については,意味性錯語と無関連錯語の出現頻度を検討した。左前頭葉損傷群では両者の出現率に有意差は認められなかったが,左後方領域損傷群 (側頭-頭頂-後頭葉) では意味性錯語の出現率が無関連錯語の出現率より有意に高かった。この傾向は重症度や検査時期に依存しなかった。このことは左前頭葉損傷群では目標語近傍の意味野へ適切に access する過程の障害,また左後方領域損傷群では目標語近傍の意味野への access は可能だが,さらに厳密な目標語の選択・障害の過程に障害があると推測された。
著者
毛束 真知子 河村 満 岸田 修司
出版者
日本失語症学会 (現 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会)
雑誌
失語症研究 (ISSN:02859513)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.278-282, 1995 (Released:2006-06-02)
参考文献数
12
被引用文献数
3 1

右半球病変により著明な失文法症状を呈した症例 (74歳,大卒の男性,右利き) の聴覚的文法理解を検討した。神経学的には左同名性半盲,左半身運動・感覚障害,神経心理学的には失語,左半側空間無視,構成障害が認められた。失文法症状は発話で明らかで,それ以外に復唱,音読,書字にも認められた。 ラジオの聴取に不便はなく聴覚的理解力の検査 (WAB ; トークンテスト) もほぼ満点であったにもかかわらず,われわれの考案した聴覚的文法理解 (主語判断課題) の成績は,同じ構文でも単語の意味的な関係により変動した。聴覚的理解が一見正常にみえるのは,本症例が蓋然性を手がかりにして単語の意味関係を理解することができるためであり,これは右半球病変による失文法症例の特徴である語彙能力が保持されていることと関係していることが推察された。さらに本症例では,一部の助詞 ( “で” など) の聴覚的理解が可能であった。これはこれらの助詞が,動詞の意味理解が可能であれば理解可能な助詞であるためと思われた。