著者
村松 崇 坪井 直哉 吉田 幸彦 小椋 康弘 鈴木 博彦 山下 健太郎 海野 一雅 嶋野 祐之 松下 邦洋 七里 守 竹澤 博人 平山 治雄 伊藤 昭男 外山 淳治
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.71-77, 2004

症例は65歳男性.慢性腎不全,下壁心筋梗塞の既往あり.慢性心不全の増悪で入退院を繰り返していた.2002年徐脈性心房細動のためVVIペースメーカー植え込み術を施行された.その後2003年3月から心不全が再増悪し,ドブタミン持続点滴から離脱困難となった.来院時BNPは1560,心エコー上LVDd78mm ,LVEF26%であった.両室ペーシング(BiV)の急性効果を検討したところ右室ペーシングと比較して,LVdP/dt maxが約41%改善した. 後日BiVへのupgrade手術を施行. 術後心不全は著明に軽快しドブタミンから容易に離脱可能となった.術後6日目にCL320msの非持続性心室頻拍(10連発)が1度のみ認められた.メキシレチン200mg/日を開始したところ以後心室頻拍は認められないため退院となった。退院後心不全症状はなく経過良好であったが2カ月後自宅で午睡中に突然心肺停止状態となり死亡した.経過から致死的不整脈が死因と考えられた.うっ血性心不全に対するBiV治療においてはICD機能付き両室ペースメーカーを必要とする症例が存在するが,その鑑別が重要と考えられる.
著者
堀越 哲 井尾 浩章 中田 純一郎 大澤 勲 濱田 千江子 富野 康日己
出版者
Japan Heart Foundation
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.123-130, 2012

目的: レニン·アンジオテンシン(renin-angiotensin; RA)系阻害薬オルメサルタンの降圧度と腎保護効果の関係について検討した.<BR>方法: 2004年から2009年の間に順天堂大学医学部附属順天堂医院腎·高血圧内科外来通院加療中で, 12カ月以上, オルメサルタンが継続投与され, 降圧薬処方内容, 量の変更がなく, 診察時血圧, 推定糸球体濾過量(estimated glomerular filtration rate; eGFR)·蛋白尿測定が定期的に行われていた患者109名を対象とし, 投薬背景や原疾患別にカルテベースで分析した.<BR>結果: すべての群で有意な降圧効果を認めた. 新規にオルメサルタンの単独投与が開始されたA群では, 有意な蛋白尿減少効果を認めたが, eGFRは低下傾向を示した. RA系阻害薬以外の降圧薬投与中にオルメサルタンが追加されたB群では, eGFRの低下は認めなかったが, 蛋白尿減少効果もみられなかった. ほかのRA系阻害薬の単独投与からオルメサルタンに切り替えられたC群では, 切り替え時の血圧が比較的低く, 蛋白尿減少効果は軽度で有意差を認めなかった. RA系阻害薬を含む降圧薬の多剤併用中にアンジオテンシンII受容体遮断薬(angiotensin II receptor blocker; ARB)がオルメサルタンに切り替えられたD群では, オルメサルタン投与量が最も多く, 蛋白尿減少効果は軽度でeGFRが有意に低下していた. 原疾患別にみると, 本態性高血圧蛋白尿陽性群で降圧度とeGFRの間に有意な相関がみられた. 本態性高血圧蛋白尿陰性群では, 蛋白尿陽性群に比して投与開始前のeGFRが高く, 投与後の有意なeGFR低下はみられなかった. 一方, 慢性腎炎症候群では, 12カ月後の降圧度と蛋白尿減少率およびeGFRとの間に相関はみられなかった.<BR>考察: オルメサルタンには, より強力な降圧効果と降圧効果に依存しない蛋白尿減少効果が認められたが, 一方でeGFRは低下した. オルメサルタンがeGFR低下速度を促進あるいは減速したのかは不明である. 原疾患や病態の違いにより, RA系の関与の質や量が異なることが示唆され, RA系阻害薬の投与にもその質·量の使い分けが求められていると思われる.
著者
一瀬 哲夫 小島 諭 宮崎 彩記子 宮崎 忠史 林 英守 伊藤 誠悟 川村 正樹 諏訪 哲 櫻井 秀彦 住吉 正孝
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.40, no.9, pp.806-810, 2008

症例は64歳,男性.数日前に左上肢を枕にして昼寝をしていたところ,突然の左上肢浮腫を認めたため来院.明らかな血栓性素因,悪性疾患を認めなかったが,左上肢の静脈造影,造影CTで左腋窩静脈の高度狭窄と,左鎖骨下静脈の遠位部の完全閉塞と近位部に浮遊血栓を認めた.肺動脈血栓塞栓症(pulmonary thromboembolism;PTE)の予防のため上大静脈に一時留置型静脈フィルター(ニューハウスプロテクト)を留置し,7日間のウロキナーゼ投与,およびヘパリン療法を開始した.線溶療法後の静脈造影では浮遊血栓は消失し,左鎖骨下静脈に器質化した血栓を認めた.フィルターは10日目に合併症なく抜去した.原発性鎖骨下静脈血栓症(Paget-Schroetter症候群)によるPTE予防に一時留置型フィルターは有用であると思われた.
著者
伊藤 健二 高口 直明 大川 恭矩 赤坂 忠義 井村 哲也
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.6, no.14, pp.2014-2018, 1974

左右肺静脈は共通幹を形成するものの,右肺静脈と左下肺静脈は主として冠状静脈洞へ,左上肺静脈は垂直静脈を経て左腕頭静脈へ還流する混合型総肺静脈還流異常症の11ヵ月女児に対する二期的根治手術例を報告した.<BR>第一期手術は,冠状静脈洞入口部を拡大し,肺静脈血が左房へ還流するように,ダクロンパヅチによる心房中隔脈成を,第二期手術は3年後,肺静脈一左房吻合,垂直静脈結築を行ない,血行動態は正常化した.<BR>混合型総肺静脈還流異常症の中,最も頻度の多い,冠状静脈洞と左腕頭静脈へ還流する型につき,共通肺静脈幹形成の有無,左右肺静脈間の交通の程度によって,分類を試み.おのおのの型に対する根治手術術式を検討した.
著者
網野 真理 吉岡 公一郎 鈴木 陽介 上村 春良 福嶋 友一 櫻井 馨士 守田 誠司 大塚 洋幸 中川 儀英 山本 五十年 児玉 逸雄 猪口 貞樹 田邉 晃久
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.41, no.SUPPL.3, pp.S3_138-S3_138, 2009 (Released:2015-01-23)

本邦においては硫化水素による自殺者が2008年の1年間のみで1,007人にものぼり社会的に深刻な問題になっている. 今回われわれは, 重篤な意識障害と呼吸不全に心筋障害を合併した硫化水素中毒患者の救命に成功し, 心筋障害の回復過程を心臓核医学検査により評価し得たので報告する. 症例は32歳, 男性. 自ら硫化水素を発生させて吸入自殺を図り, 救急車で当院救命センターに搬送された. 来院時の身体所見では, 除脳硬直肢位, 口唇のラベンダーブルー斑, 腐卵臭を呈し, 両側肺野では湿性ラ音が聴取された. 硫化水素中毒に伴う意識障害, 呼吸不全, 肺炎, 横紋筋融解症と診断し, 人工呼吸器管理, 高濃度酸素投与にて集中治療室へ入院. 第2病日には肺炎による敗血症性ショックを発症, 第3病日には横紋筋融解症の進行と心筋障害の新規出現が認められた. さらに第5病日には心原性ショック, 肺水腫が出現したが, 第7病日には人工呼吸器からの離脱に成功した. 第14病日は心筋血流イメージとして99mTc-tetrofosmin (TF), 心筋脂肪酸代謝イメージとして123I-BMIPP, 心臓交感神経イメージとして123I-MIBGを施行可能であった. TF, BMIPPでは前壁の一部, 下壁~後壁における集積低下が認められ, MIBGでは高度交感神経障害が示唆された. 同時期に施行した冠動脈CTにおいて冠動脈の有意狭窄はなかった. 心筋障害に対する内服加療としてカルベジロールおよびエナラプリルを投与し, 第38病日に退院となった. 受傷6カ月後の心電図および心臓超音波検査では, 左室壁運動は正常化し心臓核医学検査ではTF, BMIPPにおける前壁, 下壁~後壁の集積低下は改善した. MIBGにおいては, wash out rateは改善した. 以上の臨床経過から, 内因性の急性心筋梗塞, たこつぼ心筋症, 急性心筋炎の可能性は低く, 硫化水素による心筋障害と考えられた. 本症例は重篤な硫化水素中毒からの急性期離脱後, およそ6カ月の経過を経て心筋障害の改善傾向を示した貴重な症例である.
著者
田村 太志 三国谷 淳 三上 雅人 佐々木 直裕 佐々木 正則 小野寺 庚午 渡辺 和重 沢井 通彦 及川 光雄 大池 弥三郎
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.23, no.10, pp.1165-1170, 1991

患者は55歳,男性.長期にわたり過量のアルコールを連日のように摂取していた.昭和63年11月中旬,前胸部圧迫感あり.胸部X線写真で心拡大,心電図上で心房粗動がみられ,拡張型心筋症として近医院で治療を受けていた.平成元年1月4日,雪かき中に動悸出現.心拍数210/分の心室性頻拍がみられ,嘔吐後,心室細動となった.電気的除細動後,心拍数50/分の接合部調律に回復したが,精査のため,当科に転入院となった.当科入院時,血液ならびに生化学的検査に明らかな異常所見はみられなかったが,左心室の拡大ならびに低収縮性が著明であった.心臓電気生理学的検査,右心室心内膜生検所見からは刺激伝導障害を伴う拡張型心筋症の病態が考えられた.しかし,長期にわたる大量のアルコール摂取歴があることからアルコールによる心筋障害を疑い,断酒させた上で利尿剤や強心剤を中止して経過を観察したところ,臨床症状,臨床所見のみならず心筋組織にも明らかな改善が認められた.以上から,拡張型心筋症に近似する疾患の診断においては,アルコール性心筋症をも考慮し,アルコール摂取の有無を注意深く聴取することが必要と思われた.
著者
臼田 和生 小林 大祐 竹森 一司 石川 忠夫 星野 修一 斉藤 典彦 津久井 宏行 西谷 泰 久保 実
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.58-63, 2000

症例は12歳,男児.学校心臓検診では異常なし.1999年2月15日小学校の昼休み中に突然意識消失し,4分後救急隊到着時には心肺停止状態で心電図モニターは心室細動であった.近医に搬送され心肺蘇生と軽度低体温療法を施行し第8病日に開眼,その後,徐々に意識回復した.非持続性心室頻拍が多発し心停止の原因と考えられたため,精査加療目的に当科入院.心エコー・左室造影で僧帽弁後尖下部左室後壁にφ3cmの先天性左心室瘤を認めた.心室頻拍波形は右脚ブロック+上方軸で心室瘤付近が起源と考えられた.心室瘤に対し外科的治療を施行.高密度マット電極で術中マッピングを行い,心室瘤辺縁にVT最早期興奮および心室瘤状部分に伝導遅延を認めたため,心室瘤周囲にcryoablationを行い,心室瘤に対し心膜パッチ縫着を行った.術後,心室性不整脈は消失した.以上,先天性左心室瘤に致死的心室性不整脈を合併した稀な1例を経験し,蘇生・根治に成功した.学校心臓検診での本病態の検出は極めて困難と思われた.
著者
齊藤 涼子 池田 尚平 田丸 貴規 尾上 紀子 田中 光昭 石塚 豪 馬場 恵夫 篠崎 毅
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.42, no.11, pp.1466-1473, 2010 (Released:2012-04-24)
参考文献数
17

症例は33歳, 男性. 体重増加(160kg)と著明な労作時息切れを主訴に来院し, 精査加療目的に入院となった. 全身浮腫, 低酸素血症, 高二酸化炭素血症, 総ビリルビン値上昇を認め, 左室拡張機能および収縮機能は低下していたが, 肺水腫や肺うっ血は認めなかったことから, 右心不全優位の肥満低換気症候群(obesity hypoventilation syndrome; OHS)と考えられた. 簡易型終夜ポリグラフ検査にて重症の閉塞型睡眠時無呼吸(obstructive sleep apnea; OSA)を認めたが, 患者は持続陽圧呼吸療法を受け入れることができなかった. 心不全に対して通常の内科治療のみを開始したところ, 心不全は徐々に増悪し, 入院第13病日に多臓器不全を呈した. 心係数低下, 肺動脈楔入圧上昇を認めたため, 両心不全の増悪と判断し, 人工呼吸器管理を行った. 経過中にTorsade de Pointes(TdP)とそれに引き続く心不全の再増悪を認め, 持続緩徐式血液濾過が必要となった. その後, 心不全は徐々に改善し, 体重は77.5kgまで減少し, カルベジロールを開始した. 第211病日にはOSAと心機能は著明に改善した. 現在カルベジロール少量投与にて経過観察中である. 重症心機能障害を合併するOHSでは, 早期より気管切開による陽圧呼吸療法も含めた積極的な加療を考慮すべきである.
著者
棚橋 紀夫
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.239-244, 2009 (Released:2013-05-09)
参考文献数
13
著者
中島 豊
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.492-495, 2009 (Released:2013-05-27)
参考文献数
9
被引用文献数
1
著者
堀込実岐 堀込実岐 山崎 恭平 若林 靖史
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.42, no.8, pp.1081-1086, 2010 (Released:2012-03-23)
参考文献数
11

拡張型心筋症(dilated cardiomyopathy; DCM)で加療中の42歳, 男性. 38歳時に持続性心室頻拍を指摘され, 植込み型除細動器(implantable cardioverter defibrillator; ICD)を挿入後, 同時期より塩酸アミオダロンの投与が開始された. その後, 定期的な内分泌学的検査にて, 甲状腺機能異常は認めていなかった. 2007年(42歳)7月より頸部圧迫感あり, 当院外来を受診. 甲状腺のび漫性腫大を認め, エコーでは内部不均一な甲状腺両葉の腫大を認めた. 血液検査ではTSH 5.5µIU/mL, fT3 3.7pg/mL, fT4 1.0ng/dLと正常で抗TSH受容体抗体(TRAb)や抗サイログロブリン抗体(TgAb), 抗ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb)は正常範囲内であり巨大な単純性のび漫性甲状腺腫と診断した. アミオダロンによるものと考え, アミオダロンを中止したところ甲状腺腫は徐々に縮小傾向を認めた. しかし, その後アミオダロンを中止した約10カ月後より8kg/月程度の著明な体重減少を認めたため, 甲状腺機能を測定したところfT3 17.2pg/mL, TSH 0.003µIU/mLと著しい甲状腺中毒症を認めた. 破壊性甲状腺炎の診断でプレドニゾロンとチアマゾールを投与し約半年で甲状腺機能の改善を認めた. アミオダロンにより甲状腺中毒症や機能低下症を発症することは知られているが, 今回の症例では, アミオダロンによると思われる単純性甲状腺腫を認め, アミオダロン投与中止の10カ月後に甲状腺中毒症を呈した, 非常に稀な症例と考えられた.
著者
米田 浩平 日浅 芳一 當別當 洋平 馬原 啓太郎 細川 忍 原 朋子 石橋 直子 尾崎 敬治 後藤 哲也 藤井 義幸 山下 理子
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.681-686, 2011 (Released:2012-11-07)
参考文献数
11

症例は16歳, 男性. 発熱, 倦怠感と労作時呼吸困難を訴え近医を受診し, 白血球減少を指摘され, 当院血液科へ紹介された. 精査目的に入院したが, 呼吸困難の増悪を認めたため, 循環器科へ紹介された. 心エコーでは右心系の拡大と中等度の肺高血圧を認め, 造影CTを施行したところ両側肺動脈を中心に広範囲に血栓を認め, 肺血栓塞栓症(pulmonary thromboembolism; PTE)と診断した. 血小板数が54.5万と増加しており,(腫瘍性の)血小板増加もPTEの原因の1つである可能性が考えられた. ウロキナーゼ, ヘパリンを投与し治療を行ったが, 治療開始後にも呼吸困難は継続していた. 白血球減少については骨髄検査を行い, 20%以上の芽球を認めたため, 急性骨髄性白血病(AML with multilineage dysplasia)と診断した. 入院7日目よりIDA+Ara-Cによる寛解導入療法を開始したところ, 症状は軽快し, 心エコー上も右心負荷の改善を認めた. その後, 同種骨髄移植を行い当院血液科外来にてPTEの再発なく経過観察中であったが, 移植後の再発のため2010年3月死亡. 今回, PTEが初発症状の1つとして発症し, その治療として化学療法が奏功した若年者のAMLの1例を経験したので報告する.
著者
山岸 昌一
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.702-705, 2010 (Released:2012-02-28)
参考文献数
14
被引用文献数
1
著者
内川 友起子 中村 千種 宮井 信行 伊藤 克之 石井 敦子 内海 みよ子 有田 幹雄
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.44, no.7, pp.799-804, 2012 (Released:2013-12-26)
参考文献数
17

メタボリックシンドローム(metabolic syndrome; MetS) によって引き起こされる動脈硬化のリスクを軽減するには,身体活動を含めた生活習慣を是正することが基本となる. MetSにおける砂浜でのウォーキングがMetSの危険因子に及ぼす影響については十分な検討はなされていない. 本研究では砂浜でのウォーキングがMetSの心血管危険因子に及ぼす影響を検討した. 重篤な心血管病のない44名の住民を対象とした. 無作為クロスオーバー法を用い,A群: 運動介入—観察期間—非運動介入(n=22) とB群: 非運動介入—観察期間—運動介入(n=22) に分類した. 運動介入時は,1日1万歩の砂浜での歩行運動を行い,非運動介入時は,積極的な運動を行わないようにした. 介入·観察期間はそれぞれ8週間とし,介入前後に,身体計測,血圧,augmentation index(AI) ,血液検査などを計4回実施した. 運動介入時(n=44) の平均歩行数は9,692±1,592歩で,非運動介入時(n=41) の平均歩行数は6,386±1,633歩であった. 運動介入時群に,体重,腹囲,BMIが有意に改善した. 血圧は有意でないものの改善傾向であり,radial(r) AIは有意に減少した. 中性脂肪は有意に低下,インスリン,空腹時血糖は低下傾向であり,特にHbA1cで有意に低下した. 一方,非運動介入時は,いずれも有意差を認めなかった. 以上より,身体活動は内臓脂肪の減少とインスリン抵抗性を改善させるとともに動脈スティフネスの改善を示したことより,1日1万歩程度の砂浜での歩行は,MetS改善に寄与する有効な手段であることが示唆された.
著者
有田 武史
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.45, no.7, pp.748-752, 2013-07-15 (Released:2014-09-16)
参考文献数
10