著者
近江 三喜男 澤村 佳宏 清水 雅行 中目 貴彦 高橋 通規
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.107-111, 2004

動脈管動脈瘤はまれな疾患であるが,近年の大動脈外科の発展に伴い報告が増加している.しかし,一般的には本疾患は十分には理解されていない.<BR>症例は70歳の男性で,高血圧と狭心症の既往がある.平成14年7月29日,胃癌に対し胃切除術を受けた.術後,嘔気,嘔吐が持続し,8月20日以降は絶食のもとに高カロリー輸液を受けていた.9月26日,精査目的で当院に転院となった.10月2日,持続する胸痛を訴え,胸部X線像で心縦隔陰影の拡大と左胸水を認め当科紹介となった.胸部CT像で"triplestarsign"を認め,最大瘤径は60mmであった.DSA所見ではaortic windowに突出する嚢状瘤を認めた.以上の所見より,成人型動脈管動脈瘤の切迫破裂の診断のもとに緊急手術を行った.手術は胸骨正中切開で行い,選択的脳灌流を用いた脳分離体外循環下に,完全弓部大動脈置換および弓部分枝再建術を行った.術後は呼吸不全が遷延し,出血性残胃潰瘍などで長期間の入院を要したが,12月26日に元気に退院した.<BR>本症の症状は嗄声,呼吸困難,咳嗽,胸痛,嚥下障害など,瘤の拡大による圧迫症状が主である.破裂などの重篤な合併症も高率に発生することから,瘤径3cm以上が手術適応とされる.今回は胃切除術後の通過障害で発症したが,上部消化管症状の鑑別診断上重要な疾患の一つであることを認識すべきである.
著者
櫃本 竜郎 井上 勝次 飯尾 千春子 藤本 香織 河野 珠美 藤井 昭 上谷 晃由 永井 啓行 西村 和久 鈴木 純 大蔵 隆文 檜垣 實男 大木元 明義
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.57-63, 2015 (Released:2016-01-14)
参考文献数
7

症例は72歳, 女性. 当院膠原病内科で全身性エリテマトーデスに合併した血球貪食症候群に対して化学療法 (CHOP療法) を施行後に心不全を発症しアドリアマイシン心筋症と診断された. また, 心エコー上中等度の大動脈弁狭窄症を指摘された. 以後心不全標準治療を継続したが, 約10年の経過で徐々に心機能低下と大動脈弁狭窄症の重症度が進行し, 心不全の増悪による入退院を繰り返した. 内科的治療の限界と判断し, 外科的大動脈弁置換術や経カテーテル的大動脈弁植込み術 (Transcatheter Aortic Valve Implantation ; TAVI) の適応を診断するため, 低用量ドブタミン負荷心エコー検査を行った. 本症例は偽性重症大動脈弁狭窄症の可能性があるため, Blaisらが提唱した予測有効大動脈弁口面積 (projected effective orifice area ; EOAproj) 測定したところ, EOAproj 1.18cm2で境界所見であった. 胸部CT検査から求めた大動脈弁石灰指数 (Agatston's score) は659であり, 強い石灰化は指摘できなかった. カテコラミンを含む心不全治療を行ったが, 心不全の改善を認めず死亡した. 剖検を行った結果, 大動脈弁は弁腹の石灰化を認めたが, 弁尖の変性は軽度であった. 今回われわれは低左心機能を伴う大動脈弁狭窄症例におけるドブタミン負荷心エコー検査の有用性, 限界について検討したので報告する.
著者
丸山 征郎
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.204-210, 2009 (Released:2013-05-09)
参考文献数
17
著者
石川 兵衞 土居 通明 籠島 忠 福村 順 坂本 貞和 長谷川 昌三
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.7, no.10, pp.1178-1185, 1975-09-01 (Released:2013-05-24)
参考文献数
35

WPW心電図におけるST-T異常は心室早期興奮に基づく二次性変化とされているが,WPW症候群患者の場合にも,ことに中年以上の症例では,器質的心疾患その他の原因による一次性ST-T異常を合併している可能性がある.われわれはWPW症候群66例(RosenbaumのA型28例,B型35例,非定型3例)を対象として,二次性ST-T変化と一次性ST-T異常の判別に検討を加えた.(1)WPW心電図におけるST-T異常の出現頻度はA群50%,B群80%で,その多くはprocaine amide静注による房室伝導の正常化によって消失した.正常化前後のventricular gradient(G)は不変であり,消失したST-T異常は二次性変化であったと考えられる.(2)正常房室伝導時にST-T異常またはMaster二重二階段試験陽性を示した症例は,大部分がB型で,合併症・異常が高率であり,房室伝導が偽正常化にとどまっている可能性も否定はできないが,一次性ST-T異常の存在が強く疑われる.
著者
永井 道明 苅尾 七臣
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.43, no.8, pp.1061-1068, 2011 (Released:2012-12-27)
参考文献数
32
著者
三田村 秀雄
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.53-53, 2007

2004年7月に自動体外式除細動器(AED)が一般に解禁されると,全国津々浦々にAEDの設置が拡がり,AEDによる救命例も続出している.AEDの設置場所として人の密集する所は特に効果的で,空港,駅,イベント会場,ホテル,ショッピングセンターなどへの配備が進み,救命例も報告されている.運動に伴う心室細動の出現も想定内のことであり,AEDが準備されたマラソン大会やフィットネスジム,プール,運動場,学校などで救命に成功している.その一方でAEDが未配備の新幹線内での心停止や,配備されていたのに使用されなかった学校の事例なども報告されており,いまだ啓蒙が十分とはいえない.またAEDによる頻拍診断が不適正な事例も報告され,そのアルゴリズムに限界のあることもわかってきた.AED後に心肺蘇生術を必要とする例も少なくなく,電気ショック後の自動診断に時間をとられる前に蘇生術を再開することが新しいガイドラインで勧められている.
著者
池村 修寛 稲川 浩平 福田 芽森 山田 亘 宮田 宏太郎 田中 宏明 吉田 拓生 池上 幸憲 谷本 耕司郎 布施 淳 坂本 宗久 樅山 幸彦
出版者
Japan Heart Foundation
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.S2_105-S2_109, 2014

症例は心室細動蘇生後の23歳男性. 生来健康. 従兄弟が32歳で突然死. 駅のホームで倒れているところを発見され, 救急隊要請された. 目撃者なし, bystander CPRなし. AED (Automated External Defibrillator) により, 除細動を2度行われた後に自己心拍再開し, 当院救命センター搬送となった. 心肺停止時間は不明だが最大で1時間程度と考えられた. 全身状態安定後に低体温療法を開始した. 来院時のQT間隔は正常 (QT/QTc : 370/440msec) であったが, 低体温時の心電図で著名なQT延長 (QT/QTc : 720/600msec) を認めた. 復温後にQT間隔は正常化した. 冠動脈造影は異常なく, アセチルコリン負荷試験は陰性, 心エコー, 心臓MRI (magnetic resonance imaging) で器質的心疾患を示唆する明らかな所見は認められなかった. 潜在性QT延長症候群を疑いエピネフリン負荷試験を施行した. 負荷前のQT間隔は正常 (QT/QTc : 440/423msec) であったが, 投与1分後 (Peak state) にQT/QTc : 480/640msecまで延長し, 投与3分後 (Steady state) にはQT/QTc : 440/454msecまで戻った. 潜在性QT延長症候群と診断し, ICD植え込みを行った. 診断にエピネフリン負荷試験が有用であった心室細動蘇生後の潜在性QT延長症候群の1例を経験したので報告する.
著者
田中 宏明 福田 芽森 山田 亘 池村 修寬 宮田 宏太郎 吉田 拓生 稲川 浩平 池上 幸憲 谷本 耕司郎 布施 淳 坂本 宗久 樅山 幸彦
出版者
Japan Heart Foundation
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.S3_226-S3_231, 2014

DCMの68歳男性. ○年○月にCRT-D植え込み. VT stormに対し, ○+3年○月にアブレーション (心内膜側) を施行. 左室中隔および側壁に低電位領域 (LVA) を認め, ICEでLVA領域に一致して壁内から心外膜側にかけて高輝度領域を認めた. VTはペースマップ (PM) を用いて良好なPM部位でアブレーション施行. アブレーション後再発を認めたが, ATPで停止可能で経過観察していた. ○月○日 (1回目のアブレーションより3カ月後) にVT stormを認め, 緊急入院. ○月○日, アブレーション (心内膜側・心外膜側) を施行した. 前回アブレーションした側壁LVAの心外膜側は正常波高であったが, perfect PM (S-QRS=40ms) およびNSVT時にQRSに先行する拡張期電位 (Egm-QRS=54ms) が得られ, VTのExitと考えられた. 心外膜側および心内膜側にアブレーションを行い, clinical VTは誘発不能となった.
著者
加藤 和三 飯沼 宏之 高橋 宣光
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.10, no.8, pp.783-790, 1978-08-01 (Released:2013-05-24)
参考文献数
16

イヌ61頭において交感神経刺激(星状神経節,心室神経)によるST-T変化を観察した.右側神経刺激直後,左室前壁に一過性のST下降・T陰転出現,刺激開始数十秒後,前壁に著明なST下降・T陽転が生じ数分持続した.左室後壁ではそれらの対側性変化として初期の一過性ST上昇および後期の薯明なST上昇・T陰転が生じた.左側神経刺激では以上と対照的に左室後壁に一過性のST下降をみ,続いて著明なST下降・T陽転が生じ,同時に前壁に対側性変化を伴った.いずれの場合にも変化は星状神経節刺激の場合より心室神経刺激の場合一層著しかった.以上の変化は神経切断およびβ-ブロッカーにより阻止されたことから刺激された神経支配域心筋に発するカテコラミンの作用によると思われる.さらにD-C増幅による記録から初期変化は真のST下降,後期変化はTQ線の上昇によるみかけのST下降であることが知られた.
著者
小松 孝昭 谷口 勲 小林 さゆき 酒井 良彦 高柳 寛
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.308-311, 2009 (Released:2013-05-15)
参考文献数
4

症例は75歳, 男性. 1970年僧帽弁狭窄症にて僧帽弁交連切開術施行. 1982年人工弁置換術(Björk-Shiley弁)を施行し, 以後外来通院中. 2003年9月より黄疸が出現し, 10月下旬外来受診. RBC 193万/mm3, Hgb 6.1g/dL, Ht 18.8%, LDH 15,058 U/L, I-Bil 8.38mg/dLにて入院. 溶血性貧血を呈していたが, 諸検査で肝胆道系, 血液疾患は否定した. 心エコー図検査で人工弁周囲より逆流を認め, 人工弁機能不全が貧血の原因と考えた. 11月下旬再度弁置換術を施行. 弁周囲は脆弱で, 後交連近傍の縫合線の3分の1が弁輪部組織と離開しており, この部分の異常血流が赤血球破砕をきたし, 溶血性貧血が生じたと診断した. 人工弁の可動性異常はなかった. 術後貧血は改善を認めた. 人工弁置換による溶血性貧血を認めた症例を経験したので報告する.
著者
西村 敬史
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.67-67, 2005

心房細動は特殊な場合を除いて心臓性急死を来す疾患ではないが,ときに治療目的に投与された抗不整脈薬による心臓性急死が発生することが知られている.しかしリズムコントロールを行った自験218例(平均年齢68.9歳,平均観察期間17.6カ月)において1例の心臓性急死も発生せず,心室細動,持続性心室頻拍,TdPも認めなかった.3例を失ったが,その死因は急性心筋梗塞,肺炎,腎細胞癌であった.<BR>心臓性急死のみられなかった理由として,リズムコントロールを行う症例の選択,抗不整脈薬の投与量,併用薬の選択,外来における心電図記録や電解質検査を適切に行うことが重要であると考えられた.さらに洞調律維持が困難な症例を"深追い"せず心拍数コントロールへ変更する判断も重要であると考えられた.<BR>心房細動に対するリズムコントロール治療は,それを適切に行うことで治療に伴う心臓性急死は予防可能であり,多くの症例に対する第一選択の治療となり得る.
著者
清水 賢巳 元田 憲 多賀 邦章 神川 繁 炭谷 哲二 布田 伸一 酒井 泰征 竹田 亮祐
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.15, no.7, pp.759-766, 1983-07-25 (Released:2013-05-24)
参考文献数
16

重症筋無力症の心電図所見を検討した.対象は8~65歳の男女16例で,男女比は5:3,罹病期間は1ヵ月~17年,平均5.6年であった.病型はOsserman分類にて型3例,IIA型8例,IIB型3例,III型1例,IV型1I例であった.胸腺腫は4例(良性2例,悪性2例)に認めた.抗コリンエステラーゼ剤投与歴は0~7年,2例に60Co照射歴があった.心電図所見では,(1)正常例は16例中4例(25%)であり,異常所見として伝導障害1例(6%),ST・T変化8例(50%),不整脈6例(38%)を認め,高電位差,QRS群のterminal notchingは5例(31%)と高率に認められた.(2)心電図異常は臨床所見のうち,年齢,罹病期間,抗コリンエステラーゼ剤服用歴とは関係がなく,重症例,呼吸機能低下例で多彩であった.(3)経過中に巨大陰性T波の出現を認めた1例を経験した.本例の陰性T波の成因として自律神経系の関与が推定された.
著者
秋津 克哉 木下 利雄 岩崎 義弘 若倉 慎吾 野口 晃司 木内 俊介 坪田 貴也 池田 隆徳
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.S1_158-S1_158, 2015

<p> 症例は47歳女性. 糖尿病性腎症で近医にて維持透析されている. 以前よりQT延長を指摘されたことがあるが経過観察とされていた. 母と妹が遺伝性QT延長症候群の診断にて植込み型除細動器を挿入されている. 2014年9月上旬, 透析中に心室細動を認め, 電気的除細動 (DC) にて洞調律へ復帰した. 当院救急搬送後, 胸痛の訴えあり, 心電図でST変化, 陰性T波認めたため虚血性心疾患を疑い, 冠動脈造影検査を行うも有意狭窄は認めなかった. QTc 500msecと著明な延長を認め, 入院経過中Torsade de Pointes (TdP) を起こしDCを施行した. また経過中一過性にwide QRSへの心電図変化を認め, 単形性心室頻拍が発生し, 遺伝性QT延長症候群以外による心室頻拍発作の可能性が否定できなかった.</p><p> 壮年女性で初発の心室細動発作および多形性・単形性心室頻拍といった多彩な心室性不整脈を呈し診断に苦慮した遺伝性QT延長症候群を経験したので報告する.</p>
著者
木村 栄一 斧田 太公望 宮原 光夫 金沢 知博 新谷 博一 水野 康 早瀬 正二 高安 正夫 戸山 靖一 木村 登 奥村 英正
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.347-358, 1974

新しく開発された抗不整脈薬prajmalium(propylajmaline)の経口投与による効果を,群問比較による二重盲検法を用いてajmalineおよびinactiveplacebo のそれと比較した.1分間数個以上の期外収縮を有する78例に上記薬剤を1週間投与し,来院時における期外収縮数の減少度を目標として,3薬間の比較を行なったが,有意の差はえられなかった.しかし分析の結果,1分間10個以上の期外収縮を有する例を対象とするならば,prajmaliumがajmalineおよびinactiveplaceboより有効だという成績がえられるであろうとの推定がなされた.一方,主治医の評価による総合判断を用いた時には,3群間に有意の差のあること,さらにprajごnaliumがi捻activeplac¢boより有意の差をもってすぐれていることが知られた.また多変量解析により分析を行なうに,期外収縮数の消艮,心拍不整感およびめまいが主治医の総合判断に強く影響していることが知られた.なお,本剤は発作性心頻拍や発作性心房細動の予防にも有効であることが期待されるが,症例数が少ないため参考データとするに止めた.本剤の副作用として最も重大なのは肝機能障害の発生であるが,分析の結果,心胸比の大きな例でS-GOTの上昇をきたしやすいことがわかった,したがって心臓の大きなもの,始めからS-GOTや3GPTの高いものには,投薬にさいし注意することが必要である.
著者
加藤 勲 岩 亨 鈴木 靖司 大野 真 坂中 清彦 辻 晶 伊藤 隆之
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.39, no.Supplement3, pp.59-64, 2007-08-30 (Released:2013-05-24)
参考文献数
14

当院内で意識消失に対して汎用型自動体外式除細動器(automated external defibrillator;AED)が使用された27例を検討し問題点を検証した.症例は,心停止を認めない意識消失が3例.心静止/無脈性電気活動が14例.心室頻拍(VT)/心室細動(VF)が10例であった.AEDがショックを放出したのはVF6例中5例.多形性VT1例中1例.単形性VT3例中0例で,単形性VTは全例心拍数250回/分未満であったためショックは放出されなかった(PHILIPS社の単形性VTでの作動条件は心拍数250/分以上).当院で使用経験のあるAEDモード付き除細動器は,通常のAEDよりも遅い単形性VTでも作動する(PHILIPS社の作動条件は心拍数150/分以上)ので,除細動器のAEDモードを使用した方が救命率は上がる可能性がある.またAEDの作動条件を満たさないVTでも手動モードであれば医師によりショックの放出は可能である.院外と院内の心停止では状況は若干異なるため,AEDの院内設置は理想的な機種選択が考慮されるべきと考える.
著者
大久保 正 阿部 忠昭 栗林 良正 佐藤 護 贄田 茂雄 高橋 昌規 金沢 知博 田沢 勝雄
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.73-78, 1976-01-31 (Released:2013-05-24)
参考文献数
16

肺動脈狭窄症状を示した29歳男子の右心室粘液腫の一治験例を報告するとともに文献的考察を加えた.患者は運動時呼吸困難を主訴とし,第2肋間胸骨左縁に3/6度程度の収縮期駆出性雑音を聴取したが,体位により変動するのが特徴的であった。心カテーテル検査では肺動脈一右室聞に85m磁H墓の収縮期圧較差を認め,右室造影で右室流出路から肺動脈主幹部にかけての陰影欠損を認めたため右心室内腫瘍と診断し,腫瘍摘出術を施行した.右心室内粘液腫は現在まで本症例を含めて15例の報告がみられる。腫瘍摘出術を受けた11例中9例は術後全く良好だった一方,肺動脈閉塞による突然死も報告されており早期手術が望ましい.