著者
諏訪 賢一郎 俵原 敬 浮海 洋史 尾関 真理子 待井 将志 田村 純 宮島 佳佑 神田 貴弘 安見 和彦
出版者
Japan Heart Foundation
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.484-489, 2013

症例は62歳, 男性. 発熱にて当院受診. 心電図にてI, II, aVL, V4~6にST上昇を認め, さらに心筋逸脱酵素とCRP上昇を認めた. また心エコーにて心尖部前側壁と中部下壁に壁運動低下が認められた. 緊急心臓カテーテル検査にて前壁, 側壁, 下壁の一部に壁運動低下を認めたものの, 左室駆出率57%であり, 冠動脈に有意狭窄を認めなかった. 以上所見より急性心筋炎と診断. 第4病日の心臓MRIでは, シネMRIにて左室駆出率11%, 全周性高度壁運動低下, T2強調画像black blood像にて左右両室全体に高信号, そして遅延造影MRIにて心尖部寄り側壁の心外膜側を主とした遅延造影を認めた. 同日心筋生検を施行. リンパ球の浸潤を多数認め, リンパ球性心筋炎と診断した. また血行動態破綻のため大動脈バルーンパンピング (intra-aortic balloon pumping ; IABP), 経皮的心肺補助装置 (percutaneous cardiopulmonary support ; PCPS) を導入. その後も心機能は悪化し, 大量免疫グロブリン療法, ステロイド短期大量療法を施行するも第9病日に死亡した. 剖検では心筋へリンパ球主体の高度の炎症細胞浸潤, 心筋の凝固壊死, 融解, 変性と間質浮腫を認めた. 初期軽症期から入院し血行動態破綻直前に心臓MRIの撮影ができた劇症型心筋炎の貴重な1例を経験したので報告する.
著者
土田 哲人
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.43, no.9, pp.1176-1182, 2011 (Released:2013-01-19)
参考文献数
22
被引用文献数
1
著者
野並 有紗 斧田 尚樹 近藤 史明 土居 義典
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.42, no.9, pp.1201-1206, 2010 (Released:2012-04-21)
参考文献数
12

症例は80歳, 男性. 約15年前に交通事故にて左下肢を骨折し, 以後グリップタイプの杖(右手用) を歩行時に使用している. 今回, 不安定狭心症疑いにて冠動脈造影を施行した. 右橈骨動脈を穿刺したが, カテーテルが上腕動脈内で捻転し, カテーテルのみを抜去することが不可能となりシースごと抜去した. 引き続き右大腿動脈を穿刺し, 左前下行枝#7の高度狭窄病変に薬剤溶出性ステントを留置した. 20日後に外来受診した際, 右橈骨動脈に約30mm大の拍動性の腫瘤を認め, 血管超音波検査にて右橈骨仮性動脈瘤と診断した. 瘤径が大きいことから超音波プローベによる圧迫では不十分であるうえに, 手技自体による破裂の危険が危惧され手術治療を選択した. 仮性動脈瘤の原因として, カテーテル変形箇所での穿刺孔拡大, 止血不十分および杖歩行による穿刺部の荷重が推察された.
著者
榊原 俊介 寺師 浩人
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.6-10, 2013-01-15 (Released:2014-09-12)
参考文献数
17
著者
林 洋史 宮内 靖史 林 明聰 高橋 健太 植竹 俊介 坪井 一平 中辻 綾乃 村田 広茂 山本 哲平 堀江 格 小原 俊彦 加藤 貴雄 水野 杏一
出版者
Japan Heart Foundation
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.S3_34-S3_41, 2011

症例は52歳, 男性. 繰り返す動悸を自覚し, 携帯心電計で周期240msのnarrow QRS頻拍と心房細動を認めたため, アブレーションを行った. 両側肺静脈を隔離後, 冠静脈洞近位部からのburst pacingでWenckebach型房室ブロックを伴う周期240msの心房頻拍(AT)が誘発され, このATはATP 5mg静注で停止した. AT中のelectroanatomicalマッピングでは, 右房はHis束領域が最早期であったが, 局所の単極電位にR波を認めた. 左房は前壁中隔が最早期であったが同部位での焼灼は無効であった. そこで大動脈弁無冠尖(NCC)にカテーテルを留置したところ, His束領域よりも20msec先行し, 単極電位ではQSパターンとなる最早期興奮部位を認めた. ここでの通電中にATから周期350msの非通常型房室結節リエントリー頻拍(AVNRT)へと移行. その後, 通常型AVNRTも誘発され遅伝導路領域を焼灼し, これらの頻拍はすべて誘発不能となった. NCC起源ATを認め, その焼灼中にAVNRTへの移行が見られた症例を報告する.
著者
佐藤 寿俊 神田 順二 小寺 聡 櫛田 俊一 橋本 亨 鈴木 勝 樋口 和彦
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.124-128, 2007

症例は27歳,男性.17歳で心肥大を指摘,心エコーで大動脈弁閉鎖不全を伴うバルサルバ洞瘤を指摘されたため2000年3月大動脈弁置換術およびバルサルバ洞パッチ閉鎖術が行われた.しかし2001年8月無冠洞瘤部が破裂し,破裂部直接縫合閉鎖を行っている.2004年12月眩暈と動悸を伴う240/分の心房頻拍で入院.緊急カルディオバージョンで退院したがハイリスクなため2005年1月入院,心臓電気生理検査(EPS)を施行した.誘発された心房細動を経て三尖弁-下大静脈峡部を回路とするマクロリエントリー性心房頻拍(AT)が誘発されたため,ここに線状焼灼を行いブロックラインを作成した.再度EPSを行うと,今度は臨床的に確認されていたATが誘発され,起源は手術痕とは関連のない分界稜下縁であった.Fractionated potentialがAT中に先行する最早期A波の記録される部位で焼灼を行ったところATは速やかに停止,以後ATは誘発不能になった.退院後再発なく経過している.
著者
五十嵐 裕美 伊藤 博 一林 亮 坪田 貴也 吉原 克則 小泉 雅之 佐藤 秀之 山崎 純一 池田 隆徳
出版者
Japan Heart Foundation
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.S2_5-S2_10, 2012

症例は60歳代の男性, 未治療の高血圧の既往があり, 国内線の飛行機内で心肺停止となった.客室乗務員が自動体外式除細動器(AED)を装着し1回作動後に心拍が再開し, 羽田着陸後, 当センターに緊急搬送された.AEDの記録では心室細動(VF)を呈していた.JCSII-10, GCS E4V2M4, 瞳孔3mm大で左右差なく, 血圧212/mmHg, 脈拍111/分であった.心電図は洞調律で, V<sub>4~6</sub>誘導でstrain T波が認められた.脳保護目的で低体温療法が3日間施行された.復温後に意識状態は回復し, 神経学的後遺症は認められなかった.ACh負荷冠動脈造影で4-AVが完全閉塞となり, 冠攣縮性狭心症と診断された.心臓電気生理学的検査(EPS)でVFが誘発されたこともあり, 植込み型除細動器(ICD)が植え込まれ退院となった.2010年1月より当センターは羽田空港の航空会社と救急医療連絡会を行っている.同年10月に新国際線旅客ターミナルが開設し, 旅客数の増加が見込まれる.迅速な応急処置と救急処置で救急の輪が成立し, 社会復帰が可能となった症例であったので報告する.
著者
太田 里美 菅野 紀明 青木 秀俊 二瓶 和喜 前田 喜晴 田辺 達三 杉江 三郎
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.280-287, 1980

左心および右心の弁の物性的要求条件,また生体弁,心血管補填graftとしての物性を検索するため,豚の大動脈弁,肺動脈弁,心膜,イヌの硬脳膜の新鮮組織およびBioprosthesis処理組織(0.2%GA,0.65%GA,1.3%DAS,98%Ethanol+DAS処理)の引張り強度,伸び率を測定した,また従来の生体弁処理法(4% Formalin,1%Betapropiolaction,70% Ethanol)の物性との比較も行つたその結果,新鮮大動脈弁に対する強度は肺動脈弁67%,心膜84%,硬脳膜52-72%,伸び率はおのおの134%,110~103%,114~86%であった.またBioprosthesis大動脈弁は強度は増すが,伸び率が低下してpliabilityに難のあること,Bioprosthesis肺動脈弁は左心弁への応用には疑問のあること,心膜では新鮮組織の右心の弁または補填材料としての利用は物性的に肯じられるが,Bioprothesisでは瘤形成の危険も考えられること,また従来の処理大動脈弁は物性的に弁破綻の可能性が大であり,Bioprosthesisとは物性的に有意の差のあることなどの知見をえた.
著者
小林 貴 久保 典史 坂倉 建一 高田 宗典 平原 大志 荒尾 憲司郎 宇賀田 祐介 森 将之 船山 大 菅原 養厚 阿古 潤哉 百村 伸一
出版者
Japan Heart Foundation
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.42, no.11, pp.1438-1443, 2010

たこつぼ心筋症(transient left ventricular apical ballooning, takotsubo cardiomyopathy; TTC) では診断時, 冠動脈の有意狭窄を除外基準とすることが多い. しかしながら, 高齢者に多い病気であり, 最近, 冠動脈に有意狭窄のあるたこつぼ心筋症の存在もいわれるようになってきた. 症例は83歳, 女性. 普段から行っているわけではない, 緊張を伴った神社参拝, 豆まきという行事直後の食事, 飲酒をした際に著明な冷汗と意識が遠のく感覚を自覚したため, 救急要請となり当センターに救急搬送された. 急性冠症候群(acute coronary syndrome; ACS)が疑われ, 緊急心臓カテーテル施行. 左冠動脈前下行枝(left anterior descending artery; LAD)#7に90%狭窄を認めたため, 緊急経皮的冠動脈形成術(percutaneous coronary intervention; PCI)を行った. 直後の左室造影(left ventriculography; LVG)では, LADの支配領域に合致しない左心室基部の過収縮と心尖部の無収縮を認め, 高度冠動脈狭窄を合併したTTCと診断された. TTCとLAD病変の関与したACSは最も重要な鑑別点である. ACSとして判断されていた症例の中にも実際には詳細に検討すると, たこつぼ心筋症が潜んでいる可能性があることを示唆している. また, 診断方法の感度を考慮すると, 疾患概念による形体描写に基づかない命名の必要性が指摘されている. 病態解明の進歩が, 今後一層期待される.
著者
船田 桂子 永井 利幸 吉原 良浩 岸野 喜一 片山 隆晴 松村 圭祐 宮川 貴史 穂坂 春彦 鈴木 雅裕
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.45, no.11, pp.1413-1419, 2013 (Released:2014-11-21)
参考文献数
13

症例は手術歴や外傷歴のない49歳, 男性. 以前から時折下腿浮腫を自覚していたが, 自然軽快していたため放置していた. 2011年 7月に右下腿浮腫, 歩行時痛で受診. 右下腿深部静脈の拡張と血栓像を認め, 深部静脈血栓症と診断. 臨床症状, 心電図および経胸壁心臓超音波検査断層法からは肺塞栓症を疑わせなかったが, スクリーニングで施行した胸部造影CTで両肺動脈に血栓像を認めた. 抗核抗体, 凝固因子, プロテインS, プロテインCなどの血栓素因は正常範囲内であったが, 血中ホモシステイン値が67.7μmol/Lと著増しており高ホモシステイン血症を伴った深部静脈血栓症および肺血栓塞栓症と診断した. 抗凝固療法およびビタミン補充療法を開始し, 自覚症状と画像所見の改善を認め, 血中ホモシステイン値は 1カ月後には正常化し, 現在静脈血栓症の再発を認めていない. 高ホモシステイン血症を伴った静脈血栓塞栓症の報告は比較的稀であり, 文献的考察を含め報告する.
著者
折目 由紀彦 塩野 元美 瀬在 明 瀬在 幸安
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.64-67, 2001-01-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
5

待機的冠動脈バイパス術の施行症例に対しhANPを体外循環開始時から低用量投与し,術中・術後の循環動態,体液代謝に及ぼす影響について検討した.hANP投与群は0.03-0.05μg/kg/時を20時間投与し,その後0.02μg/kg/時に減量して24時間で中止した.循環動態については,hANP群はnonhANP群(hANP無投与)と比較して収縮期大動脈圧,平均大動脈圧,収縮期肺動脈圧,肺動脈楔入圧,全身血管抵抗,肺血管抵抗などの低下,心係数の上昇など血行動態の改善が認められた.体液代謝については,hANP群は血中ANP,サイクリックGMPの上昇,血漿レニン活性,血漿アンジオテンシン-IIおよびアルドステロン濃度の抑制などの効果が得られ,腎機能の低下も認めなかった.
著者
仲田 かおり 清水 雅俊 島 尚司 田中 将貴 堀 啓一郎
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.38, no.11, pp.1110-1114, 2006
被引用文献数
5

症例は73歳,男性.急性舌腫脹による咽頭腔の閉塞で呼吸困難をきたし救急搬送された.ただちに経鼻エアウェイ挿入で気道確保のうえ,同チューブから酸素投与がなされた.内視鏡検査では鼻咽腔および喉頭には浮腫がおよんでいないことが確認された.舌腫脹は強力ネオミノファーゲンCとマレイン酸クロルフェニラミンの投与により,しだいに軽快して約5時間後には会話可能となった.発症10時間後に施行されたMRI検査では,咽頭腔を塞ぐように舌が腫脹していたが舌内に膿瘍や出血は認められなかった.上記の投薬を続けることにより舌腫脹は4日後には完全消失した.急性舌腫脹の原因は,66歳時から80カ月間投与されていたアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬リシノプリルによる血管浮腫と考えられた.また,発症時の検査で腎機能障害が増悪しており,感冒に対して前日まで内服していた消炎鎮痛剤が原因と考えられ,さらに,リシノプリルの尿中排泄低下により血中濃度上昇を助長したものと考えられた.わが国におけるACE阻害薬が原因の血管浮腫は比較的稀であり,とくに舌腫脹の報告は本例を含めて計11例に過ぎない.しかしながら,死亡例も報告されており,気道確保を含めた適切な対応が重要である.また,ACE阻害薬内服者に顔面や口唇の浮腫や舌の違和感などの訴えがあれば,ただちに投与は中止されるべきである.
著者
中山 尚貴 尾崎 弘幸 海老名 俊明 小菅 雅美 日比 潔 塚原 健吾 奥田 純 岩橋 徳明 矢野 英人 仲地 達哉 遠藤 光明 三橋 孝之 大塚 文之 草間 郁好 小村 直弘 木村 一雄 羽柴 克孝 田原 良雄 小菅 宇之 杉山 貢
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.54-57, 2007

症例は30歳,男性.2006年6月,スポーツジムのランニングマシンで運動中に突然,心窩部不快感が出現し,運動を中止したが痙攣を伴う意識消失をきたし倒れた.スポーツジムのトレーナーがただちに心肺停止を確認し,施設内の自動体外式除細動器(AED)を装着した.AEDの音声に従い除細動ボタンを1回押し,すみやかに自己心拍が再開したが,AED使用後にリセットボタンを押したため,メモリーが消去され,心肺停止の原因として致死性不整脈の関与は確認できなかった.<BR>入院後,トレッドミル運動負荷心電図検査で広範囲の誘導でST低下を認め,冠動脈造影検査を施行し冠動脈瘤を伴う重症多枝病変を認めた.心肺停止の原因は心筋虚血による心室細動もしくは無脈性心室頻拍と推定し,冠動脈バイパス術を施行した.<BR>AEDの普及に伴い非医療従事者によるAEDを使用した救命例が本邦でも徐々に報告されており,本症例は現場にあったAEDをただちに使用したことが社会復帰に大きく貢献したと考えられる.ただし,本症例で使用したAEDのように,一部機種ではリセットボタンを押すことによりメモリーが消去され,事後検証が困難になることは注意すべき点であり改善を要する.
著者
富田 斉 今野 武津子 石川 信義
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.19, no.12, pp.1391-1391, 1987-12-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
27

先天性左心室憩室は極めてまれな心奇形であり,しばしば正中線上の異常を合併する.症例は,18歳男児で心不全から肺炎を併発し死亡した.剖検にて心房中隔欠損,両大血管右室起始,左心室憩室,dextroversionの心内奇形と胸骨下1/3の欠損,心膜・横隔膜の部分欠損,腹直筋離開の正中線上の異常を伴い,Cantrell症候群と診断した.本邦における先天性左心室憩室の13例を集計し,文献的考察を加えて報告した.
著者
中村 隆 香取 瞭
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.1, no.6, pp.575-580, 1969-06-01 (Released:2013-05-24)
参考文献数
18
著者
狩野 実希 浅野 充寿 松村 穣 村松 賢一 佐藤 明 大和 恒博 武居 一康 新田 順一 淺川 喜裕 牛木 真理子 高橋 雅弥 木村 知恵里
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.329-335, 2013 (Released:2014-09-13)
参考文献数
18

症例は, 67歳, 男性. 数カ月前より繰り返す失神発作を認めていた. 2010年9月, 意識消失を主訴に救急要請し, ショック状態で当院に搬送された. 心臓超音波検査で全周性の心嚢液貯留と右心系の虚脱所見を認めたため, 心タンポナーデと診断し入院した. 数日後には自然吸収されたが, その後も心嚢液の再貯留と消失を繰り返した. 心嚢穿刺により心嚢液の性状は血性であったが, 出血源の同定は困難であった. 出血源同定ならびに心タンポナーデ解除目的に試験開胸を行った. 右室前面の心筋表面より断続的に静脈性の出血がみられ, 縫合止血した. 術後, 心嚢液の再貯留なく経過した. 急激な心嚢内出血により心タンポナーデを呈することは決して稀ではないが, 本症例のように心嚢への出血と吸収が数日単位で起こり, 繰り返し心タンポナーデを引き起こす病態は今まで報告がなく, 病態機序がはっきりしなかった. 非常に稀な経過をたどった特発性心嚢内出血の症例を経験したので文献的考察を加えて報告する.
著者
水野 篤 西 裕太郎 山添 正博 小松 一貴 浅野 拓 増田 慶太 新沼 廣幸 丹羽 公一郎
出版者
Japan Heart Foundation
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.46, no.8, pp.1083-1089, 2014

背景 : 過去に抗凝固薬における内服薬種類変更に伴うアドヒアランスの変化をみた研究はない. 今回心房細動患者における抗凝固薬のアドヒアランスを薬剤変更前後でアンケート調査にて確認した.  方法 : 心房細動において, 抗凝固薬を内服している患者のうち, リバーロキサバンに変更した患者全例を対象とした. リバーロキサバン開始時と次回約3カ月後の外来時にアドヒアランスに関するアンケートを行った.  結果 : 対象患者は40人 (平均年齢70.1歳, 男性7割). 変更前の抗凝固薬はアスピリン1人 (2.5%), ダビガトラン30人 (75%), ワルファリンが9人 (22.5%) であった. アンケート結果では, 開始前にも32.5%の患者が内服し忘れたことがあり, 3カ月の間に2.47±4.0回内服忘れることがあるということであった. 変更後のアンケート結果では3カ月間での薬を飲まなかった回数/日数のみ1.1±2.2回と有意に低下していた (p=0.008). アスピリン・ワルファリン群では有意に変化せず (p=0.285), ダビガトランからの変更群でのみ有意に3カ月間での薬を飲まなかった回数は改善した (p=0.018). 内服回数が2回以上の群では2.1回±3.6回から1.0±1.6回まで減少傾向を認めるものの, 有意差はなく (p=0.066), 内服回数が1回の群2.9±4.5回から1.2±2.6回に有意に減少した (p=0.046).  結論 : リバーロキサバン変更により内服を忘れる回数は有意に減少し, アドヒアランスによい影響を及ぼすと考えられた. さらにその効果は特にすべての内服薬を含めた服用回数が1回のものに顕著であると考えられる.