著者
斎木 敏治 成田 貴人
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.653-659, 2001-06-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
58
被引用文献数
2

近接場光学顕微鏡システムとそれを利用した空聞分解分光技術の最近の進展を概観する,特に,近接場プ日一ブ作製技術の進歩に伴い,高分解能化と高感度化の両立が実現し,分光計測への応用が以前よりも容易になりつつある.ここでは,最も基本的な発光分光に始まり,パルスレーザーとの組み舎わせによる時間分解分光や非線形分光,偏光惰報の取得,感度の観点から最も難しいラマン分光などの測定例を紹介する.これらは,近接場分光技術が利用価値の高い計測技術として,まさに成熟しつつあることを承している.
著者
城石 芳博
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.67, no.12, pp.1424-1428, 1998-12-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
6
被引用文献数
1

磁気記録技術は, V. Paulsen の発明以来100年の歴史を有する身近な技術である.中でもハードディスク装置は,外部記憶装置の中核的存在であり,薄膜磁気記録媒体,磁気抵抗効累 (MR) 型ヘッド, PRML信号処理などの最先端技術の継続的導入により,ここ数年間は年率60%(このままでいけば10年で160倍)という驚異的なスピードで高密度化が進農している.現在,ハードディスク装置の記録密度は光ディスク装置を追い越すまでになっており,その産業規模も半導体メモリーに匹敵する巨大なものとなっている.本講座では,高度情報化時代にますますその重要度が高まると考えられる,ハードディスク装置の原理と構成について概説する.
著者
唐木 幸一 酒井 貢 佐々木 靖夫
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, pp.1242-1248, 1988-08-10 (Released:2009-02-09)
参考文献数
5

Authors developed a reflection acoustic microscope using liquid nitrogen as the coupling liquid. The resolution of a sample surface is better than 0.4μm when the instrument is operated at 1.5 GHz. This system is more practical than any ever developed, because it is easy to change a sample and to select an observation area. In this paper, authors report the concrete structure of this system and some images of IC's, and discuss the properties of these images qualitatively.
著者
片山 建二 由井 宏治 澤田 嗣郎
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.672-676, 2001-06-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
29

光熱変換分光法の最近のトピックスについて紹介する。近年,本分野では光吸収後の励起電子・熱・弾性波の緩和現象を高時間分解能で計測し,得られる物理・化学的構報をさまざまな物性測定に利用しようという研究が急速に進展してきた.例えば,本法による固体表面物性計測を,ナノ薄膜や多層膜の熱・弾性物性や膜厚測定に応用したり,高速時間分解顕微光熱変換測定により,励起キャリア・熱拡散・表面弾性波の挙動を直接二次元画像表示することなどが行われている.また,光励起によって熱や音が発生する素過程そのものを明らかにしようという,古そうで新しい研究も行われている.
著者
南 茂夫
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.639-652, 2001-06-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
53

分光計測を実用計測技術としてとらえ,過去1世紀以上にわたって続けられてきた種々の分光的手法が,機器化されて一つの市場を形成するに至った背景と今後の発展の方向を,ニーズとの関連を明確にしながら展望した.まず,光と物質の相互作用で現れる光スペクトルの種類について,基本事項のテユートリアルな概説を行い,それぞれのスペクトル分野で実用されつつある特徴的な分光計測機器の現状を紹介した.続いて,これから分光計測実験や機器開発を試みる方々への指針として,構成要素の有機的結合を目標としたシステム設計の季法にっいて言及した.
著者
白鳥 世明
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.553-557, 2000-05-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
26
被引用文献数
1

高分子電解質の交互累積膜の吸着過程を水晶振動子微量天びん (QCM) を用いて,吸着質量をその場でモニターしながらロボットアームの動作をフィードバック制御することにより,有機超薄膜の構造制御を行った.これにより,ナノメートルオーダーで構造制御された秩序層構造の超薄膜を常温常圧で得ることができた.また,この手法はポリマーだけでなくモノマーであっても,有機材料だけでなく無機材料であっても,さらに水溶液のみならず有機溶媒でも幅広く適応できることが明らかになった.このヘテロ構造超薄膜を用いた煙センサー,フィルター,有機EL素子,オプティカルデバイスなどへの応用について紹介する.
著者
勝山 俊夫 細見 和彦
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.664-670, 2002-06-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
19

半導体中で励起子(電子・正孔対)と光が結合した励起子ポラリトンの素子応用について報告する.このポラリトンは,電界などに鋭敏に応答する電子(正孔)とコヒーレンスがよい光の両者の性質をあわせもつ特長があり,これらの利用によって,従来の電子素子や光素子とは違った新しい極微細光・電子融合デバイスの実現が期待される.ここでは,ポラリトンの電界による位相変調効果,ポラリトンの安定化について議論するとともに,光素子の低動作電圧化と極微細化の試みを中心に最近の進展を報告する.
著者
木下 實
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.61, no.10, pp.994-1005, 1992-10-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
31
被引用文献数
2

最近,金属元素を含まない有機化合物(p-NPNN, TDAE-C60)の結晶で強磁性体への転移が見いだされた.分子間に強磁性相互作用を持ち込む指針を得るための前段階の研究から,p-NPNNで強磁性を発見するに至った研究経過を振り返ってみる.また,関連する有機強磁性体を探索する研究の最近の動きを,簡単な有機化合物と高分子化合物にわけて紹介する.
著者
薮崎 努 木下 俊哉 福田 浩一 高橋 義朗
出版者
The Japan Society of Applied Physics
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.63, no.9, pp.906-910, 1994

超流動状態の液体ヘリウム中に導入した中性原子は,気体や固体,他の液体中とは違った独特のエネルギー構造や振る舞いをする.しかし,液体ヘリウム中に中性原子を導入するのに技術的な困難があり,最近まで実験がほとんどなされていなかった.われわれはレーザースパッタ法を開発し,種々の原子や分子を,直接,液体ヘリウム中で生成することに成功した,ここでは,特にわれわれが実験に成功したアルカリ原子を中心に,その光学的特性や光ポンピングによるスピン偏極,光一高周波(マイクロ波)二重共鳴実験;を紹介し,未解決の問題や基礎科学への応用例について述べる.最近,超流動ヘリウム中の原子やイオンへの関心が高まり,世界的にも一つの研究分野にもなりつつある.
著者
田中 健一
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.485-490, 1996-05-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
9
被引用文献数
1

計測のばらつきを評価する方法である,「計測における不確かさの表現方法のガイド」が, 1993年にISOなどの7つの国際機関の連名で出版された.不確かさについてはすでにいくつもの解説が書かれているが,本文は,不確かさを求めようとする人のための入門書として,事例を入れて分かりやすくすることを心掛けて解説したものである. まず,最初の導入につづき,不確かさという用語のもつ意味と,このガイドの特徴を述べた.このガイドは,単に表記の方法や用語の定義を定めたものではなく,評価方法を細かく取り決めたものであるので,この評価方法の手順に沿って,手順のバリエーションを分類しながら,事例を入れて解説した. 不確かさには大きく2種類の異なった評価の方法があり,世の中に混乱を招いている.しかし,国際的にこのISOのガイドに書かれた方法に統一されつつある.論文などでも計測の結果には,この不確かさを表記するように求められつつあり,このガイドに沿ったものであることが必要となろう.
著者
藤井 政俊 川合 知二 河合 七雄
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.916-933, 1984-11-10 (Released:2009-02-09)
参考文献数
118
被引用文献数
2

半導体の電子と正孔の挙動は,単にエレクトロニクス外野において重要性をもつにとどまらず,光と組み合わせることによって,優れた化学機能を発揮する.この研究は,1970年代の後半クリーンエネルギー源であるH2発生のための光触媒の開発に端を発している.現在,この化学機能は,光エネルギー変換,無機化合物や挙導体のプロセッシングと表面処理,新しい有機合成法,細胞工学への応用などの諸労野に生かされつつある.さらに,微生物のみが成し得たグルコースからのアミノ酸の合成が,光と半導体によっても可能になっている.このように,半導体光触媒は広い応用分野をもつと同時に,生命の起源の解明にも光を投げかけるであろう.
著者
戸井田 昌宏 稲場 文男
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.10-17, 1993-01-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
41

顕著な光散乱や拡散を生じる生体の光画像計測,特に光断層画像(光GT)計測は,困難な問題があるものの魅力的なテーマであるため,最近大きな関心がもたれ活発に研究が行われている.本稿ではレーザーを中心とした光エレクトロニクス関連技術の進展に基づき,光GTの実現を目指して進められているいくつかの方法を紹介し,これら光画像計測技術の現状について述べる.さらに,今後の研究の動向と課題にっいても記述する.
著者
宮原 諄二 加藤 久豊
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.53, no.10, pp.884-890, 1984-10-10 (Released:2009-02-09)
参考文献数
21
被引用文献数
8

従来のレントゲン写真は(蛍光スクリーン/フィルム)システムでX線像を可視化したものである.このシステムに代る新しいデジタルラジオグラフィーシステムの開発が各国で進んでいる,輝尽性蛍光材料をX線像の検出とメモリーの二つの機能に用い,デジタル画像処理システムと組合せたコシピューテッドラジオグラフィーシステムもその一つであり,多くの臨床上の有用な効果が明らかになってきている.このシステムは,古くから知られている固体結晶中のカラーセンターとルミネッセンスを,最新のエレクトロニクスとコンピューター技術に結びつけ,古きものの中に新らしい血を注いだ「温故知新」の技術開発の一つの例としてあげられよう.
著者
浅川 賢一 田幸 敏治 平田 照二
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.519-525, 1979-06-10 (Released:2009-02-09)
参考文献数
11
被引用文献数
1

A 50 meter modified Michelson interferometer has been installed in an underground tunnel in the Nagatsuta campus of Tokyo Institute of Technology. It is enclosed by vacuum pipes and illuminated by a frequency stabilized 633 nm He-Ne laser. The displacement of the interference fringes is converted to voltage with an accuracy of about 1×10-10. From the spectral analysis of the fluctuations of the interference fringes, it is found that the power spectral densityof the microtremor at the quiet time has peakes at 1 cycle/day and its har-monics, also at 0.3, 0.6, and 3 Hz, and that the values at around 10 Hzincrease when cars pass by on the road near the tunnel.
著者
加藤 誠 鈴木 達朗
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.36, no.11, pp.903-907, 1967 (Released:2009-02-09)
参考文献数
7

The process of producing the hologram of an incoherently illuminated object and that of obtaining the reconstructed image from the hologram are described mathematically based on the Fresnel-Kirchhoff diffraction integral. Formulas are given which represent the magnification, posi-tion and separation of the reconstructed images. Distortion term does not appear in the case of incoherent holography. The condition for obtaining Fourier transform holograms is outlined. A system consisting of two spherical mirrors and a beam splitter is proposed.