著者
湊 真一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.54, no.11, pp.1152-1159, 2013-10-15

「おねえさんの問題」と呼ばれる格子グラフ上の経路数え上げ問題が,アルゴリズムの専門家のみならず,情報処理関連の研究者・技術者の間でも広く注目を集めている.本稿では,まず「おねえさんの問題」という名称の由来について述べ,この問題を効率よく解くためのデータ構造「ZDD」とKnuth のZDD 構築アルゴリズムについて簡単に解説する.次に,この問題が知られるきっかけになった日本科学未来館における研究成果展示とYouTube 動画の反響について振り返り,最近達成された世界記録の状況について述べる.最後に,この問題が高速に解けることで今後どのような応用が期待できるかを展望する.
著者
平野 芳行
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, 2006-04-15
著者
木俵 豊 是津耕司 河合 由起子 水口充 宮森 恒 柏岡 秀紀
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.50, no.7, pp.613-623, 2009-07-15
被引用文献数
1

ライフログはユビキタスネットワーク・コンピューティング環境における新たな情報利活用技術の情報源となりつつある.ライフログは実世界におけるユーザの行動履歴を記憶の拡張として活用されている.ウェアラブルコンピュータを使って,ユーザの周りのさまざまな情報を取得する手法も提案されているが,このような情報は意図せぬ他人の情報を取得してしまうこともあり,プライバシの問題なども発生している.一方,ディジタルコンテンツを実世界で利用する場合の情報端末の操作や音声による発話および対話記録もライフログとして重要な情報源である.これらは,ユーザごとの興味に基づいた実世界のイベントや特徴を表現していることが多く,実世界アノテーション情報としても有益である.つまり,有効なライフログとして活用するためには,その情報の生成・発信,管理,分析,提示する技術開発が重要となる.本稿では,実世界におけるコンテンツ利活用に着目したライフログの活用について述べる.
著者
藤原 和典
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.380-385, 2015-03-15

最近,DNSへの攻撃が改めて注目されている.本解説ではDNSへの攻撃を可用性に対する攻撃と完全性に対する攻撃に大きく分類した後,ソフトウェアの脆弱性,サーバそのものの乗っ取り・悪意による操作,通信路をタッピングしてクエリに対応する偽装応答を与える中間者攻撃,フルリゾルバのキャッシュに偽造情報を注入するキャッシュポイズニング,DNSサーバを攻撃に用いるDNS反射攻撃,DNSサーバを停止させたり,大量のパケットを送ることでサービスを妨害するDoS攻撃などに分類し,それぞれごとに対策方法を紹介する.
著者
安藤 一憲
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.46, no.7, pp.758-761, 2005-07-15
被引用文献数
8

spamメール対策の中にあってフィルタリングはユーザの手の届く範囲に実装されるべき技術である.spamメールの定義は個々人によって微妙に異なっており,その違いを吸収するためには,ユーザがフィルタをコントロールできることが必要になるからである.従来から多く使われているメールサーバに届いたメールを手元に持ってくるためのPOP3プロトコルが単一のメールボックスだけを念頭において設計されていることも,フィルタの存在形態に少なからず影響を与えている.spamメールは万人に平等に降るわけではなく,1日数万通という人から1通も来ない人まで非常にバリエーションが広い.自分に1日15通しかspamメールが来ないから自分のいる組織に対策は必要ないと考えるのは早計で,隣の席の人間が数千通のspamメールを受信している可能性があることを知るべきである.このような状況のもと,ユーザから見た場合にspamメール対策の最後の砦となるのがフィルタである.
著者
北上 始 國藤 進 宮地 泰造 古川 康一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.26, no.11, pp.p1283-1295, 1985-11-15

人工知能の応用として知られているエキスパートシステムを作成するためには, 知識の表現, 獲得, 利用といった機能を支援する知識ベース管理システムが必要である. 本論文では, このシステムの構成法及び要素技術についての研究成果を報告している. 本知識ベース管理システムのインプリメンテーションは, 論理型プログラミング言語Prologで実施することを前提としている. 知識ベースの構造は, 著者らによって提案された次のような論理構成をとっている. 知識ベースを構成している各フレーム(知識の集合体)は, 主として次の五種の知識に分類されており, 知識ベースの拡張性を十分に反映できるように構成されている. 五種の知識としては, (1)構造化知識, (2)プログラム化知識, (3)制約型知識, (4)メソッド型知識, (5)辞書型知識がある. (1), (2)はオブジェクト知識, (3), (4), (5)はメタ知識とも呼ばれている. (1)の構造化知識は, 自然言語の分野で知られる概念階層関係を採用しており, (2)のプログラム化知識は, (1)で表現された知識を補うとともにそれを利用した種々のルールを表現している. (3)の制約型知識には, 動的に整合性を維持するためのtrigger型のメタ知識や, 矛盾検出用のinconsistencyの型のメタ知識があり, これらはメタ推論機能を使って容易に評価実行することができる. 特にtrigger型のメタ知識は, 自然言語処理の分野で知られる因果関係を表現するのに十分な機能をもっていることが述べられている. (4)のメソッド型知識は, 著者らが, 主に知識獲得と呼んでいる機能を提供するためのメタ知識である. ここでは, オブジェクト・レベルとメタ・レベルの二種類の知識獲得が存在することを述べている. また, 知識獲得時に, 制約型知識の評価実行を行うためのタイミングを制御するために, トランザクションという概念の導入が大切であることを述べている. (5)の辞書型知識は, データベースの分野のデータ辞書を拡張した知識であり, 知識ベース管理の処理効率向上及び種々のインタフェース向上のために利用される.
著者
青山 比呂志
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.349-352, 1975-04-15

1970年に発表されたシステム/370の特徴の一つは,60年代の360に較べ,ロジック回路のハイブリッド(SLT)からモノリシック(MST)へ,メモリのコア・メモリから半導体メモリへの変換に伴う高性能化である.半導体メモリは,すでに1968年にシステム/360/85のキャッシュ・メモリとして採用されていたが,370に至って先ず,370/145のメイン・メモリとして発表され,メイン・メモリの主流としてコア・メモリをしのぐコスト/パフォーマンスをあげている.1972年8月,370のVS(仮想記憶装置)の発表と同時に,それまでのバイポーラ型メモリに加えて,新しくNチャネルMOSFETの半導体メモリを370/158および168に採用し,メモリのハード・ソフト両面にわたる進展を示した.半導体メモリはICの製造技術,回路設計の大きな進歩により,今や信頼性,価格,実装密度ともにすぐれたメモリ・システムを,コンピュータ客先に提供できる時代になっている以下にこの370のメイン・メモリの概略について述べる.
著者
水本 武志 粟野 皓光 坂東宜昭
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.53, no.8, pp.810-815, 2012-07-15
著者
込山 俊博
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.10-16, 2013-12-15

現在,ISO/IEC JTC1/SC7 (Software and systems engineering) で,Systems and Software Quality Requirements and Evaluation (SQuaRE) という規格体系の審議が進んでいる.このプロジェクトは,システム・ソフトウェアの品質を制御し,保証する上で課題となる,品質要求事項の具現化と定量評価に関する標準を定め,統一された基準で品質を測定・評価することを目指している.システム・ソフトウェアに求められる品質を実現する上では,発注者,受注者などの利害関係者間で,実現すべき品質特性や個々の特性に対する期待水準を合意することが重要である.本稿では,最新の国際規格ISO/IEC 25000:SQuaREシリーズの体系を述べる.次に,SQuaREが規定する,国際的に合意された品質モデル群を紹介する.
著者
細川 義洋
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.176-183, 2014-01-15

年々増加の一途を辿る情報システム開発を巡る紛争例を元に,東京地方裁判所でIT専門の民事調停委員を務める筆者がシステム開発におけるユーザとベンダの責任の考え方,開発プロジェクトを円滑に進めるための注意点等を論じる.数多くのIT紛争に共通する問題であるシステム開発プロジェクトにおける『専門家責任』や『瑕疵』の考え方について,裁判所が出した判決を元に解決する他,補足として,不幸にも紛争に陥ってしまった場合の心構えについても記述する.
著者
斉藤 康己
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.23, no.11, 1982-11-15
著者
井出 明
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.616-623, 2007-06-15
被引用文献数
2

日本における観光産業は,直接効果22兆円,波及効果まで含めると55兆円規模の巨大産業であり,政府も日本の基幹産業として育成する可能性を探りつつある.また近年,各地の大学で観光学部が設置され,学問的興味も高まりつつある.観光シーンにおいては,旅行業者・輸送産業・宿泊業者そしてビジタといった各ステークホルダ間で膨大な情報がやりとりされているが,これまで情報学の観点から観光が研究されたことはほとんどなかった.本稿では,FIT2006で行われたイベント企画"ICTがもたらす観光産業の変貌"において議論された内容を整理するとともに,さらにその後の業界動向や研究の深化を踏まえ,情報システムの観点から観光産業を概観する.
著者
荒牧 英治 橋本 泰一
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.236-240, 2012-02-15

近年のマイクロブログの普及とともに,そこから有益な情報を抽出する需要が高まっている.ここでは,マイクロブログの先駆者的なサービスであるTwitterを例にして,インフルエンザや花粉症といった疾患病の患者数を予測する情報抽出システムと東日本大震災により被災した文化財の情報抽出について解説する.両システムともに,特定のキーワードを含むツイートの数を数え上げるだけでなく,機械学習による文書分類器を活用することにより,日常的な文章からより正確な情報抽出に取り組んでいる.