著者
岡野 貴誠 久保田 賢一
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.1-16, 2006-03-31 (Released:2017-07-18)

近年メディア・リテラシー研究の一つのアプローチとしてメディア観の変容に着目した研究が行われるようになってきた。それらの研究ではメディア観の変容過程はある程度明らかになりつつあるものの,その背景にある変容の要因に着目した研究は少ない。そこで本研究では関西大学で行われるメディア・リテラシー育成を目的とした「AVメディア制作論」の授業を事例に,学生が自由に議論する電子掲示板のグラウンデッド・セオリーに基づいた分析と30名の学生を対象とした半構造化インタビューを通して,学生のメディァ観の変容とその要因を検証する。
著者
村野井 均 宮川 祐一
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.28-38, 1995-12-01 (Released:2017-07-18)

『できるかな』は、NHK教育放送で21年に渡って放送された番組である。この番組には2つの映像が提示されていた。一人は男性主人公の「ノッポさん」であるが、彼は一言も話さなかった。もう一人は動物で、時々鳴き声をあげる「ゴン太くん」であった。一方、この番組には2つの音声が提示されていた。一つは「ゴン太くん」の声であり、もう一つは女性ナレーターの声である。主人公が話さない役であったため、この番組は子どもにとって音声と映像の統合が難しかった。190名の大学生の回想から、音声と映像を統合する過程に現れるつまづきを分析したところ、11.1%の学生が「ノッポさん」を女性と思ったことがあり、40.7%の学生が音声と映像の組み合わせをまちがった経験を持っていた。画面に現れないナレーターという人工的存在を認識するために、子どもは音声と映像の組み合わせを試行錯誤する経験と教育的支援が必要であることを論じた。
著者
稲垣 忠
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.69-81, 2017 (Released:2017-05-29)
参考文献数
13
被引用文献数
2

学習活動に明確なゴールを設定し,児童が探究的な学習に従事するプロジェクト学習は,アクティブ・ラーニングを促す指導法の1つであり,その学習過程にはタブレット端末の活用場面が含まれると考えられる。本研究では,端末を活用したプロジェクト学習の実践可能性と留意点を明らかにするため,教師が単元設計に用いたデザインシートの分析,教師対象の質問紙調査,11名の教師を対象にしたインタビュー調査を実施した。その結果,ペアやグループによる端末の活用場面が明らかになり,児童が端末を授業で活用する機会が増加した。教師は探究や協働学習の実施とそこでのICT活用に対する自信が高まり,意識の変容が確認された。単元設計の留意点は,ゴール設定,多様な協働場面の設定,操作スキルへの配慮が確認された。
著者
木原 俊行 田口 真奈 生田 孝至 水越 敏行
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.1-14, 1996-03-31 (Released:2017-07-18)

本研究では映像視聴能力の発達差を明らかにするために小学生5、6年生、中学校1、2年生、そして大学生を対象とした質問紙調査を計画・実施した。まず、映像視聴能力の構造を再考し、これに場面把握、状況把握、先読み、技法理解、主題把握、感情移入の6つの柱を設定した。次いで、この能力を厳密に測定するために、セリフのない映画『裸の島』を調査用刺激に選定した。そして、この映画の内容等に関する8つの問題を設定して質問紙を構成し、調査をおこなった。515名の回答を分析した結果、多くの映像視聴能力の構成要素について小学校5年生と小学校6年生の間に断層がみられること、技法理解や先読みについては中学校2年生と大学生の間の能力差も激しいことなどの映像視聴能力の発達的側面を明らかにすることができた。
著者
大西 好宣
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.39-53, 2000

ラオスは人口483万人という熱帯の小国である。国際的な注目度は低く、情報も少ない。だがこの国にとって日本は第一の援助供与国であり、人的資源開発への支援を通じて今後ますます関係が深まるだろう。本稿では、最も情報が手薄な分野のひとつであるラオスの教育とメディアについて、タイとの比較という観点から、筆者が首都ビエンチャンで実施した調査の結果を踏まえて報告したい。もともとラオスの教育は、成人識字率わずか58%という数字が表すように、大きな問題を孕んでいる。このような中でメディアがその役割を果たし、質の高い教育番組を提供できれば、学校・教員数の少なさは補完できる。国営テレビ局は、「ラオス人はタイのテレビばかり見ている」との風評とは裏腹に比較的健闘している。タイの番組に比較すれば視聴者の自家製番組の質に対する評価は総じて低いものの、ラオス国民のタイに対する複雑な感情が数字を通じて見えてくる。
著者
川村 義治
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.31-41, 2006

この論文では,イメージは描写的な側面と記述的な側面が一体になった心的表象であるという観点から,英単語の記憶保持における身振りの運動イメージの役割に関して論述した。最初に,イメージとは何かを議論したイメージ論争とイメージの役割を評価した二重符号化理論を再考して,新たなイメージ観とイメージと記憶をめぐる本稿の理論的枠組みを示した。次に,身振りの運動イメージを非言語情報として用いた筆者の二つの実験結果を報告して,身振りの運動イメージが英単語の記憶保持に効果があることを確認した。さらに,人間は外部世界での身体的な経験から抽出したイメージ・スキーマに基づいて外部世界を意味づけるという認知言語学の見解を検討した。もし言語と身振りイメージの概念構造が同じスキーマによって動機づけられているならば,単語の概念を身振りの動作イメージで捉えることで,単語の記憶保持が高まるという結論に至った。
著者
久保田 真弓 鈴木 有香
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.45-57, 2021 (Released:2021-10-29)
参考文献数
10

コロナ禍で急遽要求されたオンライン授業に不慣れな教員等を対象にZoom利用に関するワークショップが実施された。そこで本研究では,参加者の躓き要因をデザイン原則の観点から明らかにし,ワークショップの意義を提案する。異文化コミュニケーション学会が開催した1回2時間の初級(2回),中級(3回)の合計5回のワークショップを取り上げ,延べ参加者62名の躓き要因とデザイン原則との関連を分析した。ワークショップの内容は,初級レベル14項目,中級レベル12項目ある。そのうち,参加者の躓き要因は,「シグニファイア」,「制御感」,「想定外」,「重層構造」にまとめられた。「シグニファイア」による躓きは,記号や用語の使用方法であり,的確なフィードバックで解決する。一方,「制御感」「想定外」「重層構造」による躓きは,ユーザーの概念モデルの多様化が背景にあると考えられた。デザイナーが示すシステムイメージの変化にユーザーの利用習慣がついていけないのである。そこで,ワークショップでファシリテーターが参加者の潜在意識のレベルでの違和感を見抜き躓きに対応することで,デザイナーとユーザーの概念モデルのギャップを縮めることができることを提案した。
著者
大久保 紀一朗 佐藤 和紀 中橋 雄 浅井 和行 堀田 龍也
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.33-46, 2016 (Released:2017-09-14)
参考文献数
7
被引用文献数
5

本研究は,マンガを読解・解釈・鑑賞する活動を通してメディア・リテラシーを育成する学習プログラム(小学校第5学年対象)を開発し,その有効性を検証したものである。国語科の漫画家を題材にした説明文の学習を通して,マンガの表現技法について学んだ上で,漫画家の作品を読み込み,マンガレポートや本の帯やポップを作成する活動を行った。能力評価尺度を用いた事前調査と事後調査の平均点を比較したところ,全ての項目で事後調査の平均点が高く,有意な差を確認することができた。また,開発した学習プログラムを実施したクラスの平均点は,実施していないクラスの平均点よりも高く,有意な差を確認することができた。評価基準による3者の評価の平均点が3点満点中2.5点以上であったこと,Kendallの一致度係数はすべてW=.7以上であったことから,本論で示した学習プログラムは有効であったことが示唆された。
著者
佐藤 知条
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1-2, pp.25-36, 2012-03-31 (Released:2017-07-18)

本稿では映画の教育利用を推進する全日本活映教育研究会の監修で1933年に作られた理科の教材映画『石炭』の内容を分析して教師や教育関係者の思想との関連を考察した。映画は教科書だけで授業を展開させるのが難しい部分を補完するように作られていた。これは教師が教材映画に求めていたことと一致していた。このことは娯楽性と興行性の排除とも関連するため,興行映画製作者を排除し教育関係者の手で教育映画を作ろうとする思想の表れとも解釈できる。一方で映画には教科書にはない場面も存在した。ここには,時間とともに場面が変化するメディアであるために映像の一貫性やつながりへの考慮が生じるという映画特有の事情が影響していたと考えられる。教師はこの場面に映画の教科横断的な利用可能性を見出していたことから,『石炭』は当時の教師の教育映画観を反映したものであるとともに,彼らの教育映画観に影響を与えるものでもあったと考えられる。
著者
村井 明日香 堀田 龍也
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.81-99, 2021 (Released:2021-05-08)
参考文献数
48

テレビ・ドキュメンタリーに係わるリテラシーの構成要素を抽出することを目的に,日本のテレビ番組制作者(以下,番組制作者)による書籍の記述の分析を行った。その結果,「制作」では,スポンサーの発言力の大きさ,テレビ局と制作会社の上下関係,総務省の力の大きさ,憲法の知る権利,放送法の「不偏不党」に対する意識等の項目が抽出された。「言語」では,編集で撮影順と異なる組合せにすること,できる限り映像で見せること,ナレーションは映像等の要素と補い合うものであること等の項目が抽出された。「リプレゼンテーション」では,撮られる側がカメラやスタッフを意識するため,普段通りではなくなること,番組制作者が撮られる側にはたらきかけを行うことで真実を伝えること,ドキュメンタリーは世界を再構成し再提示していること,正確な情報を伝えるべきと考えていること等の項目が抽出された。「オーディアンス」では,日本国民のマジョリティや高齢者をターゲットにしていること,興味を引く様々な工夫をしていること等の項目が抽出された。
著者
大久保 紀一朗 和田 裕一 窪 俊一 堀田 龍也
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.13-29, 2020 (Released:2020-09-17)
参考文献数
29

本研究ではマンガの読解指導について検討するための基礎的知見を得るために,小学校高学年を対象に,(1)マンガを含むメディアへの接触頻度,(2)マンガの読み方,(3)マンガへの意識・態度に関する調査を行った。その結果,マンガの読み頻度は1990年に行われた調査と比較して低いことが示された。一方で,児童を取り巻くメディア環境が大きく変化した今日においても,小学校高学年児童の多くはマンガに対して肯定的な意識をもっていることが示された。マンガに対する意識を測る尺度得点について因子分析を行った結果,マンガの有用感,マンガの分かりやすさ,マンガの悪影響,マンガへの低評価という4因子構造が得られた。それらの下位尺度得点と,読み方の関係を検討するために相関分析を行った。その結果,マンガに対して肯定的な意識をもっている児童は,マンガを深く理解する読み方をしていることが示唆された。そこで,マンガの読み方を目的変数,マンガに対する意識を構成する4つの因子の下位尺度得点を説明変数として重回帰分析を行ったところ,マンガに対する有用感がマンガの読み方に影響を与えていることが示唆された。
著者
小林 祐紀 中川 一史 村井 万寿夫 河岸 美穂 松能 誠仁 下田 昌嗣
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.49-57, 2007-10-31 (Released:2017-07-18)

学校教育におけるICT教育の推進に関わる現状の把握と推進のための課題を整理するために、ICT活用に関する研究助成に応募し、採択された学校のICT活用を推進するリーダー(以下ICT推進リーダー)を対象に、「研修」「働きかけ」「カリキュラム」についてアンケート調査を行った。その結果、ICT機器の整理、管理(保守点検)、校内ネットワークの整備・管理を中心とする働きかけをおこなっていることが明らかになった。その一方で、校内の他の教師の求める支援との間に齪飴が生じている現状が明らかになった。また、今後の校内におけるICT活用推進の課題として、教員のICT活用スキルの格差への対応、ICT推進リーダーがICT機器の維持・管理のために費やす時間や負担の軽滅、ICT活用が学校全体の教育活動に位置つくためのカリキュラムの充実、ICT活用推進を支える校内体制の確立の4点に整理することができた。
著者
浅井 和行
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.67-79, 2000-03-20 (Released:2017-07-18)
被引用文献数
2

「総合的な学習」に取り組む学校のカリキュラムとメディアの関係を明らかにするために、本研究では、環境教育指定を受けている小学校のカリキュラムとメディア使用に関するデータを収集した。具体的には、3年間の研究紀要から、カリキュラムの変化とメディアの使われ方の変化を調査した。そして、個別に特徴を検討した後、2つの関わりについて考察した。分析の結果、カリキュラムが教科型から教科関連型になり、「総合的な学習」としての一体型に変わってきたことが確認された。メディアは、カリキュラムの変化の中で、教師が提示する教材から子どもが使う学習材に変わってきていることが明らかになった。
著者
澁川 幸加 田口 真奈 西岡 貞一
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.1-19, 2019 (Released:2019-09-30)
参考文献数
29

本研究の目的は,反転授業の事前学習時に既有知識と新しい学習内容を整理し,関連づけるワークシートへ取り組むことが,対面授業時の学びへどのような影響を及ぼすかを深い学習アプローチ得点の変化と対面授業時の発話内容の差異をもとに明らかにすることである。そのために,事前学習時に講義映像の視聴とノートテイクのみ行うワークシート無し群と,この事前学習に加えてワークシートへ取り組むワークシート有り群を設定し,大学生18名を対象に実験を行った。その結果,ワークシート有り群では対面授業後に深い学習アプローチ得点が向上した。また,ワークシート有り群では事前学習時に解説されたキーワードの発言数が顕著に多くなることや,学んだ知識を多様に活用した議論を展開したことが明らかになった。本研究は,反転授業の事前学習時に既有知識と新しい学習内容を整理し,関連づけるワークシートに取り組むことが,対面授業時に学んだ知識を多様に活用して議論を行うことを促進し,その結果,深い学習を促進させることを示唆した。
著者
勝見 慶子 田村 隆宏 藤村 裕一
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.1-11, 2019 (Released:2019-04-04)
参考文献数
16

本研究の目的は,幼児の保護者を対象として,幼児のICT機器利用に対する認識に及ぼすICT機器利用の否定的側面や肯定的側面に関する講習の効果を検討することである。調査対象者は認定こども園の3,4,5歳児の保護者241人で,講習の前後に,幼児に対してICT機器利用にルールが必要か,幼児にICT機器の操作方法やメディアの種類等を教える必要があるか,幼児にICT機器利用に際してのルールや注意事項を教える必要があるか,に関する認識を問うた。その結果,いずれの講習も,これらの認識を高めることが明らかとなった。加えて,子どもの年齢が,ルールが必要という認識に影響したり,ICT機器が子どもにとって役立つという保護者の意識が,教育が必要という認識に影響したりするなど,いくつかの要因が講習の効果に部分的に影響している側面も明らかにされた。これらの結果は,幼児のICT機器利用に際して,保護者に対する情報教育の重要性を示唆している。
著者
坂東 宏和 大即 洋子 大島 浩太 小野 和
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.37-47, 2010

本論文は,保育におけるPCネットワークを介した絵と音声によるコミュニケーションの可能性と問題点を探ることを目的とし,1つの幼稚園内に限定されたPCネットワーク環境の中で,幼児にそのコミュニケーションを体験してもらった。その様子を観察した結果,自分の描いた絵に対する返信として録音された,絵が「うまいですね」,「すごい上手です」といった音声メッセージを聞いて喜ぶ事例が見受けられた。また,年中の幼児が「お化け屋敷」という音声とともに投稿した,紙の一部を黒く塗りつぶして暗闇を表現しただけの絵に対し,年長の幼児が「お化け屋敷ならお化けを描かないと」と言いながらお化けを追記し,お化け屋敷にして返信する事例も観察された。これらの事例から,PCネットワークを介した絵と音声だけのやり取りであっても十分コミュニケーションを取ることができ,幼児に有益な新しいコミュニケーションを提供できる可能性が示唆された。
著者
海後 宗男
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.47-60, 2004

これまでの研究で、社会的デジタル・デバイドは、新しい情報通信技術へのアクセス能力(media access)の欠如によって形成されていることが検証されてきた。日本の場合、特にメンタルな接続能力の欠如(コンピュータ不安やコンピュータに対する興味の欠落によって生じる心的要因によるデジタル経験の欠如)とスキルの接続能力の欠如(教育環境やインターフェースの問題によって発生するデジタル・スキルの欠如)のふたつが、社会的デジタル・デバイドを構成する要因となっていると推測される。本研究では、2つの調査を行ってメンタルな接続能力とスキルの接続能力の欠如の実態を明らかにした。また本研究では、2つの調査結果を検証するなかで、日本のデジタル・デバイドの現状が本来の語義である「持つ者、持たざる者」に二分されるのみではなく、様々な要素が組合わさって、多層からなる階層が形成されていることに着目し、これを「デジタル階層」と呼ぶことにした。「デジタル階層」は日本の社会的デジタル・デバイドを捉えるために用いた構成概念ではあるが、社会的文化的背景や経済状況が異なる場合にも応用が可能で、各国のデジタル・デバイドの実態を捉えやすくし、系統的にデジタル享受を推進する方略を練る上で有効だと考えられる。
著者
今栄 国晴
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.38-43, 1995-02-10 (Released:2017-07-18)

メディアは変わっても、学習はほとんど影響を受けないという主張がある。メディアが学習効率に影響すると思われる場合は、主要要因の未統制、及びメディアの物珍しさ効果の影響を混同していることが多いという。しかし、その後、人の学習は単に情報を忠実に受容し保持するだけではなく、もっと積極的で構成的であると考えられるようになった。メディアからの情報は、短期記憶の中で変形され、長期記憶内の情報と総合されて新しい知識となり、認知構造を再編する。この過程において、マルチメディアを含むメディアの特性が強く影響することが予想され、それを支持するデータが発表されている。
著者
中野 照海
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.1-7, 1995-02-10 (Released:2017-07-18)
被引用文献数
1

視聴覚教育の分野で教育メディア研究の課題を考える場合、その歴史的発展の中から、基本的概念や研究の視点を整理する必要があろう、そこで、ここでは視聴覚教育メディア研究の分野での一般的となっている基本的な事項を改めて整理して、今後の研究への出発点を設定することから作業を始めた。このために、「画像による新たな学習の展開」、「教育メディア研究に見られる実証主義的伝統」、「教育過程を具体化するメディア」、「教育効果に関わるメディアの属性」、「特定の学習課題に対する特定のメディアの属性」、「学習過程における画像の新たな機能の探求」から、教育メディア研究の基本的事項を吟味した後、教育メディア研究は「特定の教育課題に対して、特定のメディア属性の寄与」を目指すものとしている。その上で、マルチメディアの普及などによって、映像メディア研究の新たな課題と期待とに及んでいる。